聖槍に祈りを   作:坂本コウヤ

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連日投稿4本目です。
書き貯め分はこれが最後なので、次話はちょっと空くと思います。なるべく早くあげます。

今回割とシリアス気味です。今作初トリモブ登場です。
ちなみにですが、トリモブ、というよりトリカスが筆者は大嫌いです。ミカの絆スト見た時、マジでブチギレそうになりました。

なので、登場する際は慈悲も容赦も全て捨てて、徹底的にへし折ります。アンチ・ヘイトタグの要素の大半はこれが占めるので、どうかご容赦ください。

なんで今その話をしてるかって? つまりそういう事です。

また、本作初の10000字近くの長文になってます。
読む際はその点もご注意ください。

それでは本編です。



第四詩:『ティーパーティー』の『首長補佐』③

 

 

(ふぅ、思ったより時間が掛かってしまいました。ミカもナギサも、待っていてくれてるでしょうか?)

 

 

『パテル分派』の首長室の片付けを終えて校舎から速歩きで出てきたリンデ。セイアと一触触発の状況に陥りかけたミカを宥めていた分、余分に時間がかかってしまったのが痛かったが、これもミカのためと思えば苦ではなく、むしろミカを余計に待たせてしまった事に申し訳無さがくるあたり、惚れた弱みなのだろうと、少し自分のミカに対する甘さを自嘲したくなった。

 

 そんなリンデだったが、ふと何かに気づいて歩みを止めると、前を見たまま何処か違うところに話しかけるように話し始めた。

 

 

「・・・いるのは分かっていますよ。出てきたらどうです? それとも冷やかしのつもりですか? どちらにせよ、急いでいるので用があるなら手短にしてほしいのですが。」

 

「っ、チッ。相変わらず感がいいのね、この腰巾着。」

 

 

 そう言って現れたのは、同じ『ティーパーティー』の格好をした『トリニティ』の生徒だった。リンデに対して嫌悪感を隠さないところを見るに、リンデのことを快く思ってないのは明白だったが、リンデはそんな生徒へ向き直ると、笑みを絶やさず言葉を返した。

 

 

「腰巾着とは、随分な言い様ですね。まぁ、ある程度自覚はありますが。」

 

「フン、だったら今すぐミカ様の隣から失せなさいよ。あなた如きがミカ様の隣にいるなんて、不愉快なのよ!『シスターフッド』の間者が!」

 

「間者、ですか。ハァ、まさかあの噂を真に受ける者がまだいたとは思いませんでした。サクラコとは旧知の仲だと『ティーパーティー』内で共有してもらってるはずですし、そもそも『祈祷』はトリニティでは伝統的な授業の一環としてカリキュラムに組み込まれていて、私達はそれをプライベートで共に行っているだけです。それを槍玉に裏切り者扱いされるのは、私だけでなくサクラコや、他の『シスターフッド』の方々にも迷惑がかかると理解できませんか?」

 

 

 一般『ティーパーティー』生徒の物言いに少しだけ怒りを募らせながら、呆れたようにそう尋ねるリンデ。なお、表情自体は笑顔から少しだけ困った笑みになったくらいで、それが癪に障ったのか、一般『ティーパーティー』生徒は苛立ちを隠そうともせず反論した。

 

 

「っ、うるさい! 所詮『シスターフッド』など、我ら『ティーパーティー』に恐れをなして政治から逃げた臆病者達だ! そんな奴らに肩入れしてる時点で、お前も臆病者だ!」

 

「・・・ほう、臆病者、ですか。」

 

 

―――瞬間、リンデは自分の中で、急速に何かが冷えていく感覚がした。しかし、それに気づいていないのか、一般『ティーパーティー』生徒の発言はヒートアップしていく。

 

 

