聖槍に祈りを   作:坂本コウヤ

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遅くなりましたが、本編最新話です。
先日投稿しました『即売会』の後編はもう少しかかりそうです。あっちへこっちへ振り回してしまいますが、ご了承ください。

前回、アンケートの設定がズレてたせいで回答できない問題がありましたが、修正いたしました。
今話にも同じものがありますので、よろしければご協力よろしくお願いします。

今回は前回からの続きです。
不良生徒達とのイザコザにアビドスメンバーを(ほぼ原作通りに)巻き込んでしまったリンデ達。
果たして彼女達のゆくえは?

それと、勝手ですが『先生』に名前をつけました。
たぶん今後使う事は滅多にないかもしれませんが、自己紹介の際にないと違和感を感じたので、苦手な方はご注意ください。
あと、別にこれが自分のブルアカでのアカ名という訳ではないです。探してもたぶん関係ないプレイヤーが出るか、そもそも検索に引っかからないかのどっちかだと思うので、よろしくお願いします。


それではどうぞ!


第二十六詩:『異物(イレギュラー)』と『希望』の邂逅

「フッ。それ! やぁ!」

「グヘッ!」

「ゴハッ!」

「ギベァ!?」

 

 

『アビドス廃校対策委員会』の面々、そして『先生』と合流した事で、自身とヒフミを追いかけてきていた不良生徒達と戦闘を開始したリンデ達。

 リンデは今回閉所の路地裏という事もあってか、普段と違ってメインウェポンを『ロンギヌスの槍』から愛銃の『ex machina』に持ち替えており、不良生徒達の集団の中に飛び込むと体術も合わせて乱戦に持ち込んでいた。

 

 

「クソ、何だアイツ! アホみたいに強えぇ。」

 

 

 リンデの暴れっぷりを見ていた不良生徒の一人がそうぼやいて逃げ腰になるも、それを見ていた集団のリーダー格らしき不良生徒が、同じように逃げ腰になりかけている生徒達に向かってキレ気味に指示を飛ばしてリンデを包囲しようとしたのだが―――

 

 

「怯んでんじゃねぇ! 相手はたかがお嬢様一人だ! それにあれだけデケェんだ! 囲んで潰せば」

「『ペロロ様』、お願いします!」

 

 

―――そうは問屋がおろさない。リンデが飛び込むと同時に少し下がっていたヒフミが何やらディスクを取り出すと、それを集団のど真ん中目掛けてぶん投げた。すると、ぶん投げられたディスクから爆風とともに、カラフルなライトに当てられて光り輝く『ペロロ様』のホログラムが出現したのだ。

 これはヒフミの『神秘技能(EXスキル)』、『助けて、ペロロ様!』によって出現したもので、出現時に周囲の敵へダメージを与えながら自ら身体を張ってデコイと化してくれるという、とても頼もしいスキルとなっている。

 

 

『な、何だこのきm』

「ナイスアシストです、ヒフミ。ハァッ!」

『アバー!?』

 

 

 そんな見た目のインパクトも抜群な、突如出現した『ペロロ様』に集団の全員が気を取られてそちらへ銃を向けるも、ヒフミのスキル発動に合わせて跳躍していたリンデが直ぐ様『ロンギヌスの槍』を虚空から出現させると同時に衝撃波を放ったことで、瞬く間に自分達の側にいた不良生徒達を一掃してみせたのだった。

 

 

「ふぅ・・・。ヒフミ、助かりました。ありがとうございます。」

「いえいえ! こちらこそ、お力になれて良かったです!」

 

 

 リンデは槍を着地と同時に再び消滅させると、ヒフミに駆け寄ってお礼を言った。ヒフミはリンデにお礼を言われた事が少し嬉しかったのか、はにかみながら喜びの混じった声を返した。何処かの幼馴染兼『フィリウス』首長が見聞きしたら、脳破壊されるか嫉妬で狂いそうな光景であるが、幸いこれが彼女の目に触れたり聞こえたりすることはなかったので、そんな事態は起きなかった。―――閑話休題。

 

 

 

 

 

「―――いや、すごっ。何者よアイツら。」

 

 

