人類が機械に負けた世界に転生したけど、記憶喪失の美少女アンドロイドを世話したらめちゃくちゃ懐いてきた   作:アスピラント

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理解出来ない事象

「はぁ〜……どうか単なる縄張り争いであってくれ」

「アルタ、それフラグって言うのよ。知ってた?」

「アイラはどこで学んだんだ、それ」

 

 アイラの軽口をいなしながら、俺はじっと地面を睨みながら歩いていた。そのフラグというのがまさか西暦が終わった世界でも生きてるとは思うまい。

 

「かなり血痕が続いているな……」

 

 青と黒い血は森の最奥まで続いているようだ。試験を行う場として相応しいがどうかの仕事は、いつしか異変調査を兼ねたガチの仕事へと変貌してしまった。俺的には今日はのんびり散策して思い出話に花を咲かせるつもりだったのにと、誰に言い聞かせる訳もなく虚空に文句を吐いた。

 

「アルタ、キメラって何でバグるの?」

「……キメラの存在意義から考えれば、中々バグるとかあんま無さそうなんだけどな」

 

 アイラがずっと疑問に思っていた事を問うた。

 気になるのは同意だ。キメラは親父から言われた内容が正しければ、惑星環境整備……および機械兵器駆除を目的とした機械生命体だ。なら本質的には人類の味方だと言われがちだが、それは違う。

 

 彼らは()の味方として基底プログラムに刷り込まれている。人類だけじゃなくその他の生命体全てが、問題なく生きられるようにテラフォーミングするという使命を持って、彼らは生きている。それを妨害するなら人類でも排除してくるのだ。

 

 彼らは恐らく機人を作ったシステムと同じ存在が作っている。だが少なくともアガトにいる機人は一度でもバグった事はない。そんな定期的にバグる奴らが出るなら、今いるアイラにも同じ事が起こりそうだが……それはない。

 

 一体何が原因なのか――それは俺もよくわかっていなかった。

 

「……っと、さっきから虫が鬱陶しい」

「どうしたんだノラ」

 

 せっかくのシリアスな空気を、ノラのうざそうな声が妨害した。どうやら小さな小蠅か何かが耳を横切ったのだろう、片手で乱雑に振り払いながら悪態をついていた。

 分かるよ、耳に羽音が鳴ったらとにかく不快で鬱陶しくなるよな。

 

「――はぁ、やっとどっかいった……。キメラの件ですけ……もしかして誰かが細工してるとかないですかね?」

 

 虫との戦いを終えたノラがふと思ったことを言う。

 それはあり得るかもしれない。

 

「俺は詳しくは知らないが、ノラの言ってる事も一理ある。誰かがキメラをいじってる可能性はある」

「何の為に……?」

「さぁな」

 

 それを突き止めたい気持ちは分かるが今じゃない。いつかは調べる必要がある問題だが、ひとまず出来る事はこの森で何が起きているかハッキリさせる事だ。

 

「――! アルタ、これ……スコルピオの残骸が」

 

 慎重に足を進めていくにつれて、黒い金属片があちこちに散らばるエリアに突入した。見るからに倒された数は一体じゃきかない。複数体が狩られたと見ていいだろう、俺はひとまず残骸を観察していると地面が僅かに揺れるのを感じた。

 

「アイラ、ノラ……!」

「「!」」

 

 俺はズシン……と腹の底に響く足音を感じ、すぐさまピストルグレネードランチャーを構える。2人も俺と同じ方向に銃を構え、敵がやってくるを待つ。

 

(揺れがでかい……一体どんな大物が……)

 

 バキバキと木々を薙ぎ倒しながらソイツは現れた。

 その姿を見て俺は一気に全身から汗が流れ出る不快感を覚えた。

 

「スティールレックス……!」

 

 そいつは長らく狩人として生きてきた俺も、まともに戦った経験のない大物のキメラだった。緑がかった体表と鉄で出来た棘が背中に生えた、まるでTレックスのような見た目をした半機械の恐竜。こいつは巨大な機械兵器を駆除して喰らうために作られた存在であり、戦闘能力に全振りした怪物だ。

