聖槍に祈りを   作:坂本コウヤ

40 / 48
久々の連日投稿です。何とか書けました!

今回、また少し話が動きます。が、何度も言及されてる『重大イベント』本番にはまだ突入しません。今回はまだ触りだけです。
まだナギちゃんを説得できてないのでね。

今更ですが、原作のセリフそのままの場所は少なめです。微妙に展開も弄ってますが、大筋は変わりませんので、ご了承ください。

あと、今回は前々回と同じくヒフミ視点です。
ミカほどではないですが、彼女も十分リンデに脳を焼かれてます。たぶん、ミカやナギサの次に脳焼かれてる気がしますw
セイア? 彼女はちょっと別枠なので。

それと、今回リンデの意外(?)な長所が見れる、かもです。ご期待ください。


それでは、どうぞ!


第二十八詩:『首長補佐』と『闇銀行』

 

 皆で鯛焼きに舌太鼓をうって休憩して、また調査を再開した私達ですが、休憩前とあまり変わらず収穫はありませんでした。

 

 

「・・・やっぱり、おかしいですよね。ここまで情報が出てこないなんて。」

 

「余程巧妙に足がつかないようにしている、という事だとは思いますが。はっきり言って異常ですね。」

 

 

 私が気になった違和感をリンデさんも感じていたみたいで、すぐに頷いてくれました。今までも何度か『ブラックマーケット』で調査する事自体はありましたけど、やっぱりここまで何も見つからないなんて事、過去には無かったはずです。ここまでやるのか、というのが本音ですね。

 

 でも、そんな事情を知らない『アビドス』の人達と『先生』は首を傾げていて、その疑問をシロコさんが代表して聞いてきました。

 

 

「そんなにおかしな事なの?」

 

「『ブラックマーケット』はその特性上、どんな悪行も罷り通る『無法地帯』の様相を呈しています。それなりの領分は存在しているとはいえ、ここではどの企業も開き直ってやりたい放題しているくらいですからね。」

 

「例えば、あの目の前の建物なんかもそうですよね。」

 

 

 シロコさんの疑問にリンデさんが答えていると、たまたま目の前に見えた大きな建物を私は指差しました。

 建物の外観はシンプルに大きな銀行、といった感じです。でも、その銀行から漏れる雰囲気には、明らかに普通の『銀行』とは違う異質な空気感が感じられて、リンデさんも顔を顰めていました。

 

 

「あれは?」

 

 

 私が指差した銀行が何なのか、今度は『先生』が質問しました。目の前の建物の情報を持ってるリンデさんと私は、それを全員に共有しました。

 

 

「『闇銀行』。『ブラックマーケット』で最大の銀行の一つで、情報によれば、『キヴォトス』での盗品の約15%はあそこに流れ込んでいるとの話もあります。」

 

「そ、そんなに?」

 

「はい。そして、あそこはこの『ブラックマーケット』における違法取引の巣窟でもあるそうなんです。」

 

「横領に強盗、誘拐だけでなく、その他様々な犯罪によって獲得した財貨を、違法な銃器類へと変換してまた他の犯罪に使う。そんな悪循環が、ここでは続いているのですよ。」

 

「・・・それって、銀行が犯罪を助長しているようなものじゃないですか。」

 

 

『闇銀行』を中心として起こっている負の循環について話すと、ノノミさんが悲しそうに顔を伏せてそう言いました。そんなノノミさんの様子にうっ、と言葉を詰まらせてしまいましたが、リンデさんはもう割り切っているのか、淡々と言葉を返していました。

 

 

「悲しい事ですが、それが事実です。残念ながら、『ブラックマーケット』ではどの組織も、大なり小なり後ろ暗いものを抱えているもの。銀行であっても例外ではない、というのが実情ですね。」

 

「そんな!? 『連邦生徒会』は何やってんのよ!」

 

「彼女達も彼女達で、現状『生徒会長』の捜索等で首が回ってないようです。それに元々管轄外なのもあって、一切の取り締まりが出来ていないのかと。」

 

