聖槍に祈りを   作:坂本コウヤ

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連日投稿2話目です。ここからしばらく3話ほど連続した話になります。
一部シリアスも混ざってくるので、苦手な方はご注意ください。

また、作者はお茶会の作法のさの字も知らないド素人なので、だいぶ雰囲気で書いてます。よろしくお願いします。

それでは、どうぞ。


第二詩:『ティーパーティー』の『首長補佐』①

 

「リンデちゃん、アレは?」

 

「アレ? あ~、これですか? はい、どうぞ。あと、今月の決済分です。確認してください。」

 

「ん、ありがと。・・・ハァ〜、やっぱり面倒じゃない? これ。今からでも―――

「ミカ、これもナギサ達とのお茶会を憂いなく続けるために必要なのです。頑張りましょう。私も可能な限りサポートしますから。ね?」

―――む〜、そう言われたら強く出れないの、毎回知ってて言ってるよねリンデちゃん?」

 

「フフッ、さてどうでしょうか?」

 

 

 日が少し傾きだしたある日の放課後。

 リンデとミカは、『ティーパーティー』の『パテル分派』の本部で書類仕事に勤しんでいた。細々したものは分派の他のメンバーに任せているものの、毎月の通商費用の決済等に関しては、分派の長たるミカのサインが必要であるため、こうして2人で進めているのだ。『パテル分派』は『ティーパーティー』内における『暴』と『通商』を司る分派であり、他よりも支出の激しい分派でもある。言い方は悪いが『予算を好き放題使えてしまう』面もある為、行き過ぎた支出が起きないよう、分派の首長の承認が降りなければ出来ないようなシステムになっている。

 

 ちなみにミカが『パテル分派』の首長に祭り上げられた当初、「書類仕事なんて面倒な事ヤダ」とミカが人任せにしかけたのをリンデが待ったをかけ、リンデがミカを手伝う形でシステムの存続が可能となっているのが現状である。時々今みたいにミカが愚痴を零しているが、その度にリンデはナギサ達との『お茶会』を持ち出す事で軌道修正を行うようにしている。『ティーパーティー』とて財源が無限にあるわけではないし、何よりトップの見逃しで不正が発覚したら、そういった催しも行いづらくなる、というリンデの談に説き伏せられたミカは、渋々ながら今日も業務を遂行しているのだった。

 

 

「・・・うん、オッケー。これで全部かな?」

 

「はい。お疲れ様でした、ミカ。」

 

「お疲れ〜! ン゛〜、もうホント疲れた〜! リンデちゃん、だっこ〜。」

 

「もう、仕方ないですね。はい、どうぞ。」

 

 

 数分後、いくつかの決済確認と今日中に片付けるべき書類仕事を終わらせたミカは伸びを一つすると、リンデに抱っこを要求していた。リンデはそれに苦笑しながらも手で招くと、ミカは倒れ込むようにリンデの胸へと飛び込んだ。リンデも特に抵抗することなく受け入れ、飛び込んできたミカを抱きとめた。

 

 

「ありがと〜。・・・ハァ、面倒な仕事終わったら、この抱き心地を味合わないのとね〜。」

 

「すっかり蕩けてますね。でも毎度思いますが、私よりもナギサの方が抱き心地はいいと思いますよ。私、鍛えてるせいで見た目よりも筋肉質ですし。」

 

 

 仕事が終わってすっかり気が抜けたミカを抱きとめながら、リンデがそうこぼした。リンデとしては、昔から自らが持つ聖槍『ロンギヌスの槍』を使いこなすために幼い頃から鍛えてきたので、どちらかと言うと体は少し筋肉質よりな方だと自負していた。それは決して柔らかくないということではないのだが、あの『ザ・お嬢様』なナギサと比べると、きっとあちらの方が抱き心地はいいのではないかと考えていた。

 そう思ってミカに尋ねると、「ん〜」と唸ってから上目遣いでリンデを見ながら口を開いた。

 

 

「ナギちゃんだと、私がこうやってギューってやったら、折れちゃいそうなんだよね。抱き心地がいいのは間違いないんだけどね。」

 

「そ、そこまで貧弱ではない、と、思いますが。ナギサに怒られますよ?」

 

「それにさ。」

 

「はい?」

 

「私は、リンデちゃんだからいいんだ。なんて言えばいいのかな・・・。リンデちゃんに抱きついてると、お日様に包まれてるみたいですごくあったかくて、ポカポカして。不思議と、嫌なこととか忘れて、落ち着けるんだ。」

 

「ミカ・・・。」

 