 一方その頃、そんな二人の戦いぶりを偶然目にしてしまった一人の生徒が、手を止めてポロリとそんな言葉をこぼした。

 彼女の名は『黒見セリカ』。『アビドス高等学校』の1年生で、『アビドス廃校対策委員会』に参加した二人の新入生の内の一人だ。直情的で絵に描いたような『ツンデレ』タイプだが、根は素直でとても仲間思いな優しい少女である。また、憎まれ口を叩きながらも『アビドス』復興のために様々なバイトを掛け持ちしたりする献身的な面もあるものの、俗にいう『マルチ商法』に引っかかるような危うい純粋さも持ち合わせている可愛い一面もある。

 

 そんな彼女であるが、実は『アビドス』以外の学区の情報には割と疎い。これは他の『アビドス』の生徒達にも言えるのだが、彼女達は『とある事情』を抱えているため、そちらにかかりっきりで外界に目を向けている余裕がないからである。

 その為、他の学区であれば、特徴的な大きな翼や、一瞬だけ出現させた『ロンギヌスの槍』を目撃できていれば、リンデが何者か速攻で気づけるものなのだが、あいにく前述の理由でリンデの事を何も知らない彼女は、ただただその強さに驚愕していた。

 

 

〔す、すごい。あれだけの不良生徒を、一瞬で・・・。〕

 

 

 そんなセリカと同じように、リンデの戦いぶりに驚愕していたのは、セリカと同じく『アビドス廃校対策委員会』に所属する1年生『奥空アヤネ』であった。『アビドス廃校対策委員会』の唯一の良心とも言えるほど苦労人な彼女だが、『対策委員会』の中では後方支援を一人で担当しており、今日はドローン越しに行動を共にしていた。

 そして、自分達の先輩達や『先生』の様子を逐次確認して支援する傍ら、ふと後方の方を映すカメラへ視点を向けたのだが、セリカ同様リンデの無双ぶりに目を見開いていた。

 

 

「アヤネちゃん、アイツ何者よ? 只者じゃないでしょ、あんなの。」

 

〔ちょ、ちょっと待ってセリカちゃん。支援しながらだから流石に・・・。〕

 

 

 リンデが何者なのか気になったセリカは、アヤネに彼女が何者か確認していた。普段からオペレーターとして皆を支援できるよう、情報の収集等も行っているアヤネなら何か知っているかもしれないと判断して確認したのだが、如何せん複数の場所で戦闘しているのを支援しながら、リアルタイムで情報を引っ張り出すのは流石に時間がかかるようで、少し待ってほしいとお願いするアヤネ。すると、そこへ助け舟を出すように、二人と同じ『アビドス』の制服とマフラーを身につけた少女がセリカに声をかけてきた。

 

 

「ん、セリカ。サボってないでこっち手伝って。弾幕薄いよ。」

 

 

 声をかけてきたのは『砂狼シロコ』。『アビドス廃校対策委員会』所属の2年生で、セリカ達の先輩である。口数の少ないクールビューティーながらも芯はしっかりしている、ご存知『原作』の顔といっても良い存在であるが、その実裏で銀行強盗の計画を練るなど根っからのアウトロー気質だったりする。他の『アビドス』メンバーからも「もし他の学校に入学していたら何をやらかしていたか分からない」と言われるくらいには行動がぶっ飛んでいるが、前述の計画も先ほど話した『とある事情』を解消するための策の一つとして考えていただけ(?)で、普段の趣味はロードバイクやスポーツ等平和なものもあるため、余程の事情がなければ年相応の可愛らしい少女である。

 

 そのシロコだが、現在はアヤネの使用するドローンとはまた別のドローンを使って、最前線で戦う3年生の『小鳥遊ホシノ』と、ミニガンを乱射する同期の『十六夜ノノミ』を援護しながら、戦闘中にアヤネとお喋りしていたセリカを窘めていた。

 先輩のシロコに注意されて謝るセリカだったが、ただ駄弁っていた訳ではないのにサボり呼ばわりされたのが癪に障ったのか、いつものように反骨心剥き出しで言い返すのだった。

 

 

「っ、ごめんシロコ先輩! あと別にサボってたわけじゃないから! 情報収集よ、情報収集!」

 

「ん、そんなの後でいいから。とりあえず、目の前の敵を片付けるよ。」

 

「っ、分かってるわよ!」

 

