人類が機械に負けた世界に転生したけど、記憶喪失の美少女アンドロイドを世話したらめちゃくちゃ懐いてきた   作:アスピラント

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長く更新せずにすみません。
体調を崩してしまい、メンタルも不調でした。



怪しげな巣穴

「――よし、行こう!」

「……結局出来たのは拳銃サイズ……」

「う……言わなくていいよ……アルタ」

 

 それから3時間後、ベガは武器形成を何とか最低限使えるレベルまで持っていくと、やった出来たぁとぴょんぴょん跳ねながら喜びを露わにする――ただ出来たのはハンドガン程度の大きさ。これじゃプーパは何とかなるかもだが、キメラ相手じゃ役不足すぎた。

 

「んまぁ何もないよりかはマシだし」

「俺たちもいる」

 

 スジュラとタナクはお互いに顔を見合わせ、これぐらいはカバー出来ると言ってくれたが、ベガの武器形成の下手さが想像以上で、困っているのは明らかだった。

 いやほんと俺の相棒の力はまだまだこんなもんじゃないとは思うんですけどね、おかしいな。

 

「まぁ今は偵察が目的だ、交戦するのは後になる。ベガも気を取り直せ」

「うぅ……なんか出来そうな気はしたんだけどなぁ」

 

 ウダウダと俺たちは喋りながら件の狂信者(アルカディスト)達がいるとされる地点まで急ぐ。意外にも道中で何かしら兵隊がいるとか、罠があるとかはなく、ちょっと本当にここまで進めていいのかと疑問に思うレベルで、順調に行った。

 

 そして俺がそんな場違いな心配してから、そう大した時間も経たない内に、ジャック達から見せられた荒野の岩場に到着した。まさに映像の通りの場所で、俺からしたら心底助かる。

 正直岩場があちこちにあったら、どれが何か分からないかもと思っていたとこだ。

 

「……もう少し近寄ろう、暗視ゴーグルは忘れるな」

「うっす……」

 

 タナクとスジュラが先行、俺は暗視装置をつけて岩場へと更に近づく。暗闇に満ちた時間帯でも機人(マキナス)の目から問題なく見える。周辺のマップ情報を随時更新しながら調査出来るのは、彼らの特権だ。

 

「ん、ちょっと止まって――あれ皆見える?」

「どれどれ」

 

 順調に近くの岩山に登り、拠点が少し見える位置まで来てからスジュラが指示する。俺は言われた通りに見ると思った以上にアルカディストが彷徨いているのと同時に、異質なものが運び込まれているのが見えた。

 

「キメラの……部品」

「キャノン砲とか、シールドジェネレーターとか諸々を運んでるな」

 

 奴らはキメラの武器を鹵獲しているようだ。

 これは少し骨が折れそうだ。

 

「普通の兵器とは違うからなキメラは」

機人(マキナス)を前面に出した戦い方じゃないと厳しいだろう」

「……よし、とりあえず……マッピングだな」

 

 スジュラが小虫程度の大きさのドローンを展開――すぐさま洞穴に向かって飛び立たせた。あれなら確かに感知はされにくいだろう。

 

「内部がどうなっているかだけでも確認する」

 

 ドローンは洞穴の奥へとスムーズに進む。

 中は意外にかなり広いのか、スジュラが展開したホログラムのマップが見る見る内に広がっていく。

 

(一体どこまで続くんだ)

 

 広すぎると探索するのも一苦労だぞと考えていた矢先――少し開けた空間へとドローンが到着した。沢山の機械部品が散らばる空間には、キメラらしき残骸も確認できる。

 そしてドローンが視点を変えた先に、巨大なキメラの頭骨に繋がれた機人(マキナス)が映し出された。

 

「アルタ! これって!」

「さらわれた機人の――」

 

 ついに見つけたと思ったが、ドローンの映像が途切れた。

 

「何があった、スジュラ」

「妨害電波かな……ドローンが壊れた。けど……マップは読み込んだから問題ない」

 

 スジュラのデータを俺たちは共有する。

 ひとまず……目的である行方不明の機人が発見出来たのはでかい。ただ生きているかは微妙だが。

 

