聖槍に祈りを   作:坂本コウヤ

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はい、本編最新話です。

案の定遅れてしまいました。すみません。
あと、今回11000字超えと長いです。キリの良いところがなさそうだったので。

本家ブルアカでは。ちょっと前からビナーとの総力戦が始まりましたね。
筆者は今回、ようやくExtremeをクリアできるくらいにはなりました! INSANEはミカ以外がまだ育ち切ってないので難しそうですが、いつかクリアできるようになりたいですね。


というわけで本編です。どうぞ!


第二十一詩:『首長補佐』と情報整理②

 

「―――少しは落ち着きましたか、お二人とも?」

 

 

 お二人のじゃれ合いから少し経過した頃。

 私、桐藤ナギサの前には、先ほどまで会議中にも関わらずじゃれ合っていた私の大切な幼馴染にして世話の焼ける二人の親友、ミカさんとリンデさんが正座していました。

 

 

「・・・申し訳ありません。舌の根も乾かない内に、このような失態を2度もしてしまいました。」

「ごめんごめん♪ 照れてるリンデちゃんなんて滅多に見れないし。それに可愛かったからさ。ね?」

 

 

 リンデさんはいつもの凛とした姿とは真逆のしゅんと落ち込んだ姿勢で、本当に申し訳ないと思っているように見えました。ミカさんと違って、こういう反省すべき事はちゃんと言えばだいたいは伝わってくれるので、私としては助かっています。

 

 ですが、ミカさんに関しては謝ってこそいますが、反省の色がまるで見られません。確かに照れてるリンデさんはなかなか見れないレアな光景ですし、可愛いのにも全面的に同意します。ですが、それであなたの罪が軽くなる訳ではないのですよ? 分かっているのでしょうか? まぁ、おそらく分かってないでしょうから、とりあえずミカさんにはいつも通りロールケーキをぶち込んでおきます。このままだとまた茶々を入れられそうですし。

 

 

「モガッ!? ん、んんえ(な、なんで)?」

「寧ろ今ので、何故許されると思ったんだいミカ?」

 

「ミカ・・・。」

 

 

 セイアさんが正論を述べてる横で、複雑な表情をしているリンデさん。顔が少し赤らんでいる所から、おそらくミカさんに『可愛い』と言われて照れてる半面、ロールケーキをぶち込まれたミカさんに少し呆れてもいる、といった所でしょうか? ・・・ミカさんをダシにするようで申し訳ないですが、リンデさんのこのような表情を見れたなら、少し役得、って何を考えているのでしょうか私は!?

 

 いけません、桐藤ナギサ。そのような感情を抱いてはいけません。表に出すなど以ての外です。私は桐藤家の跡取りにして、『ティーパーティー』『フィリウス分派』の首長。いついかなる時も優雅で、冷静でなければなりません。このような事で心を乱されてはならないのです。ミカさんの甘言に惑わされてはなりませんよ。

 

・・・ふぅ〜。よし、落ち着きました。さて、ミカさんにはしばらくその状態で反省していただくとして、会議の続きを進めなければ。

 

 

「ゴホン。では、会議の続きといきましょう。セイアさん、構いませんね?」

 

「あぁ、頼む。ミカは放置でいいのかい?」

 

「しばらくそのままの姿勢で、反省していただきます。リンデさんには、ミカさんの代わりに参加してもらいます。よろしいですね?」

 

「は、はい。分かりました。」

 

 

 リンデさんの返事が少し歯切れが悪そうですが、ミカさんを心配しての事でしょうか?

 リンデさんのそういった優しさは美徳だとは思いますが、些かミカさんに対しては優しすぎるきらいがあります。そのせいでミカさんが増長し、困ったらリンデさんに甘えたがる悪癖が生まれている事に気づいているのでしょうか? 私だって、時にはあなたに―――っ、いけません。また余計な思考が。切り替えなくては。

 

 

「・・・では、会議を続けます。『ヘルメット団』による犯罪に関しては、ハスミさんからの報告やミカさん、リンデさんの現地で実際に遭遇した実体験の話から、規模としては大きいものの、組織としては烏合の衆といったように感じられました。その辺りはどうですか、リンデさん?」

 

