聖槍に祈りを   作:坂本コウヤ

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はい、連休中に何か書き切れたので、連日投稿5日目です。
これ以上は今執筆中ですので、不定期になると思います。
首を長くしてお待ち下さい。

今回は4詩で示唆されていた『シスターフッド』との絡みです。出てくるのはほぼ『長』だけですが、彼女まだうちにいないせいでエミュ下手くそすぎるかもです。ご容赦ください。

また、今更ですが現在作中の時間軸は原作前かつ秋終盤、つまり10月終わり〜11月頃を想定しています。
ミカ達がトップについているにしては、もしかしたら時期が早いと感じるかもしれませんが、そういう事にしてください。たぶん上がさほど優秀じゃなくて、さっさと退陣したとでも考えていただければ。

それと、今回珍しくリンデの弱音が少しだけ溢れます。キャラ設定で「余程の事がないと取り乱さない」みたいな事書いといてですが、リンデもまだメンタル的に少しだけ弱いところがあります。今後も偶に、こういった感じで零すかもしれませんが、ご注意ください。

それではどうぞ!



第五詩:『首長補佐』と『シスターフッド』の『長』

 

「―――といった事がありまして。」

 

「なるほど。最近、『ティーパーティー』の方達から当たりが強いと、ヒナタや他のシスター達から伺っていましたが。そうですか、そのような事が。」

 

「申し訳ありません。私のせいで、関係ない『シスターフッド』の皆様にご迷惑までお掛けしてしまいました。」

 

 

―――先日の騒動からまた幾らか時が経ったある日の事。

 リンデは『シスターフッド』の長『歌住サクラコ』の元を訪れていた。あの時の事はミカの判断で無かった事にされたものの、その後どうにも『シスターフッド』と『ティーパーティー』―――特にリンデの属する『パテル分派』―――の一部の生徒による小競り合いが起きていると小耳に挟んだリンデは、ミカ達との話し合いの末、直接サクラコへ事情説明と謝罪を行うことになったのだ。あの日以来リンデも彼女の顔を見ておらず、あった事が事だけに迂闊に確認できなかった*1のだが、まさかこう波及するとは思い至らず、サクラコに深く頭を下げていた。

 なお全くの余談だが、今回の事情説明に当初ミカも行くと行っていたのだが、ミカまで行くと流石に大事になり過ぎる上に、有事の際『パテル分派』を抑えられる人が誰もいなくなるとナギサやセイア、更には『パテル分派』の事務方のような理性的なメンバーにも止められたため、渋々断念する事になった。―――閑話休題。

 

 サクラコはリンデの謝罪を受け取ると、気にしていないという風に笑みを浮かべながら、優しく労るように口を開いた。

 

 

「気にしないでください。元々、『シスターフッド』は秘密主義の一面がありますから、外部から反感や不信感を抱かれやすいのです。リンデさんだけのせいではありませんよ。」

 

「ありがとうございます。不謹慎だとは思いますが、そう言っていただけると、少しだけ気が楽になります。」

 

「フフッ。それに、この時間は私も好きなのです。こうしてリンデさんと『主』に祈りを捧げ、共に何でもない日常を語り合う。こういうのを、俗に言う『青春』を謳歌するというものなのではないかと。その時間が失われるのは、凄く寂しく思います。」

 

 

 サクラコはそういうと、テーブルの上の紅茶を一口含んで口と喉を潤した。そして、広げられたケーキの一つを皿にとって一口いただいて、口元を抑えて薄く微笑んだ。

 

 

「・・・美味しいですね。リンデさんが持ってきてくださったものですから、間違いはないと思っていましたが。」

 

「お口にあったようでよかったです。先日、ミカからハスミオススメのお店ということで教えてもらい、最近懇意にさせてもらっていまして。ミカもお気に入りで、最近ナギサとも一緒に行って、彼女も気に入ってくれたようでした。」

 

「何と。あのハスミさんやミカさん、それにナギサさんが。フフッ、これは良い店を知れましたね。」

 

 