 

 だが、いつものようにシロコにクールに流された挙げ句、分かりきった言われた事でセリカの反骨心が更に上昇してしまい、結局売り言葉に買い言葉で言い返しながら愛銃である『シンシアリティ』をぶっ放すのであった。

 

 

 

―――その後は、特に苦戦らしい苦戦も無く、途中から吹っ切れたセリカのお陰で無事に不良生徒達を全員撃退する事に成功するのだった。

 ただ、少し暴れすぎたせいで『ブラックマーケット』内の治安部隊である『マーケットガード』に目をつけられそうになったため、『原作』同様そそくさとその場から離れるリンデ達であった。

 

 

▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽

 

 

 

 ふぅ〜、危ない所でした! もし『マーケットガード』に捕まったなんてなったら、ナギサ様達に合わせる顔がありませんからね。何とか撒くことが出来てよかったです。

 

 あっ、どうも皆さん。阿慈谷ヒフミです。今私とリンデさんは、先ほど偶然路地裏で出会った人達と『マーケットガード』に追跡される前に場所を移して、改めて自己紹介をしている所です。

 

 

「では、改めまして。私は、『トリニティ総合学園』所属、3年生の『十郷リンデ』と申します。以後、お見知りおきを。」

 

「お、同じく! 『トリニティ総合学園』所属、2年生の『阿慈谷ヒフミ』です。よろしくお願いします!」

 

 

 リンデさんが丁寧な物腰で堂々と自己紹介をする傍ら、私は少し緊張しながらも、何とか自己紹介を終える事が出来ました。

 アハハ、やっぱりまだ慣れませんね、この自己紹介。『ティーパーティー』のお仕事を手伝う以上、最低限の作法は必要だと教えられて、リンデさんやナギサ様に仕込んでいただきましたが、一般家庭出身の『普通』の私じゃあ、まだまだリンデさん達みたいに上手くできません。リンデさんはそんな事ないと言ってくれますが、私自身が納得していないので、帰ったらまた教えてもらうことにしましょう。

 

 

「へぇ~、『トリニティ』の娘達なんだ〜。おじさんは『小鳥遊ホシノ』。『アビドス高等学校』の3年生だよ。よろしくね〜。」

 

「ん、同じく『アビドス高等学校』2年、『砂狼シロコ』。よろしく。」

 

「同じく、『アビドス高等学校』所属の2年生、『十六夜ノノミ』で〜す。よろしくお願いしますね☆」

 

「・・・『アビドス高等学校』所属、1年の『黒見セリカ』、です。ま、まぁよろしく。」

(年上、だったんだ。ヤバ、さっきの『アイツ』発言、聞かれてないわよね?)

 

 

 私達が自己紹介を終えると、先頭にいたミカ様に似たピンク髪の生徒さん、『小鳥遊ホシノ』さんを筆頭に、ケモミミ銀髪の『砂狼シロコ』さん、クリーム色ロングヘアーの『十六夜ノノミ』さん、猫耳黒髪ツインテールの『黒見セリカ』ちゃんが順に自己紹介をしてくれました。セリカちゃんにだけ、何故かつっけんどんな態度を取られていますが、警戒心が強い娘なんでしょうか?

 それにしても、制服を見てから薄々気づいていましたが、『アビドス』の人達だったんですね。でも確か、『アビドス』って今砂だらけで人がまともに住めないような場所になっていると聞いていたのですが、まだ生徒さんが残っていたんですね。『モモフレンズ』、もっと言えば、『ペロロ様』が好きな方とかいるんでしょうか? いるならお話してみたいですけど。

 

 そして、私達生徒同士での自己紹介を終えた所で、このメンバーの中で唯一の『大人』の女性の方と、その傍らに飛ぶドローンが一歩前へ出て自己紹介をしてくれました。

 

 

「初めまして。私は『永峰(ながみね)レイ』。『シャーレ』の顧問で、今は『ホシノ』達『アビドス』の皆を手伝ってるところなの。気軽に『先生』、って呼んでほしいかな。よろしくね。」

 

〔ドローン越しで失礼します。『アビドス高等学校』所属、1年生の『奥空アヤネ』と言います。よろしくお願いします。〕

 