「そうですね。確かに、先日の『カンカンヘルメット団』に関してだけに言及しますが、構成人数自体は多いように感じられましたが、個々人の戦闘力はリーダーも含めて、正直な所並以下でした。私と聖園首長がおらずとも、『正実』だけで十分制圧は可能だったように思います。」

 

「なるほど。・・・しかし、こうも連日犯罪が横行していて、その殆どが、いつの間にか規模が増えていた不良や『ヘルメット団』達による数頼みの犯罪ときている。一つ一つは大したことでもないが、規模が規模だ。こうなると、いったい何処からそれだけの資源を用意してきているのか、気になるね。」

 

「確か、先日の『プルプルヘルメット団』、でしたか? 彼女達も、規模自体は今回と同じくらい大きかったものの、その実態は同じく烏合の衆だったと伺っています。」

 

「その前の『マキマキヘルメット団』も同様ですね。今回と同じく、我ら『パテル分派』のメンバーが巻き込まれたと聞いていたので、良く覚えてます。」

 

 

 セイアさんの疑問に、先日までのことを思い返しながら、私とリンデさんがこれまでに起こった『ヘルメット団』絡みの話を挙げました。確かにここまで大人数の不良や問題児達を『正義実現委員会』が見逃してるとは考えにくいですし、セイアさんの仰る通り、それだけ規模を拡充、用意出来た理由が気になりますね。今のところ、『諜報部』からその手の話はこちらへ報告されてませんが、色々とトリニティ内部や分派絡みで外部と繋がりがあるリンデさんであれば、何か知ってるでしょうか?

 少し気になった私は、リンデさんに尋ねてみました。

 

 

「リンデさん、分派の方や他のトリニティの生徒、学園外部の方から、何かお話は聞いてませんか?」

「話、ですか。そうですね・・・。」

 

 

 リンデさんは少し考えこむような仕草を取って、しばらくすると、「少し推測が入りますが」と前置きをしてから再度話し始めました。

 

 

「現在『キヴォトス』中で起きている、不良や『ヘルメット団』達を中心とした問題児達による犯罪の増加。それと、先ほども挙がった違法銃器等の売買。同時に起きたこの二つに、私は作為的なの悪意を感じています。」

 

「作為的な悪意、ですか?」

 

「それはつまり、誰かがこの状況を意図的に生み出している、という事かい?」

 

「有り体に言えば、そうなりますね。」

 

 

 リンデさんの言葉に、少し思考を巡らせる。この状況を、誰かが望んで引き起こすとは私は思えないのですが、リンデさんは自身やミカさん、私を含めたリンデさんの友人に及ぶ『悪意』に敏感な方です。そのリンデさんがこう言うという事は、誰かが意図的に私達に害をなそうとしているという事に他なりません。そしてリンデさんの中で、その相手も特定できているという事なのでしょう。

 

 

「リンデさん、推測混じりでも構いません。今は一つでも多く、情報が欲しいです。この犯罪や売買の裏に誰がいると、リンデさんは考えているのですか?」

 

 

 リンデさんに尋ねながら、私は自分の中でも、今ある情報から答えを考えます。こういう場合、個人の推論に全て委ねていては、自分で考える力は身につきません。『ティーパーティー』の『首長』の一人として、何より私個人としても、そのような行いは到底許してはいけないことです。それに、持ちうる情報が同じであれば、推測から出る答えは自ずと重なるはずですし、そうでなければ考えの相違か、持ちうる情報に齟齬がある事が分かりますからね。

 

 さて、では私達に害をなすことで、得をするのは誰かを考えます。

 何処かの生徒の誰か、という事はないでしょう。これだけ同時多発的に、かつどの学区でも同様の事態が起きているのであれば、自分の学区に迷惑をかけることになりますし、自分も不利益を被ります。真っ当な生徒なら、まずあり得ない行動です。

 次に『ヘルメット団』に代表される不良生徒達。こちらは現在進行系で実際動いてはいますが、彼女達は本来、それぞれの学区からあぶれ、はみ出しものとなっている方々ばかりだと伺った事があります。中には経済的な事情から、そういった犯罪行為へ手を染めてしまい、引き返すことが出来なくなった生徒もいるという事ですし、であればこんな事を率先して主導するような余力はないはずです。

 

 となれば、残る可能性は自ずと限られてきます。「各学区を襲撃されても不利益を被らず」、「経済的な余力があって」、「なおかつこの状況に利益を見出すことの出来る存在」。私の中で、少しずつ『悪意』の正体が見え始めてきました。そしてそれはおそらく、リンデさんの考えるものと同じだと思います。

