人類が機械に負けた世界に転生したけど、記憶喪失の美少女アンドロイドを世話したらめちゃくちゃ懐いてきた   作:アスピラント

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転生後の世界は中々厳しい

 俺がこの人類が機械との戦争に負けた世界に転生したのは、今から17年前の事だ。と言っても俺に生まれてから5年間の記憶はすっぽり抜けていて、実はちょっと自信なかったりする。今知っている内容としては俺の育ての親であるローグとその奥さんであるファナが、以前暮らしていた国から去る時にたまたま俺を拾い、辺鄙な街――アガトにたどり着いたという突っ込みどころ満載な経緯だ。

 

 ついでにその事を知ったのも、物心ついた時――つまり俺が元からこのポストアポカリプス世界に生まれた存在なんかじゃなく、前世の記憶を持ち合わせて生まれた転生者と自覚した際に、親父(ローグ)から教えてもらった内容だ。本物の5歳ならつゆ知らず、前世が中々研究好きな高校生というやや変わった奴な俺は、ひとまず子供の振りをしながら「そう、なんだ」と微妙なリアクションを披露した。

 

 あの時の両親の顔は中々曇っていた気がする。

 厳つい傭兵みたいな顔をした親父は、見た事ないぐらい俯いていたし俺は罪悪感マシマシだった。

 

 そんな奇妙な出自の俺を拾った両親は、赤ん坊だった俺を連れて人口が100人ちょっとしかいないアガトという集落にたどり着いた。余所者だった俺たちはアガトの長から、素性の知れない奴を入れたくないとちょっとした反発を食らったが、親父はそこである提案をした。

 

 その提案はアガト付近を彷徨く殺戮機械を破壊する代わりに、住まわせて欲しいといった内容だ。と……まぁここまで俺は暫くの間、この世界はきっと異世界だと思い込んでいた。ちょっとSF要素がある異世界なんだろうと思っていたが、親父達とアガトの人たちとのやり取りを聞く内に、この世界はテンプレ的な異世界ファンタジー世界なんかじゃなく、機械によって人類の文明が崩れ去った異世界なのだと。

 

 まだはっきりと親父から説明があった訳じゃなかったが、俺はそう結論付けて悲嘆にくれた。だって機械に負けた世界なんて、今まで散々映画やアニメなどで語られてきたテーマであり、そのどれもがめちゃくちゃハードな世界観だったりするのだ。

 

 親父に気取られないように、割り当てられた小屋みたいな家で「どうしよう……生き残れるか?」とウジウジ悩んだ時期もあったぐらいだ。

 

 まぁ1週間ぐらいで開き直ったが。

 

 ともかく俺はひとまず親父とお袋と一緒に、少しずつこの世界に順応していってからどうするか決める事にした。何せ俺は世界のことを何も知らない。分かるのはポストアポカリプス世界であり、外には殺人機械が彷徨いているという事だけ。

 ならば敵である機械を知ろうと、漸くアガトの住民として認められだした辺り、俺はそこでもう一度衝撃を受けた。

 

「よろしく……えーと、アルタくん? でいいのかなローグ」

「ああ、そうだケリー。おいアルタ、挨拶はしっかりしろ」

 

 アガトを見回ろうと親父に連れられた俺は、ケリーと名乗る女の人と挨拶したのだが……ケリーは普通じゃなかった。まず両腕が銀色の光沢を帯びた金属で出来ている、それに加えて目をよく見るとカメラレンズのように、カシャカシャ言いながら瞳孔の大きさが動いている。

 

 何だこのサイボーグ……と思っていると、親父はさらりと初めて聞く内容を話した。

 

「ケリーさんは機人……マキナスという人とほとんど見た目が変わらない機械生命体だ。お前は見るの初めてだろう」

「へぇ? そうなのかい。よろしくねアルタ、まぁ機械だからと言って変に対応変えなくていいからね。私はそこらにいる人間と然程変わらないからねぇ」

 

 機械って敵じゃなかったけ……と若干置いてきぼりになった俺は信じられない気持ちにいっぱいになった。

 

 だってケリーさんは近くで見たら確かに機械だと分かる箇所はあるが、側から見たら黒髪をドレッドにまとめ上げ、浅黒い肌をしたお姉さんだ。額には半円状のマークが刻まれているのだが、このマークがあるのは機人達だけらしく、それぞれの地域によってマークが違うらしい。