 

 顔を少し赤らめながら言うミカに、愛おしさが込み上げてくると同時に、それ程思われてる事に少し嬉しくなったリンデ。同性ではあるが、リンデはミカを『一番星』と呼ぶほどに好いている。それは、ミカが前世で自らの『最推し』であったからと言うのもあるが、この世界に生まれ落ちてからの彼女との出会いが鮮烈であったためであり、それ故、彼女は『ミカ至上主義』と周りに言われる程の感情を抱いていた。―――最も、これが叶わぬ恋でもあるのだとリンデは分かっていた。自分には、その資格はないのだと。

 それでも、ミカと出会い『親友』となったあの日から、決してミカを1人にはしないと誓った。彼女の全てを愛し、護ろうと決意した。だから、この思いの全てを打ち明けられずとも、その欠片ほどの想いを伝える事にした。

 

 

「・・・ミカが私を『お日様』と呼ぶように、私にとっても、あなたは『太陽』だと思っています。いつだって私や皆を照らしてくれる『一番星』であり、どのような寒空でも暖めてくれる『太陽』であり、そして暗闇の夜の中でも燦然と輝く『月』のような人。それが、私にとっての『聖園ミカ』ですから。」

 

「うっ、相変わらず重いよリンデちゃん。ヤンデレみたいだよ?」

 

「あら、私は本気でそう思っているのですが。」

 

「だったら尚更重いよ! というか、私が『月』なら、それを輝かせる『太陽』はリンデちゃん以外有り得ないからね!」

 

「えっ? そ、そうでしょうか?」

 

「そうだよ! 何で自分の事になると自信ないの!?」

 

 

 リンデからの重い想いをぶつけられて面食らうも、直ぐ様反撃に乗り出すミカ。すると、思わぬ反撃をくらったからか、一瞬キョトンとすると、少し自信無さげに眉を下げるリンデ。そんなリンデの様子に納得出来ず、ミカはむくれてリンデの胸に顔をグリグリと押し付けた。そんなミカに申し訳なくなり、リンデは謝罪の言葉を口にした。

 

 

「・・・すみません、ミカ。」

 

「別に、謝ってほしい訳じゃないもん。ただ、自分の事になるとそうやって自信無くなるリンデちゃんが、嫌なだけで。」

 

「ミカ・・・。」

 

 

 ミカの言葉に、何ともいえない表情を浮かべるリンデ。転生してからここまで、リンデは自分と同じ姿をした『彼女』に恥じない生き方をしたいと考え過ごしている。もはや趣味の域に到達している日課の『祈りの時間』と『槍術訓練』などは、その最たる例である。が、それ以外の自分のことに関しては、どこまでいっても『彼女』の猿真似でしかないと感じているからか――それとも『彼女』という別人の演技をしていると考えているからか――、リンデは自分の事に自信が持てない一面があった。これでも、ミカと出会う前に比べれば幾分マシになっている(リンデ視点)のだが、ミカからするとまだ不満点が残る結果なのが現状だったりする。―――もっとも、ミカもミカで、幼馴染とはいえ何故ここまでリンデの事を気にしてしまうのか、内心理解が追いついておらずモヤモヤしてる為、気持ちを持て余してるのだが。

 

 とはいえ、リンデとてミカにこういう表情をしてほしくて自分の想いを伝えた訳では無い為、何とかこの少し重たい空気を払拭しようと口を開くも、上手く言葉が出ず―――結局ミカの頭をまた撫でる事にした。

 

 

「・・・この前もそうだけどさ。撫でれば私の機嫌が治ると思ってない?」

 

「っ。嫌、でしたか?」

 

「・・・別に、嫌とは言ってないじゃんね。」

 

 

 プクッとした表情は変わらないまま、リンデの撫でに身を任せるミカ。こうして抱き合ってる時、リンデはよくミカの頭を撫でる事がある。無意識にやってしまう事もあれば、こうしてミカの機嫌が治ってほしいと思った時に自然とやってしまうものであるようで、実際ミカの表情が気持ちよさそうなものに変化し始めてるのを見るに、成功はしてるのだろう。多用しすぎて、ミカ本人からも撫でれば大丈夫のように思ってないかと苦言を呈される事もあるが、結局そのまま身を任せてしまうあたり、撫でられ心地はいいのかもしれない。

 

 

 

 そのまま、今日はこのまま二人の世界で過ごしそうな空気だったものは、「コホンッ」という咳払いとともに霧散した。

 

 

「ミカさん、リンデさん。いつまでそうしているつもりですか?」

 