「一旦戻って作戦を建てるぞ」

 

 そして俺たちはシナハト村へと帰還した。

 

 

 

          *   *   *

 

 

 

 シナハト村に戻った俺たちは、村の小さな集会所に集まった。既にジャックとライラも待っていて、顔には緊張と決意が浮かんでいる。機人の拘束は確認出来たが……生存しているかは微妙なとこと報告を受けたからだ。

 

「……そうか確認ありがとう。率直に言って……アルタはどう思う」

 

 ジャックがまず聞いてきた。

 

「奴らの手に渡ったキメラの部品がなぁ……。あれで一層手強くなってる可能性がある」

「キメラか……」

 

 ライラが眉をひそめる。気持ちは正直わかる。

 キメラに搭載された兵器はプーパよりやばい。光学兵器でも使われたらたまったもんじゃない。

 

「普通の兵器じゃないからな。あれを使われると、厄介だ」

 

 ジャックの一言に俺は黙ってうなずく。

 そして持ってきたマップをテーブルに広げた。

 

「ここが洞窟の入り口で、俺たちが確認したのはこの辺り。ドローンの情報によると、中は広大で、かなりの数のアルカディストがうろついてる。これに加えて、キメラの部品が運び込まれてるし、恐らく奴らが武装してる可能性が高い」

 

 ジャックが地図を見つめながら考え込む。

 

「だが、キメラの残骸を運んでいるってことは、ある程度エネルギー源や武器の整備が進んでいる可能性があるってことだな。あんな物騒な部品を組み立てられたら、こっちも計画を変えなきゃならん」

 

 ライラが手を挙げて意見を言う。

 

「その前に、洞窟内の状況を把握しておかないと。あれだけ広い場所なら、隠れている敵が多い可能性があるし、罠も警戒しないと」

「まぁ罠はあったとしても、予想される場所に絞るしかないな」

 

 正直出たとこ勝負感はある。

 

「まずは、奴らの兵力をなるべく少なくする方法を考えよう。洞窟の中に入り込む前に、少しでも数を減らせるように罠を仕掛けたり、罠を誘発させたりするのが一つの手だな」

 

 ジャックがうなずき、ライラも納得したように頷く。

 

「それなら、俺たちは周囲の岩場からの遠距離攻撃で少しでも削れるかもな。隠れて撃てる場所をいくつか確認しとこう」

「その通り。俺たちはなるべく近づかず、外から援護する形にしよう」

 

 ならば突入は俺と機人部隊になる。

 俺はともかく……スジュラやタナク、ベガのフィジカルならまぁ死にはしない……たぶん。

 

「それに、スジュラのドローンがまだ使えるから、それを使って内部の確認も進めていこう」

「じゃあ、計画を練り直して、実行に移すまでの準備を整えよう」

 

 ライラがしっかりとした口調で言うとそれぞれが自分の役割を確認し、再度作戦の細かい部分に焦点を当てていく。こうして、俺たちは慎重に進めなければならない。この戦いでは、少しの油断も命取りになる。

 

(捕まった機人は……ダメという前提で行くか)

 

 問題なのは何をされたか――だ。

 何故攫ったのか、何故キメラと接続させてるのか。

 それが分かれば……アルカディストの目的にも繋がってくる。

 

「それじゃ皆に洞穴内のマップデータを渡す」

 

 スジュラが手に持っていたホログラムのマップがテーブルに映し出され、俺たちの前に広がる。それと同時に皆のオムニバンドにマップデータが行き渡る。

 

「このデータが全部だ。ドローンが確認した範囲のマップを各自で見れるようにしてくれ」

 

 スジュラの冷静な声が響く。

 マップには、洞窟の構造が細かく描かれており、いくつかの隠し通路や開けた空間も明示されている。だが、それだけで油断はできない。洞窟内にどれだけの数の敵が待機しているのか、キメラの部品がどれほど活用されているのかは、実際に入らなければわからないのだ。

 

「ここからの突入は慎重に行く。ドローンが得た情報から、内部の配置や重要なターゲットはだいたい把握できたが、アルカディストの兵力は恐らく予想以上に多い」

 