 

「――――――」

 

 スティールレックスはじっとこちらを睨む。

 剥き出しになった牙は電光が迸り、バチバチと音を奏でながら明滅していた。

 

「アイラ、ノラ、逃げ――」

「待ってアルタ」

「そんな余裕は」

「様子が変!」

 

 アイラが訝しむように見ているだけなため、俺は言われるがまま怪物を見る。

 

「――――――ギギ……ァア……ァア……」

 

 スティールレックスは全身から煙を出し、か細い呻き声を出していた。見たところ苦しんでいるようだ。口からはポタポタと青い血が流れ、目はチカチカと光っている。

 しかも足取りも何だかおぼつかない。まるで死に体だ……俺はただ唖然とする事しか出来なかった。

 

「――――ダ……ズ……ゲッ!!」

 

 気のせいだろうか――人の叫び声のように聞こえる。

 

「――ギ……ギ……ギ……ギ」

 

 俺は背筋に何か寒いものを感じながら後退りすると、スティールレックスはバスンッと体内から大量の青い火花をだし、豪快に倒れ伏す。俺たち3人はこの異常なキメラが訳分からないまま沈黙したのを、ただマジマジと見る事しか出来なかった。

 

「し、死んだの……?」

「みたいだな……」

 

 俺は恐る恐る倒れた怪物に近寄る。目のランプは見事に消えている。破損した箇所からはフォトンを含んだ青い血が流れ、森の大地を濡らしていく。

 

「死んだな、完全に機能停止してる」

「私……こんなの初めて経験したんだけど」

「俺もだよ」

 

 交戦状態にならないだけ遥かにマシだが、勝手に目の前で死なれるとそれはそれでかなり不気味だ。

 

「この事はヨルマイ様と他の狩人にも報告する。場合によっちゃ……試験をする場所の変更か、日時の延期もあり得るな」

 

 やれやれ……やっと門出の時期が来たと言うのに、こんなハプニングが起きちゃたまったもんじゃない。しかし俺の脳裏にこびりつくのは、試験の日時や場所の変更じゃない。

 

(何でキメラから人の声みたいなのが……)

 

 あの叫び声がいまだに頭の中を反響している。何だかまた悪夢に魘されそうな気がした。

 

 

          *   *   *

 

 

 

「――実験は失敗、持続時間は約475秒。ダメだな……」

「やはり低スペックなガラクタじゃ限界がある。もっと性能の良い奴が必要だな」

「この地域じゃいないでしょう」

 

 アルタ達3人が探索する場所から、40キロ南。

 岩場に囲まれた荒野にて、光学迷彩機能付きのマントと純白かつ青のラインが入ったローブを着た人影が2人いた。片方は森にて実験中のスティールレックスのバイタルチェックとその他()調()をホログラムにて確認していた。結果は失敗、スティールレックスは限界を迎えて自滅プロトコルを起動し、ただのガラクタに成り下がってしまったようだ。

 

 もう片方は森にて小型のハエにカモフラージュさせた高性能偵察ドローンにて、スティールレックスの動きを探っていた。この数ヶ月……キメラを相手に何度も試したプランは暗礁に乗り上げつつあった。明確な打開策もないままに、ただひたすら試行を繰り返してきたが、それもしくじった。

 

 ()()には後がなかった。

 

「……こいつらは」

 

 そんな中でドローン越しに謎の人物は気づく。人間2人と機人1体が極めて古い武装で身を包み、スティールレックスの前に現れた事を。

 

「おい」

「何、どうした」

「この地域に未確認の集落があるかもしれない」

「ほう……? そいつらは我々側ではない?」

「機人といる、だから違う」

「……へぇ」

 

 彼らにとってこの地域は、何かと因縁がある。

 調べに調べつくしたが、地球はかなり広い。とりわけ20年近く前の事となると、一度見失ってしまえば再度痕跡すら探すのは難しい。だがここに来て彼らには()()()()があった。