 

 リンデさんの言葉に、セリカちゃんの怒りが軽く爆発しました。でもリンデさんの言う通り、『ブラックマーケット』は元々『連邦生徒会』の管轄外なんですよね。だからでしょうか、彼女達も積極的に取り締まるような事は、『連邦生徒会長』がいた頃からあまりしていませんでした。せいぜいが、やりすぎて『連邦生徒会長』に睨まれないようにしていたくらいで、内部における負の循環自体は、調査を始めた時から何も変わっていないんですよね。残念ですけど。

 

 私達の言葉を聞いたホシノさんは、気怠そうな表情の中に憂いを浮かべて呟きました。

 

 

「・・・現実は、思ってたより厳しいし黒いんだね。私達は『アビドス』の事で手一杯で、外のことなんて全然気にしてなかった・・・。」

 

 

 ホシノさんの言葉に、『アビドス』の人達も顔を俯かせたり、ホシノさんへ気遣うような視線を向けていました。ホシノさんは『アビドス』の中でも最年長の方ですから、今の話を聞いて、思う所があったんだとは思います。

 そんなホシノさんに、私もどう言葉をかけたものかと迷っていると、

 

 

「そんなものですよ。皆、自分の事に余裕がなければ、外の事なんて気にしません。内に憂慮すべき事項があるのなら、それを優先して片付けるのは、至極当然の事です。」

 

「っ、『首長補佐』ちゃん?」

 

「ですから、自分や自分のやってきた事を後悔したり、疑ったりしなくて大丈夫です。私には、あなたの葛藤を全て理解できる訳ではありません。ですがそれでも、その積み重ねの結果が、今あなたの周りにいるのですから。」

 

 

リンデさんが、さっきまでの淡々とした口調とは少し違う優しげな話し方で、ホシノさんの事を励ましていました。

 ホシノさんが周りを見ると、シロコさんは少しドヤ顔でサムズアップを、ノノミさんは笑顔で微笑んで、セリカちゃんは顔を赤くしてそっぽを向きつつ、目だけはホシノさんへ向けていました。

 そして『先生』もまた、ホシノさんに優しげな笑みを向けていて、そんな皆の表情や仕草を見て、ホシノさんの憂いも少しだけ晴れたように見えました。

 

 

「っ、優しいんだね。『首長補佐』ちゃんは。」

 

「そんなものではないですよ。私はその時々で、そうしたいと望んだ事をやっているだけですk、っ、全員隠れて・・・!」

 

 

 励まされたホシノさんがお礼を言うと、リンデさんはいつものように謙遜していましたが、何かに気づいたのか、突然私達に短く隠れるように言いました。

 

 

「? どうし」

〔皆さん、お取り込み中失礼します! そちらへ『武装した集団』が接近中です!〕

 

 

 いったいどうしたんだろうと尋ねかけた所で、今度はアヤネちゃんから『武装した集団』が接近してきているという知らせを受けて、私達は慌てて近くの路地裏に身を潜めました。そしてそのすぐ後、アヤネちゃんが教えてくれた『武装した集団』が次々と通り過ぎていくのを見送って一息つくと、ホシノさんがアヤネちゃんよりも先に気づいたリンデさんに話しかけました。

 

 

「・・・よく気づけたね。」

 

「幸い耳と目、特に耳はいいほうなので。」

 

 

 リンデさんから気づけた理由を聞いて、なるほどと思いました。

 そういえば、リンデさんって目や耳がいいと以前聞いたことがありました。特に耳の良さは、私達が気づきにくい音でも遠くから拾う事が出来るそうで、リンデさん曰く「『趣味』の延長」によるものとの事です。それでもすごいですけど。

 

 そんなリンデさんはというと、路地裏の陰から、先程通り過ぎていった集団の様子を窺っていました。リンデさんの後ろから私達も覗き込むと、そこにいたのは一台の車両。そして―――

 

 

「・・・あれは、『マーケットガード』ですか?」

 

 