「えぇ、よろしくお願いします。・・・そうですか。あなたが『先生』なのですね。以前、ハスミとスズミがお世話になりました。」

 

「ううん! 私の方こそ、二人には助けてもらっちゃったから。それにハスミや皆から聞いてたけど、本当に強いね!手伝った方がいいかなと思った時にはもう終わってたから、びっくりしちゃったよ。」

 

「いえいえ。今回はヒフミのサポートがあったからこそです。私一人では、もう少し時間が掛かっていましたよ。」

 

「そう?」

 

「えぇ。それに、あの程度鍛錬を重ねれば誰にでも熟せます。そちらにいる『アビドス』の3年生、『小鳥遊ホシノ』さんも相当な手練れのように見受けられますし、可能なのではないでしょうか?」

 

 

 互いに自己紹介を終えて、リンデさんが『先生』に歩み寄りながら手を差し出しました。すると、『先生』もリンデさんの手を取りながら、リンデさんの闘いぶりを称賛していました。実際、リンデさんは『トリニティ』の中でも上から数えた方が早いくらいには強いですからね。私のサポートが無くても、きっとどうにか出来たとは思います。

 でも、流石はリンデさんですね。自分の力だけではなくて、『普通』な私のサポートもあってのあの結果だと返していました。そんな事はないと思うんですけど、リンデさんはどれだけ強い力を持っていても、決してそれを誇示したりしないんですよね。寧ろ周りを持ち上げて、自分は大した事はないんだと謙遜するんです。人によっては嫌味に聞こえるかもしれませんが、私はそれもリンデさんの良さじゃないかなと思ってます。だって、それだけ私達の事、頼りにしてくれてる、って事じゃないかなと思うので。

 

 それにリンデさん自身、努力や鍛錬というのをずっと重ねていますからね。リンデさんにとっては、あれくらいは努力の賜物だから、頑張れば誰にでも出来ると答えて、向かいにいる『アビドス』の3年生の『小鳥遊ホシノ』さんの方へ顔を向けました。

 確かに、私達が不良生徒達を一掃して『先生』達の援護に向かおうとした時には、ホシノさんが最前線で盾とショットガンを片手にそれぞれ持って、大立ち回りしてましたね。空間の狭い路地裏であんな動きをするなんて、普段から慣れてないとなかなか難しいはずなのに、それを苦も無く熟してたところを見るに、きっとたくさん重ねてきたものがあるんだと思います。

 

 話を振られたホシノさんはというと、手を横に振りながらダルそうな感じでこう答えました。

 

 

「うへ~。期待してくれて悪いけど、おじさんには無理かな〜。若い娘みたいに、身体動かないよ〜。」

 

 

 ホシノさんの言葉に、私は困惑しました。

 お、おじさん? 3年生ってことは、リンデさんと同い年じゃないんですか? ほら、リンデさんも苦笑して、何か言いたそうにしてますし。

 

 そう思っていると、2年生の『砂狼シロコ』さんが補足を入れてくれました。

 

 

「ん。ホシノ先輩は普段よくお昼寝してるから、身体が基本鈍ってるの。だからやっぱり運動するべき。」

 

 

 なるほど、普段はあまりアクティブに動いてない方なんですね。でも、それであれだけ動けるって、凄くないですか? リンデさんに聞いたことありますけど、ショットガンって反動が凄くて片手で撃つのは難しいそうですし、あの盾はとても重そうな見た目でした。それをあんな軽々と使いこなすホシノさんって、もしかしてすごい努力家なのではないでしょうか?

 

 私がそう考えているのと裏腹に、シロコさんに運動する事を提案されたホシノさんはというと、ショックを受けたように泣きながら、あちらのもう一人の2年生の『十六夜ノノミ』さんに抱きついていました。

 

 

「うへ~、シロコちゃんはあっちの味方なの〜? おじさん悲しいな〜。よよよ〜、ノノミちゃ〜ん。」

「あ~、よしよし。ホシノ先輩は頑張ってますよ☆ 私達もいつも助かってますから。」

 

「えへへ~、やっぱりノノミちゃんは私の味方だ〜。ありがとね〜。」

 

 

 ノノミさんに撫でられ慰められたホシノさんは、トロンとした表情でノノミさんの胸元へ身体を預けていました。う~ん、何故でしょうか。この光景、すごく既視感があるんですけど。何処で見たんでしょうか。