 『シスターフッド』の応接室の机の上に広げられたケーキ達は、リンデが持ち込んでいたものだった。先日ミカと共に行き、またナギサを含めた3人で訪れた際に彼女からも好評だったため、他の皆にも広めたいと考えていたリンデは、今回の機会をちょうどいいと捉え、わざわざ買ってからこちらに来ていた。サクラコもハスミと同様、無類の甘味好きなためきっと気に入ってもらえるとリンデは思っていたが、彼女の笑顔を見れば結果は一目瞭然だろう。

 

 なお、これのせいでただでさえ「密会」と揶揄されている二人の会話に「賄賂」とも呼べる要素が追加されて、その火消しと心労でどこかの幼馴染兼『フィリウス分派』首長の胃にダメージが及んだのは完全な余談である。

 

 

「よければ、場所をお教えしますよ。何でしたら、この後ご一緒に行きますか?」

 

「それは良い提案ですね。」

 

 

 そんな事は露知らず、リンデとサクラコの会話は続いていく。今は店の場所を教えるついでに共に出かけないかとリンデが提案していて、それにサクラコが年相応の笑顔で答えていた。二人とも、先ほどのやり取りでお互いやるべき事は認識したと感じたためか、もう完全に日常会話に移っていた。

 

 そのやり取りは、立場などを廃して見ればただの仲の良い友人同士の日常会話だし、当人達や二人をよく知る者達からしてもそう見える。だが、生来の真面目さ等から来る「堅苦しい」「気難しい」「怖い」とも称される『シスターフッド』の『長』であるサクラコの印象と、『トリニティ』では異端ともいえる各派閥の長達と独自の繋がりを持ち、時にそれを用いて各派閥間の仲裁も務める『ティーパーティー』の『首長補佐』であるリンデの立ち回りのせいで、端から見る分にこの二人の会話は、いずれ『トリニティ』を手中に収めんと暗躍している「密会」と捉えられてしまっているのが実情だったりする。

 当然、二人も外様からの印象は念の為把握はしているが、あくまで二人きりやミカも含めた3人での時はプライベートの関係だとリンデが努めて気にしないようにしているため、サクラコも気にしないようにしていた。

 

 そんな二人だったが、ふとサクラコが何か気づいたのか首を傾げながら苦笑いでリンデにある事を尋ねていた。

 

 

「ですが、大丈夫ですか?」

 

「? 何がですか?」

 

「いえ。私と二人きりだと、ミカさんがまた、むくれてしまうのではと。」

 

「えっ? あ~・・・。」

 

 

 そう、サクラコが懸念していたのはミカの事だった。以前、まだ二人がそれぞれの派閥に属してからしばらくして、生活のリズムも落ち着いた頃にこうしてプライベートでのやり取りを再開させていたのだが、何時からかミカが勝手に後をつけてきていたのだ。本人曰く「モヤモヤして心配だったから」とのことで、以来サクラコと出掛ける際はミカに許可をもらうか、ミカを連れて行くかという2択(という名のだいたい後者)を取ることになっていた。

 ちなみにこれは蛇足だが、実はナギサもこっそり後をつけていた(というより部下に頼んで後をつけさせていた)のだが、こちらは部下の隠密能力の高さから気づかれず、結果ナギサは裏で涙を呑む羽目になった模様。現在は、ナギサにも心配されてる認識がリンデにもあるようだが、ミカほどではないのかなと思われてる辺り不憫で仕方ない。

 

 さて、話を戻すがリンデもミカのことを指摘されて思わず天を仰いだ。こういう時のミカの勘は恐ろしくいい。具体的にいうとサクラコやヒフミと二人きりで出掛けようとした際、何故か行く先に先回りされていたり偶然を装って途中合流してきたりと、とにかく怖いくらいに場所を把握されていた。

 一応、事前に連絡していた場合はその限りではないようだが、今回はそもそも謝罪と情報共有がメインでミカを連れて来る事が出来ず、リンデも何となく思い付きで言った為に連絡していないのでどうしたものかと十数秒ほど考え―――、あとが怖いが結局ミカに事後承諾という形で納得してもらおうという事にした。

 

 

「また負債が溜まってしまいますが、行く場合は今回はお目溢しいただくしかないですね。私も、サクラコと二人きりのこの時間はとても大切で、とても大好きなので。」

 

「リンデさん、その発言は、人によっては勘違いをさせてしまいますよ。」

 

 