―――さっき、私達が不良生徒達を撃退した際に追跡されかけた、『ブラックマーケット』の警備部隊、『マーケットガード』の人達でした。

 

 

「見た所、私達を探しに来たのとは別働隊のようです。あの雰囲気からして、あの車を護送しているのは間違いないみたいですが。」

 

〔っ、あれは・・・。〕

 

 

 リンデさんが『マーケットガード』の様子を見てそう呟き、もう少し様子を伺おうと顔を出しかけたその時でした。ドローン越しにアヤネちゃんが何かに気がついたのか、ドローンのカメラを操作していました。

 

 

「んよ? どったのアヤネちゃん?」

 

 

 緊張した声音のアヤネちゃんにホシノさんが尋ねると、アヤネちゃんはドローン越しでも緊張した面持ちをしてるのが伝わってくる口調で、ある事実を言いました。

 

 

〔・・・やっぱりそうです。『マーケットガード』が護送しているあの車は、今朝私達の元へ集金に来た、『カイザーローン』の現金輸送車です。〕

 

 

 その瞬間、アヤネちゃんが発した『ある組織』の名前を聞いた『アビドス』の人達の顔が、驚きに染まっていました。ですが、今ちょうど調べている『企業』に関係する、その『ある組織』の名前を聞いて、私はホシノさん達へと尋ねました。

 

 

「い、今『カイザーローン』って言いましたか? それに集金って。」

 

 

『カイザーローン』。

 私達が『ティーパーティー』からの要請で、今重点的に調べている『カイザーコーポレーション』の傘下企業の一つであり、暴利といってもいいくらいの利息で貸付を行っている、高利金融企業です。

 

 まさか、『アビドス』の人達が『カイザーローン』から借りているとは知らなかったので思わず声を上げてしまいましたが、それを聞いたアヤネちゃんはどう説明すべきかとあたふたしだしました。

 

 

〔あっ、その〕

「あ~、まあ隠しててもしょうがないか。たぶん『首長補佐』ちゃんは知ってると思うけど、『アビドス(うち)』借金してるんだよね。それの貸し先が『カイザーローン(あそこ)』なんだ。」

 

 

 しかし、それを遮る形でホシノさんが簡潔に事情を教えてくれました。口ぶりからして、リンデさんなら知ってると思っているような話し方だったのでそちらへ顔を向けると、リンデさんもあまり驚いた様子もなく「なるほど。」と頷いていました。それが示す答えは、おそらく一つです。

 

 

「リンデさん、知ってたんですか? 『アビドス』の人達が、借金をしている事を。」

 

「っ、えぇ。各自治区の情報は、『諜報部』を通じて我々の耳に入ります。それに『パテル』に属するものとしても、各自治区の経済事情は把握しておかなければなりませんから。」

 

 

 私が尋ねると、リンデさんは一瞬目を少し開いてから、『アビドス』の人達が借金をしている事を知っていた理由を教えてくれました。そして一呼吸置くと、隠していた事を謝ってくれました。

 

 

「ごめんなさい。ヒフミは立場上、『外部協力員』でしかないですから、教えるわけにもいかなかったのです。質問でしたら、後でいくらでも聞きます。なので今は、私が知っていたという事実だけを受け止めてくれませんか?」

 

 

 リンデさんはそう言って、私に向かって小さく頭を下げました。ただ、理由の説明だけでなく、隠していた事に対する謝罪までしてくれるとは思っていなかった私は、慌ててリンデさんに声をかけました。

 

 

「そ、そんな謝らないでくださいリンデさん。別に私、怒ってませんよ。確かに少し寂しい気持ちは感じましたけど、それも必要なことだと理解していますから。」

 

 

 こうしてリンデさんのお仕事を手伝う中で、『ティーパーティー』として、一般生徒においそれと話せない裏事情というものがあるというのは理解しています。私も『ティーパーティー』に所属していたら話は別なんでしょうけど、『普通』な私じゃ分不相応だとも分かってますから。

 

