聖槍に祈りを   作:坂本コウヤ

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遅れてしまい、申し訳ありません。
今月中に一話上げたかったので、またイレギュラーな時間になりますが投稿します。

前回言ってた前書きの件ですが、予定してた文章がちょっと時間かかりそうと、この2槍後半の内容とリンクするものなので、しばらくは今まで通りのままでいきます。ご了承ください。

それと、前回入れてた初登場時の文字色と縁色の追加ですが、無い方が良いとの意見を頂きましたので、前回の話は修正しました。ただし、照れの部分の桃色斜線はそのままなので、ご了承ください。
また、それに合わせて今回以降文字色及び縁色は無しでいきます。よろしくお願いします。

それではどうぞ。


第十九詩:『首長補佐』とお説教と『ホスト』

 

「・・・なるほど。分かりました。報告ご苦労さまです、ハスミさん。ツルギ委員長にも、今後ともよろしくとお伝えください。」

 

「分かりました。では、失礼します。」

 

「またね〜、ハスミちゃん♪」

 

 

 ショッピングモールでの共闘から数日後。

 ナギサは『フィリウス』の執務室にて、ハスミからここ数日の治安維持についての報告を受けていた。近くにはリンデとミカ、セイアもおり、ちょうどいつもの『お茶会』の最中でもあったが、リンデもミカもセイアも今更気にするような仲ではないため、そのまま聞いていた形だった。

 

 今はその報告も終わり、退出していくハスミにミカが手を振っていた。それに対してハスミも小さく会釈すると、執務室から退出した。そして、ハスミの気配が扉の向こうに感じられなくなったタイミングで、ナギサがこめかみを抑えながら盛大な溜め息を吐いた。

 

 

「・・・ミ〜カ〜さ〜ん?」

 

「ん、どしたのナギちゃん?」

 

「どうしたの、ではありません。クラスメイトで仲がよろしいのは存じてますが、もう少し場の空気を読んでくれませんか?」

 

 

 ナギサが盛大な溜め息を吐いたのは、ミカの態度があまりに場の空気にそぐわないものであったからだった。これが普段の教室や廊下ならならまだしも、ここは曲がりなりにも『ティーパーティー』、つまり『トリニティ』の政治部門を担い、ハスミ達の所属する『正義実現委員会』へ指示出しできる上部組織のトップが集う場である。そんな厳粛な場であんな友達同士のような気楽な態度で挨拶するのは、そういった事に人一倍敏感なナギサにとっては我慢ならない事であり、故にいつものように小言を言ってしまうのも仕方なかった。

 だが、当然ミカはそういった事をあまり気にしない質なため、ナギサの小言に顰めっ面になって反抗した。

 

 

「えぇ~、いいじゃん別にあれぐらい。ハスミちゃんも特に何も言ってなかったんだし。」

 

「ミカ。君のそういう裏表のない性格は美点ではあるが、今回は流石に空気を読むべきだ。あの場での我々とハスミの関係は上司と部下であり、決して対等な友人同士ではないのだから。」

 

 

 不満を口にするミカに、理路整然とセイアがナギサの言いたいことの補足をした。普段の仲や現場でのやり取り、合同演習などの交流で忘れがちだが、ミカは『ティーパーティー』の首長。つまり、ハスミやツルギ達『正実』の上司に当たる存在である。プライベートでは友人であったとしても、『親しき仲にも礼儀あり』の言葉の通り、TPOは弁えなければならない。と、ナギサとセイアは言っているのだが、それでもミカは「でもさ〜」と納得出来ないと言った感じで食い下がろうとしていた。と、そこへこれ以上は静観出来ないと判断したのか、リンデも会話に混ざってきた。

 

 

「桐藤首長、それに百合園首長も。聖園首長への説教も程々にして、そろそろ会議を進めましょう。聖園首長へは、私からも言い含めておきますから。」

 

「リンデさん。」

「確かにそうだね。ただ・・・。」

 

「何? リンデちゃんも私が悪いと思ってるの?」

 

「・・・君の首長はこう言っているが?」

 

 