 

 

「・・・情報が不足しているので、明言は出来ませんが。おそらく『企業』、それも軍需産業を兼ねる事が出来る大企業が該当するかと。」

 

 

 やはり、思った通りリンデさんの考えは私とほぼ同じでした。この状況を嬉々として利用するとすれば、それは己の利益のためならばどんな汚い手でも使う、一部の悪徳な『企業』以外考えられません。そして、とりわけその中でも一つ、私の中で疑っている企業が一つあります。明言を避けたのは、リンデさんの中でまだ候補が絞りきれてないからか、もしくは何か他の理由があるからなのか。リンデさんの性格からして、おそらく前者だとは思いますが。

 

 

「それに該当しそうな『企業』となると、この『キヴォトス』ではかなり絞られるね。代表的なのは『カイザーコーポレーション』辺りが妥当かな?」

 

「そうですね。私も、裏にいるとすれば、きっと彼らだと思っています。」

 

 

 そんな、少し煮えきらないリンデさんの考えを補足するように、セイアさんも続いて発言しました。そして、セイアさんが代表的な候補として挙げてくださった『企業』こそ、私が最も疑っている『企業』でした。

 

『カイザーコーポレーション』。

 この『キヴォトス』における一大複合企業で、『自治権』を掲げる各学区の経済や産業の奥深くまで食い込んでいる、まさに『企業』側の最大勢力と言っても過言ではない大企業です。行っている事業も銀行にPMC、食品生産やリゾート経営等幅広く、現在の『キヴォトス』では見かけない事はほぼないと言っていいほど、その勢いは留まることを知りません。

 しかし、それだけ勢力を拡大できてはいますが、一方でその経営体制に関しては、「利益さえ上げられれば何でもやる」という、正に悪徳な『企業』そのもののような方針のようで、表ではクリーンな事業も展開していても、裏では略奪やマッチポンプによる暗躍など、後ろ暗い噂が絶えない『企業』でもあります。故に私は、今回の事件の裏にも彼らがいるのではないかと考え、セイアさんに同意しましたが。

 

 

「なるほど。・・・私も、今回の事件の影で暗躍するとしたら、彼らが最も可能性が高いとは感じています。しかし、現状裏にいるのが彼らだと立証出来そうな証拠がないんですよね。桐藤首長、『正実』の押収品の中に、そういったものはありませんでしたか?」

 

「残念ながら、そういった報告は受けてませんね」

 

 

 リンデさんからの質問に、私は首を横に振りました。そうです。推測を加味してここまで考えがほぼ一致するほどの答えに辿り着けていても、それを立証可能な証拠が、今我々の手元にありません。あくまで状況からこうでないかと推察はできても、そこから先に手を伸ばすことが出来ないのです。こればかりは少し、もどかしいですね。

 

 

「そうですか。・・・。」

 

「しかし、この状況を誰が喜ぶかといえば、彼らくらいだろう。例えば、『カイザー』であれば傘下に『カイザーPMC』に『カイザー銀行』、それに『カイザーローン』等もある。うまく立ち回られれば、我々を排除はできなくとも各学区の地力を削り、逆に彼らにこの『キヴォトス』での覇権を握られる、という事もあり得るだろうね。」

 

 

 リンデさんが少し難しそうな表情で頷いていると、セイアさんがさらなる懸念を口にしました。その懸念は私も一瞬抱いたものですが、学園都市であるこの『キヴォトス』においてそれを許してくれるかというと、その答えは「ノー」だと考え、その懸念に対して異を唱えました。

 

 

「ですが、いくら何でもそんな横暴、『連邦生徒会』が、何よりあの『連邦生徒会長』が許すとは思えません。必ず彼女達が―――」

 

 

―――と、ここまで発言した所で、リンデさんが徐ろに右手を上げたのが見えました。セイアさんも気づいたようで私達が揃って視線をリンデさんの方へ向けると、リンデさんは「話の腰を折ってしまい申し訳ないですが」と前置きした上で、とある噂について話し始めました。

 

 

「実は、その『連邦生徒会』、及び『連邦生徒会長』について、気になる噂が入ってきています。お二人の耳にも届いているかもしれませんが。」

 

「リンデさん?」

 