 だから、少し寂しい思いがあっても、それを理由にリンデさんに怒ったり、ましてや嫌ったりなんてしません。だってリンデさんは私にとって、初めてできた『モモフレンズ』友達で、ナギサ様と同じくらい憧れの先輩ですから。

 

 

「ヒフミ・・・。」

 

 

 怒るかもしれないと思っていたのか、リンデさんは意外そうな顔をしていました。アハハ、私ってそんなに怒りっぽいって思われてたんでしょうか? だとしたら、ちょっと心外ですよ? という気持ちを込めて、苦笑しながら首を傾げると、普段と変わらない優しい笑みを浮かべて、小さく「ありがとうございます。」と言ってくれました。

 

 

「あっ、車が『闇銀行』の前で止まりましたよ?」

 

 

 そんなやり取りをしていた、その時でした。

 ノノミさんが事態の変化を教えてくれた事で、私とリンデさんは視線を『闇銀行』の方へと向けました。すると、ちょうど『闇銀行』の前についた『カイザーローン』の現金輸送車から、誰かが降りてきていました。

 

 その人物を見たシロコさんが、表情を険しくしながらアヤネちゃんに確認しました。

 

 

「・・・待って。車から降りてきたのって。」

 

〔はい、間違いありません。毎月、私達の元へ利息を受け取りに来ている銀行員です。〕

 

 

 シロコさんから聞かれたアヤネちゃんも同じ事を考えていたのか、ノータイムで答えていました。他の『アビドス』の人達も気づいたのか、

 

「あっ、ホントですね。」

「何でアイツがここに・・・。」

 

と反応しました。毎月来ている、という事ですし、おそらく皆さん見慣れていたんでしょう。ホシノさんも少し、表情から気怠さが抜けて、キリリッとしてますし。ああいった表情もされるんですね。

 

 銀行員の方が降りてくると、それを見計らって『闇銀行』の方からも誰か出てきました。『闇銀行』の受取の方でしょうか? 何か話しているのは見えるんですけど、ここからだと聞き取れませんね。

 

 

「リンデさん。会話、聞き取れますか?」

 

 

 私がリンデさんにそう尋ねると、リンデさんは唇に人差し指をあてて、無言で「シーッ」と伝えてきました。どうやら尋ねる前にもう聞き取りしてくれていたみたいです。流石ですね。

 

 そうして、銀行員の方と受け取りの方の会話が終わるまでじっとしていると、聞き取り終えたリンデさんが口を開きました。

 

 

「聞き取れました。どうやらこのやり取り自体、今回だけでは無いみたいですね。『今月の集金』や『集金確認書類』への手短なやりとり等、見聞き出来る情報だけでも、常連なのは明らかです。」

 

 

 険しい表情でそう告げたリンデさんの言葉に、『アビドス』の方々が顔を顰めました。当然ですよね、だってそれが借金であっても、自分達が返していたものが悪い事に使われてるかもしれないとなれば、誰だって顔を顰めたくなります。

 

 そんな中、ホシノさんは冷静に、アヤネちゃんにまた別の事を尋ねていました。

 

 

「・・・アヤネちゃん。あの現金輸送車の走行ルートって、調べられる?」

 

〔少々お待ちください。〕

 

 

 ホシノさんから目の前の現金輸送車の走行ルートを調べるように頼まれたアヤネちゃんは、ドローン越しにハッキングしてすぐさま調べ始めました。でも、数秒経つと残念そうな声で話し始めました。

 

 

〔・・・ダメです。全てのデータをオフライン管理しているようで、まるでヒットしません。〕

 

「でしょうね。わざわざ『闇銀行』をこんな形で利用する位です。おそらく『アビドス』も含めて借金や利息で集金した分を、『闇銀行』での違法取引に利用しているのだと思います。そうすれば自分の懐は痛みませんからね。姑息ではありますが、自社の利益を考えれば合理的でもあるのが余計に質が悪いです。」

 

 

 アヤネちゃんの調査結果が空振りに終わると思っていたのか、リンデさんも推測を交えながら、そう付け足しました。それを聞いて、セリカちゃんが拳を握りしめながら声を荒げました。