 これ以上は長くなると判断して、本来進めるべき会議へ方向性を戻すべく軌道修正を促したリンデ。ナギサとセイアは、その意図をすぐに汲んだのだが、肝心のミカがまだ納得できないのか、珍しく不機嫌さを隠さずリンデへ険しい顔を向けていた。セイアもミカの態度から、リンデにどうするつもりだと言外に尋ねてきた。

 

 リンデはミカの気持ちを一旦落ち着かせるべく、「少々お待ちを」とナギサ達に断ると、ミカの側に近づいて小声で何かを言った。すると、一瞬目を見開いてリンデを見たミカは少し目を閉じて迷った後、彼女の言葉に納得して渋々怒りを引っ込めるのであった。

 

 

「・・・はぁ〜、しょうがないな〜。分かったよ。その代わり、その約束忘れないでね?」

 

「はい、十分承知していますよ。」

 

 

 何を言ったのかは分からないが、何とかミカの機嫌をマイナスからゼロ手前くらいまで戻すことが出来たリンデ。セイアは内心で「相変わらずミカの扱いが上手いな」と感心していたが、以前の失敗から口に出すことはしなかった。一方のナギサはというと、どうやってミカを落ち着かせたのかとリンデへ視線を送ったが、リンデは少し微笑むだけで答えなかった為、内に湧き上がる疑念や不満は一旦飲み込み、リンデの言った通りに議題の方へと話を戻すのだった。

 

 

 

▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽

 

 

 

 はぁ~、もうリンデちゃんってば。「あとで好きなだけ甘やかしてあげますし、何でも一つだけ言う事を聞きますから」、なんて言っちゃってさ。そんな事言われたら、引っ込めるしかなくなるじゃんね。まぁあんな事言うって事は、少なくとも私が悪いとは思ってないんだろうけど。

 

 だいたい、何でそんな呼び方や話し方を使い分ける必要があるんだろう。そういう堅苦しいのが必要な時があるのは、分かってはいるけどさ。でも、私達はまだ子供で、『ティーパーティー』も『正実』も『トリニティ』にとっては大事だけど、私達にとっては別に、絶対必要なものってわけでもないし。友達と仲良くするのって、そんなにいけないことなのかな?

 

・・・なんかそう考えると、この『首長』って立場、面倒なしがらみとかが多いんだよね。『分派』のトップとしての振る舞いが〜とか、上司部下の関係が〜とか、立場がどうこうとか、ミカ様ミカ様ってチヤホヤしてくる所とか。まぁ、最後のは悪い気はしないんだけど、面倒だなと思うのは確かだし。

 

 私としては、リンデちゃんが側にいて、ナギちゃんやセイアちゃん、ヒフミちゃん、サクラコちゃん、ハスミちゃん、ツルギちゃん、カナギちゃん達がいてくれて、仲良くできればそれでいいの。極端な話、他の娘達なんて、リンデちゃん達の友達とかでもないならどうでもいいし、傷つこうが学校出ていこうが知らないというかさ。

 でも、この『首長』って立場だとそうもいかないんだよね。でも、そういうのが向いてそうな(って私が思ってる)リンデちゃんは「自分はそういう立場に向いてない」って言って断っちゃうし、逆に私の方が向いてるって言って推薦してくれたから、そのまま引き受けちゃったんだけどさ。

 

 

・・・何か、息苦しいな―――。

 

 

「ハァ・・・。」

 

「―――ミカさん、話も聞かずに溜め息をついて、どうしましたか?」

 

「へっ?」

 

 

―――あっ、いけない。そういえば今、ナギちゃん達と話し合いしてたんだった。えっと、何の話だっけ? ・・・ダメだ、自分のことばっか考えてて聞いてなかった。

 と、とりあえず謝ったほうがいい、よね?

