何とか間に合ったので、投稿します!
気づけばこの作品も、先日投稿し始めて0.5周年、つまりハーフアニバーサリーを迎えている事に気付きました!
これも偏に、この作品を読んでくださる皆さんのおかげです!
これからも頑張って参りますので、どうか応援よろしくお願いします!
ちなみにですが、前回あとがきで言っていたガチャ結果ですが・・・、アイドルサクラコ様を一人当てるために天井まで回す事になりました( ̄ヘ ̄;)
一応、持ってない所で通常アルと『チーちゃん』ことチヒロが来てくれましたが、他がすり抜け多発・・・。
マリーの方も回してますが、今のところ望み薄と、今回はだいぶ下振れてます。
前回チサキをチケットで引いた皺寄せがここで来てしまうとはウゴゴゴ(*﹏*;)
さて、そんな事はともかく。
今回はいよいよ、皆さん大好きな『銀行強盗』回です。
当然ですが、原作通りの流れではないです。ご了承ください。
また、ついに皆さん大好き『彼女達』も本格参戦です!
果たしてどんな絡みを見せてくれるのか、こうご期待ということで。
前置きが長くなってしまいすみません。
イベントに関する感想もまたあとがきにて書いてますので、お暇な方は読んでみてください。
それでは、どうぞ!!
(・・・不味い。不味い事になったわ。)
『闇銀行』の窓口の一つ。
そこで、とある企業の長である少女が、悔しそうな表情を浮かべていた。
少女の名は『陸八魔アル』。赤いロングヘアの生えた後頭部に正面からだと髪飾りにも見える一対の角を生やし、普段は知的にキラリと光る黄金色の瞳を細めて余裕の笑みを浮かべつつ、白いYシャツの上から分厚いコートをマントのように肩に羽織っている、(外見上は)出来る仕事の女、という感じの少女である。
彼女は若干16歳ながら既に起業しており、『便利屋68』という独自の企業を立ち上げて、幼馴染や仲間達と築いて自立していた。といっても、本来アル及び『便利屋68』に属している社員達の所属は『ゲヘナ学院』であり、『ゲヘナ』では原則起業は校則で認められていないため、彼女達は立派なお尋ね者でもあったりする。―――閑話休題。
そんな彼女達であるが、実は先日大手の『企業』からとある大口の依頼を受けたのだが、その際にアルがいつも通り有り金を仕事につぎ込んでしまい、挙げ句その状態で依頼を達成出来なかったせいで、常日頃から困窮して火の車状態の財政が余計に圧迫されていた。
これに関しても、本来であれば手付金等でどうにか出来そうなのだが、「仕事のやり方には口出しさせないよう、依頼人から手付金を取らない」というアルの主義もあってそれすらなく、かといってバイトで稼ぐにも時間がないということで、『ブラックマーケット』の『闇銀行』で融資をしてもらえるよう、ここを訪れていたのだ。
ところが、受付後待てど暮らせど一向に銀行員が来ず、退屈のあまり社員である『浅黄ムツキ』、『鬼方カヨコ』、『伊草ハルカ』も寝てしまい*1、かれこれ6時間経った頃にようやく呼ばれる始末。そして、それだけ待たされたにも関わらず、返ってきた答えは「融資は難しい」という事。
これには流石のアルも納得がいかず抗議したものの、逆にもっと現実的に日雇いなどから始めた方がいいなどと言い返されてしまい、苛立ちから一瞬『闇銀行』を襲撃しようかという思考が過ったりもしたものの、冷静な部分が戦力差を分析して現実的でないと判断したため、すぐに頭が冷えた。
とはいえ、今のままでは現実問題としてお金が足りないのもまた事実。このまま融資を受けられないのでは、今の依頼を達成する事はほぼ不可能に近い。それはアル個人としても、『便利屋68』の『社長』『陸八魔アル』としても到底看過できなかった。が、何度もいうようにお金がないのではどうしようもない状況でもあった。