 

 

「何よそれ。それじゃあ私達は、ただ犯罪組織に資金を提供してただけ、ってわけ!?」

 

「そんな、じゃあ返済を現金に限っていたのは・・・。」

 

「オフラインでの輸送や、横流しをしやすいようにするため、あえてその方法をとっていたのだと思いますよ。あくまで推測ですが。」

 

 

 セリカちゃんとは逆にショックを受けていたのはノノミさんでした。そのノノミさんの言葉を引き継ぐ形で、リンデさんが追加で推測を投げると、アヤネちゃんが慌ててそう決めつけるのは早いと制止を呼びかけ始めました。しかし―――

 

 

〔ま、待ってください! まだそうと決まったわけでは・・・。あの現金輸送車の動線が把握できないと、まだ確定は・・・。〕

「アヤネちゃんは悔しくないの!? 私達が頑張って、日々のやりくりに苦労して返した、返しきれるかも分からない借金がこんな形で利用されてたなんて!」

 

〔そ、それはそうだけど・・・。〕

 

 

―――アヤネちゃんと同期のセリカちゃんは、その言葉に反発してさらに怒りを爆発させてました。そんなセリカちゃんの怒り様にアヤネちゃんもたじたじになっていました。ど、どうしましょう。このままだと喧嘩に―――と、思っていたその時でした。

 

 

「・・・物的証拠を見つけるだけなら、一つありますよ。」

 

『〔えっ?〕』

 

 

 リンデさんが凛とした声で、そう告げました。

 最初は何を言っているんだろうと思いましたが、さっきリンデさんが聞き取りしていた中に、その答えがある事に気づきました。

 

 

「あっ! 『集金確認書類』ですか? でも」

「えぇ。問題はその『集金確認書類』があちらの手元にある、という事なんですよね。『闇銀行』に入ってしまった以上、正規の手段では手の出しようがありません。」

 

 

 そうなんです。物的証拠になり得る『集金確認書類』はすでに『闇銀行』の中です。そんなバレてはいけない大事な書類を、当事者である『アビドス』の方々に見せるとも思えませんし、ましてや赤の他人である私達二人なら尚更です。

 

 証拠のある場所は分かっているのに、手を出す事が出来ない。八方塞がりか、と諦めかけていると、突然シロコさんがリンデさんにこう尋ねました。

 

 

「・・・リンデ。正規の手段では、だよね?」

 

「っ、えぇ。それが何か?」

 

 

 シロコさんの尋ねてきた意図が読めないのか、首を傾げてそう返すリンデさん。

 シロコさんはリンデさんの返事を聞くと、少し考えてから頷いてこう言いました。

 

 

「ん。なら、他に方法はないよ。」

 

「えっ?」

 

 

 シロコさんが何を指して「他に方法はない」といったのか分からず、呆けた声が出ました。しかし、リンデさんはシロコさんの言いたい事が理解できたのか、顔を引き攣らせていました。

 

 

「・・・ちょっと待ってください。まさかとは思いますが。」

 

「えっ、リンデさん? 何でそんな顔を引き攣らせてるんですか?」

 

 

 リンデさんが顔を引き攣らせているのもよく分からず、さらに困惑する私。そんな私の困惑を余所に、シロコさんは『先生』やホシノさんにも話しかけました。

 

 

「『先生』、ホシノ先輩。ここはやっぱり、例の方法以外ない。やろう。」

 

「・・・あ~、『アレ』か。」

「『アレ』か〜。『アレ』なのか〜。」

 

 

『先生』とホシノさんは、シロコさんのいう『例の方法』というのが分かったのか、『先生』は天を仰いで、ホシノさんは呆れてるのかガクッと項垂れていました。すると、さっきまでショックを受けていたノノミさんもシロコさんの言っている事が分かったのか、パァッと顔を明るくしました。

 

 

「そうですね! あの方法なら☆」

 

「えっ、ちょっ、マジで言ってる!? まさかとは思うけど、私が思ってる『アレ』じゃないわよね?!」

 