 

 

「ごめん、話聞いてなくて。」

 

「ハァ・・・。ミカさん、しっかりしてください。もう私達は最高学年で、『ティーパーティー』の首長として、何より学園の顔として、『トリニティ』の生徒の規範とならなければいけないんです。先ほどのハスミさんに対する態度もそうですが、いつまでもそんな風に気を抜いた姿勢でいられては困ります。」

 

 

 呆れたように溜め息を吐き返して、またナギちゃんが説教を始めた。うぅ、確かに話し合いの最中に内容を聞いてなかったのは私が悪いけど、元はといえばナギちゃんがいきなり説教しだしたのが原因じゃんか。何で私ばっかり悪いみたいに言われなきゃならないの?

 

・・・なんかムカムカしてきた。ちょっと言い返さないと気がすまないかも。そう思って口を開きかけると、リンデちゃんがこちらを手で制しながら先にナギちゃんに物申していた。

 

 

「桐藤首長、今は聖園首長への説教より、会議を進めることの方が重要ではないですか? 聖園首長には、ここまでの経緯を私が伝えれば済む話のはずです。」

 

「リンデちゃん・・・。」

 

 

 ナギちゃんに物申すリンデちゃんの顔は、少しだけだけど眉間にシワが寄っていた。そして、私の方へチラリと視線を向けると、リンデちゃんは一瞬微笑んでから、表情を戻してナギちゃんへと視線を戻していた。

 

・・・もしかしてリンデちゃん、私が怒ってるのを察して、代わりに怒ってくれたの? そこまでお節介焼かなくても良かったのに。

 でも、さっきのもそうだけど。リンデちゃんが私の味方をしてくれてるって思うだけで、私の中で湧き上がってきていた黒い感情が、ちょっとずつ落ち着いていくのが分かった。流石は、私の『お日様』だね。こんな時でも、私の心を照らしてくれるんだもん。

 

 でも、リンデちゃんの言葉は、ナギちゃんには逆効果だったみたい。ナギちゃんも少し眉間にシワをよせると、今度は矛先をリンデちゃんへ向けて語気を強めて話し始めた。

 

 

「リンデさん! そうやってミカさんの態度を間接的に肯定しないでください! あなたがいつまでもそういう態度だから、ミカさんが反省しないんでしょう!」

 

「今、それとこれとは話が別です。ホストである百合園首長もいて、進めなければならない議題はこれだけでは無いんですよ。『エデン条約』の件だって残ってるのですから。」

 

「今はミカさんとあなたの態度について話してるんです! 話をすり替えないでください!」

 

「優先すべき事は聖園首長や私の事ではなく、会議の進行のはずです! あなたこそ、首長であるなら優先事項を履き違えないでください!」

 

 

 私達を置き去りに、リンデちゃんとナギちゃんの言い合いはヒートアップしていく。リンデちゃんは話し合いを円滑に進めるべきだとって言ってるのに、ナギちゃんは私やリンデちゃんの態度が気に入らないのか、そっちを優先しようとして、まるでリンデちゃんの話を聞いてないどころか、話をすり替えてるとか言い出しちゃってる。そのせいでリンデちゃんちゃんもさっきより少し怒ってるし。

 どうしよう。私、別に二人に喧嘩してほしかったわけじゃないのに。どうしたら・・・。

 

 白熱する二人に戸惑って、どうしたものかと悩んでいると、その助け舟は意外な所からやってきた。

 

 

「〜〜〜っ、いい加減に」

「ナギサ、落ち着き給え。今回ばかりはリンデ首長補佐が正しい。ミカへの説教はあとでリンデが言い含めておくと決着をつけたはずだが?」

 

「セイア、ちゃん?」

 

 

 唯一、今の言い合いを静観していたセイアちゃんが、ナギちゃんを諌めてくれていた。リンデちゃんもセイアちゃんが介入してきたからか、さっきまで出ていた怒った雰囲気をすぐにクールダウンさせて、落ち着いた表情でセイアちゃんの方を見ていた。

 

 あのセイアちゃんが、私やリンデちゃんの味方をしてくれた事に一瞬思考が追いつかなかったけど、ナギちゃんを諌める時に言ってくれた事からおおよそ言いたいことは分かった。セイアちゃんとしては、ただ無駄に時間を浪費するな、ってことなんだろうね。私の味方をしてくれたわけじゃないのかとガッカリしそうになった私だけど、でもセイアちゃんが私じゃなくてナギちゃんへ、こういう場で何かを言うのは珍しくて、少しだけ溜飲が下がった。