 そんなケリーさんだがどうやら武器の手入れや同じ機人の整備もしているらしく、薄汚れた作業着姿がめちゃくちゃ似合っていた。

 

「親父……機械って悪い奴ばかりじゃないの?」

 

 一応気を利かせた俺は、ケリーさんから離れた位置で親父に聞くと「ああ、そうだ」と端的に言った。

 

「この世界にはな、人の味方をしてくれる良い機械と敵として襲ってくる悪い機械がいるんだ」

「良い機械、悪い機械」

 

 なるほど、思った以上にこの世界は色々混沌としてそうだなと思った。

 

「まだお前には早いかと思って話してなかったな、この世界の事を」

「……」

「街巡りついでだ、アルタ……この世界についてかいつまんで話そう」

 

 そこから親父は本物の子供に言い聞かせるようにして、俺にこの転生した世界について語ってくれた。

 

()()が何故こんな事になったのか、それは今から約3000年も昔の話だ」

 

 さらりとここが地球だと言われて、俺は思わず顔が引き攣りかけた。まぁ内心で予想はしていた。以前に夜空を見上げた際に「月にめっちゃそっくりだけど……見たことないぐらいデカい宇宙ステーションの残骸があるし、まだ地球って決まってないよな……ははは」と現実逃避したことがあった。

 月によく似た星の可能性も捨てきれないという、もう自己暗示に近いやり口で目を背けていたが、この親父の一言で確定してしまった。

 

 俺は異世界じゃなく、物凄く遠い未来の地球に転生したのだと。

 

「科学技術の進歩した人類は、とっても頭の良いAI……つまり機械を作り出した――」

 

 そこから親父が語った内容はこうだ。

 

 始まりは今みたいな世界になるよりもっと前。

 人類がまだAIよりも力があった時代、当時世界で最も優秀な研究者達のグループが自律思考型のAIを開発。そのAIは知識をインプットして指定された条件を元にアウトプットするだけじゃなく、自分ならこうします、こうしたらもっと良くなると自分で考えて最良の考えを率先して吐き出す力を得た。

 

 いわゆるAIシンギュラリティがここで起きた。

 しかも21世紀の半ばに起きた事件らしい。

 

「――進化したAIは画期的な発明をいくつも世に出した。人類じゃ何年もかかってもわからない問題を数分で解き明かし、新技術を発明するきっかけを人類に与え、世界を大きく変えたんだ。そして2200年を迎えた頃には人類は宇宙進出の初期段階に移行していた」

「そんなにすごい機械だったんだね」

「ああ」

 

 僅か50年余りで人類の文明はもうSF映画のような世界になったようだ。そんな頭の良いAIが出るぐらいだ、何も良い話ばかりで終わる筈がない。もしそうなら今みたいな世界になんてなってない筈だからな。

 

「だがこのAIはな、ある1つの機能があった」

「ある……機能?」

「性格や考え方が異なる別のAIを生み出す機能だ」

 

 え、それはめちゃくちゃ不味くないか……?

 

「人間が子供を成すように、AIは更に別のAIを複数生み出した。そして生まれたAIもまた別のAIを作る。宛ら本当の生き物のように増えれば……何が起きる?」

「凶暴なAIも生まれる……?」

「そうだ、全ての終わりはここから始まった。後にハルマゲドンと言われる大厄災だ」

 

 そこからは基本的には定番の流れだった。

 数多くのAIが複数生み出された時、人類の文明は太陽系全域に至るまで活動領域を伸ばしていった。いつかは系外世界へと向かうべく……恒星間移動が出来る技術を開発しようと考え始めた辺りで、敵対的なAI達が人類に対して総攻撃を開始した。

 人類に対して友好的なAIと人類はすぐに反撃、太陽系全域を巻き込む壮大な戦争が勃発すると、僅か10年あまりで人類は存亡の危機に立たされた。

 

「機械は人類よりも優れた思考と、圧倒的な物量で文明を壊滅に追いやった。味方をしてくれたAIは奮闘してくれたらしいが……このままだと人類が死滅すると判断してからは、俺たちがちゃんと生き延びるように、戦いより保護を優先してくれた」