 

 そんな中、リンデさんと同じように顔を引き攣らせていたのがセリカちゃんでした。リンデさんと同じで、シロコさんがやろうとしている事を理解は出来るけど理解したくない、といった感じの表情でしたが、そんなセリカちゃんの思いは届かなかったようで、シロコさんは先程ホシノさんにやった時以上のドヤ顔でサムズアップしていました。

 

 

「う、嘘でしょ!? 本気なの?!」

 

 

 シロコさんの態度から、やろうとしている事が半ば決定事項となっている事に絶叫するセリカちゃん。ですが、此処に至ってもまだ理解が及んでいなかった私は、

 

 

「あ、あのすみません! 本当に何するつもりですか? 皆目見当も―――」

「ヒフミ。先程『集金確認書類』の話をした時、私なんて言いましたか?」

 

 

―――つかない、と言おうとした所で、リンデさんにそう遮られたので、私はリンデさんがさっき言った事を反芻しながら口に出しました。

 

 

「えっ? えーっと、『闇銀行』に入ってしまったから、正規の手段じゃ、手の、出しよう、が・・・。」

 

 

 と、そこまで言って、ようやく気づきました。そう、手の出しようがないのは『正規の手段』をとった場合だけで、それはつまり裏を返せば、『そうでない手段』であれば手の出しようがある、ということでもあります。そして、『銀行』に対して行う『正規以外の手段』なんて、私の中では一つしか思いつきませんでした。

 

 

「気づきましたか?」

 

 

 そして、苦笑しながら私の方を見るリンデさんの顔を再度見て、ようやくシロコさん達がやろうとしている事が何なのか、確信して―――、再度また困惑しました。

 

 

「えっ? ちょっと、待ってください。本気で言ってるんですか、皆さん?」

 

 

 頭の中で浮かび上がった、あまりに突拍子のない、でもそれ以外なさそうなその『手段』を実行しようとしている事に戸惑い、考え直して欲しいという思いを込めて『アビドス』の人達や『先生』に視線を向けましたが、向けられたホシノさんはさっきまで呆れてたのから一転、伸びをして少し楽しげな笑みを浮かべ、シロコさんと『先生』は互いを見ながら、答え合わせをするように掛け合いを始めました。そして―――

 

 

「ん〜? マジもマジ、本気も本気だよ〜。」

 

「ん。この状況で取れる手段は、たった一つ。」

「すなわち―――」

 

「「『銀行』を襲う。」」

 

 

―――シロコさんと『先生』。二人が同時に告げたそれこそ、私が想像しつつも、当たって欲しくなかった手段でした。

 おそらく、リンデさんもこの『手段』に気づいたからこそ、顔が引き攣っていたんだと思います。

 

 

「ん、さすが先生。よくわかってる。」

 

「シロコが言い出したからね。そんな気はしたよ。」

 

 

 そんな私達の心情などお構いなしに、シロコさんは『先生』とハモった事を喜んで、そんなシロコさんに呆れながらも『先生』は笑顔を向けていました。

 それに、ホシノさんも含めた『アビドス』の人達も、この方法に反対する人はいないのか、何やら鞄の中をガサゴソと探し始めて、シロコさんに至ってはもう覆面を身に着けて準備万端、といった感じでした。

 

 こ、これはどうしたらいいのでしょう。こんな事、ナギサ様達にどう報告したら・・・。とにかく、リンデさんにもどう考えているのか聞かないと。

 

 

「そ、そんな銀行強盗だなんて・・・。そんな事したら、『ティーパーティー』どころか『トリニティ』の顔に泥を塗ってしまいます。どうしましょうか、リンデさん?」

 

「でも、そっちも情報が欲しいのは確かでしょ〜? 乗らない手は無いんじゃない?」

 

 

 私とホシノさんが顔を向けると、リンデさんは何か考えるように口元に折り曲げた指を当てる仕草をしていました。そして、目を閉じて深く息を吐きだすと、頭を振って困った顔で答えました。

 

 

