人類が機械に負けた世界に転生したけど、記憶喪失の美少女アンドロイドを世話したらめちゃくちゃ懐いてきた   作:アスピラント

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未熟な機械少女は認められたい

「アイラとノラが行方不明……!?」

「ああ、ケリーから朝一に連絡があってな――」

 

 俺がベガと人間関係について、軽く話した翌日。人々の喧騒によって叩き起こされた俺は、リビングにて親父から衝撃的なニュースを知らされた。何とアイラとノラが昨夜の内に勝手に武器を持ち出して、姿を消したらしい。

 アイラの親代わりをしていたケリーは珍しく取り乱した様子で親父達狩人に連絡し、手の空いた正式に捜索へと向かうことになったのだ。

 

「いつ出て行ったんだ……」

「わからん、ただ最悪なのは今雨が降っている上に……行き先がわからないことだ」

「……っ!」

 

 俺は窓の外を睨み、ザァザァと激しく降り頻る豪雨に恨み言を吐きそうになる。雨が降り始めたのは4時間は前だ、アイラとノラの足跡は雨によって消え去り、彼らがますますどこへ行ってしまったか分からなくなっているだろう。全く面倒極まりないが、アイラが出て行った理由には心当たりがあったため、彼女に対してあまり強い負の感情を向けられなかった。

 

(ベガに相手にされなかったから、ムキになって狩りに行ったんだろうな……! ノラもダメな事ぐらいわかっていただろうに、クソ!)

 

 ストッパー役であるノラも付いてしまった以上、アイラに止まるという選択肢は出てこない。何を狩りに向かったのだろう――俺も探しに行くかと準備したが、親父が手で制す。

 

「今回はお前達は留守番だ」

「え……」

 

 え、何故だ。

 人手は多い方がいいだろ。

 

「戦い慣れているのはわかってるが、これは大人がやる仕事だ。お前は家で大人しくしていろ」

「何でだよ」

「お前はまだ山の環境を深くは知らないだろう。長時間の捜索をするには、まだまだ経験が足りん。その点……俺たちはこう言うのに慣れている。だからお前達は一旦待機だ」

「一旦……って事は」

「手を借りたい時は言う」

 

 そう言って親父は家の外で待たせていた仲間と一緒に、アガトから出て行ってしまった。遅れたお袋が俺の肩に手を置いた。

 

「心配ないわ、あの人が探しに行ってくれたんだから。見つかるわよ」

「ん……まぁ……わかったよ」

 

 若干の負い目じゃないが、顔見知りだし原因の一端を俺の相棒が担ってしまっている以上、責任は感じていた。俺よりもベテランな狩人が探しに行っているから過剰に心配する必要もないとは思うが、気掛かりなのは変わらない。

 

「無事だといいんだがな」

 

 俺はこの世界に来てから目の前で死んだ奴を何回か見たことある。銃に撃たれて身体がバラバラになった奴、キメラに食いちぎられた奴。アガトの街にいる奴だけじゃなく……旅人らしき人が死ぬのも見てきた。

 

 この世界で無残な死は珍しくない。

 何がきっかけで自分がそうなるかわからない怖さを孕んだ世界なのだ。それがアイラとノラに訪れてしまったらと思うと、俺の心は強く痛む。

 

「頼んだぞ、親父」

 

 役割が与えられてない以上、俺が下手に動けば邪魔になる。俺は平静を装って2人の無事を祈った。

 

 だけど更に半日が経過しても2人は戻って来なかった。

 

 

 

         *   *   *

 

 

 

「ハァ――ハァ――」

「ノラ……あとちょっとだから!」

「ごめん……アイラ」

 

 雷が轟く空の下、アイラは傷だらけになったノラを背負って近くの洞穴に駆け込んでいた。アガトの街を出て彼らがまず狙ったのは、機械兵器の中で巨大な種類に当たるアラフニだった。辺境の荒野にて最大の脅威に数えられるアラフニを倒せば、冷たい態度を取ったベガでも見方を変えてくれるのではとアイラは期待したのだ。

 

「謝らないで……いい。悪いのは私なの」

 

 そしてノラが何故こうなっているのかと言うと、被弾しかけたアイラを庇おうとしてこうなったのだ。アラフニ含めた機械兵器が標準で装備する機銃は、そのどれもが対車両用の大口径だ。アイラを狙った弾は割り込んだノラの身体を擦り、すぐ側に着弾。