 リンデの発言に、少し苦笑しながら苦言を呈するサクラコ。サクラコはミカがリンデの事をどう思っているのか正確に把握しており、時折リンデが無自覚に誰かに対して勘違いさせかねない発言をしている事も親友として理解していた。が、サクラコはあくまで友人としてリンデの事を好ましいと感じているだけなので、こういった場面では注意を入れる側だったりする。

 が、肝心のリンデはというと、

 

 

「? 何のことですか?」

 

 

この反応である。悪意に対しては敏感なものの、どうにも自分に対する好意に関しては感受性が低いようで、サクラコはそんなリンデを見て内心大丈夫かなと思いながら、表面上は普段通りの顔で対応した。

 

 

「・・・いえ、お気になさらず。」

(ミカさん、リンデさんは相変わらず難敵のようですが、微力ながら、あなたの思いが実る事を、願っていますよ。まぁ、あちらも無自覚のようですが。)

 

 

 そして、サクラコはミカの思いがリンデに通じる事を、願わずにはいられなかった。それと同時に、ミカが自身の思いに無自覚であることも少し懸念しており、友人二人の幸せが実る事を、改めて願うのだった。

 

 なお、結局、あの後サクラコが自分の中の「好き」とミカや周りへの「配慮」を天秤にかけた結果、ミカも交えた3人で後日に行くことにした事でスイーツ屋への外出はお流れになった模様。

 

 

▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽

 

 

「・・・そう言えば、ふと思ったのですが。」

 

「どうしました、サクラコ?」

 

「ミカさんとのお話はよく伺いますが、ナギサさんとはどうなんですか? 彼女も確か、幼い頃からのお付き合いだと伺っておりますが。」

 

「ナギサの事、ですか。」

 

 

 スイーツ屋へ行くことはお流れになったものの、二人はまだ応接室にて会話を続けていた。今はサクラコがリンデにナギサの事をどう思っているのか尋ねていた。リンデといると、ミカについては本人も交えて色々話すのだが、もう一人の幼馴染であるナギサについてはあまり聞いたことが無かったなと思い、尋ねてみることにしたのだ。

 

 リンデは少しの間考えると、困ったような少し寂しそうな笑みを浮かべてこう答えた。

 

 

「そうですね・・・。幼馴染で親友、だと、私は思っています。ですが、ナギサは私の事、どう思っているのかは、少し分からないですね。嫌われてはないと、思うのですが。」

 

「と、言いますと?」

 

「周知の通り、私はあちこちの派閥と縁があって、そのおかげで仲裁を務めることもあります。ですがその関係で、今回のように『ティーパーティー』内部では間者扱いされたり、裏切り者と指を差されることがあって。その度に、ナギサに負担や迷惑をかけてしまっているのではないかと。」

 

「ふむ。」

 

「自覚はあるんです。誰かと話したり、仲良くなろうとする事に対して、私は少し節操なしだという事は。ですがそれも、私がその時出来る事や望む事を積み重ねた結果であって、決してナギサを苦しめたかった訳ではないんです。それに、そうやってサクラコ達と繋いだ縁が、巡り巡って何かの助けになるはずだと信じていますから。」

 

「リンデさん・・・。」

 

 

 自らの右手の掌を見つめ、優しく握ってそう微笑むリンデに、労るように声をかけるサクラコ。この『トリニティ』で、自分の望む事を貫くことは、想像以上に厳しい。出来る事と望む事がリンデや自身のように一致していれば、あとは外様からの評価をどう受け止めるかで済むが、そうでないなら周りとの軋轢やギャップに神経と心をすり減らす事になる。環境や本人の精神性などによってはメンタル面の負担が逆転するため一概には言えないのだが、やはりそれらを加味しても、望んだ事を貫き通すには、相応の覚悟がいるのがこの学園なのである。

 

 

「だから、例えナギサが私の事をどう思っていたとしても、私はナギサの親友でありたいと思ってます。例えもし、心の内では嫌われていたとしても、幼い頃から積み重ねてきたあの時間は、決して嘘ではないはずですから。」

 

 