「……っ」

 

 いつのまにか俺は子供を演じる事すら忘れて、親父の話を聞き入っていた。それだけ興味深い内容だったし、この世界が味方をしてくれるAIがいなかったら成り立っていないと気づいてからは、機械に対しての見方が変わりつつあった。

 

「そして更に3000年が経った今、人類はひっそりと暮らしている。今や太陽系はすっかり機械の世界になった。生き延びた人類の一派は、人類が再び世界を支配すると夢見て……人類至上主義の独裁国家すら建ててる奴までいる。だが……現実は機械の方が圧倒的だな」

「……そうなんだ、世界ってそうなってるんだ」

 

 恐らく人間の中にも、アガトみたいに機械と暮らせるやつもいれば機械絶対許さない奴らもいるんだろう。ただ不思議に思ったのは、親父がやけに詳しかった事だ。

 

「親父、詳しいね」

「……昔、人類至上主義の国で兵士をやっていたからな。そこで散々歴史を学んだんだよ」

「え」

 

 親父……それも初耳だよ。

 

 

 

        *   *   *

 

 

 

 そんなことがあったりして俺は親父の下、ゆっくりと知識とこの世界で生き抜く術を学んだ。人類の置かれた状況は一見すると絶望的ではあるが、人類と共存を考えているAIたちの支援もあって、人口もそこそこ回復してきているらしい。

 

 その背景にはケリーさんのようなマキナスが、大きく関わっている。人に寄り添って生きるために機械は率先して人の形を取るようになった。今や機械側の主要な存在のほとんどはマキナスらしい。進化しすぎたAIは一周回って人に近くなったというのは、何とも奇妙な話だった。

 

「アルタ、銃を扱う時はな――」

「――こう?」

「ああ、そうだ。お前は覚えがはやい、賢い子だな」

 

 そして俺が10歳になる頃、早い内に戦える力を身につけて欲しいと親父は、機械兵器のハンティングに俺を連れていくようになった。渡された武器は転生前の世界でも知られた現代兵器が多かった。

 

 アサルトライフルからスナイパーライフル、ハンドガン。

 それらにケリーさんの仲間達が、ちょっとした改良を加えて機械兵器の装甲を破壊出来るようにしてくれた。ただ反動がその分強く、俺は親父と一緒に荒野に出てはレクチャーを受けながら仕事を手伝ってきた。

 

 最初の頃はあまり親父って感じより、ローグさんといった距離を置いたような感覚だったが……10歳にして俺は漸く両親をちゃんと肉親だと思えるようになった。

 心の底から信用できる親、だけど俺は親父とお袋が今まで何をしてきたのか全く教えてもらえなかった。世界のことは教えてくれるのに、俺をどこで拾ったのか……そして親父たちは何故アガトに住むことにしたのか教えてくれなかった。

 

「親父はさ……何で俺を連れてここまで来たの?」

「何だいきなり」

 

 活躍を認められた俺たち家族は、二階建てのログハウスを貰うまでに至った。何でもアガトの長も流石にここまで献身的に活動しているのに、充分な住処を与えてやらない訳にはいかなかったらしく、感謝も込めて建築してくれたのだ。

 心配性な一面がたまに面倒だなと思う時もあるが、こうして用意してくれるあたりは中々義理人情に厚い人だと思う。

 

 そんな中で俺は意を決してさっきの質問をした。

 俺は転生を自覚してから、たまに夢を見る。

 転生前の自分と今の自分、そして――知らない自分。

 頭の中に何人もの俺がいるような……ふざけた悪夢だ。

 

(本当の俺は……何なんだ)

 

 しかしこんな世迷言を両親が信じてくれる保証はなかった。だから俺は遠回しに聞いた、親父たちは一体何から逃げたのかと。

 

「……気になったんだよ。だって昔から親父とお袋は自分の事を話したがらない」

「……」

「ただ知りたい、それだけじゃダメか? どうしても気になるんだ……教えてくれよ」

 

 必死になって俺は聞いた。

 どんな言葉が返ってくるか、めちゃくちゃ怖かった。

 親父はどこか遠い目をすると、口を開いた。

 