「そうだ! お前みたいな臆病者がミカ様の傍で付き纏っていれば、ミカ様まで臆病者扱いされかねない! 現に『フィリウス』や『サンクトゥス』のトップにはいいように使われ、挙げ句『フィリウス』にはお気に入りの後輩の指導まで押し付けられてる! それだけじゃない! お前が来てから『パテル』もミカ様も牙を抜かれ、代わりに押し付けられたのは『フィリウス』や『サンクトゥス』のような腰抜け達がやるような事ばかり! 『パテル』はそんな、軟弱者達の場所じゃない! 本当のミカ様のように、力で全てを捩じ伏せる。そんな崇高な分派のはずだ! なのにお前は、そんな『パテル』から力を、牙を奪い取った! これを裏切りと言わず何と―――

「黙りなさい。」

―――ッ!?」

 

 

 

―――もう、我慢ならなかった。

 

 思わず、リンデは先程までの笑みを引っ込め、真顔で告げた。その瞬間、先程までリンデが纏っていた緩やかな空気は吹き飛び、圧倒的なまでの重圧が一般『ティーパーティー』生徒に襲いかかった。それを浴びた一般『ティーパーティー』生徒は、さっきまでヒートアップしていた感情を一気に冷まされ、恐怖に奥歯がガタガタなりそうになっていた。

 

 だが、今のリンデにそんな事はどうでもよかった。平時であれば――例え自身を悪様に言う相手であろうと――同じ『ティーパーティー』の仲間として、多少なりとも気を使うリンデだが、今回ばかりはラインを超えていた。故に、普段は滅多に出さない圧を出しながら、リンデは再度口を開いた。

 

 

「力で全てをねじ伏せる? 何時から『パテル』はそんな野蛮な組織になったのです? あなたはそれを崇高と言いましたが、古今東西力だけの組織など、上に立った所で害にしかなり得ません。後輩の指導? ヒフミにはむしろ、私の仕事を手伝ってもらってます。その傍ら、彼女の個人的な用事に少しだけ付き合っているだけです。押し付けられたなどと言われるのは、筋違いというものです。『フィリウス』や『サンクトゥス』にいいように使われている? あれらも『首長補佐』としての仕事です。元々そういう役目を求められて、私は『パテル』から出向という形で拝命しています。聖園首長だけを補佐するだけが仕事ではないのですが。まさか、それすら知らずに発言していたのですか? だとすれば、滑稽なことこの上ないですね。」

 

「あ、あぁ・・・。」

 

「それと、事務方を軟弱者などと称していましたが。彼女達の方があなたのような愚か者より数倍立派です。現実を見据え、やるべき事をしっかりと果たし、『通商』も司る『パテル』の本来の役目を全うしてくれています。彼女達がいなければ、あなた達のような力しか振るうものがない者達が、好き勝手にその力を振るうことが出来ないと理解できませんか? いいえ、理解できていれば先程のような発言をする訳がありませんね。」

 

「そ、それ、は・・・。」

 

 

 リンデが言葉を発する度に増していく重圧に、一般『ティーパーティー』生徒はまともに言葉を返す事が出来ない。まるで金縛りにあったかのように身体は恐怖に震える事しか出来ず、目や顔は逸らしたくても、真顔でこちらを――まるでどうでもいいものを見るかのように――冷めた目で見つめるリンデを見返す事しか出来ず、さりとて目に溜まった涙はまるで時が止まったかのように目尻で強制的に押し止められていた。

 そんな相手の様子を変わらぬ表情で見返しながら、リンデは一息つくと、

 

 

「・・・それと、最後に1つ。」

 

 

と口にして――――

 

 

 

 

「ッ、ヒィッ!?」

 

 

 

――――一瞬で一般『ティーパーティー』生徒の前に詰めよった。

 

 一体何が起こった? 一般『ティーパーティー』生徒の思考はもうめちゃくちゃになっていた。二人の距離はそこそこ離れており、走っても2、3歩はかかる程度はあったはず。そんな距離を一瞬で詰めてきた? どうやって?