「・・・え、ナギちゃん?」

 

「・・・やはり気づいていなかったか。もう時間だよ、二人共。」

 

「セイアまで。えっ、待ってください。時間?」

 

 

 

 ミカとリンデが揃って、声の聞こえた方向――パテル分派本部首長室の部屋の入口に顔を向けると、そこには目を細めていい笑顔で笑っているナギサと、呆れた表情のセイアがいた。そして、二人して時計を見て、「あっ。」と声を漏らした。

 

 

「気づいたかい?」

 

「うっ、ごめん。もうそんな時間経ってたんだ。」

 

「申し訳ございません。私がもっと早く気づいていれば。」

 

 

 ジト目で見てくるセイアに、気まずそうに謝るミカとリンデ。実は、事務作業の後ナギサとセイアを交えてとある大事な案件について話し合う必要があったのだが、先程まで二人だけの世界を形成していたためかリンデもすっかり忘れており*1、平謝りするしか出来なかった。そんな二人に溜め息を吐きながら、ナギサが言葉を続ける。

 

 

「ハァ。いつもならリンデさんが5分前にはミカさんを引っ張ってくるのに、おかしいと思えば。お二人がその、そういう事をする間柄だというのは、重々承知はしてますが、その、もう少し、節度を持っていただかないと困ります。それに、私だって・・・。

「ナギサ。」

 

「っ、とにかく! 今後はきちんと、時間厳守でよろしくお願いします。もう少ししたら私達も最高学年なんですから、ちゃんと後輩の見本になるように―――」

 

「うぅ~、またナギちゃんのお説教だ〜。」

「ミカ。今回は全面的に私達が悪いので、仕方ありません。」

「それはそうなんだけどさ。また長くなるのかなと思うとね。」

「あ~、アハハ・・・。そうですね・・・。」

 

「―――聞いてますかお二人共!?」

 

 

 一瞬、何やら本音が漏れかけるも、セイアの呼び掛けで軌道修正して、説教を始めたナギサ。それに対して、ミカはリンデにもたれかかるようにして嫌そうに目をそらし、リンデも特にミカの態度に注意はせず、ただ全面的にこちらが悪いことだけはミカに小声で伝えた。当然ミカもそれは理解していたが、ナギサの説教は一旦ヒートアップすると止まらないという幼馴染としての経験則から、仕事終わりのこの状態で聞くのは嫌だなと憂鬱になり、リンデもそれを察して苦笑するしかなかった。

 そして、そんな二人の態度が気に障ったのかさらにヒートアップしかけた所で、セイアが待ったをかけた。

 

 

「ナギサ、その辺にしておきたまえ。ただでさえ時間が押しているんだ。リンデがいる以上、ミカとて理解しているさ。」

 

「セイアさん・・・。」

 

「む。セイアちゃんのその言い方、何かムカつくなぁ。ワザと煽ってる?」

 

「まぁまぁミカ。セイアも悪気があるわけじゃないんです。それにさっきも言った通り、今回は時間を守れなかった私達に否がありますから。ここは抑えたください。ね?」

 

「リンデちゃん・・・。ハァ、分かったよもう。」

 

「手慣れているね、相変わらず。」

 

「セイアも追加で燃料を投下しないでください。苦手な事務作業で、ミカも疲れているんです。」

 

「む、すまない。リンデを褒めたつもりだったのだが。」

 

「分かってます。ですからそれは素直に受け取りますが、ミカからすれば、私がいないと何もできない子供扱いされてるみたいなものですよ。」

 

「そういうものか。」

 

「そういうものなんです。」

 

 

 セイアの物言いにムカついてイライラを隠しもしないミカだったが、リンデの言葉で渋々引き下がった。その様子を素直に褒めたセイアだったが、リンデの言葉で無自覚にミカに燃料を投下してしまった事を知って、それ以上は踏み込まない事にした。実際、2人の会話中ミカを落ち着かせるためにリンデがミカを優しく抱きしめてまた撫でていたため爆発はしなかったものの、内心ミカの怒りはまた再燃しかけていた。

 なお、その様子を見てもう一人の幼馴染が少し羨ましそうにしていたのだが、見える範囲では上手いこと隠していた為、誰も気づかなかった模様。

 

 

「・・・とにかく。時間もそれなりに過ぎてしまっている。が、時間が押していようと、一部重要な案件もある。話し合うことは重要だろう。」

 

「そうですね。お待たせして申し訳ありませんが、今席を用意しますね。ミカ、少し離してもらっていいですか?」

 