 

 ただ、ナギちゃんはまだ納得がいってないみたいで、セイアちゃんにも何か言おうとしたけど、セイアちゃんはそれも読んでたみたいで、牽制するように半目でナギちゃんの方を見ながら、冷静に割り込んだ。

 

 

「セイアさん?! ですが」

「気に入らないなら、あとで好きなだけやればいい。今は私もいるのだということを、忘れないでくれ。何なら、『ホスト』の権限を持ち出すことも吝かではないぞ?」

「っ、それ、は・・・。」

 

 

『ホスト』。

 それは、この『ティーパーティー』の首長から一定周期で交代しながら担当する、首長のリーダーみたいなもの、ってリンデちゃんが教えてくれた。進級前までは私が担当してて、今はセイアちゃんがその枠を引き継いでる感じ。交代しながら担当してるのは伝統もあるらしいけど、3人の首長から持ち回りでトップを決めて変える事で、バランスを保つのが目的なんだとか。

 

 で、この『ホスト』の権限は首長の権限よりも上で、簡単に言っちゃうとこの『トリニティ』で一番偉い人という事になる。つまり、割とやりたい放題出来ちゃう、ってこと。勿論、本当にそんな事したら他の二人から白い目で見られちゃうから、ある程度自制しないといけないんだけどさ。

 去年はそういう意味でけっこう大変だったなぁ。まだ上の学年も残ってたから、その辺も気を遣わないといけないってリンデちゃんに諭されてたから、あんまり好き放題出来た、って感じもないし。なのに仕事は進級してからよりも多かったせいで、あんまりいい思い出がないんだよね。次担当する時はもう上もいないから、今度こそ色々やりたいな、って考えてるけど。

 

 そんな『ホスト』としての権限をセイアちゃんが持ち出したからか、ナギちゃんは少し顔を顰めて迷うと、重苦しく息を吐きだしてから、リンデちゃんに謝ってくれた。

 

 

「・・・ハァ、分かりました。ごめんなさい、リンデさん。つい熱くなって、言い過ぎてしまいました。」

 

「いえ。こちらこそ申し訳ありません、桐藤首長。こちらも、少し言い過ぎました。」

 

「・・・では、この件はここまでだ。以後は会議後にしてくれ。ナギサ、会議の続きを。」

 

「分かりました。」

 

 

 あれだけ熱くなっていた空気を上手いこと纏めて、スムーズに話し合いの方へ流れを戻したセイアちゃん。・・・やっぱり、こういう所はリンデちゃんや私には真似できないかな。リンデちゃんも時々、私とナギちゃんがヒートアップしたら止めてくれるけど、大抵私側に偏るから平等じゃない、ってリンデちゃん自身言ってたし。リンデちゃんもその辺は自覚してるみたいだから、それを自然に出来るセイアちゃんの事褒めてたしね。普段小難しいことばっかり言うからなんかイラッてくる時あるけど、こういう所は素直にすごいなって思うよ。

 

 って、危ない危ない。また聞き逃すところだった。せっかく二人が止めてくれたんだから、ここからはちゃんとしないとね。

 

 




明日のいつもの時間にもう一話、可能なら明後日も一話投稿します。
ただ、明日の一話だけだと話はあまり進まないです。ご了承ください。


お気に入り登録316人、UA23944(投稿時点)と、更新しない間も順調に伸びていて、嬉しく思います。
もしお気に入り登録が500の大台にのれば、何か特別な話でも書こうかと考えておりますので、楽しみにしていてください。

また、以前アンケートをとりました主の手書き絵に関してですが、題材が決まらず難航しています。申し訳ありません。
出来次第、あらすじか最新話に挿入する予定ですので、こちらも気長にお待ち下さい。


感想・評価、ここすき、誤字・脱字報告お待ちしてます。 いつも通り、返せる分は返信しますので、よろしくお願いします。

それではまた次回!
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