 スジュラが指でマップの一部を示す。

 

「そしてこのエリアにはキメラの残骸も集中していて、機人の拘束が確認できた。まず私たちはそこへ向かう」

「ジャックとライラは外を見てくれ、援軍が来たら無線で合図を――」

 

 テキパキとスジュラとタナクが説明する中で、俺は妙に静かなベガへと視線を向けた。

 

「……はあ」

「何でそんなため息吐く」

「だって……ボク、なんか今役に立ってないから」

「あー……」

 

 黙っていた理由は至極単純――作戦立案とか全く出来ないからだった。

 

「教えてもらった武器構築もさー……なんかうまく行かないし」

「ちっこい銃は作れたろ」

「でっかいのが良かった」

 

 頬を膨らませるベガに癒されつつも、俺は言った。

 

「お前は焦らなくていい」

「……」

「ちゃんと前へ進めている、だから不安になる必要なんかないんだ」

 

 俺は知っている。

 ベガはきちんと前へ進み、努力している事を。

 むしろ……足を引っ張っているのは自分で、ずっとベガには助けられている。

 

「お前がちゃんと力をつけれるようになるまで、俺がお前の銃にでもなってやる」

「アルタ……」

「だから自分のペースで……焦らずやってくれ、な?」

 

 俺はベガの頭をくしゃりと撫でる。

 機械だなんて信じられないぐらい、柔らかくてきめ細やかな髪に、体温すら感じられる。人とは違っても……それは単にタンパク質か特殊合金かどうかの違いでしかないなと、改めて思った。

 

「わかった、じゃあ……しばらく頼りにする」

「そのかわり最強になったら、俺はお前に頼りっぱなしになる」

「全然いいよ! ボクがぜーんぶ倒してあげる!」

 

 カテゴリー10だったらマジなんだよなぁ。

 

「ほら2人とも、乳繰りあってないで作戦に参加しろよ」

「繰りあってねぇよ」

 

 スジュラはとりあえず知り合ったばかりの人がいる場所で、そんな事を言わないで欲しい。

 

 

           *   *   *

 

 

 深夜――シナハト村から少し離れた場所で、暗闇の中にアルカディストのパトロール隊がひしめき合っていた。洞窟周辺を取り囲むように配置されているそれらの兵士たちは、規律正しくも警戒心を強くしている。それもそのはず、周辺の状況に異常を感じ取りながら歩いているのだから、今この瞬間も敵の接近に気づいていないのだ。

 

 俺は視線を周囲に巡らせながら、ライラとジャックの位置を確認する。しばらく前から、外の警戒を任されたジャック達が、俺たちの動きに合わせて、慎重に行動を開始しているのを感じる。

 

《――ジャック、ライラ、準備はいいか?》

《問題ない》

 

 ジャックの声が無線越しに響く。

 ライラの返答はその後すぐに続いた。

 

《お前が動けと言った通り、動く準備はできてる。だが、静かにやれよ。音を立てたらすぐにバレる》

「わかってる」

 

 俺は慎重に息を吸い、深く吐く。隠れながら近づくべき場所を見極める。もう少しで、パトロール隊が俺たちの周囲を取り囲んでいる場所の隙間を通り過ぎる瞬間だ。

 

 一瞬の静寂が流れる。

 

 その時、ジャックが一気に静かな手つきで銃を構えた。スコープ越しにアルカディストの動きが映る。じっとりとした汗が背中を流れ落ちる。

 

《一発で決めるぞ》

 

 ジャックの冷徹な声が、俺の心臓を掴んだ。

 

 その言葉に、周囲の空気が一変する。ジャックのスナイパーライフルから放たれる弾丸が、何の音も立てずに暗闇の中で静かに光を放ち、目標を貫いた。目の前のアルカディストがそのまま崩れ落ち、倒れる。

 

 その瞬間、他の連中も反応を示す暇なく、ジャックが次のターゲットを素早く切り替え、また静かにトリガーを引く。その音すら響かないほど、次々と倒れていく。

 