 

 そんな、考えても意味のない事を延々と思考する一般『ティーパーティー』生徒の目の前で翼を惜しげもなく広げたリンデは、顔をグッと近づけて―――

 

 

「ミカを。私の『太陽』を。『月』を。『一番星』を。唯一無二の輝きを貶め、侮辱するというのなら―――」

 

 

――――あなたが何者であろうと、私はそれを許さない。

 

 

「ッ!?」

 

 

――――彼女の持つ朱槍『ロンギヌスの槍』を傍に突き立てながら、そう言った。そしてそれを最後に、彼女にもう興味を無くしたかのように、リンデは振り返ること無く、突き立てた『ロンギヌスの槍』を消しながら、校門へと足を進めていった。

 

 

 

 一方、威圧され続けた一般『ティーパーティー』生徒はというと、リンデの姿が見えなくなると同時に、腰が抜けたかのようにその場にぺたりとへたり込んでしまった。奥歯がガタガタ震える感覚はまだ消えず、身体が芯まで冷えている感覚も残ったままだった。それを自覚すると、ぶり返す様に彼女の中で、リンデに対する怒りが込み上げてきた。それは世間一般では『嫉妬』と呼ばれるものだとは自覚せず。

 

 しかし、そんな彼女に1人、話し掛ける人物がいた。

 

 

「あ~あ、リンデちゃんを怒らせちゃったね〜。」

 

「っ、ミカ様!」

 

 

 それは、校門でナギサと待ってるはずのミカだった。事情を知るものがいれば、何故ここに彼女がいるのだろうか疑問を挟んでいただろうが、一般『ティーパーティー』生徒はそんな事は知らないため、敬愛している――と思っている――ミカがここに来た事をこれ幸いと、先程自分がリンデにされた事を涙ながらに報告しようとした。―――自分を見るミカの目が、さっきまでのリンデ以上に冷めている事に気づくこと無く。

 

 

「ミカ様! あのような野蛮なもの、ミカ様のお側に相応しくありません! 十郷リンデは―――」

「あ~、もう良いよ。そんな見え透いた態度取らなくてさ。」

「っ、ミカ、様?」

 

「あのさぁ、何で私がここにいるのか分かんない? 私、リンデちゃんをナギちゃんと待ってたんだよ? 校門前でさ。なのに何か遅いなぁって思って来てみたら、君が意味不明な事喚きながらリンデちゃんを足止めしてたよね。ねぇ、どういうつもりなのかな?」

 

「い、意味不明とは? 私はただ―――」

「軟弱者は『パテル』にはいらない、だったっけ?」

「―――っ、そ、れは。」

 

「あなたが言った言葉だよ? こういう事があった時に便利だからってリンデちゃんに言われてたから、一応録音もしてあるけど。フフッ、ナギちゃん達の事もムカつくくらい扱き下ろしてたし、これを物的証拠にして反逆罪とかで訴えられても、文句は言えないよね?」ピッ

 

 

〔っ、うるさい! 所詮『シスターフッド』など、我ら『ティーパーティー』に恐れをなして政治から逃げた臆病者達だ! そんな奴らに肩入れしてる時点で、お前も臆病者だ!〕

 

〔・・・ほう、臆病者、ですか。〕

 

〔そうだ! お前みたいな臆病者がミカ様の傍で付き纏っていれば、ミカ様まで臆病者扱いされかねない! 現に『フィリウス』や『サンクトゥス』のトップにはいいように使われ、挙げ句『フィリウス』にはお気に入りの後輩の指導まで押し付けられてる! それだけじゃない! お前が来てから『パテル』もミカ様も牙を抜かれ、代わりに押し付けられたのは『フィリウス』や『サンクトゥス』のような腰抜け達がやるような事ばかり! 『パテル』はそんな、軟弱者達の場所じゃない! 本当のミカ様のように、力で全てを捩じ伏せる。そんな崇高な分派のはずだ! なのにお前は、そんな『パテル』から力を、牙を奪い取った! これを裏切りと言わず何と―――〕

