我ながら、まさかここまで筆が進んでしまうとは。
これも偏に、読んでくれる皆様のおかげです。本当にありがとうございます!
今回を含めてあと3話で、現在の第一槍は一旦終わりにして、いよいよ原作へと突入していきます。
番外編等、後から思いついて追加するかもしれませんが、どうかよろしくお願いします!
というわけで、まずは原作突入直前のリンデの様子からです。
ちなみにですが、本編で本当は描写を入れるつもりでしたが差し込めそうになかったのでここでぶっちゃけておきます。
実はリンデ、自身を転生させた存在について、全く理解していません。何なら見た目等も転生特典という訳ではないです。
死因に関しては薄っすらこれか? みたいなぼんやりした考えは抱いてますが、何故転生出来たのか、どうして『エルフリンデ』の姿と力を持っているのかについてはかなり曖昧な感じです。
そこら辺も踏まえてここから読んでいただけると幸いです。
それでは、どうぞ!
―――季節が過ぎ、春の芽吹きが感じられるようになった頃。
学園都市である『キヴォトス』にとっては、この季節は何処もかしこも学生が今年最後の『試験』を乗り越え、友人達と交友を深めるために羽根を伸ばしたり、新しい学園生活のために準備したりと、忙しなくなる頃合いである。
そんな、何処もかしこもリラックスムードな中、我らが『ティーパーティー』『首長補佐』の
「・・・よし。この辺りは大丈夫そうですね。」
―――していなかった。リンデは今日は珍しく、一人で『トリニティ』の街中を歩いていた。それも、何故か路地裏などを探索したりしながら。
(・・・そろそろ『原作』の開始時期が近づいてきています。こんな風にゆっくり探索出来る時間も、今後は確保するのが難しくなるでしょう。だから今の間に、もう一度ある程度整理・把握をして備えておかなければ。)
そう。リンデが一人でこんな路地裏を探索していたのは、近い未来起こる事のために、改めて地理の把握と情報の整理をして、来たるその『未来』に備えるためだった。
とはいえ、リンデにはミレニアムの『全知』のような天才的な頭脳もなければ、転生主によくあるどデカい一発逆転の特典のようなものもない。せいぜいがこの体の本来の持ち主―――『エルフリンデ』由来の強靱な肉体と飛行能力に加え、彼女にこの声を吹き込んでくれた『声優』由来の歌声。そして自らの意志に追従してくれるこの『ロンギヌスの槍』くらいだ。歌声以外は日常生活や戦闘以外では役に立たないし、歌声に関しても趣味の一助になる程度。つまり、現状では何かが起きない限り、曖昧な『前世知識』以外は『キヴォトス』で普通に暮らしている一般生徒と大差はないという事であった。
一応、リンデには『首長補佐』という立場があるが、それもせいぜい有事の際に指示が通りやすくなる程度でしかない。ミカ達もいる以上、こちらの指示に素直に従ってくれるのは『事務方』のメンバーくらいだろう。
であれば、自分が今出来ることは、有事が起きるであろう場所等の情報を自らの足で集め、整理・把握して、精神的に備えておく事が肝要だとリンデは考えていた。勿論、共有できる情報は共有したほうがいいと思っているが、その情報の源が曖昧なものである以上、信憑性を持たせることが難しい。セイアに協力してもらえば多少はマシな結果になるかもしれないが、彼女は彼女でその有事の前に、己の生死に関わる重要な分岐点となる出来事が控えている。体調の事もあるため、これ以上セイアに負担をかけることは、リンデとしても良しと出来なかった。
しかし、やはりというべきか。曖昧な『前世知識』に頼った辿々しい調査では、思った通りの情報はなかなか得れそうになかった。
(ミカがある程度手引きしていたとはいえ、それだけであれ程の被害を出せる規模の兵力を用意できるものでしょうか。それに無限復活持ちの『ユスティナ』の複製があったといっても、ミサイルや爆弾、弾薬などは自分達で用意するしかないはず。セイアのこともあったミカが、彼女達を全面的に信頼して協力してたとも考えづらいですし、やはりある程度前から用意周到に準備していたと考える方が自然。という仮定の下、実地調査としてこういった所を歩いていますが―――)
「―――簡単には、尻尾を掴ませてくれませんか。まぁ、ある程度は予想通りですが。」
望み通りの情報を得ることが出来ず落胆するも、ある程度は予想していた事だったため、気にすることなく次の場所へと移動するリンデ。