 次々に続く音もなく、静かな夜に死の影が忍び寄っていくように……狂信者は自分が死んだ事すら気づかないまま倒れていく。

 

《ライラ、右》

 

 ジャックの指示が入ると、素早くライラが動いて遠くにいるパトロールに照準を合わせる。息のあったコンビネーションは俺も参考にしたい。

 

《よし……オッケー、アルタチームは進んでよし》

 

 さて次は俺たちだ。

 ガラ空きになった洞穴付近には死体が至るところに転がっている。スジュラとタナク、そしてベガも音を一切立てずに進んでいくと死体を持ち上げ、衣装を剥ぎ取っていく。

 

「うぇ」

 

 ベガは血に触れると舌を出して気色悪そうに言った。

 気持ちは分かるけど我慢しようね……。

 

「匂いはこれで取れる」

「ありがとう……うぇー」

 

 スジュラも匂い取りスプレーで血の匂いを掻き消す。

 そして難なく着替え終わると、俺たちは洞穴の前に立つ。

 

「洞穴だ……ここからは慎重に」

「おーけー」

 

 スジュラの合図の下、4人はくっつくようにして中へ突入する。その際に無線越しに幸運をという連絡を受けた。

 

(順調順調……)

 

 中はある程度ドローンで見ていたから、何となくはわかっていたが……予想以上に狭苦しい。真正面から遭遇したら抱き合ってもおかしくないぐらいだ。

 

  洞窟の中は意外に狭く、足元に気をつけながら一歩一歩進む。静かで、わずかな息遣いが響く中、俺たちは前を行くスジュラとタナクの背中を見守っていた。

 

「狭っ」

 

 ベガが小さな声で呟くと、俺は耳をすませて周囲の音を確認したが、やっぱり静寂に包まれている。このまま順調に進めるのならいいんだが……。

 

 そのとき、前方にぼんやりと光が見えた。洞窟の内側の壁が突如として開け、広い空間が広がっているのが分かる。さらに、視界が開けたその先には、数人のアルカディストがこちらを見つめている。

 

「まだ気づかれてない」

 

 スジュラが小声で言った。

 確かに敵の兵士たちはこちらに気づいているわけではないようだ。しかし変装したとはいえ、時間が経つごとに気づかれるリスクも高まってくる。

 

「様子を見るぞ」

 

 タナクが手を動かして余計な動きをしないよう合図する。

 

「焦らず、何とか誤魔化せればいい」

 

 俺はなるべく冷静に、相手の行動を観察しながら答える。呼吸を整え、身体をできるだけリラックスさせて――できるだけ目立たないように歩幅を小さくして移動した。

 

 だが、アルカディストの一人が歩き出し、こちらに近づいてくる。心臓が一気に高鳴り、体が固まる。隠れ場所がないまま、俺たちがどうしても目を合わせることになる――その瞬間だった。

 

「おい、あんたら何してんだ? 外のパトロール部隊だろ?」

 

 アルカディストが何気ない調子で声をかけてきた。それに、タナクがまず反応して「ライトを忘れていた」と、すぐに振る舞いを真似て返事をする。僕も後ろからその通りに続く。

 

「おっと、ああ、そうか。次から気をつけろよ」

 

 そのままアルカディストは、疑念を抱きながらも通り過ぎて行った。

 

「よし、なんとか誤魔化せたな……」

「ちょっとバカで助かった」

 

 スジュラが軽く息をつき、僕もほっと胸をなでおろす。あのまま一歩間違えば、あっという間にバレていたところだった。

 

 だが、安堵もつかの間。さらに進んだ先で、今度はもっと厳重な警戒体制を取っている一団に遭遇した。それは、ただのアルカディストたちではなく、明らかに特殊な装備をした連中――EXOスーツを着た兵士たちが屯していたのだ。

 

「――ん?」

 

 一人のEXOスーツの兵士が、俺たちをじっと見てくる。どうやら、何かに気づいたらしい。

 

「おい、そこのお前……機人じゃないのか?」

(あん? 俺は人だぞ)

 