「気になる噂かい?」

 

「はい。近頃よく耳にするのですが、どうやら『連邦生徒会』がうまく機能していないようです。そしてその原因として、『連邦生徒会長』が失踪したのではないか、という噂がまことしやかに囁かれています。」

 

「あぁ、その話か。数日前くらいだったか、分派の一人がそんな噂を聞いたと報告してくれたね。」

 

「私もですね。以前であれば、『ヴァルキューレ』や『SRT』の生徒達が鎮圧に協力してくださっていましたが、最近は協力どころか連絡が途絶えていると、『正義実現委員会』から報告を受け取っています。」

 

「やはり、お二人の耳にも届いていましたか。」

 

 

 リンデさんが話してくださった、ある噂。それは、この学園都市『キヴォトス』の中心である『連邦生徒会』の機能不全と、その長たる『連邦生徒会長』の失踪について。

 

『連邦生徒会』の傘下には、治安維持を目的とした学園が二つ存在しています。それが『ヴァルキューレ警察学校』と『SRT特殊学園』です。

 

『ヴァルキューレ警察学校』は、『連邦生徒会』の『防衛室』管轄の警察組織で、特定の学区を持たない代わりに『キヴォトス』の様々な場所に拠点を設け、そこから治安活動を行っています。しかし、我々『キヴォトス』の学園には『自治権』が認められているため、単独での治安維持活動は行わず、それぞれの学区と連携して事に当たることが多いそうです。我が『トリニティ』であれば、『正義実現委員会』と連携する事が常ですね。

 

 そして、『SRT特殊学園』。こちらは『ヴァルキューレ』と違い、『連邦生徒会長』自らが主導して創設した経歴を持つ、異例の学園です。そのため、『連邦生徒会長』の権限で、他学区への例外的な介入が認められています。

 所属する生徒達は厳しい選抜試験や訓練を通過した方々ばかりで、以前リンデさん経由でお話伺った所、練度も士気も非常に高く、装備に関しても、『ヴァルキューレ』は予算の関係かあまり整っていないそうですが、こちらは最新式かつ『SRT』でしか扱えないような特殊なものまで揃えていると聞いていますので、『キヴォトス』が小さな小競り合いのようなものが一月に数回起きるかどうかのレベルで済んでいたのは、偏にこの学園のおかげというのもあるとの事だそうです。

 

 そんな2つの学園が変わらず存在しているにも関わらず、今の『キヴォトス』はどこもかしこも荒れに荒れています。これだけ大混乱に陥ってるのであれば、彼女達が動いていないとおかしいのですが、その形跡がないどころか連絡が途絶えていて、しかも『連邦生徒会』のお膝元たる『D.U.地区』ですら犯罪が罷り通っているとなると、その『連邦生徒会』自体が機能していないと見るのは自然なことです。

 

 では何故機能していないのか、と考えると、先ほどリンデさんがお話された『連邦生徒会長』の失踪、という噂に繋がるのだと思います。

 しかし、この噂を裏付ける証拠もまた状況証拠しかないため、あくまで噂の域を出ない、と私達は判断しています。何より彼女は、我々『トリニティ』と『ゲヘナ』双方の友好条約となりうる『エデン条約』を提案してくださった方です。そんな方が、途中でその責務を放棄するとは思えません。もっと言えば、信じたくないというのが本音です。

 

 しかし、リンデさんがわざわざ噂話でしかないその情報を持ち出した事には、何か理由があるはず。そう考えた私は、リンデさんに話の続きを促しました。

 

 

「リンデさん、続きをお願いします。」

 

「はい。『ヘルメット団』の裏にいるものも気になりますが、私は先にこの噂が本当かどうか。この際、一度確かめた方が良いかと思います。」

 

「と、いいますと?」

 

「連絡が途絶えている、のであれば、直接『連邦生徒会』へ行って話を聞くのが一番ではないか、と考えました。いかがでしょうか?」

 

「『連邦生徒会』へ誰かを派遣して、事の真相を確かめる、か。あてはあるのかい?」

 

「『正実』の羽川ハスミ副委員長が適任かと。人格も能力も信頼できますし、今のタイミングであれば、おそらく支障は無いと思います。」

 

 