(こんな時、あのお方・・・、『ファウスト』様なら、どうするのかしら・・・。)
『真のアウトロー』になる。その『夢』と、今目の前にある現実の板挟みの中で、『夢』を志すきっかけとなった、あの鮮烈な光景を生み出した『大悪党』を思い浮かべるアル。その名の通り『悪魔』のような圧倒的な力でもって小悪党を打倒し、自らの力を見せつけその名を轟かせた、あのお方なら、どうしようもないこの状況をどう打開するのだろうか。
―――教えて欲しいと。縋るようなそんな思考が、アルの中を占めようとした、その時だった。
「っ、えっ? な、何?」
「っ、な、何だ!?」
突如、『闇銀行』内の照明が全て落ちた。否、照明だけでなく全ての『電子機器類』に異常が出たのか、案内板やその他明かりを発するものが、まるでいきなり「電源を落とされた」かのように沈黙したのだ。
「えっ、何々? 何事?」
「停電? 何でいきなり?」
「な、何ですか何ですか!? 何が起こったんですか!?」
急に窓等からの光以外が無くなったせいで、ムツキとカヨコは慌てて辺りを見渡し始めた。ただ、ハルカだけはいきなりの視界不良にパニックになっていて、近くにいたカヨコが落ち着くよう言った。
「落ち着いて、ハルカ。ただの停d、っ! 伏せて!」
そしてその直後、さらに事態は急転した。
突然バババババッ、と銃を乱射するような音と共に警備員達の悲鳴やら何かが壊れる音が聞こえ始めた。幸い、気配から事前に察知したカヨコが近くにいたメンバー全員に伏せるように言ったおかげで、『便利屋68』のメンバーには被害は無かったが、不意の急展開の連続にアルも軽くパニックになっていた。
「こ、今度は何よ!?」
「『社長』も落ち着いて! これはたぶん・・・。」
カヨコがアルを宥めていると、先程アル達の対応をしていたのとは別の銀行員が、受付の方へ向かって声を荒げていた。
「っ、何をしている! 早く非常電源に切り替え、おわぁ!」
「ごめんね〜、余計な事されると困るからさ。」
「電源の位置、警備の配置と人数。全部把握してる。余計な事はしないで。」
だか、そこへ「1」と書かれたピンク色の覆面の人物と、「2」と書かれた青色の覆面の人物が割り込んできて、指示を出そうとした銀行員を気絶させながら、銃を構えて威嚇してきた。その手際の良さに目を奪われたか恐怖したのか、沈黙が場を支配し始めていた。
そんな中、覆面をしている人物達の服装を見て、ムツキとカヨコはある事に気付いた。
「っ、あの娘達。」
「あれは、『アビドス』の・・・。何でこんな所に?」
そう。覆面をしている人物達が着ている服装は、先日自分達が依頼で襲撃をかけた『アビドス高等学校』の制服だった。しかも、覆面に収まりきらなかったのかピンクの覆面の人物は覆面と同じ色のロングヘアを後ろから出してしまってたり、青色の覆面の人物も獣耳を穴を開けて覆面から出してしまっていたりと、知ってる人が見れば隠す気があるのだろうかと目を疑ってしまう外見となっていた。
ただ、この場で彼の人物達を知っているのが『便利屋68』だけであったため、そういう意味では不幸中の幸いであった。
「て、敵ですか? 私がどうにかしましょうか?」
ムツキとカヨコの発言に、近くにいたハルカが反応した。『アビドス』という事は、自分達の依頼を達成するための障害である。それが今目の前にいるのなら、排除するのは自分の務めだと感じた故の発言だったが、それをカヨコが制止しようとして―――
「いや、待って。今は様子を、『社長』?」
―――何やら呆然とした表情で膝立ちしている自分達の『社長』に気がついた。
「アルちゃん? どったの?」
「あ、あれ、は・・・。」
ムツキが話しかけると、アルは震える声で『闇銀行』の入り口側を指差した。