 

 

 

 満面の笑みで、しかし目は笑っていない顔でミカにそう告げられ、続けてスマホの録音機能で録音された、先程自分がリンデに向けて放った言葉の数々が、少しノイズの混じった音声と共に流れた。それを聞かされて、一般『ティーパーティー』生徒は己の失策と進退を悟った。

 

 

「み、ミカ様! 私は―――」

「だからさぁ。」

 

 

 涙ながらにまだ言い訳を並べようとした一般『ティーパーティー』生徒だったが、ミカの表情を見た瞬間、またも凍りついた。

 

 

 その目が、さっきまでのリンデと同様、どうでもいいものを見るかの如くひどく冷めた目をしていたから。

 

 

「いい、って言ったよね? そんな見え透いた態度取らなくてさ。ムカつくんだよね。そういう上辺だけ敬ってます、みたいな態度されるの。」

 

「ぁ、違―――」

「あなたが見てるのは『私』じゃない。キラキラしてて強くてキレイな『ティーパーティー』『パテル分派』の首長『聖園ミカ』、でしょ?」

「―――っ。」

 

 

 違う。そう言いたくても、ミカから発せられる圧倒的なまでの重圧がそれを許さない。しかも、ミカはその圧を徐々に強めながら、ゆっくりと一般『ティーパーティー』生徒へと近づきながら、更に言い募る。

 

 

「リンデちゃんは違う。どんな事をしても、『私』の事、ちゃんと見てくれる。家柄だとか『ティーパーティー』だとか『パテル』だとか、そんな事全部どうでもいいんだって。『私』を『私』だって、ただの『聖園ミカ』だって見てくれる。ナギちゃん達に対してもそう。そんなリンデちゃんだから、私は、私達はあの娘を『ティーパーティー』の『首長補佐』に選んだんだよ。分かる? なのに、あなたはそんなリンデちゃんを腰巾着とか裏切り者とか、挙げ句臆病者とか好き勝手言ってくれたよね? ねぇ、何様なのかな?」

 

「っ、ヒィッ!?」

 

 

 顔をズイッと近づけながら、更に圧を強めたミカに後ずさる一般『ティーパーティー』生徒。しかし、恐怖で頭がいっぱいになっていた彼女は、それが逆にミカの神経を逆撫でしてしまった事に気付けなかった。

 

 

「逃げないでくれない? 私が弱い者いじめしてるみたいじゃん。それに、あなたは臆病者じゃないんでしょ? リンデちゃんなら逃げないよ、この程度じゃ。ねぇ、臆病者って罵られたリンデちゃんは逃げないのに、あなたは逃げるんだ。これって矛盾してないかな?」

 

「ぁ・・・。」

 

「あなたみたいな人のこと、何ていうか知ってる?『虎の威を借る狐』って言うんだよ? 『聖園ミカ』っていう虎の威を借りなきゃ、何も出来ないし言えない臆病者。それがあなただよ。そんな娘が、リンデちゃんの事をどうこう言わないでくれないかな?」

 

 

 表情を変えることなく、さりとて声音が白熱することも無く。ただひたすら淡々と叩きつけられる言葉の数々に、もう一般『ティーパーティー』生徒の心は限界だった。このままでは、自分は誉れある『ティーパーティー』から、最悪『トリニティ』から追放されかねないとまで考え始めていた。だから、どうにかこの場を切り抜けようと―――、この場での最悪手をうってしまった。

 

 

「は、はい・・・。分かりました。もう言いません! 申し訳ございません! ですからどうか、どうかこの事は―――」

「・・・ハァ、もういい時間の無駄。」

「―――えっ?」

 

「あなたの言い分も考えもよく分かったから。だからこれ以上は時間の無駄だよ。私ナギちゃん達を待たせてるから。じゃあね。」

「待っ―――」

 

 