 リンデさんが提案したのは、『連邦生徒会』への特使の派遣、そしてその特使として、ハスミさんを派遣するのはどうかというものでした。確かに、このまま水際対策を続けていても埒が明きませんし、『連邦生徒会』自体の現状を把握できれば、こちらの取れる手も変わってきます。そういう意味で、リンデさんの提案する特使を派遣するのは悪いことではなさそうです。

 セイアさんも「ふむ。」、と頷いている様子から、特に反対という訳ではないようです。であれば、この案は可決しても問題ないと判断した私は、リンデさんの提案を承諾しました。

 

 

「特に反対意見もないようですね。ではリンデさん。この件について、ハスミさんへ通達するよう、お願いします。」

 

「はい。責任をもって、通達させていただきます。念の為、剣先ツルギ委員長にも同じ内容をお伝えしますが、構いませんか?」

 

「えぇ、構いません。」

 

「むしろ、現場にとってはその方が混乱を招かなくて済むだろうね。頼んだよ。」

 

「分かりました。」

 

 

 よし、ひとまず打てる手は一つ打ちました。あとはハスミさんが情報を持ち帰ってくれるまではこれまでと変わらない対応を取るしかないですね。これで状況が少し変わるといいのですが。

 そういえば、もう一つリンデさんに確認しておかないといけないことがありました。

 

 

「リンデさん。先程の『企業』関係の話にも関係しますが、違法銃器等の売買に関して、そちらでも何か情報は入っていませんか?」

 

「違法銃器等の売買、ですか。」

 

 

 少し前に議題に上げた通り、今『キヴォトス』では不良や『ヘルメット団』を中心とした問題児達の犯罪に加えて、違法に取引されたり改造を施された銃器の売買が横行しています。こちらは『諜報部』と『パテル分派』の協同で捜査していただいてる案件なのですが、こちらに関しても『諜報部』からは芳しい成果が上がってきていないので、リンデさん達『パテル』の方で何か掴んでいないかと思い、尋ねてみました。

 リンデさんはこめかみに指を当てて少し考える仕草をとると、難しい顔をして返答してくれました。

 

 

「残念ながらそちらに関しても、我々でも足取りがまだ掴めきれていません。どうやら『トリニティ』の学区内ではなく、別の場所を経由して行われているようでして。」

 

「学区外か。となると、必然的に候補に上がるのは」

「他学区か、『ブラックマーケット』。そのどちらかですね。」

 

 

 リンデさんの返答に基づいて考えれば、必然的に候補はそのどちらかになります。前者であれば、その学区内の治安維持組織に問い合わせれば済む話ですが、後者の場合は少々面倒ですね。一応、手がない訳ではありませんが。

 

 

「モキュモキュモキュモキュ、ゴックン。ぷはぁ、久々にこんな大きいの突っ込まれたな〜。首痛〜い。」

 

 

 と、考えている間にミカさんがロールケーキを食べ終えて復活してきました。・・・少し長めのものをぶち込んだのですが、思ったより復帰が早かったですね。チッ。

 

 

「ん? ナギちゃん、今私に舌打ちしなかった?」

「気のせいです。」

 

 

 ミカさんもおかしな事を尋ねますね。『トリニティ』の『淑女』である私が舌打ちなんて、するはずがありません。いついかなる時も冷静さと優雅さ、気品を損ねるような事はいたしませんとも。えぇ。

 

 ミカさんが少し訝しめな視線を送ってきてますが、私が舌打ちをしたなどという事実はございません。リンデさんが苦笑しているのも、きっとミカさんの態度についてであって、私のことであるわけがありません。紅茶を一口飲みながらそう思っていると、ミカさんが首を振って元の席へと戻りながら、今の議題について確認していました。

 

 

「ん〜、まあいいや。で、今どういう話してるの?」

 

「違法銃器等の売買について、です。ほら、『事務方』や『諜報部』と協力して追ってる案件ですよ。」

 

 

 リンデさんから現在の議題の説明を受けると、少しぐで〜っとしながらミカさんがボヤきました。・・・会議中にその姿勢はどうなんですか? とも思いましたが、ミカさんがリンデさんにとある件について確認を取ってる間に注意のタイミングを逃してしまいました。

 

 

「あ〜、アレかぁ。確かちょっと行き詰まってるんだっけ? リンデちゃん、ヒフミちゃんと『ブラックマーケット』にいくやつ、そろそろじゃなかった?」

 