ちなみに、原作だとこういった路地裏には『ヘルメット団』等のはみ出し者達が跋扈しているのは周知の事実だが、当然リンデの訪れた場所にも彼女達はいた。そう、いたのだが――
・リンデが路地裏に訪れる
↓
・『ヘルメット団』達、急襲
↓
・リンデの『ロンギヌスの槍』の衝撃波で気絶&無力化
↓
・リンデが実地調査を終えてもそのまま放置
―――以下これが無限ループされており、もう少し後に『正義実現委員会』に通報が飛ぶまで、彼女達は壁やら路地裏に叩きつけられたまま放置される事となるのであった。
▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽
「・・・ここも空振りですか。ん〜、どうしましょうかね。」
探索予定の場所が全て空振りに終わり、少し頭を抱えるリンデ。探索を始めてからもうお昼時も過ぎ、一度休憩をとってからまた再開したのだが、それでもリンデの求める足取りは見つかりそうになかった。
(これ以上は流石にリスクを伴いますね。いっそ、『ロンギヌスの槍』の全力を解放したら、『神秘』で構成されている偽装などははがせるかもしれませんが・・・。いえ、いけませんね。そもそも偽装が『神秘』由来でない可能性もあり得ますし、何よりそんな事をすれば『ゲマトリア』達に補足されかねません。それだけは、何としても避けなくては。)
収穫がなさすぎて、思わず生来の脳筋戦術が出そうになるリンデだったが、それを行った結果伴うリスクがあまりに大きすぎるので思い留まった。
(『ゲマトリア』は、己の『崇高』へ至るための研究に、生徒を使う事に何の躊躇いもない。私が巻き込まれるのも嫌ですが、何よりミカ達に危害が及ぶ事をこの私が、『十郷リンデ』が許容値出来るわけがありません。そうなるくらいなら―――)
―――と、そこでリンデの思考は止まった。こういう時によくある、何かに襲撃された等の外的な要因で止まったわけではない。ふとリンデが自身の掌を見ると、その手は恐怖に震えていた。
「―――まだ死ぬ覚悟を決める事は、出来そうにないですか。」
(まぁ、そんな覚悟を持たなくて済むなら、それに越したことはありませんよね。)
リンデが思考を止めた理由。それは『死』の『恐怖』だった。
ミカのために己の全てを擲つ事が出来るとリンデは言ってはいるものの、肝心の彼女の心は、死ぬことを恐れていた。
それは、生きとし生けるものとして正常な反応である。リンデもそれは当然そうだろうと思ってはいるのだが、こんな事ではもしミカに何かあって、自分の生命をかけなければ解決できないような事態が起こった際、それを実行できないのではないかと考えていた。
そして、先日のミネの一件もあり、自身の持つ『歪み』とやらのせいで自分だけでなくミカ達まで破滅してしまうかもしれないのなら、それをどうにかするには自身の生命を引換にするしかないのではないか、という強迫観念に近いものが、リンデの中で薄っすら芽生え始めていた。当然それが表に出てしまうと、ミカ達(というよりミカ)が今度こそミネや『救護騎士団』に訴えかねないため、リンデはこの考えを表に絶対出さないようにしていた。
しかしそのせいで、今度は死なないといけない時に死ねず、結果自分が死ななかったせいでミカ達が、ミカが破滅してしまうのではないかという考えまで偶に浮かんできて、それを相談することも出来ずに、リンデは抱え込む事しか出来なくなっていた。
ただ、幸いな事にそういった事に関する悪夢を見たりして寝覚めが悪いとか、以前のようにミカ達の前でボソリと弱音をはいてしまう、などといった事には発展することは起きておらず、思ったよりも引きずってない自分のメンタルに少し疑問符はかかるが、不都合はないのでまぁ良いかと流していた。
「・・・おっと。もうこんな時間ですね。そろそろ戻らなければ。」
そんなリンデだったが、スマホを見て時間を確認すると、探索してからかなり時間が経過していた事に気付くと、再度周りを見渡して異常が何も無い事を確認してから、足取りも軽く路地裏から出て、街の方へと戻るのだった。
「・・・・・・。」
―――去っていく彼女の背中に向けられる、一人の視線に気づくことなく。
最後の視線の正体とは、いったい?
それはともかく。次回、2話ぶりの過去描写入ります!
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それではまた次回!