 

「機人のカテゴリーは?」

「1か2だな。見るからに非戦闘タイプ……新興のコレクティブに所属している雑魚だ」

「なるほど、じゃあ脅威じゃないな」

 

 間違いなくこの周辺地域には何かがある。

 願わくばそれがキメラに対して行ってきた実験による、数々の失態を拭える内容かもしれないと。

 

「一旦ドローンで調べる、コイツらの後をつけてな」

「実行部隊はどうする? 私たち自らの手でやる?」

「いや駒を使う、奴らなら幾らでも替えが効くし……素性も漏れない」

 

 ホログラムの画面が切り替わり、キメラの死骸を調べるアルタ達3人を映し出した。武装は貧弱で古めかしい。光学兵器もないし強化外骨格すらない。仲間にいる機人のスペックは見た限り最低クラスであり、非戦闘形しかいないコレクティブの機体だろう。こんな典型的な未開人を相手にわざわざ自分達が出向く労力はいらない。

 

 奴らに相応しい相手は別にいる。

 そちらを向かわせれば事足りる――他の集落のように。

 

「未開人には未開人をだ、その方が他の奴らにも気取られない」

「了解、じゃあ後で連絡する」

 

 2人の人物は軽く話合わせた後、その場から掻き消える。不穏な空気を残したまま。

 

 

 

           *   *   *

 

 

 

「――以上が試験場の見回り中にて遭遇した、異常なキメラについての報告です」

「うむ、ご苦労じゃったの……アルタ」

 

 その日の夜――俺とベガを含めた狩人と、アガトの老人達、そしてケリーとカリウスという知識に富んだ機人を交えた緊急会合が、ヨルマイのティピーにて行われた。今回は例外として現場に居合わせたアイラとノラも来ていた。

 俺の報告は慎重派な老人達だけじゃなく、割と柔軟な意見を言える狩人の大人たちとケリーの顔つきすら険しくした。

 

「アガトの付近でスティールレックスが現れる事はない筈。キメラは縄張りが決まっているのだぞ? 似たような別種を見た可能性は?」

「いーえ、間違いなくスティールレックスです」

 

 老人の1人が楽観的な意見を言った。何言ってやがると突っ込みたくなるが、実物を見なかったらそんな意見も出るだろうなとは思った。しかし残念ながらあれは紛れもなくスティールレックスである。俺はアイラを一瞥して、記録した映像や画像を見せるよう促した。

 

「記録した映像、および画像を表示します」

 

 アイラの目からちょっとばかりノイズが入った光が照射され、集まっていた人達の中心に亡骸となったスティールレックスが表示される。見間違いではと言った老人は、それを見て険しい表情を露わにすると、悪かったなと言って下がった。

 

「スティールレックス……久々に見たぞ。もう最後に現れたのら30年ぐらい前になる。そんな奴が何故ここに……」

「理由は不明ですが、試験用に標的として定めたスコルピオは全機破壊されているかと。キメラで異常な行動をするならば……基底プログラム制御がおかしくなったか、あるいは外的要因によって破損した場合が挙げられますね」

 

 俺は淡々と「結局わからない」アピールをした。

 キメラのいかれた原因なんて、ここで幾ら議論したって答えは出ない。大事なのは俺たちはどうすべきかどうかだ。

 

「試験の日程を延期すべきだとワシは考えている」

 

 ヨルマイが言った。

 異常な事が起きればすぐに逃げの姿勢を取る彼女らしい意見だ。狩人達は「腰抜けが……」みたいな視線をありありと向けていた。ただ俺としては力のない者という自覚がある彼女なりの戦法だと理解している。悪意があって言ってるわけじゃないのだ。

 

「また更に延期……? 別の場所でいいじゃないですか」

 

 意を唱えたのはアイラだった。

 今まで神妙な顔をして事の行く末を見守っていた彼女だが、ヨルマイの発言を聞いた瞬間に顔色を変えた。俺とノラもびっくりしてしまった。

 