「・・・これは流石に、私の裁量を超えてます。現場判断でやるとしても、限りなく黒に近い、何なら黒に等しいグレーゾーンです。『トリニティ』内であれば、逆にこの場で制圧すべきレベルの案件です。」

 

「っ、ですよね・・・。」

 

 

 リンデさんの答えに、そうですよねと納得する私。確かに、リンデさんは『トリニティ』では『異端児』なんて言われ方をされることもありますけど、あくまで『ルール』を重んじる方なんですよね。

『正実』の方との交流や共闘なんてその最たるものでしょうし、私のこのお手伝いにしても、『ルール』を破らない形で私が『ブラックマーケット』へ来れるようにとの配慮ですからね。まあ、後者はリンデさん曰く、「だいぶ無理筋なやり方でしたが」、とのことですけど。

 

 

「な、何よ? ここまで来て邪魔する気?」

 

 

 一方、セリカちゃんは邪魔をされると思ったからか、銃口をこちらに向けて威嚇していました。すると、リンデさんは右手を挙げて、再び話し始めました。

 

 

「いいえ。時間は惜しいですが、こちらとしても裁量を超えている以上、再度桐藤首長に判断を仰がねばなりません。なので、少し時間をください。こちらも、可能な限り説得はしてみましょう。」

 

 

 そう言いながら、スマホを再度取り出してロックを解除し、『モモトーク』を開いてナギサ様へと連絡を取ろうとするリンデさん。一方、まだ警戒しているのか銃を握りしめているセリカちゃんでしたが、それとは逆にリンデさんがナギサ様を説得する、つまり自分達を手伝ってくれると言った事に、シロコさんとノノミさんが少し心配そうな声を上げました。

 

 

「っ、いいの?」

「怒られませんか?」

 

「首長の性格的に怒るでしょうね。ですが、正直正規の手段だけでは手詰まりなのも事実です。それに、おそらく身元さえバレないようにすれば、おそらく許可は下りるかと。」

 

 

 そう言って、シロコさんとノノミさんに大丈夫だと伝えるように笑顔を浮かべるリンデさん。その顔を見て、ホシノさんはリンデさんに何か考えがあると察したのか、「ふ~ん。」とだけ言って、心配そうにしているシロコさんとノノミさん、それと警戒しているセリカちゃんへ、大丈夫、というように頷いていました。

 

 

「大丈夫、なんだよね?」

 

「えぇ、何とかしてみます。」

 

 

『先生』が皆を代表して再度確認しましたが、リンデさんの表情は変わらず笑顔のままでした。そのまま、通話ボタンを押してまたナギサ様へ通話しようとしたリンデさんでしたが、ふと何かを思い出したのか、「あっ」と声を上げてこちらへ視線を向けてきました。何かあったのでしょうか?

 

 

「そうだヒフミ。一つだけ、聞いておかないといけないことがありました。」

 

「? リンデ、さん?」

 

 

 リンデさんは自分の鞄を軽く探すと、あるものを取り出して、こう聞いてきました。

 

 

「―――『悪魔』の名を継ぐ勇気、ありますか?」

 

 

 そう言って差し出されたのは、いつかの時に見た気がする、目元を覆う形の、黒色の、悪魔のようなデザインの仮面でした。

 




???「悪魔と相乗りする勇気、あるかい?」


アニメ劇場版 風都探偵
仮面ライダースカルの肖像

11月8日から限定公開です。皆見に行こう!(ダイマ)


とまあ、いつかの話でパロってたのでもうご存知かもしれませんが、筆者は「仮面ライダー」大好きです。
平成1期は勿論、「W」〜「フォーゼ」、特に「フォーゼ」は当時弦太郎達と同学年だったのもあって、殊更印象に残ってます。
学生時代に彼らの話をリアルタイムで見れたことは、自分の中でも大切なの青春の1ページです。
まあ「友情のシルシ」をし合う仲には終ぞ恵まれませんでしたが(⁠ ̄⁠ヘ⁠ ̄⁠;⁠)