 その言葉に、俺は何をバカなと思った。まだ俺は人間の筈だ。機械化だってそこまで進んでない。しかしそんな事なんかしらねぇと言わんばかりに、俺の目の前でEXOスーツの兵士が手を動かし、機器を取り出す。確実に僕たちの正体を見抜こうとしている。

 

「……準備を」

 

 スジュラが短く呟く。

 

「ああ……」

 

 俺は身構えた瞬間――その兵士がゴーグル越しに俺を睨む。

 

「……ん?」

 

 その言葉と同時に、目の前の空間が光り、ホログラムのような映像が現れる。もういつでも銃に手を伸ばせる位置まで手を動かすと、男は叫んだ。

 

「やっぱり――お前たち、機人か!」

 

 その一言と同時に、周囲のアルカディストたちが反応する――だが俺はもっと早くパラディオンを引き抜いていた。

 

「あいにく……まだ人間だ」

 

 そして俺は引き金をひき、アーマーの男の頭を粉微塵にした。

 

「警報! 敵、機人が現れた!」

 

 瞬く間に周囲の空気が一変し、場が一気に戦闘モードへと切り替わる。僕たちの変装も、もはや意味を成さなくなった。

 

「戦闘開始だ!」

「行くぞ!」

 

 その瞬間、銃声と共に爆音が洞窟内に鳴り響いた。

 まず最初にスジュラが槍を取り出し、前方にいたアルカディスト2人を刺し貫く。

 

「うげぇ!!」

「ぎゃああ!!」

 

 悲鳴なんかものともせずに、スジュラは槍を横なぎに払って身体を両断――そのままEXOスーツを着た兵士へと向かう。

 

「人類の敵めぇ!!!」

「もう時代は変わったのさ!!」

 

 お互い真正面からぶつかり合い、衝撃波がはしる。

 だがスジュラに軍配が上がった。

 何故なら組み合った瞬間に男の両腕は潰れていたからだ。

 

「ああああ……っ!!」

「あたしと真正面から組み合うのはバカのやることだよ」

 

 そのままスジュラは切り裂くようなハイキックを食らわせ、男の頸椎を蹴り砕く。

 

(これが……機人の力……!!)

 

 アガトでアイラ達を見てきて、機人の能力の高さは痛感してきたつもりだった。だがスジュラの戦いを見て、俺は考えを改めた。

 

 こんな奴がより強力な兵器をこさえて何万体よってたかってやってきたら、人類なんか勝てるわけない――と。

 

「EXOスーツは確かに……普通の人間や非戦闘向けの機人からしたら脅威だな」

 

 タナクは平然とした顔でアルカディストを撃ち殺しながら言う。

 

「だが俺たちは戦闘向け……まぁ標準的な機人だが、この程度じゃ敵ではないな」

 

 全く恐ろしい……俺は若干引いていると、目の前にいつのまにか敵がいた。

 

「食らえ!!」

「させない!!」

 

 すると俺が気づくより先にベガが飛び出し、白亜の小さな銃を撃つ。前に作った奴を早速使ったのかと思ったら、ベガの銃を思いの外、腹の底に響きそうなズドンという発砲音を奏で、男の上半身を綺麗に消し飛ばした。

 

「「ぇ……」」

「うわ……えぐ」

 

 これには俺とベガも目が点になり、スジュラは顔を顰めた。

 

「……ベガの銃、絶対乱射はしない方がいい。洞穴が崩落する」

「や、やめておこう……ベガ……」

「う、うん……わかったよ……アルタ」

 

 タナクがごもっともすぎる言葉を残し、俺とベガは2人して顔を見合わせて何度も頷く。やっぱりお前が一番スペック飛び抜けてるよ、うん。

 

 

           *   *   *

 

 

 一方で洞窟の入り口付近――静寂の中、ジャックとライラを入れた人間組は、それぞれ暗視ゴーグルを装着し、夜の闇に溶け込むようにして立っていた。周囲には一切の音もなく、風の音すらほとんど聞こえない。緊張感が漂う中、ジャックはまず目を細め、暗闇を見つめる。

 

「動きはないな」

 

 ポツリとジャックが呟く。

 