疑問に思いながらそちらへ顔を向けると、そこに立っていたのは「3」と書かれた緑色の覆面を被り、クリーム色のセーターを羽織ったクリーム色のロングヘアやお団子部分を外に出してしまっている人物と、「4」と書かれた赤色の覆面を被り、特徴的な猫耳状に頭の部分が膨らんでツインテールの黒髪は外に出してしまっている人物。
そして、その二人を引き連れた、白い外套を纏った謎の人物であった。
「誰、アレ?」
「分からない。初めて見るかも。」
見覚えのある人物達と行動を共にする謎の人物に、警戒度を引き上げるムツキとカヨコ。
一方、銀行員達も含めた全員が動きを止めてこちらへ注目の目を向け始めたのを確認したピンク色の覆面と青色の覆面の両名は、顔だけ後ろの方を向いて件の人物に話しかけた。
「『ファウスト』様〜、制圧完了だよ〜。」
「ん、これでバッチリ。」
「ご苦労さまです『アイン』、『ツヴァイ』。」
覆面の人物達を、書かれた数字に対応した数字で呼んで労う外套の人物。背丈は『3』と書かれた覆面の人物―――呼び方を統一して『ドライ』と呼称する―――と同じ位に見えるが、そもそも身体をすっぽりと覆う程に大きな外套のせいで外見上の特徴はあまり参考にならず、さらに逆光を背にして頭から布を被っているせいで、顔や髪の特徴が余計に読み取りづらくなっていた。
労われた『アイン』と『ツヴァイ』が外套の人物の元へと戻って来ると、シーンッになった『闇銀行』に、外套の人物の声と思われる声が静かに響いた。
「さて諸君、初めまして。我が名は『ファウスト』。いずれこの『キヴォトス』の裏の支配者となる者です。」
響いた声は何処か機械的で、変声機で変更されたような、男性とも女性ともつかない声だった。しかし、表面上の丁寧な物腰とは裏腹に、その声はその場にいた殆どの者に畏怖の念を抱かせるものであった。
「『ファウスト』? 聞いたことある?」
そんな念とは無縁なカヨコは、同じく特に何も感じていなさそうなムツキに、外套の人物が名乗った『ファウスト』という名前に聞き覚えがないかと尋ねた。
「ん? ん〜? その名前、何かどっかで聞いた気が・・・。」
尋ねられたムツキはというと、何処かで聞いたことがあったのか、首を傾げながら何処で聞いたのか思い出そうした。が、それを遮るような呟き声が、彼女の耳に入ってきた。
「『ファウスト』、様・・・。」
「アルちゃん?」
「『社長』?」
「あ、アル様?」
声の主は、先程から膝立ちの体制のまま呆然としているアルだった。しかし、『ファウスト』の名を聞いた途端、その目は見開かれたと思うと、徐々にキラキラと輝き始め、表情もまるで、長年探し求めていた人と邂逅できたかのような歓喜の表情を浮かべ始めていた。
「間違いない・・・。『ファウスト』様。『ファウスト』様よ!」
「ど、どうしちゃったアルちゃん? 何か憧れの人みつけたみたいな顔してるけど。」
幼馴染で親友の急な豹変ぶりに困惑するムツキ。さっきまであれだけ困惑したり魂が抜けたような顔をしていたのと思ったら、いきなりこんな真逆のテンションへ振り切れだしたので、この困惑も宜なるかなと思われる。
一方、アルとは逆に驚愕からの否定へと思考が傾いたのは、先程アル達と話していた銀行員だった。彼は首を横にフルフルと振りながら、逆光を背にして立つ異質な存在を否定しようと言葉を発した。
「ファ、『ファウスト』、だと?! 馬鹿な・・・。あんなもの、ただの噂ではなかったのか・・・!」
「噂が真実かどうか等、今重要なことではないはずです。現に私がここに存在している事こそ、『ファウスト』の実在を証明している。違いますか?」
「くっ・・・!」