 

 

「ちょっとホシノ先輩! こんなとこでノノミ先輩に抱きつかないで! だらしないじゃない! ノノミ先輩も甘やかさない!」

 

「えぇ~? いいじゃん別に〜。減るもんじゃないんだしさ〜。」

「そうですよ〜。あっ、セリカちゃんもどうですか? 私の『右側(こっち)』、空いてますよ〜☆」

 

「い、イヤよ! 恥ずかしいじゃない!」

 

「ん、ずるい。私も」

「やらないから!」

 

 

 私が既視感の正体を探っていると、残る『アビドス』の1年生の『黒見セリカ』ちゃんが顔を赤くしながら、ホシノさんとノノミさんに怒っていました。ですが、怒られたホシノさんは余計にノノミさんにギューっと抱き着いて、ノノミさんもノノミさんで逆にセリカちゃんも混ぜようとしてました。それが羨ましかったのか、シロコさんまで悪乗りして、セリカさんが余計に顔を真赤にしてしまいました。な、何だか収拾つかなくなってきた気が。リンデさん、どうしましょうか? と思ってそちらを見ると、リンデさんも少し苦笑していて、私の目線に気づいてこちらに顔を向けると、口元に右の人差し指を当てて、ウィンクしてきました。何か策がある感じでしょうか? リンデさんの事ですし、変な事にはなりませんよね。でしたら、お任せしちゃいましょうか。

 

 リンデさんは一歩前へ出ると、パンパンと手を叩いてこちらへ注目を集めると、よく通る声で話し始めました。

 

 

「仲が良いのはとても良いことですが、そこまでですよ。」

 

「なっ!? 何をどう見たらそうなる」

「まぁまぁセリカ、落ち着いて。ね?」

 

「うっ、『先生』・・・。」

 

「・・・続き、いいですか?」

 

「うん。ごめんね、遮っちゃって。」

 

「いえいえ。さて、まずは改めて謝罪を。今回は、こちらの面倒事に巻き込んでしまい、申し訳ありませんでした。」

 

 

 『アビドス』の人達と『先生』が聞ける体制になった所で、リンデさんはまず、さっきの不良生徒達とのゴタゴタに巻き込んでしまった事を謝罪しました。それに合わせて私も頭を下げると、ホシノさんが手をヒラヒラと振ってこう言いました。

 

 

「気にしないで〜。困った時はお互い様だし、荒事はおじさん達も慣れてるしさ。ただ、一つ聞かせてくれる?」

 

「何でしょうか?」

 

「『トリニティ』ってさ、確かお嬢様学校だったよね。そんな学校に所属してる娘達が、な〜んで『ブラックマーケット』なんかにいるのかな〜って。」

 

 

 さっきまでの気怠そうな態度は変えないまま、ただ、目だけは何かを見定めるように細めてこちらを見て、そう問いかけてくるホシノさん。その目から少し息が詰まりそうな気配を感じていると、さらにドローン越しにアヤネちゃんが、リンデさんの『役職』に言及しつつ、追及してきました。

 

 

〔そうですね。それも、あなたのような重役の方が、何故わざわざ顔を出しているのでしょうか? 『トリニティ総合学園』『ティーパーティー・パテル分派』所属、『首長補佐』の『十郷リンデ』さん。〕

 

「・・・優秀なオペレーターですね。将来有望そうです。」

 

 

 自分の『役職』を看破されたリンデさんでしたが、少し間を空けてアヤネちゃんの事を褒めていました。人によっては間のせいで皮肉に聞こえる事もあるそうですが、これはリンデさんなりの褒め言葉だそうです。間が空いてしまうのは、『首長補佐』としての自分に切り替える為だそうでして。

 

 幸い、今回は素直に褒め言葉と思ってもらえたのか、ホシノさんが変わらない態度でリンデさんに答えていました。

 

 

「自慢の後輩だよ。おじさんにはもったいないくらい、ね。」

 

「そんな事はないと思いますが、まあ深くは聞きません。重要な事でもないですから。」

 

 

 ホシノさんの態度に苦笑しつつ、重要な事でもないからと一度流して、リンデさんは一度言葉を区切りました。そして、一度『アビドス』の人達と『先生』を見回すと、再度口を開きました。