「確認しますね。・・・そろそろという程、近くはないです。2週間後ですね。」

 

「2週間後か。ん〜、ちょっと遠いね。早める?」

 

「そうしたいのは山々ですが、ヒフミの都合もありますから。正直に言って難しいかと。」

 

「そっか。じゃあ、しょうがないね。」

 

 

 ミカさんがリンデさんに確認したのは、リンデさんとヒフミさんによる『ブラックマーケット』への調査についてでした。

 あの件は色々あって承諾はしましたが、私としては今でも不安を感じています。私としては、リンデさんにもヒフミさんにも、あまり危ない事はしてほしくないのですが、ヒフミさんの思いを汲んだリンデさんたっての希望ですし。それにこちらが提示した条件をお二人ともきちんと守ってくれていますから、何も言えないのですよね。『諜報部』の方も、物言いはともかく助かってるとのことですから。

 

 しかし、やはり危険なものは危険だと思います。リンデさんは友人や後輩の事となると、我が身を顧みず何でもこなしてしまいますし、ヒフミさんも、その、あまり信じたくはないのですが、リンデさん曰く「『ペロロ様』が絡むとなりふり構わない」とのことですし。

 しかし去年度、ご一緒にお出かけさせていただいた際は、好きなものに囲まれてるのが嬉しくて舞い上がっているようには見受けられましたが、なりふり構わないという程ではなかったように感じました。やはり、リンデさんの考えすぎなのでは―――と、そこまで考えた所で、クイクイっと裾を引っ張られる感覚がしました。

 

 思考を止めて目線をそちらへ向けると、そこには少し呆れた表情のセイアさんがいて、自分がつい思考を内側に向け過ぎていた事に気づきました。正面に視線を戻すと、幸いリンデさんもミカさんもお互いに意識が向いていて気づいていないようでしたが、これではミカさんの事を言えません。反省しなくては。セイアさんには謝罪と感謝を述べるべきですね。

 

 

「すみません。ありがとうございます、セイアさん。」

 

「気をつけ給え。ミカに気づかれていたら面倒だったぞ?」

 

「・・・そうですね。」

 

「ん? どうしたのナギちゃん、セイアちゃん?」

「何かありましたか?」

 

「いえ、何でもありません。リンデさん、この件に関してですが、ひとまず2週間後の『ブラックマーケット』の調査の際、可能な範囲で調べていただいてもいいですか?」

 

「? 分かりました。ヒフミにもそうお伝えしておきます。」

 

「お願いします。」

 

 

 リンデさんは一瞬訝しみながらも、私のお願いに頷いてくれました。・・・気づかれて、ないですよね? いえ、気づいているなら指摘してくるはずですから、きっと大丈夫です。

 

 

「ん〜っ! とりあえず、今話し合いできそうな事って、これで全部?」

 

 

 違法銃器等の売買についても会議が終わった所で、伸びをしながらミカさんがそう尋ねてきました。どこかリラックスしてるその姿と態度から、「もう終わってもいいよね?」という雰囲気が漂っていましたが・・・。ミカさん、もう一つ重要な議題が残っている事を忘れていませんか?

 

 

「ミカさん、まだ『エデン条約』の件が残っていますよ。」

 

「え〜、あの『角付き』達と仲良くしよう、ってやつ? でもさっきリンデちゃんが教えてくれたけど、『生徒会長』さんいないんでしょ? 話し合っても意味なくない?」

 

 

 私が指摘すると、露骨に嫌そうな顔をしてぐで〜っ、と机に倒れ込みました。リンデさんの方へ視線を向けると、困ったような顔をして首を横に振って、ミカさんにどのような説明をしたか話してくれました。

 

 

「聖園首長には、『連邦生徒会長』が失踪したかもしれないとお伝えしただけです。いなくなったとまでは断言してません。」

 

「でもさ、今『連邦生徒会』のある『D.U.』の方も荒れてるんでしょ? 前にお出かけした時はそこそこ平和だったし、何かあっても『ヴァルキューレ』が動いてたじゃん。そうなってないって事は、そういう事じゃないの?」

 

 