しかし、否定しようとしたその本人から正論を投げ返され、銀行員は悔しそうに呻く事しか出来なかった。そんな銀行員の反応をどうでもいいとでもいうように軽く一瞥すると、『ファウスト』は一方的に自らの要望を銀行員達に叩きつけてきた。
「さて、『闇銀行』の諸君。貴方達には至急、用意してもらいたいものがあります。『ツヴァイ』。」
『ファウスト』に声をかけられると、『ツヴァイ』は無言で受付の方へと歩み寄って、受付の机の上に鞄をドサッと置いた。その無言の威圧感に、受付にいた銀行員は「ひ、ヒィッ!?」と、恐怖を隠さずに怯え始めた。
『ファウスト』はそれを気にすることなく、用意してもらいたいものを伝えようとしたが、恐怖から正常な判断を下せなくなっていた銀行員はその言葉を聞く前に動いてしまった。
「先ほど、現金輸送車が一台到着していたはずです。それの」
「わ、分かりました! 何でも―――」
―――入れますと。そう言いかけたその時、受付の銀行員の耳にバァンッと言う発砲音が聞こえてきた。余計にビビりながら音の方へ顔を向けると、外套から右腕を出した『ファウスト』が、天井へ向けてを撃っていた。
再び訪れる静寂。その静寂の中、『ファウスト』は語気に少し圧を加えながら、再び話し始めた。
「人の話は最後まで聞きなさい。余計な事はしないで。先程到着した現金輸送車の「集金確認書類」のみを入れてください。もし余計な物を入れようとするなら、先程の鉛玉が貴方を貫くと思いなさい。」
「は、はいぃ! た、ただいま入れさせていただきます! ですから、ですから命だけは」
『ファウスト』の放つ圧に、恐怖のあまり命乞いをしながら、要望通りのものと一緒に現金まで机の上において入れ始めようとする受付の銀行員。すると、再び発砲音と共に銀行員の近くを素通りするような弾丸が『ファウスト』から放たれ、受付の銀行員は反射的に動きを止めてしまった。
『ファウスト』は、外套によって見えない目から冷ややかな視線を送りながら、さらに圧を込めて受付の銀行員へ言葉を投げた。
「余計な事はしないで、といったはずですが? 時間の無駄です。」
「は、はい・・・。」
もはや恐怖から来る怯えや震えすらもねじ伏せかねないような圧を前に、受付の銀行員は机の上に置いた現金の束のことなど忘れ、言われた通り『集金確認書類』のみを『ツヴァイ』の置いた鞄の中へとそそくさと入れた。この圧から、恐怖から一刻も早く逃れるために。
「い、入れました・・・。」
そして入れ終わった事を告げると同時に、自らへ向けられた圧と恐怖に耐えきれなくなった受付の銀行員は、意識を失って倒れた。しかし、そちらを一瞥すらすることなく、『ファウスト』は『ツヴァイ』に鞄の中身を確認するよう告げた。
「『ツヴァイ』、確認を。」
「・・・ん、大丈夫。書類以外は入ってないよ。」
鞄の中を確認して、現金の類が入っていないことを確かめた『ツヴァイ』。
それを把握すると、『ファウスト』は放っていた圧を霧散させて、再び『ツヴァイ』を労った。
「ご苦労さまです。ならば、ここでの目的は達しました。これ以上の願いは無用。では諸君、さらば!」
そして、目的は達したと言わんばかりに、マントを翻して覆面を被った『アビドス』の生徒達と共に、『闇銀行』から去っていくのであった。
あまりに鮮やかな手際。そして鮮烈な『銀行強盗』が目の前で繰り広げられた事で、その場にいた全員が騒然としていた。
そんな中、アルの近くにいた銀行員の一人が、ようやく事態を飲み込んだのか、慌てて『銀行ガード』のメンバーに指示を出していた。
「な、何をしている! 追え! 『マーケットガード』にも応援を呼べ!」
「りょ、了解!」
指示を受けた『銀行ガード』も、それに従って急いで『ファウスト』達を追い始め、一部のメンバーは『マーケットガード』の方にも応援を呼び始めた。
「うわぁ~、見事な手際だね。ねぇねぇ、今の間に火事場泥棒しちゃう?」