「アイラ……語気を強めては――」

「ヨルマイ様は知っていますよね、アルタとベガが試験の後に旅へ出る事を」

「勿論だとも」

 

 まあヨルマイとは何度も話したからな。

 当たり前だ。

 

「2人は本当なら今すぐにだってローグさんを探しに行きたい筈です」

「それは……」

 

 ベガもちょっと思うことがあったのか、眉を下げた。ああ……この2年間確かに俺たちは、旅立つ時をずっと待ち侘びていた。自分達の正体と親の行方、ずっとずっと不安を抱えていた日々からの解放を夢見ていたのだ。

 

「もし延期になんてなったら……私のせいでまた2人に迷惑がかかってしまいます! お願いですから……延期だけはやめて頂きたく思います」

「アイラ……」

「ヨルマイ様、どうかお願いします」

 

 アイラはそんな風に思っていたのか……。俺としてはそんなに責任を感じる必要はないと言ってやりたかった。今回の件は誰も悪くない。悪いのはイカれたキメラを生み出したAIと何処かにある機械の胎だ。今すぐにでも不良品が出ないように改修して頂きたいものである。

 

「アイラの意見を踏まえ……試験について決めていきましょう。よろしいでしょうか……ヨルマイ様」

「うむ」

 

 シャーマンが上手く口添えしてくれたおかげで、アイラとヨルマイの間で余計な対立は産まれずに済んだ。俺たちはとりあえずアイラとノラを先に帰らせると、他の狩人達と共に議論を交わした。試験という大事な日を前に、繰り広げられた議論はそのまま2時間ほど続き、漸く結論が出た。

 

 その内容は平原ではなく、山岳地帯付近にて生息するラヴェジャーの群れを討伐するというものに変更された。なおかつ不慮の事態に備えて試験を受ける狩人の卵を守れるよう、俺とベガ2人が試験中に異常なキメラが現れた場合の対処を、残りの狩人はアガトの周辺にて機械兵器やキメラが乱入してこないよう、防衛体勢を張るといった念には念を入れた運びになるのだった。

 

 この結論にヨルマイは納得、アイラとノラはお守りなんて要らないといった表情をしつつも、ちゃんと理解を示して納得してくれた。

 

 

「――どう思う?」

「んー……」

 

 会合が終わり、自宅に戻った俺とベガは意味もなくベランダから夜空を見上げていた。空には太古の昔に人類が使っていたスペースコロニーの亡骸が、星々の光を隠すように漂っていた。単なるスペースデブリのくせに、中々壮観な光景を作り出している。

 

「まぁなるようになるしかないかな」

「やっぱりそうよね」

 

 ただ話す内容は割とシリアスだ。

 試験を前にして、あのイレギュラー。俺たちは祟られているのかと文句を言いたくなった。

 

「場所は変えたし、平原からは距離がある。縄張り圏内じゃないから大丈夫だろ」

「スティールレックスは縄張りから外れていたけどね」

「言うな……、つーかもしの場合まで予想していたら一向に試験は始まらないだろ」

 

 あのスティールレックスの正体を見極めたい気持ちはわからんでもない。この世界にて予想出来ないハプニングは死に繋がるからだ。ただ現状の俺たちでアレを完全解決するって考えたら、それこそ機械の胎を探すところから始まる。

 その時点で旅立っているし、もうやるしかない。

 

「アイラとノラは2年耐えたんだ。あいつらは俺たちの事を考えてくれていたみたいだけど、逆に俺もアイラたちには早く狩人になって欲しかったんだよ」

「2人とも本当に頑張ってたからね」

「ああ、もう本当に感心しちまうぐらいにはな」

 

 落ち着きのないアイラは冷静さを身につけ、何かと判断力の弱いノラはいざという時に決断を下せる強さを得た。まだまだ未熟な面もあるが、それは俺たちとて同じ事。

 こんな事態じゃなきゃ庇護なんていらないぐらい、2人は強くなったのだ。あいつらこそアガトの守護者に相応しい逸材だ。

 