 

 このままだとズルズル伸びてしまうと感じたセイアの一言で、今度こそ会議を始められる空気が作られたが、先程までリンデもミカもゆっくりしていたため、まだ二人が会議に参加できる席を用意できていなかった。そのため、この中で一番立場の低い首長補佐のリンデがセッティングのために一度ミカから離れようとしたのだが、ミカが駄々をこね始めた。

 

 

「え〜。このままじゃダメ?」

 

「気持ちは分かりますが、ナギサ達を立たせたままなのは、外聞もよくありませんし、会議の形態として不適切です。それに、逆の立場であれば嫌じゃないですか?」

 

「う〜、それは確かに・・・。」

「それと、後で可能な範囲で何でも付き合いますから。」

「っ、しょうがないなぁ。約束だからね。」

 

 

 実例と実利でもって、何とかミカを説得したリンデ。ミカが離れるとすぐに、テキパキと席のセッティングを始め、数分後には『お茶会』も兼ねたいつもの会議が出来る態勢が整っていた。

 

 

「いつも思うが、君がやる必要はないと思うのだがね。リンデ。」

 

「私が好きでやっているだけです。それに、何分うちは武闘派揃いでして。事務方だけは最低限どうにか出来ましたが、こちらの方面は未だ人材不足なんです。ご容赦を。」

 

「分派特有の、というものか。」

 

「難しいことですね。『パテル』が司るものを考えれば、仕方ないのかもしれませんが。」

 

「私達が入る前も、基本やれる人が適当にやってたみたいだしね。リンデちゃんが来てくれたお陰で、だいぶ変わったけどさ。ナギちゃんやセイアちゃんの方はどうなの?」

 

「機密もあるため詳しくは話せませんが、『フィリウス』だとここまで極端ではないですね。『サンクトゥス』も同じではないですか?」

 

「そうだね。うちも似たようなものだ。」

 

「・・・何かうちだけポロッと話したみたいになってない?」

 

「大丈夫ですよ、ミカ。補佐の仕事で、私もある程度他分派の内情はある程度把握しています。守秘義務から、詳しくは明かせませんが、もしもの場合はお任せを。」

 

「ふ〜ん、そっか。ならいいかな。そういう難しい事は任せたよ、リンデちゃん。」

 

「フフッ。はい、お任せを。」

 

 

 アイスブレイクに各分派の現状について、会話を重ねる4人。流石にナギサもセイアも首長としての自覚故に、おいそれとそれぞれの内情を詳らかには語らないが、リンデがある程度把握しているためか、ミカも多くは問わなかった。それに元来そういった小難しいやり取りは苦手(出来なくはない)なため、ミカはリンデに丸投げする事にした。リンデもミカを支える首長補佐としてそれを受け入れ、笑顔で頷いた。

 

 そんな互いのジャブを交わし合うアイスブレイクを終えると、徐ろにセイアが一息ついてから、口を開いた。

 

 

「さて。アイスブレイクもそこそこに、そろそろ始めようか。」

 

「えぇ。私達の『お茶会』を始めましょう。」

 

「オッケー☆」

「はい。」

 

 

 

*1
余談だがミカは事務仕事で完全に燃料切れを起こしていたため、遥か彼方に予定が飛んでいた模様




愛の重い女の子同士の百合は、お好きですか?
私は大好きです。

『ティーパーティー』の各分派(特にパテル)に関する話は作者のイメージが多分に含まれます。ただ、ミカのあの性格で事務作業を黙々とこなせるかと考えると、大概人任せにしててもおかしくないのかなと。
今作では、リンデにそこを支えて貰う形で頑張ってもらいます。周りに推されたからとはいえ、トップに立った以上やる事はやりましょう、という事です。
その代わり、オフではゲロ甘に甘やかす事で帳尻をとっています。リンデもミカを堪能できるので、Win-Winという訳です。

余談ですが、各首長とのオフ時の対応はこんなイメージです。

◯ミカ
抱き合いっ子&超絶スキンシップ
(吸い合うこともあるよ♡)

◯ナギサ
二人だけのお茶会&ナギサの愚痴大会

◯セイア
基本はお茶会、偶に耳モフモフ&セイア吸い
(セイアの調子がいい時限定)


あれ、ナギちゃんだけ何か距離感が(⁠;⁠^⁠ω⁠^⁠)
ま、ままえやろ(投げやり)

感想・評価、ここすき、誤字・脱字報告お待ちしてます。 いつも通り、返せる分は返信しますので、よろしくお願いします。

それではまた次回!
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