そんな『闇銀行』の連中が慌てて今の『銀行強盗』に対処しようとしている様子を横目に見ながら、ムツキが冗談が分かりづらい発言をし始めた。
「ハァ、今そんな事言ってる場合じゃ、っ、『社長』?」
それに溜め息を付きながら呆れてツッコむカヨコであったが、ふと自分達の『社長』であるアルの方を見た。すると、そこにはさっきまで歓喜の表情を浮かべていた顔は前髪に隠れてよく見えなくなっていて、肩をプルプルと震わせている彼女の姿があった。
「? アルちゃん?」
「あ、アル様? 大丈夫ですか?」
さっきまでとまた様子が変わった彼女に首を傾げるムツキと、心配するハルカ。ところが、しばらく肩を震わせていたアルの口から徐々に漏れるような笑い声が聞こえ始めてきた。
「ふ、フフッ、フフフフフ、アーッハッハッハッハッハ!」
やがて顔をガバっと上げると、アルは先程以上に歓喜の表情を浮かべて恍惚としながら、高笑いを上げた。
「しゃ、『社長』?」
「アル様が、アル様が壊れてしまいました・・・!」
急な高笑いに困惑を深めるカヨコと、あまりの事態にとうとうアルが壊れてしまったと言い出すハルカ。自分を救ってくれた相手に割と失礼な事を言っているのだか、実際アルが何の脈絡もなく笑い始めてしまったせいでもあるので、ある意味自業自得である。
そんなアルの奇行を少し困惑しながらも、ムツキは代表して笑い始めた理由を尋ねてみた。
「あ、アルちゃん? 急に笑いだしてどうしたの?」
「そう、そうなのね! まさか、こんな所で会えるなんて。あぁ、なんて運命なの!」
尋ねられたアルはそれに答えることなく、心から湧き出る喜びのままに喋り始めた。そして一呼吸置くと、アルは自身の仲間である『便利屋68』の三人に指示を下した。
「皆、追うわよ。あのお方を、『ファウスト』様を!」
「あ、アル様!?」
「えぇ〜? この状況で?」
急に指示を出されたハルカは驚愕から声が上ずり、ムツキも首を傾げて難色を示していた。まあ、いきなり予定外の指示を出された上に、その内容が知り合いと一緒にいた何処の馬の骨とも知れない謎の人物の追跡なのだから、納得できないのも理解は出来るが。
そんな中、他の二人に比べるとまだ冷静だったカヨコが、アルに『ファウスト』の事に関して尋ねた。
「『社長』。あの『ファウスト』の事、知ってるの?」
「えぇ。私が『アウトロー』を志すきっかけになった人よ。まさか、こんな所で会えるとは思わなかったけれど。」
「アル様の、憧れの人?」
アルは自分にとって『ファウスト』がどういう人物かを簡単に答えた。それを聞いたハルカは、無意識に『ファウスト』が去っていった方へ視線を向けてそう呟いていた。
ハルカにとって、アルとは自分を助けてくれた絶対的な存在。そのアルが憧れるほどの人物がいるなどとは露ほども思っておらず、ハルカは内心よく分からないという気持ちが湧いてきていた。
「あ~、何かそういえば、半年くらい前にそんな話してたっけ? えっ、アレがそうなの?」
その一方で、アルとは一番付き合いの長いムツキはというと、半年ほど前――まだ自分達が『便利屋68』を結成する前――に、アルからそんな話を聞いた事を今思い出していた。アルにとっては、あの時の思い出は鮮烈なものであったが、その現場を見ていないムツキからするとあまりそうでもなかったのか、今の今まで忘れていたようだった。
「えぇ。ってムツキ、あなた今の今まで忘れていたの?!」
「あ゛っ゛! あ、アハハ〜。ゴメンゴメン。『便利屋』結成してから色々あって、忘れてたんだって。許して〜。ね?」
「全く、あなたね〜・・・。」
その事に気づいてアルが指摘するも、ムツキはいつものように明るい笑顔を浮かべて、悪びれてるのか分からない口調で謝ると、呆れながらも仕方ないという感じでアルは頭を抱えていた。