 そう一息で言い切ると、もう一般『ティーパーティー』生徒の事など眼中にないと言わんばかりに無視して、ミカは校門へと向かっていった。そんなミカが制止の言葉に耳を貸すことなど当然なく、残された一般『ティーパーティー』生徒は手を空へ伸ばした姿勢のまま、目の前が真っ暗になったかのようにその場に崩れ落ちたのだった。

 

 

 

―――そして、それから数日後、学園内で彼女の姿を見たものはいなかった。

 

 

 

 

▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽

 

 

「ハァ・・・。」

 

「あら、リンデさん。おかえりなさい。お一人ですか?」

 

「っ、ナギサ? ミカはどうしたんですか?」

 

 

 一般『ティーパーティー』生徒との言い合い(リンデ視点)で疲れたリンデが校門へ辿り着くと、そこで待っていたのはナギサだけだった。リンデがナギサにミカはどうしたのかと尋ねると、

 

 

「先程、数分ほど前でしょうか。待ち切れないと言い出して、探しに行ったのですが・・・。もしかして、入れ違ってしまいましたか?」

 

 

と返された。そういえば、と、先程校門へと向かう所でそれらしき気配とすれ違ったような気がしたとリンデは思い出し、もしかしてと振り返ろうとした。しかし、そうする前にミカの声が聞こえてきた。

 

 

「ごめ〜ん☆ リンデちゃん探すついでにお花摘みに、ってリンデちゃん! 遅いよも〜。退屈でこっちから探しちゃったじゃんね。」

 

「探しちゃったじゃんね、ではないですよミカさん。だからリンデさんなら大丈夫だと言ったじゃないですか。それともう学園外なんですから、ちゃんと節度を持った距離感をですね。」

 

「も、もう〜。ナギちゃん怒らないでよ〜。今はもうオフなんだからさぁ。」

 

 

 笑顔で戻ってきて、リンデへ抱き着くミカ。それをまた呆れたように見ながら注意を促し始めるナギサにたじたじになるミカだったが、そんなミカの手が、片方強く握りしめられたように赤くなってるのをリンデは見逃さなかった。

 

 

(っ、あの手。やはり、ミカもあの場に・・・。)

 

 

 先程思い出したことと照らし合わせて、リンデはそう結論づけると同時に、己の『一番星』に見せたくない醜態を意図せず見せてしまった事に対する罪悪感から、悲しげに目を伏せてミカへ謝罪をしようとしたが―――

 

 

「み、ミカ。・・・その」

「リンデちゃん。」

「っ、?」

 

 

―――その言葉は、ミカが人差し指をリンデの唇に当てられた事で止められた。そして、ミカはリンデの耳に顔を近づけると、

 

 

「リンデちゃんは何も聞いてないし、誰とも会ってない。私が遅れたのに、リンデちゃんは関係ないよ。」

 

 

さっきまでとは違った、優しげな笑顔と声音でそう言った。それだけでミカがあの場にいたとリンデは確信出来たが、しかしミカはそれを分かっていてなお、リンデと先程の一般『ティーパーティー』生徒のやり取りをなかった事にすると言った。それは別に、ミカが彼女の命乞いを受け入れたという訳ではなく、ただ純粋に、リンデに引き摺ってほしくない、悲しい表情をしてほしくないという気持ちから、ミカが決めた事だった。

 

 そんなミカの思いにリンデは気づいたが、同時に面映ゆくなって、結局謝罪の言葉を口にしてしまうのだった。本当は感謝を述べるべきところだと理解はしていたが、少しばかり恥ずかしさが表に出てしまって出来なかった。

 

 

「ミカ・・・。すみません、気を遣わせてしまって。」

 

「ん、何のこと?」

 

「・・・いえ。」

 

 

 そんなリンデの思いを気にしないでいいよと言うように、言葉を返すミカ。どうやらミカの中では、今回の件は何もなかったという形で決着させたいのだとリンデは感じた。これ以上はきっと、ミカの機嫌を損ねてしまうだろう。ならば、今は彼女の気遣いを無駄にせず、それでも、感謝の1つを述べるくらいは許されるだろうと考えたリンデは、一度一呼吸おいてから、探しに来てくれた事にお礼を言う事にした。