 ミカさんの言葉に、リンデさんも私も言葉を詰まらせました。ミカさんはこういう時、たまにこういった論理をすっ飛ばした、直感にも似た鋭い指摘を飛ばしてくる事があります。普段の態度が態度なので見逃しがちですが、やはり彼女も『ティーパーティー』の首長としての素質は十分あるのですよね。本人は「リンデちゃんの方が向いてる」とよくいいますけど、こういう部分はリンデさんよりもミカさんの方が秀でてると、彼女も私も感じています。それもあって、リンデさんもミカさんに首長の立場を任せて、自分は補佐として支えることに徹しているのだと思います。

 

 しかし、困りましたね。ミカさんの言葉に反論しようにも、私だとまた喧嘩になりかねませんし、リンデさんでは絆されて会議にならなくなりそうですし。どういったものかと悩んでいたその時、セイアさんがすかさずフォローしてくれました。

 

 

「ミカ、だとしてもだ。せめて草案は纏めておかなければ、『連邦生徒会』や『ゲヘナ』の者達と話し合いも出来ないだろう? そのせいで向こうに優位な条件で結ばれたら、困るのは準備を怠った我々の方になり、それはひいてはここにいるナギサやリンデ、学園生のヒフミ達の不利益になりかねないよ。」

 

「セイアさん・・・。」

「セイア・・・。」

 

「うっ、それはまぁ、嫌かも。私は、別にリンデちゃんやナギちゃん、セイアちゃん、サクラコちゃんにヒフミちゃん、ツルギちゃん、ハスミちゃん、それと『事務方』の皆以外の他の娘がどうなったってどうでもいいけど、リンデちゃんやナギちゃん達にとっては違うよね。ごめん、二人とも。」

 

 

 セイアさんの言葉に、ミカさんが少し申し訳なさそうな表情をして、私達に謝罪してくれました。そんなミカさんの様子に、私は少し感慨深くなりました。

 

 今ミカさんが挙げてくれたのは、私やリンデさんを通じてミカさんと交流を深め、今では友人関係となっている方々の名前です。昔は私、リンデさんと出会ってからはリンデさんも含めた二人としか交流していなかった彼女に、これほど交友関係が広がった事が少しだけ嬉しいような、寂しいような、そんな気持ちが溢れてきて、気づけば暖かな眼差しをミカさんに送っていました。

 

 

「・・・な、何ナギちゃん? そんな顔で見ないでよ。居心地悪くなるじゃんね。」

 

「あぁ、ごめんなさい。気を悪くしたのでしたら謝ります。ですが、ミカさんも昔から少しは成長して、交友関係が増えた事が少し、嬉しかったもので。」

 

「ちょ!? ナギちゃんひどーい! 私だって頑張れば友達出来るんだよ! それにナギちゃんだって人の事言えないじゃんね!」

 

「なっ、そのような事は・・・。」

 

 

 ミカさんに指摘され、自分の交友関係を頭で思い返しました。ミカさん。リンデさん。セイアさん。ヒフミさん。それから、それから・・・。あ、あら? それだけ? あ、ありえません。そんなはずは・・・。

 

 

「ほら! 詰まる、って事は自覚ある、って事じゃんね!」

 

「ま、待ってください!・・・そ、そんな。ミカさんよりも私の方が少ないなんて、そんなはずは・・・。」

 

「『ティーパーティー』の仕事ばっかりでこの部屋から出てないから、禄に他の娘と交流ないんでしょ? やーいやーい、ナギちゃんのワーカーホリック。ぼっち首長〜。」

「少し黙っててください! 今思い出してるんですから!」

 

 

 ミカさんに煽られながら、必死に自分の交友関係を洗いなおす私。ですが、結局その日の内に思い出す事が出来ず、しばらくの間、ミカさんからその事で煽られる事となりました。

 




ナギちゃん、ミカより友人少ない説、あると思います。
異論は認めます。

・いい所出のご令嬢
・『ティーパーティー』の首長
・少し近寄りがたい雰囲気持ち
・規律や礼儀にうるさい

う〜ん、表向き持ってる属性が現実だと、友人としてお近づきにはなりにくいタイプ。
話したり交流してみるとそうでもないのは分かるんだろうけど。
先輩や上に立つものとしては適正高そうなのにね。


お気に入り登録者数328人、UA26500超えありがとうございます!
次回かその次の回には、本編も進展すると思いますので、これからも応援よろしくお願いします!


感想・評価、ここすき、誤字・脱字報告はいつでもお待ちしてます。いつも通り、感想は返せる分は返信しますので、よろしくお願いします。

それではまた次回!
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