そんな幼馴染同士の少し微笑ましい光景の中、アルに尋ねていたカヨコと蚊帳の外状態になってたハルカは件の『ファウスト』について考えていた。
「『社長』の、憧れ・・・。そんなヤツが、何で『アビドス』のメンバーと?」
「もしかして、『アビドス』の生徒さんなんでしょうか?」
「いや、それなら何で一人だけ格好が違うのかが分からない。何より銃を撃つとき一瞬だけ外套の中が見えたけど、『アビドス』の制服を着ているようには見えなかった。」
「では、『先生』でしょうか?」
「それも多分違う。明らかに背格好が合わないし、それに半年前に『社長』が見てるって事は、まず間違いなくその時には『キヴォトス』にいた人間じゃないと辻褄が合わない。」
現状で思いつく可能性をハルカが挙げては、それを根拠を持って否定していくカヨコ。しかし、カヨコの中でも正確な情報が今ひとつ欠けているせいか、色々な可能性を考えては脳内でそれを否定しての繰り返しになっていた。
(ハルカの言う通り、『アビドス』関係で思いつくのはその2つ。だけど、どちらも現状だと否定出来る根拠の方が大きいから、まずあり得ない。となると第三者、例えば『ブラックマーケット』内で知り合った、とかになるけど。あんな大仰な名乗りをする奴が、初見で『アビドス』に手を貸すなんてあるの? 正体にもよるけど、『アビドス』の娘達も特に脅されてるとかそういう感じでは無さそうだし・・・。じゃあいったい誰が―――)
「そ、そうですか。流石はカヨコ課長ですね。私なんて」
「ん〜? 二人とも何の話ししてるの?」
カヨコが黙って考えている内容には気づかず、またいつもの癖で自罰的な発言をしそうになっていたハルカであったが、そこにムツキがアルから一旦離れて会話に混ざってきた事で途中で遮られてしまい、最後まで言いきれなかった。
そしてカヨコはというと、急に混ざってきたムツキに少し目を向けると、軽く息を吐きだしてここまで話した事や考えていた事を話し始めた。
「―――あの『ファウスト』とかいうやつについての話だよ。何か、正体の一片でも掴めそうなら良かったんだけど。やっぱり情報が足りてないから、正直よく分からない、っていうのが、今の私の結論かな。」
「ふ~ん。」
「な、なるほど。」
カヨコの結論を聞いて、ムツキはさほど興味なさそうに、ハルカは逆に興味深そうに頷いていた。
しかし、そんな些末な事は関係ないとばかりに、彼女達の『社長』のアルは自信ありげにこう言ってのけた。
「フッ、正体なんて誰だって構わないわ。あの人が『便利屋68』に入ってくれれば、依頼の達成だって夢じゃないもの!」
「さ、流石ですアル様!」
自信満々なその笑顔と立ち居振る舞いに、まるで神様でも崇めるかのように感激するハルカ。それに気を良くして「フフン」とドヤ顔を見せるアルであったが、ここでアルがとある重大な情報を見逃している事に気付いたムツキとカヨコはコソコソと話し始めた。
「あれ? アルちゃんもしかして、一緒にいたの『アビドス』の娘達だって気づいてない?」
「たぶん憧れの人の事で、頭がいっぱいになってるのかもしれないね。どうする?」
そう、ムツキ達はこの襲撃が始まって彼らor彼女らが侵入してきた段階で、『ファウスト』以外の覆面を被ったメンバーが全員『アビドス』の生徒達であることに気づいていた。そして、彼女達が本来任務を達成するための標的も『アビドス』なのである。
つまり、正体はわからないにせよ、アルが引き入れようとしている相手は、現状敵側に与する存在と言っても過言ではなく、そんな人物が果たしてこちらに手を貸してくれるかというと、自分達のように『信頼』を第一としていふタイプであれば望み薄、といったところだと二人は思っていた。