 ライラは手にしたスナイパーライフルを軽く肩に乗せ、周囲をゆっくりと見回す。

 

「洞窟内の奴らが進んでいるうちは、ここで気を抜かずに見張るしかないな。万が一、裏をかかれたら面倒だからね」

 

 ジャックは頷き、ゆっくりと頭を動かして周囲を再確認する。周囲の茂みの間や岩場の影――全ての隙間に注意を払いながら、全身をピンと張った姿勢で監視を続ける。暗視ゴーグルを通した視界は、通常の夜間よりもはるかに明るく、近くの物音さえも見逃さない。彼の視線は細部まで行き届き、少しでも異常があればすぐに対応できるように準備している。

 

「でも、何もないな。さっきから動きもないし」

 

 ライラが少し呆れたように言った。

 

ジャックはもう一度、ゆっくりと周囲を見渡してから、静かに答えた。

 

「待つしかないんだ。油断するなよ。」

 

 洞窟内での作戦が進行する中、二人は息を潜めながら、完全に周囲の状況に集中していた。

 

 何もかも順調……誰もがそう思うだろう。

 しかし彼らは気づかなかった。

 アルカディストの死体の中の1つ、非常に小さな発信機が特殊な信号を流していた事を。

 

「ギギギ……」

 

 そしてその信号が、プーパを惹きつけるものだという事を。

 

 

            *   *   *

 

 

「――ここ……だな」

 

 アルカディストを一通り片付けて、何とか俺たちは攫われた機人のいる空間へたどり着いた。その場所は一言で言うなら、凄惨な殺人現場みたいな場所だった。至るとこにバラバラになった機人が転がり、青い血が床を濡らしている。

 中には解体されたプーパもあり、筆舌し難い悪臭を放っていた。

 

「悪臭のせいでアルカディストの鼻がバカになったのか……」

「酷い……」

 

 これには修羅場慣れしたスジュラも険しい顔をするしかない。ベガに至っては怒りすら滲ませている。だがメインはここではなく、奥にある。

 

「…………」

 

 まるで肉食恐竜のようなキメラの頭骨と、頭をチューブで繋がれた攫われた機人だ。着ていたシスター服はズタボロにされており、目は白目をむいていた。

 

「おい! あんた意識はあるか!」

 

 俺は急いで駆け寄り、声をかける――が何も返事はしない。

 ただあんぐりと口を開け、白目のまま。

 

「……一応フォトンの反応はあるが……」

 

 タナクはじっくり観察するが、何とも言えない表情のままだった。

 

「とりあえず……チューブをどうにかして外そう」

「安全に外す方法は――」

 

 ベガとスジュラの2人が何か方法はないかと辺りを探していると、いきなり攫われた機人の目に光が戻った。

 

「ァアアア……ァアアア!!!」

「なっ」

 

 悪寒がした俺は急いで離れた。

 機人は首をガクガク動かすと、ニヤリと笑った。

 

「……ぉお、まさか……このような存在が……いたとは」

「……?」

「その素体……貰うぞ」

 

 まるで誰かに喋らされているかのようなことを言った後、機人はガクリと意識を失う。すると後ろに繋がれていたキメラの目が赤く光った。

 

「キメラが……!!」

「イヤァアアア!!」

 

 まるで女の悲鳴のような叫び声をあげたキメラは、ガチャガチャと肉体を変形させながら立ち上がると、どでかい咆哮をあげた。

 

「ダシテダシテ!!! カイホウシテ!!! イヤダァアアアァアアア!!!」

 

 喋っている、あのキメラが。

 そこで俺は思い出す。

 アガトが壊滅する直前に相対したキメラも、人の叫び声をあげていたことを。

 

「……戦うしか無さそうだな」

「アルタ……」

「何だ、スジュラ!」

 

 俺は気色悪い何かを感じながら銃を構えると、スジュラはこう言った。

 

「あのキメラから……攫われた機人と同じ信号が……出てる」




改めて応援よろしくお願いします。
お気に入り、高評価、ぜひぜひお願いします。
知っている人がいるかは分かりませんが、こちらの方を更新していきますのでよろしくお願いします。
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