あ、勿論他の平成2期ライダーとか令和ライダーも好きです。
最近だと特にガッチャードが好きですね。
主題歌や挿入歌が本当に好きで。
特に主題歌は小説書いてた初期の頃(書き溜めしてた頃なので3月頃)に聞いて、「あっ、これブルアカにも合いそう」なんて思ったりもしてましたw
今でも聴きながら、脳内で色んな生徒が歌ってる想像をしてます。常連はうちのリンデとミカ、『補習授業部』です(⁠θ⁠‿⁠θ⁠)

リンデの視力と聴力に関してですが、視力は狙撃手のハスミほどではないものの、直感込みで2km先の物体の動きを正確に把握して、その動線に向かって槍を正確に投擲してぶち当てるくらいには目がいいです。
逆に聴力は3km先の音も正確に拾えて、集中すればそれ以上の距離でも難なく聞こえるレベルです。
TRPGなら目星7割くらいで、聞き耳の値がバグってる感じと思っていただければ幸いです。
ちなみに、数値に関してはだいぶアバウトな感じで設定してるので、この辺は雰囲気で楽しんでもらえると助かります。

何処かで書いたかもしれませんが、ヒフミにとってリンデは憧れの先輩の一人であり、初めての『モモフレンズ』友達です。そこに加えて、制限付きでも自分のやりたい事を後押ししてくれたというのも加点されているため、かなり脳が焼かれてます。
幸いなのは、リンデの矢印が自分ではなくミカに向いている事を早々に察してその分だけ身を引いているため、その引いてる分まだマシになっている、という事ですかね。
ちなみに『ティーパーティー』首長達やリンデとの比較ですが、

◯ミカ↔リンデ
リンデ:ミカの為ならこの身朽ちるとしても全てを捧げる
ミカ:リンデがいるなら何処までも
(例:仮にリンデが『トリニティ』から去っても勝手に付いてくるレベル。)

◯ナギサ↔リンデ
リンデ:帰るべき場所(本人には恥ずかしくていえない)
ナギサ:大事な幼馴染、だから心配。

◯セイア↔リンデ
リンデ:大切な友人
セイア:大切な友人

◯ヒフミ↔リンデ
リンデ:自慢の後輩(『ペロロ様』絡み以外)
ヒフミ:憧れの先輩兼『モモフレンズ』友達

こんな感じです。
実はセイアだけミカナギよりも距離がある感じ。まあ、友人関係になったのが高等部入ってからなのでね。
その割にヒフミと距離感が近いのは、ヒフミの人徳のなせる技なのかも。

今回、原作と違ってホシノがあっさり借金の事を話してますが、原作で『ティーパーティー』は『アビドス』の借金の件を知っている、というセリフがありましたので、それなら『ティーパーティー』関係者のリンデがいるなら隠してるよりはさっさと話してしまった方が話が早いかと判断した感じです。
ただ、今回は何処から借りてるか、という点に関しては情報が不足していた事にしています。じゃないと、今回の下りの半分くらいが茶番になってしまうのでね。全部知ってるのになんで聞いたし、となりかねませんし。

そして、皆さんお待ちかね「『銀行』を襲う」宣言!
原作と同じままでも良かったのですが、せっかくなので『先生』とのハモリで言ってもらいました。
そのせいで頭の「ん、」がちょっと離れてしまいましたが、許してください。

最後の仮面についてですが、これが前からチラチラ出てきてる秘策、という訳ではないです。
正確にはこれも秘策の一部、といった感じです。
果たして、リンデの秘策とは?
それはまた次回のお話にて。


感想・評価、ここすき、誤字・脱字報告はいつでもお待ちしてます。いつも通り、感想は返せる分は返信しますので、よろしくお願いします。

それではまた次回!

見たい話は?

  • ミカ&サクラコとのお出かけ
  • リンデとハスミ+αと鉄パイプ
  • 『シスターフッド』との絡み
  • 『事務方』との日常
  • リンデとサクラコのお悩み相談
  • リンデのヒトカラ
  • 本編はよ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。