 

 

「探しに来てくれて、ありがとうございます。ミカ。」

 

「それこそ気にしないでいいよ☆ 退屈だったのは事実だし。」

 

「フフッ、そうですか。」

 

「そうだよ。・・・うん。やっぱりリンデちゃんは、そうやって笑ってたほうが―――」

「あのー、ミカさん? リンデさん? 先程からお二人で何を小声で話してるんですか?」

「「えっ?」」

 

 

 二人が密着して小声で話し合っていると、少し困惑の混じった声が聞こえてきた。ふと顔を向けると、ナギサが困った表情に呆れを含んだ目線で見ており、「私の事忘れてませんか?」と言外に訴えていた。それを見て慌ててリンデは謝ろうとしたが、さっきの事を話すのはミカの気遣いを台無しにすると考えてしどろもどろになって上手く話せなかった。すると、リンデに抱きついていたミカが離れて、

 

 

「何でもないよ、ナギちゃん。ほら行こ♪」

 

 

と言いつつ、ナギサの右手を掴んでズンズンと歩き出した。いきなり歩きだされたナギサは「えっ? えっ?!」と困惑しながら、倒れないように何とか必死に足を動かしながら、ミカに付いていった。

 

 

「ちょ、ちょっとミカさん! 行くって何処に行くんですか!?」

 

「ん? この前行ったスイーツ屋さん。リンデちゃんと一緒に行って美味しかったから、ナギちゃんもどうかな~って。」

 

「そういうのは事前に言って下さい! こんな急に、ちょっと! 分かりました! 分かりましたから離してください! そんな勢いよくズンズンと歩かないで下さいミカさん! 転びそうに、うわぁ!?」

 

「アハハ! ナギちゃんやっぱり運動不足じゃない? 書類仕事とかで座ってばっかじゃなくてさ、たまにはリンデちゃんや私みたいに動いた方が良いよ♪」

 

「あなた達がアグレッシブ過ぎるんですよ! ちょ、だから歩くのが速いんですって! た、助けてくださいリンデさん!」

 

 

 少し涙目になりながらリンデに助けを求めるナギサ。しかし、肝心のリンデはというと、あまりの急展開に少しばかり呆けており、ミカと違ってその場から動いておらず、ナギサに助けを求められてようやくハッとなってミカ達の元へ速歩きで向かうのだった。

 

 

「っ、待って下さいよ二人とも! それとミカ、ナギサが困ってます。一度離してあげてください。」

 

「えっ?」

「っ、ちょ、急に離したら、キャアッ!?」

 

「っ、ナギサ!」

 

 

 リンデの言葉で掴んでいた手を離すミカ。すると、当然引っ張っていた勢いがなくなってナギサはつんのめって転びそうになった。そんなナギサを、先程距離を詰めたのと同じ要領で近づいて咄嗟に支えるリンデ。幸い、リンデの体幹がしっかりしていたお陰で二人とも転ぶことはなく、また上手く力加減をしたおかげで怪我をさせるという事もなかった。リンデはゆっくりとナギサを立たせると、怪我はないか尋ねた。

 

 

「怪我はありませんか、ナギサ?」

 

「は、はい。助かりました、リンデさん。」

 

「どういたしまして。ミカ、急に離してはダメじゃないですか。ナギサは私達ほど体幹が良くないのですから。」

 

「うっ。」

「アハッ、ごめんごめん。ナギちゃんと手を繋いだの久々だったから、つい。」

 

 

 ナギサの無事を確認すると、先程と打って変わってミカを諌めるリンデ。ミカに気を遣われた事を感謝はしている。が、それはそれとしてナギサを怪我させかけた事は注意しないといけない。自分が間に合わなければ、転んで怪我をしていた可能性すらあるのだから。それを分かってるからか、ミカも笑ってはいるが軽い感じで謝っていた。