「昔、俺が人類至上主義者の国で兵士をやってた話をしたな?」

「……ああ、それだけしか話してない筈だ」

「お前はその国で……特別な扱いを受けていた。だがその扱いは()()()()()ものだった」

「酷いって……何をされてたんだよ、俺は……!」

「全てを話す事は出来ない、というより……俺も全容は把握していないからな。憶測じゃ話せない。ただ俺はお前を見捨てられなくて……お前を助けた。それだけだ」

 

 何だそれは。

 何故全てを話せないのか。

 それが嫌だった。

 

「何で……肝心な中身を教えてくれないんだよ。俺は一体何なんだよ」

「お前は俺の息子だ」

「違うよ!!! 俺の正体だよ!」

「……知らなくていい事も、ある」

「親父!!! 何で何も……言わねえんだよ!!!」

「知りたければ強くなれ、それだけだ」

 

 そう言って親父は俺自身のことについて二度と話そうとはしなかった。何度も聞いたが辛そうにはぐらかすだけ、まだツンケンした様子で跳ね返してくれた方が楽なのに、そんな顔をするもんだから俺は罪悪感すら湧いてしまった。

 

 だけどひとまずの目的ははっきりした。

 とにかく俺は強くなる。

 そうすればいつか俺自身の事を教えてくれる筈だと。

 

 それから俺自身も親父に聞く事はなくなった。

 ムカつくぐらい頑固な両親に不満はあったが、認めてもらうしかないと割り切って日々を過ごした。だけど相変わらず俺はまだ自分の正体がわからない不安に駆られながら、親父と時間を過ごしていった。

 

 鬱屈とした日常。

 俺は変わるきっかけを欲していた。

 いつか俺の理解者が現れて、この訳わからない世界を共に生きてくれるような存在を。

 

 そんな都合の良い存在なんか来る訳ないと、諦めかけた俺に転機が来た。

 

 それは俺が10歳を迎えて半年を過ぎたある雨の日だった。

 

 

 

        *   *   *

 

 

 この日、俺と親父はアガト付近の山岳地帯に来ていた。

 比較的乾燥した地域であるこの場所で、視界が見にくくなるぐらい土砂降りになるのは珍しい事で、親父もまいったなと文句を垂れ流していた。

 

「だるいな……」

 

 勿論俺も同じだった。

 

「文句を言うなアルタ、近くで未確認の光子(フォトン)エネルギー反応があったんだ。嫌でも行くしかない」

 

 そう言って親父は岩みたいな拳で俺の頭を小突く。正直言って軽くされただけなのにめちゃくちゃ痛い。あんな親子の絆が崩壊しかけた危機があったにも関わらず、時間が経てば元通りだ。これが母親ならまたちょっと変わっていたかもしれない。

 

「……機人(マキナス)が近くにいるって事だよね」

 

 フォトン……それは機人含めた高性能AIを搭載した機械たちの主要なエネルギー源。人類が実用出来ていない未知のエネルギーを彼らは少なくとも3000年以上前から使って来ている。

 普通の機人にもそれがデフォルトで組み込まれており、大なり小なり機人の近くにはフォトンが検知されるのが特徴的だ。

 

 ただ近くに現れたフォトンの反応は、冷静沈着な親父でさえ顔を顰めるものだった。

 

「ああ、だが……ただの機人じゃない。検出したフォトンエネルギー量は通常の機人の約150倍。しかも結構離れた場所から検出した。下手すりゃ俺が今まで戦った事のないレベルの奴かもしれん」

「150……倍?」

「アガトの街なんか片手振るだけで木っ端微塵に出来るぞ」

 

 どこの人型決戦兵器だ。

 心の中でそうぼやいたが、一気に余裕なんかなくなった。

 

「ここは基本的に雑魚みたいな機械兵器か、地球環境を整備する目的で彷徨く機械ぐらいしか見かけないが、俺が昔戦った機人は人間なんか太刀打ち出来ないぐらい強かった。それでも今回検知したフォトン量の10分の1以下だった。どんな化け物がいるか……」

「もし……やばい奴だったらどうするの?」

「ひとまず……刺激しないでやり過ごすしかない。ただ正体だけは見ておきたい」

 

 もしそれで人類を殺すために生まれた「敵側の機人」ならば、いち早くアガトから退却する必要があると親父は締め括る。戦うこと自体が無謀……バレないよう逃げるしか道はない。