 そう言って、目の前の紅茶を一口含んで、窓の方へ向けて寂しく微笑むリンデ。サクラコの方からはよく見えないが、方角からして視線の先にはおそらく、『ティーパーティー』の本部があるのだろう。今も幼馴染達が頑張っているであろう場所へ向けるその笑みに、どういった感情が含まれているのか。サクラコには推し測ることしか出来ないが、リンデとの会話から、彼女は思った事を口にした。

 

 

「・・・リンデさんは、ナギサさんに嫌われたいのですか?」

 

「えっ? いえ、そういう訳では・・・。誰も、好き好んで誰かに嫌われたいとは思いませんよ。」

 

 

 サクラコの言葉に、少しだけ顔を顰めてそう返すリンデ。サクラコもそれに同意しつつ、次の質問を投げかける。

 

 

「えぇ、その通りですね。ではリンデさん、あなたは一度でも、ナギサさんから嫌いだ、と言われた事がありますか?」

 

 

 そう尋ねられると、リンデは少しだけ考えて、

 

 

「・・・ない、ですね。少なくとも、初めて会った時以来、一度も。」

 

 

と返した。幼い頃にミカとの縁がきっかけでナギサと出会ったが、あの時「ミカを誑かした泥棒猫」と言われた事はあっても、面と向かって「嫌い」と言われてないし、その後も言われたことは一度も無かったはずだと、リンデは少し自信なさげに頷いた。

 そんなリンデの反応を、サクラコは優しく微笑みながら話を続けた。

 

 

「ならば、きっと大丈夫です。リンデさん、あなたはもう少し、自信を持って良いのですよ。」

 

「自信、ですか?」

 

「はい。確かに、リンデさんの行いがナギサさんの負担になっているのは、おそらく事実でしょう。ですが、たったそれだけのことで、ナギサさんはリンデさんを嫌うような、心の狭いお方ですか?」

 

「っ、それは・・・。」

 

 

 言葉を続けようとして、少し考えるリンデ。浮かんでくるのは、自分やミカが何かやってしまっても、その時怒ることや呆れるはあっても、イタズラを仕掛けられてブチギレたとしても、変わらず友人として接してくれている。時には「しょうがないですね」なんて、笑って許してくれる事もある。そんなナギサの姿を思い浮かべながら、リンデは続きを口にした。

 

 

「・・・違います。ナギサはいつも、私やミカが何かやってしまったり、ミカのイタズラをわざと私が見逃したりしても、それに対して怒ることはあっても、決して嫌ったり、友人をやめたいと言われたことは、一度としてありません。」

 

 

 真っ直ぐに、そう伝えるリンデの目を受け止めながら、サクラコも頷いて言葉を返していく。

 

 

「そうですよね。私も、お会いした事はあっても、直接お話させていただく機会はあまりないので、リンデさんの言葉から推し測ることしか出来ませんが。それでも、他の方々から伝聞で伝わってくる以上に、お優しい方なのだなと分かります。」

 

「サクラコ・・・。」

 

「それに。」

 

「?」

 

 

 と、一度言葉を区切るサクラコ。リンデが疑問符を浮かべていると、サクラコは少し、普段あまり見せない半目の笑みを浮かべてこう続けた。

 

 

「普通は、プライベートで嫌いな相手と同じ甘味を囲んだり、お茶会をしたりはしないと。私はそう思いますよ。」

 

「っ、〜〜〜そう、ですね///」

 

 

 この部屋に訪れてから話した事や、以前話したことのある『ティーパーティー』内での『お茶会』の件を指摘されて、気恥ずかしさから思わず頬を少し赤くして目を逸らすリンデ。そう、思い返せば思い返すほど、ナギサが自分を嫌っていると考えるより、幼馴染として大切に思っていると考えた方が、自然と納得できるのだ。そもそもの話、嫌いな相手に自分が目にかけている後輩を任せるとも思えないし、第一ナギサはそんな薄情な人ではない。なのに自分の中で、「ナギサは自分を嫌っているのではないか?」と思い込んでいた辺り、以前ミカから指摘された自分への自信の無さはなかなか直らないものだなとリンデは自嘲した。

 

 

「・・・ハァ、ダメですね私は。先日、ミカからもこういった自信の無さを嫌だと指摘されたばかりなのに。」

 

「フフッ、ミカさんにもそう思われているのであれば、なおのこと気をつけなければなりませんね。微力ですが、私もお力になりますよ。」

 