 

 

「私達が何故ここにいるのか、でしたね。そうですね、端的に言えば『仕事』の一環です。」

 

「『仕事』?」

 

「えぇ。」

 

 

 リンデさんはそこから、今『トリニティ』も含めた『キヴォトス』の各学区で、違法銃器等の売買が横行している件について改めて説明した上で、自分達はその出所の調査の一環として、『ティーパーティー』から正式に要請を受けて『ブラックマーケット』へ足を運んでいると説明しました。まあ、本当はその前からずっとやってるんですけど、流石にそこまでの事情を他の学校に話す必要はないですよね。あとは『ペロロ様』の事も。

 

 

「なるほどね~。じゃあ、ヒフミちゃんも『ティーパーティー』の所属ってわけ?」

 

「いいえ。彼女は、『外部協力員』という形の一般生徒です。少し事情があって、私の『仕事』に協力してもらっているんです。」

 

 

 あっ、そこはあっさり明かしちゃうんですね。まあバラして不都合はないですし。

 リンデさんの言葉に続くように、私はお辞儀をしました。こういう事をしていると、何だか本当にリンデさんの『付き人』をやってるみたいで、『事務方』の人には羨ましがられそうですが。特に一人、クラスメイトというのもあって、心当たりがあるんですよね。アハハ。

 

 

「一般生徒の『外部協力員』? 人手が足りてない、って感じでもなさそうだけど。」

 

「すみません。これ以上は彼女の『プライベート』に関わるので、深く聞かないでいただけると助かります。まあ、彼女から話す分には別ですがね。」

 

 

 私の『プライベート』を尊重してか、自分からは話さないと言ってくれるリンデさん。まあ、『一緒に行動』でもしない限り、わざわざ話すこともないですしね。私としても助かります。

 

 ホシノさんは少し探るような視線をリンデさんに向けながら、とりあえず納得したように「ふ~ん。」と言いました。それをいつもの凛とした表情で受け流すと、今度はリンデさんが『アビドス』の方々に事情を尋ねました。

 

 

「さて。こちらの事情については一通り説明させていただきました。そちらの事情を伺ってもよろしいですか?」

 

「そうだね〜。こっちだけ一方的に聞いておいて、話さないのはフェアじゃないか。『先生』、アヤネちゃん。お願いしても良い?」

 

「うん、任せて。」

〔分かりました。〕

 

 

 リンデさんの問いかけに、ホシノさんに頼まれた『先生』が前へ出て、『アビドス』側のオペレーターで1年生の『奥空アヤネ』ちゃんと一緒に、『ブラックマーケット』を訪れた理由を話してくれました。

 

 それによると、先日『アビドス』へ『便利屋68』という、『ゲヘナ学園』の生徒の人達が違法に立ち上げた企業が襲撃をかけてきて、その人達が『ブラックマーケット』でも活動しているという事。そして、最近襲撃を掛けてきた『ヘルメット団』の人達が使用していた武器に使われている素材が、現在『ブラックマーケット』でしか取引されていないものという事。その2つの共通項として浮かび上がってきたここに、何らかの手掛かりがあるのではないかと疑って、この場所の調査に来たそうです。

 

 話を最後まで聞いたリンデさんは、顔を顰めながら、

 

 

「なるほど。銃器類だけかと思ってたのですが、その素材までもですか。これは、余計にきな臭くなってきましたね。」

 

 

と言いました。確かに、ここまで調査したり買い戻したりしてたのは、既に加工された後のものばかりですもんね。素材に関しては盲点でした。でも、そのお陰で余計にこの『ブラックマーケット』への疑念が増えましたから、これはいい収穫ですね。

 

 

〔こちらからお話できる事は、これで全てです。〕

「だね〜。ま、こっちもこっちで色々調べようとしてる、って感じかな。だいたいはそっちと同じだよ。」

 

 

 アヤネちゃんとホシノさんがそう締めくくると、リンデさんも納得したように軽く頷きました。すると、今度は『先生』が続けてこんな提案を投げかけてきました。

 

 