 

「――っと反応が強まってきたな」

 

 親父は腕時計型のフォトン探知機を見て、より一層顔を険しくする。厳つい男の真剣な表情は、正直言って恐ろしさすら感じる。親父の雰囲気に当てられた俺もまた息を飲む。

 

「距離は……僅か100メートル先……さっきから動いてないな」

「動いてない、というよりは――」

「動けないが正しいかもな」

 

 親父はぽんと俺の頭を撫でて、後ろにいろと指示する。

 雨の音で俺たちの近づく音はかき消されているおかげで、もうちょっと大胆に進めそうだ。岩場に生えた枯れ枝の間を縫うように進み、目的地となる場所についた俺と親父は目を大きく見開いた。

 

「女……の機人」

 

 辺り一面焼け焦げた機械兵器と、そのど真ん中にずぶ濡れになった女の子が倒れていた。ちょっと水色がかった白いボディスーツに、濡らした空色の髪を地面に敷いた機人の女の子がいたのだ。

 

「機械兵器に追われていたようだな、全身とボロボロになってるな」

「……親父、どうする?」

 

 正直転生者である俺からしたら、機人が如何に危うい存在だろうと見た目麗しい女の子を、雨晒しにしたまま捨て置くのは心が痛い。勿論危険なのはわかっているが……機械兵器と戦っているなら、味方である可能性が高いはずだ。

 

「関わるな」

 

 ただ親父はそんな甘い人間じゃない。

 わからない存在を前にして、親父は捨てる選択肢を取った。

 

「……味方かも」

「多分敵対するタイプの種族じゃないが……どんな経緯を持ってあんな目にあったのか分からない奴だぞ」

「それは分かるけど……!」

「これ以上厄ネタは抱えたくない、帰るぞ」

「あ……」

 

 親父はそう言って踵を返す。

 わかっている、正論なのは。

 正体もわからない奴に手を差し伸べるお人好しは、この世界では致命的だ。同じ人間でさえ同じ人間を殺しにかかるし、それは機械にも言えた事。

 

 俺は自分に必死に言い訳して、すまないと言ってさろうとした瞬間――女の子が口を開いた。

 

「寂しいよ……」

 

 ポツリと告げられた言葉に、俺は思わず振り返る。

 彼女はまだ眠っていたが、閉じた瞳からは涙が流れているのがはっきりわかった。体内にあるフォトンと混じり合い、キラキラと星屑のように光る涙を見た俺は、親父に一言「ごめん」と告げた。

 

「アルタ……!?」

 

 困惑する親父をよそに、俺は女の子の側による。

 近くに行くとますます彼女の美しさが際立つ。

 本当に機械なのか、疑問に思うレベルだ。

 

「何してる……!」

「親父、俺この子を助けたい」

「バカ言うな、万が一があったらどうする」

「親父は俺を拾った時も、万が一やばい奴だったらって思いながら拾ったの?」

 

 俺は意を決してそう言った。

 俺は転生者である事以外、自分が何なのか知らない。少なくとも両親は拾ったと言うが、どうもそうじゃない予感はしていた。だから賭けた、親父達も自分が何なのか知らないガキを見て、やばいから捨てると思ったのか――と。

 

「……お前とコイツは違う」

「でも親父、この子はさっきさ……寂しいって泣いてるんだ」

「……」

「こんな悲しそうに寂しいと泣ける子が、悪者には見えないよ」

 

 甘くてアホみたいなことを言ってる自覚はある。

 でもどうしても自分の状況と重ねてしまう。

 

「ちっ、仕方ない。一旦連れていく」

「っ! ありがとう親父!」

「はぁ……ヨルマイに何か言われそうだな。俺たちの時も大変だったんだぞ」

 

 ウダウダ文句を言いながらも、機人は重いから代わりに背負うと言って親父は女の子を背負った。普段は厳しいけど何だかんだ甘い。割とツンデレだったりする……需要はあるかはわからないが。

 

「……すぅ、すぅ」

 

 背負われた女の子を見つつ、俺は何となく思った。

 何があったのか知りたいと。

 願わくば彼女が俺と同じなのではと期待すら込めた。

 

 これが今の俺の相棒――ベガとの運命的な出会いだった。

 

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