「サクラコ・・・。ありがとうございます。やはり、恵まれていますね、私は。これだけ思ってくれる友人達に囲まれて。」

 

 

 もう一度右手を見つめて、それを左胸に当てて噛みしめるように目を閉じるリンデ。今もまだ、決してすぐに自信を持てるようになった訳ではない。ただ、こうやって自分を下げる事は、それに付随して周りの人の評価も下げてしまう。自分がどれだけ悪く言われてもそれは構わないが、自分のせいで周りの人が悪く言われるのは我慢が出来ない。なら、多少自信がなくとも、自信を持って「自分は恵まれている」と思う事で、この自信の無さを少しでも払拭できればと考えたのだ。

 そんなリンデの言葉に、サクラコも笑顔で頷く。

 

 

「であれば、そんなあなたに出会えた私や皆さんも、きっと恵まれているのでしょう。あなたが繋いだ縁が私を、そして、多くの人を繋げてくれます。それはいつかきっとこの学園を飛び出して、やがてはこのキヴォトスを繋げてくれる。そう思いますよ。」

 

「それは、流石に誇張し過ぎでは?」

 

「フフッ、そうでしょうか? 私は、いつかあなたがそういった存在になるんじゃないかと、期待しているのですが。」

 

「・・・そうあれれば、良いですね。」

 

 

 サクラコの言うような存在になれるかどうか。それはまだわからない。ただ、そうあれたら良いなと思う事は、きっと間違いではないはず。リンデはそう捉えて、三度掌を見つめ、今度は少し強く握りしめる。その強く握りしめた分だけ、自分に自信が持てるように。

 

 と、そんな事を思っていると、リンデのポケットに入れていた携帯がなり始めた。事前に何かあれば連絡しても構わないとは伝えていたものの、ここに来てからさほど時間は立っていなかったはず。そう考えて訝しみつつも、サクラコに少し断りを入れて、リンデは電話に出た―――

 

 

 

 

 

 

「はい、こちら『首長補佐』のリンデです。何かありましたか?・・・・・・え゛っ?!」

 

「っ、どうされましたかリンデさん?」

 

 

―――電話に出て数秒後突如、普段は出さないような大声を上げたと思ったら、盛大な溜め息と共に額に手を当てたリンデ。片手は電話中のため塞がっているが、見た感じ思わず天を仰ぎたい、そういった感じの様子にサクラコが尋ねると、リンデは小声で何か呟きながら電話への応対を始めた。

 

 

・・・ストッパーがその役目を放棄してどうするんですかもう。ハァ、分かりました。すぐ戻りますので。もう少しだけ持ち堪えてください。では。」

 

 

 そう言って電話を切って一息つくと、リンデはサクラコに向き直って申し訳なさげに一礼しで、帰り支度を始めながら口を開いた。

 

 

「すみません、サクラコ。急用が出来ましたので本日はこれでお開きにさせてください。」

 

「は、はい。それは構いませんが。あ、このケーキ達はどうしましょうか?」

 

「そちらはヒナタ達とでも分けてください。元々、そのつもりもあって多めに買ってきているので。」

 

 

 帰り支度を急いで進めながら、リンデはそう返した。先ほどまでの少しセンチメンタルな感じはどこにも見られず、その顔はいつもの凛としたリンデ、というよりほんの少し怒ってるようにも見えた。それと先ほど聞こえた呟き―――。それらから、サクラコは何となくリンデに出来た急用を察したが、深く聞く事はしなかった。

 

 

「分かりました。お見送りは必要ですか?」

 

「いえ、大丈夫です。あっ、先ほどのミカとのお出かけの件ですが、また後日連絡しますので! それでは!!」

 

「サクラコ様、備品の件で少しおはなキャッ!?」

「あっ、ごめんなさいヒナタ! 大丈夫ですか?」

 

「あっ、はい。大丈夫です。」

 

「ごめんなさい、急いでいたもので。サクラコとの話は終わりましたから。では、失礼しますね!」

 

「は、はい。お気をつけて。」

 

 

 そういうと、足早に応接室を出ていくリンデ。扉を開けた直後にシスターフッドの備品管理担当の『若葉ヒナタ』と接触しかけたものの、慌てて回避したのでどちらも怪我はなく、すぐに転んだヒナタを引っ張り起こして、直ぐ様急いで『シスターフッド』の聖堂を出ていくのであった。