 なお、体幹の脆さをリンデにも指摘されたナギサは密かにショックを受けていたが、ミカとリンデには届かなかった模様。

 

 

「謝るなら私にではなく、ナギサに、ですよ。」

 

「うっ、は〜い。・・・ごめんね、ナギちゃん。大丈夫?」

 

「え、えぇ。幸い、リンデさんが支えてくれましたので。ハァ・・・。」

 

「? どうしたのナギちゃん? 溜め息なんか付いて。」

 

「どうしましたか、ナギサ? やはり、どこか怪我を?」

 

「いえ、そうではないんです。ただ、ミカさんの言う通り、私も少し、身体を動かした方が良いのかな、と。」

 

 

 そう言って、また溜め息を吐くナギサ。小さい頃から幼馴染二人に比べ、運動が得意ではない事はナギサのコンプレックスの一つなのだが、パワーのあるミカからとはいえ、こうも少し引っ張られたりするだけでつんのめりそうになる程の、自分の運動神経の無さにショックを隠せないでいた。

 そんなナギサの珍しい弱音を、ミカは笑って流すと、再度右手を掴んで歩き出した。

 

 

「アハッ☆ も〜ナギちゃんってば、気にしなくても大丈夫だって。もしまた転びそうになっても、私かリンデちゃんが支えるからさ♪」

 

「っ、ですが、いつまでもお二人の迷惑になる訳には・・・。」

 

「迷惑、なんて思ってませんよ。ナギサ。」

 

「リンデさんまで。って、何でリンデさんも手を繋いでいるんですか?」

 

 

 いつの間にか繋がれていた左手に目をやると、今度はリンデが手を繋いできていた。思わず聞き返すと、珍しくイタズラっぽい笑みを浮かべたリンデが、ウィンクをしながらこう答えた。

 

 

「いいじゃないですか、たまには。こうやって幼馴染らしい事をしながら歩くのも。」

 

「・・・子供っぽくないですか?」

 

「まだ子供ですよ、私達は。」

 

「・・・それもそうですね。」

 

 

 少し恥ずかしそうにしたナギサの言葉も、リンデの正論カウンターで打ち返されてしまい、しょうがないといった感じで再び歩みを進めるナギサ。そんなナギサの様子に満足したのか、ミカとリンデも笑顔で共に歩き出すのだった。

 

 明日からもこうやって、共に歩いて行けるように。

 




ミカナギリンデは、最高の幼馴染。異論は認めます。
あと、ナギちゃんはきっと運動神経ない側だと思います。
芸人で例えると某ヒザ神とかぐらい無さそうw
ただ家の関係でプライベートジェットとかは持ってそうだから、案外操縦スキルとかはあるかも?

リンデは基本、同じ派閥や学園に所属する人を区別したりはしません。他学園に関しても、こちらに迷惑をかけないのであれば基本静観か、ウマが合えば時間と己の許せる範囲で付き合うこともできます。

ですが、今回のようにあからさまに敵意や悪意をぶつけてくる相手にはとことん容赦しません。その対象がミカであれば、情けも慈悲も与えず、即排除対象に格上げします。
ただし、アリウスのような特定の事情を抱えてる相手は、その事情の大元(ベアおば)は排除対象になりますが、アリウスそのものは可能な限り武装解除させて無力化します。アリスクも同様。ただ、相手が相手なので、後者の場合は無力化に加えてそれ相応のダメージも与えます。

トリモブに関しては、後ほど活動報告に自分なりの考えを乗せておきます。そちらももしよければ、時間のある時にでも見てもらえればと思います。

感想・評価、ここすき、誤字・脱字報告お待ちしてます。 いつも通り、返せる分は返信しますので、よろしくお願いします。

それではまた次回!


P.S.)活動報告書きました。
相変わらず好き放題書いてますが、時間のあるときにでもよければ見てください。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=312098&uid=61918
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