「ねぇ、二人とも。良かったらさ、私達と一緒に行動しない? 私達、まだこの『ブラックマーケット』には来たばかりで、右も左も分からなくて、何処を回ればいいのかも分からないの。それに、ここで会えたのも何かの縁かもしれないし、どうかな?」

 

「ふむ・・・。」

 

 

『先生』の提案に、何かを思案し始めるリンデさん。私達にとっても悪くない提案ですし、乗ること自体にデメリットは無い、というよりメリットしかなさそうです。リンデさんもそれは分かってそうですけど、それでも素直に頷かないのはたぶん、『首長補佐』としての『立場』から、でしょうか。

 リンデさんって、ミカ様の事が大大大好きで、普段プライベートではそんなミカ様と同じで『立場』なんて殆ど気にしていない感じなんですけど、仕事中はそんな普段の雰囲気とはまるで違って、公的な『立場』というものをすごく気になさるんですよね。『ブラックマーケット』内でもそれは基本的に変わらなくて、さっきみたいな荒事は例外として、それ以外では公人としての対応を心がけていたりします。まあ、その理由が『ティーパーティー』やミカ様に迷惑をかけたくないというものだそうですから、やっぱりリンデさんって、ミカ様の事が超大大大好きなんだと、心から思います。私にとっての『ペロロ様』が、リンデさんにとってのミカ様、なんでしょう。―――おっと、少し話が逸れちゃいました。

 

 とまあ、そんなリンデさんの慎重な態度を見て、ホシノさんが先生に軽い感じで声をかけて―――

 

 

「いや~、『先生』。それは流石に無理じゃ」

「分かりました、少々お待ち下さい。」

 

「あ、あれ〜?」

 

 

―――無理じゃないか、と言いかけた所で、リンデさんが徐ろにスマホを取り出しながらこう返しました。それに驚いてガクンっとなったホシノさんを尻目にリンデさんは『モモトーク』の通話機能を起動して、ある人に電話をかけました。

 

 

 

〔―――もっすも〜す。どうしたの、リンデちゃん?〕

 

「お疲れ様です、聖園首長。『首長補佐』の十郷です。大至急、

桐藤首長に繋げていただけますか?」

 

 そう、ミカ様に。

 




この小説の一番の壁:『立場』

な~んでこんな面倒くさい立場に・・・、設定したの俺だわ
(自業自得)

えー、というわけで。
これからもこういう原作とは違う、回りくどい展開が続くと思います。ご了承ください。

ただ、筆者は別に法律に詳しかったりする訳ではないです。
そもそも日本のルールがキヴォトスで適用されるわけもないでしょうし、他国のルールとか自分チンプンカンプンなので。
なのでその辺りがガバかったりすると思います。というか、これまでもそういう面はあったとは思いますが、雰囲気で読んでもらえれば助かります。
あくまで主軸は『リンデ』と『ミカ』の関係をメインにしたいので。まあ、現在進行中のブラックマーケット編ではミカ出番がないので、『ヒフミ』や対策委員会、『先生』との交流がメインになりますがね。

『先生』の名前の由来ですが、特にないです。
強いて言えば、下のレイという名前は、ソシャゲでよく使う名前の一部なのでそのまま、上の名前は雰囲気で決めたくらいです。
たぶん、この名前に出番があるとしたら『黒服』との会話か、『エデン条約編』で『ティーパーティー』と初対面する時くらいかなと思います。なので、今後も呼び方は『先生』で基本統一する予定です。ご理解の程、よろしくお願いします。


ヒフミはリンデがミカに好意を抱いているのを陰ながら理解しています。彼女もまた、ある意味『愛』に生きるものなので。
まあ、その『愛』の矢印が『ペロロ様』なんですけど(⁠;⁠^⁠ω⁠^⁠)
可愛い、と言われれば可愛いかな、とは思いますし、ふわふわしてそうなので抱き着き甲斐はありそうですが。


感想・評価、ここすき、誤字・脱字報告はいつでもお待ちしてます。いつも通り、感想は返せる分は返信しますので、よろしくお願いします。

それではまた次回!

見たい話は?

  • ミカ&サクラコとのお出かけ
  • リンデとハスミ+αと鉄パイプ
  • 『シスターフッド』との絡み
  • 『事務方』との日常
  • リンデとサクラコのお悩み相談
  • リンデのヒトカラ
  • 本編はよ
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