「……」

 

 ただベガは何だか浮かない様子だった。ただ一緒に夜空をぼんやり見上げては、何かを言い淀む。気になった俺は聞く事にした。相棒の心配事は取り除いてやらねばならないのだ。

 

「ベガ、何を心配してるんだ?」

「ここ最近、ボクの力が徐々に増してる」

「……増してる?」

「うん。あれ? いや増してるというより……元に戻りつつあるかな」

 

 ベガはずっと目を細めて、白くてきめ細やかな人工皮膚をした手を何度も握りしめる。

 

「アルタと絆を深めて、共に戦い、感情を交わしていくにつれてね……身体の内側から、何かが込み上げて来るんだ」

「それは光子(フォトン)か……?」

「いや物質的なものじゃない。何というか……感覚に近い」

 

 ベガの目がいつもよりほんの少しだけ、淡く光っているように見えた。

 

「昔、ボクが拾われる前に頭の中で響く()()()って声と、全く同じ声質をした誰かが……ボクに呼びかけてくるんだ。ボクはそれに反応すると……スイッチが入ったような感覚になる」

「悪夢か?」

「ううん、悪夢じゃない。むしろ声はボクを気遣っているように聞こえた」

 

 更に言うとベガはそれを聞いてから、まるで何かに突き動かされたように……今すぐにここをでなければと思うらしい。誰かが呼んでいる、そしてそいつは悪意を持っていないと。

 

「ボクは怖いんだ、アルタ」

「何に……恐れているんだ」

「全てが何もかも変わる気がするんだ」

 

 ベガは勢いよく顔を振り向き、俺と目を合わせた。

 

「変わった後、ボクらは今まで得たものを失くして……新しい何かを得るんだ」

「……」

「ボクは何も失いたくないよ、ボクの大切な人達が傷つくのも、苦しむのも、そして……死ぬのも」

 

 ベガの手はプルプルと震えていた。

 長らく見せなかった弱みを俺の前にだけ曝け出した。俺は力一杯掻き抱きたくなる気持ちを抑え、優しく頭を撫でてやる。彼女が何を恐れているのか、その全てを知ることは出来やしない。だけど代わりに彼女が倒れないように支えてやる事ぐらいは出来る。

 

「ベガ、大丈夫だ。心配しすぎだ」

「でも、すごく……嫌な予感がするんだ。ボク……エラーを起こしちゃったのかな?」

「エラーじゃないさ。人はな? 環境がガラリと変わると知ると……めちゃくちゃ不安になったりするんだよ」

 

 程度は違うが、学生から社会人になった際に感じる不安みたいなもんだ。いや……本当対象になるかはめちゃくちゃ怪しいが、俺はそう結論付けた。ベガはアイラを救ってから非常に多感になった。普通の人のように感動もするし、俺以外の人を相手にしても優しさを見せるようになった。

 感情豊かになったからこそ、凡ゆる出来事に対して気がかりになっているだけなのだ。

 

「ベガの感情は正しい。だけどそれは予感や予測じゃない、感情の揺らぎだ。気にしすぎるな」

「……アルタ」

「今は心配かもしれないが、大丈夫。俺とお前の2人なら何でも乗り切れる」

 

 これまでがそうだったように――俺は最後にそう付け足した。

 

「うん……そうだね。アルタの言う通りかも」

 

 ベガは少し頬を赤らめて頷く。

 参ったな……本当に彼女は、どんな人間よりも人間らしくて愛らしい。人工知能が魅せるマジックだと最初は思っていたが、何年も見ていればこいつが作り物じゃないと嫌でも思い知らされる。

 

「明日は最後の一仕事だ、頑張ろうぜ」

 

 俺は拳を軽く突き出すと、ベガも笑ってコツンと合わせる。

 

「うん、頑張ろう……! ボクのアルタ!」

 

 一々セリフが狡いな……こいつ。

 




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