それを踏まえて、先程の情報をアルに伝えるべきか。カヨコはムツキに尋ねてみたが、彼女の性格を知るカヨコは、この後の返答についてある程度予想がついていた。
「ん〜、面白そうだから、今はそのままにしとこ♪」
「・・・そう言うと思った。」
―――そして、案の定ムツキは面白そうだからと、この場で伝える事を放棄した。それが分かっていたため、カヨコもやれやれと首を振りながら同意するのだった。
「さぁ皆、行くわよ!」
そして、二人の間でそんな会話が行われているとは露知らないアルは、自信満々に号令を下して駆け出すのであった。
「はい! アル様!」
「はいは~い♪」
「了解。」
アルの号令に、ハルカは疑うことを知らなそうなキラキラした笑顔で、ムツキはいつも通りの気楽な笑顔で、カヨコは頭を掻きながら澄ました顔で、それぞれ頷いた。
そうして駆け出そうとしたムツキ達であったが、ふとその時ムツキは一人、受付の机の方へ目が向いた。
ムツキとしても、無意識で何か気になったのかもしれないが、その目が向いた先に見えたものへ、彼女は意識が吸い寄せられていた。
(ん? あれは・・・。)
「何してるのムツキ? 早く行くよ。」
そんなムツキに気がついたカヨコが呼びかけると、ムツキは一瞬ハッとなってカヨコ達の方を向いた。すると、アルは既に『闇銀行』を出たのか姿が見えなくなっていて、この場にはカヨコと、カヨコに呼び止められたのか、ムツキの方を見て不思議そうな表情をしてるハルカが残っていた。
ムツキは状況の確認と、今見たものを含めた色々な事を考えながら、笑顔でカヨコに謝った。そして―――
「あっ、ごめんカヨコちゃん。先行ってて。あとちょっとハルカちゃん借りるね〜。」
「は?」
「えっ? ちょっと、ムツキ室長?!」
―――なんと、カヨコに先に行くよう促しながら、急にハルカへ抱きついて受付の方へと向かい始めた。いきなりの行動にカヨコも呆気にとられ、ハルカに至ってはまたもパニックになり始めていた。
「いいからいいから☆ ほら、カヨコちゃんは先行って、アルちゃんを追って♪」
そんな二人の事などお構いなしに、再度カヨコへ先に行くよう促して、ムツキはずんずんとハルカを連れて歩いていく。そのムツキの後ろ姿を見ながら、何となく嫌な予感はしていたものの、アルを一人にする訳にもいかないため、一応形だけ釘を差して先に行くことにした。
「・・・ハァ。何する気か知らないけど、あんまり変なことしないでよ?」
「分かってるって〜♪」
「どうだか。じゃあ先行くよ。」
「オッケー♪」
カヨコはムツキとハルカを置いて、『闇銀行』から出てアルを追った。少し距離は開いてしまったが、これでもムツキの次くらいには付き合いが長いと自負しているカヨコは、アルの向かいそうな方向へ勘を頼りに追い始めるのであった。
「あ、あのムツキ室長? 私なんかを誘って、何をする気なんです?」
一方、巻き込まれたハルカはというと、ムツキに自分を頼ったのかの理由を尋ねた。すると、ムツキは「ん〜」と唇の下に人差し指をあてて上を見上げ、ニヤリと笑うと口を開き―――
「簡単に言うと、アルちゃんの役に立てることと〜、クフフ☆ い・や・が・ら・せ♪」
―――そう言って、小悪魔のような満面の笑みを浮かべた。
そして、そんなムツキにハルカはただ、不思議そうに首を傾げるのであった。
ムツキの『いやがらせ』とは?
そもそも『誰』に対する『いやがらせ』なのか?
それは先のお話のお楽しみということで。
というわけで、『便利屋68』ついに参戦です!
これで、現状リンデ達がこの
とはいえ、今後もネームドキャラは普通に出すと思いますので、これから楽しみにしていてください。
そして、ヒフミ版『ファウスト』も遂にお披露目です!