 

 それを唖然とした顔で見送るヒナタの横に、応接室から出てきたサクラコが並ぶ。

 

 

「ずいぶんお急ぎ、でしたね。」

 

「そうですね。おそらく、ミカさんが原因かもしれませんね。」

 

「な、なるほど。」

 

 

 サクラコの意見にとりあえず頷くヒナタ。

 一方、聖堂から屋外に出たリンデは、勢いよく自身の翼を開くと、空へ向かって飛翔した。使う場所は―――当然、『ティーパーティー』の『パテル分派』本部である。

 

 

 

 

 

「まったく! 本当に! 私が見ていないと本当にダメなんですから! せっかくのサクラコとの久々の時間を邪魔した事、許しませんからねミカ〜〜〜!!!」

 

 

 

 

 

 その後、叫びながらも無事に本部へ到着したリンデは、我慢の限界で暴れるミカを取り押さえると、一週間自分に甘える事を禁じた。当然、ミカは泣いて許しを請うたものの、その時のリンデは久々のサクラコとの時間を邪魔された事に若干腹を立てていたため減刑される事はなく、また先に約束を破ったのも自分であると自覚しているため、泣く泣く受け入れた―――

 

 

―――のだが、3日もすると今度はリンデの方が(主に良心と重すぎる愛から)先に音を上げてしまいそうになり、結局ナギサにも仕事を手伝う代わりに禁止令の継続を手伝ってもらうことになった。経緯が経緯のため、事情はナギサも把握しており、何となくこうなるかもしれないと思っていたナギサは「しょうがないですね」と呆れつつも、リンデのお願いを聞いてあげる事にしたのだった。

 

*1
ちなみにミカはもうとっくの昔に「1、2の、ポカン」で忘れていた模様




皆さんは、好きなものをしばらく禁止されたら、何日保ちますか? 自分はたぶん、1人でやったら1日保たないですw

ホントはサクラコ様と一緒に祈祷したり、サクラコ様に「わっぴ〜!」って言わせて、それに「わっぴ〜!」って返すリンデを書きたかったんですが、展開の都合でどちらも泣く泣く断念しました。スイーツ店へ行く展開も当初は無理矢理入れようかなと考えていましたが、ミカ抜きで行くのもなぁとなり、会話の中であぁいう感じで後日行く展開にしました。

あと今話のリンデ書いてる時、何故かナギちゃん関連の話題に入るとネガティブ発言がぽこじゃが出るから、ガチで焦りました。これでもだいぶ抑えて削って軌道修正したのですが(⁠´⁠-⁠﹏⁠-⁠`⁠;⁠)
ちなみにナギちゃんに対するリンデの心情を書くと、

「赤の他人に何と言われようと別に構わないけど、それはそれとして長年連れ添ってきた親友に嫌われるのは嫌だな。でも嫌われてもしょうがない事してるしな(自覚はあるけどやめるつもりはない)。」

みたいな感じです。こういったところも転生要素が仕事してないように感じる一面かもしれませんが、今後ここもちょっと重要な要素になってきますので、どうか暖かく見守っていてください。

また、サクラコ様はこういう感じでミカとは違った形でリンデを支えていくポジションとして、今後も活躍してくれると思います。いつかは「わっぴ〜!」合戦書きたいな。

別れ際に出てきたヒナタは何となく入れたものです。最初は描写なしかモブにしようかとも思いましたが、ちょうどいいポジの娘いたなと思いましてw
彼女メインの話も、何処かで書けたらいいなと思ってますので、今後も期待していてください。

最後に、リンデはこれからもちょくちょく急いだり重要な場面ではこんな感じに『飛翔』します。原作でもエルフリンデさん浮いてるし、立ち絵見た感じ結構翼大きそうだからたぶん飛べるはず。そんな偏見の下、同じ見た目のリンデも飛行能力を持っています。天使モチーフの学園だし、1人ぐらい空飛べる人いてもいいですよね?


感想・評価、ここすき、誤字・脱字報告お待ちしてます。 いつも通り、返せる分は返信しますので、よろしくお願いします。

それではまた次回!
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