原作では、即興で生み出されたヒフミのみの固有名詞でしたが、今作ではリンデから『継承』される形で名乗ることになりました。
リンデ版『ファウスト』との主な違いは、当たり前ですが背丈。それと口調ですね。
初めは口調を合わせようかと思いましたが、ヒフミに『ゼロ』トレースは合わないなと感じた結果、普段のリンデに近いようで、圧を飛ばす際のみ命令口調になる、といった感じの話し方になりました。
ちなみに裏設定になりますが、アルちゃん実は口調に関して、最初違和感はあると感じたものの、憧れの存在に会えた喜びで少しハイになっちゃってるせいでスルーしてます。背丈は言わずもがな。まあそもそもあの時も遠目だったしね。(詳しくは第六詩裏の④参照)
また、今作では『覆面水着団(作中ではまだ名乗ってない)』メンバーの呼び方をそれぞれの覆面に書かれた数字のドイツ語読みにしてみました。原作通り色でも良かったんですけど、こっちの方が少しカッコいいかなと。
あと『ファウスト』もドイツ由来なので、親和性がありますしね。
気になるようなら変えますので、ご意見・ご感想お待ちしています。
さて、ここからはアイドルイベントのストーリーの感想を書いていきます。
少し長くなりますので、面倒な方はそのまま下にスクロールして飛ばしてください。
まず一言。
今回も最高でした!!
いや~、全編通してエモいのは勿論なんですけど、それ以上にサクラコ様にミネ団長、ナギちゃんとトップメンバーの行動がもう、ね。見ててマジで腹痛かったですwww
もう、何回「バカー!!」って叫んだかわかんないですwww
サクラコ様は表情と話し方のせいで誤解の嵐生みまくるし、ミネ団長は練習中の話し方とかアイドル衣装のデフォルト立ち絵の表情のせいか、別ゲーの『青薔薇』の『ギタリスト』ダブり始めるし。
というか2人とも、マイナスイメージの原因に自分が関わってると露程も思ってないのがねw
開幕のあそこ、ベッドの上で何回拳を打ち付けたかwww
おまけにまさか、あのナギちゃんが『ミカ』呼びする日が、ストーリーイベントとはいえ、原作で来るとは思わなかったです。
正直、あれ見てうちでもどっかの機会に呼ばせたいなと思いました。
ただ、ミカのストーリーのラスト台詞、あれ若干キレてない? 苦笑いしてたけど内心おこだったりしない? まああれだけ振り回された挙げ句、いつものナギちゃんの早とちりで、しかも自粛中で大人しくしてたのに無理やり引っ張り出されたとか、普通におこ案件だけど。
それでも、後日談で仲良く話す『ティーパーティー』のメンバーが見れたの、マジで良かったです。
あと、あのPVの絵画展、ナギちゃんの主催でやってたやつだったと分かって、お嬢様は規模が違うなと思いつつほっこりしてました。
それにミカが眠気堪えてたのは解釈一致なんだけど、まさかセイアもそっち側だとはおもいませんでした。
それで良いのか『サンクトゥス』首長。
で、今回のアイドルイベントのストーリーですが、ちょっとマジで、リンデも交えて本気で書きたいなと思ってます。
今回出てきたメンバー全員と繋がりがあるのは勿論なんですけど、何よりリンデの趣味である『歌』を最大限活かせそうなイベントだなと。
で、ついでにミカともデュエットとかさせたいな、と考えてます。ええ。
もう、本当にIF時空になろうがなんだろうが書こうと思ってますので、どうか楽しみにしててください!
お気に入り登録者数496名、UA約48400突破、ありがとうございます!
おかげさまで、あと少しで登録者数が500の大台を突破します!
こんなにも読んでもらえてる事が、もう本当に嬉しくて、毎日頑張って執筆し続けるモチベーションにつながっています。
これからも原作共々、応援よろしくお願いいたします!
そして前書きで書いた通り、この作品も遂にハーフアニバーサリー!
という事で、近々ハフバ記念の話も書こうと思ってます!どうか楽しみにしていてください!
感想・評価、ここすき、誤字・脱字報告お待ちしてます。 いつも通り、返せる分は返信しますので、よろしくお願いします。
それではまた次回!
見たい話は?
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ミカ&サクラコとのお出かけ
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リンデとハスミ+αと鉄パイプ
-
『シスターフッド』との絡み
-
『事務方』との日常
-
リンデとサクラコのお悩み相談
-
リンデのヒトカラ
-
本編はよ