 

 ノラの背中には大きな切傷のような弾痕が刻まれ、倒れ込んだ際に足を捻ってしまった。アイラは咄嗟にノラを背負い、戦線を離脱。アガトに戻ろうとしたが……警戒中のアラフニと他の機械兵器まで帰り道を彷徨き出したため、2人は帰れなくなっていた。

 

「ごめんなさい……ごめんなさい」

「……アイラ、これは俺の責任だから……」

「ノラは悪くないわよ……っ」

 

 慰めようとノラは懸命に声をかけたが、アイラは反応しない。無理もない、自分が行くとわがままを言わなきゃノラは負傷しなかったし、こうして帰れなくなる事もなかった。

 全ては自分のミス――アイラの心はすっかり疲弊していた。

 

(こんなつもりじゃなかったのに)

 

 アイラはレンズから溢れる涙を拭う。

 機人の涙は純粋な水だ。身体の約半分は人工的に作られた生体組織で出来ており、人間の肉体のように水が含まれている。電子頭脳内にあるAIが感情の起伏を発生させると、表情から涙など人間と同じような反応を示す。

 

 そして今のアイラは悲しみと悔しさ、そして罪悪感によって混乱状態に陥っていた。何故こんなことをしてしまったのだろう……機人ならばもっと冷静な判断が出来たんじゃないかと。

 

(こんなんじゃ……ベガだって呆れるよね)

 

 アイラをここまで駆り立てるのは――ベガと最初に出会い、それから同い年でありながら圧倒的な強さでもって、活躍する姿に憧れと嫉妬を覚えたからだ。

 

(私はベガみたいに、強くなりたかった)

 

 アイラが初めてベガと会ったのは、アルタに連れてこられた日だった。尤も面識がある訳じゃない、ローグに背負われた妖精のようなベガを見て、同じ機人とは思えない美しさに震えたのだ。

 

 すごい綺麗な女の子だ。

 でも見ただけで分かった、彼女は機人だと。

 彼女の中にあるエネルギーと凄まじい存在感は、同じ機人でしかわからないものだった。

 

 一体どんな子なんだろう。

 何があったんだろうとアイラは興味を持つが、アガトに来たばかりのベガは心をずっと閉ざしていたため、一向に会う機会は訪れなかった。

 

 だからたまにアルタに話しかけたりして、あの女の子はどんな子なんだと聞いていた。

 

『ねぇアルタ、あの拾った女の子だけど……どう?』

『話しかけても無視されちゃうかな』

『そ、そう。単純にアルタが不快とか?』

『失礼だな! あ、いや……多分もっと根本的なものかも……』

 

 この時はわからなかったが、ベガは人間からも機械からも良い扱いをされなかったという話を聞いてから、アイラは何となくベガを気にかけるようになった。

 

 アガトに同い年の機人――かつ女の子は居ない。

 友達はいるけど年齢や性別が違っていたから、出来れば同じ属性の友人が欲しい。そんな子供っぽくて可愛らしい理由から、アイラはいつベガと話せるか楽しみにしていただけに、かなり心配していたのだ。

 

 そしてついにアルタがベガと一定の信頼関係を結び、初めてケリーの工房を訪れた瞬間にそれは起きた。

 

『よろしくベガ……でいいんだっけ? 私はアイラ! 遠慮なく私を頼りなさい!』

『ん……?』

 

 彼女からしたらアガトじゃわからない事だらけだろうし、ここは先輩としてベガを導こうとしただけだった。しかしベガはまだアルタにしか心を許していなかった。

 そんな彼女からしたらアイラの態度はちょっとだけ高圧的で、気に入らないタイプだった。

 

『……頼らない、全部アルタに聞くから』

『え?』

『ボクはアルタ以外と話す気ない』

『な、ん、だ、と……』

 

 そしてアイラはかなり勝気な性格。

 こっちは心配してやってんのに、話す気ないと拒絶されたらまぁムカつく。ただベガ自身はいきなりグイグイ来た彼女を見て、どう接したら良いかわからなかった。それ故に態度は非常に冷たいものになっていたが、そんな背景があるとアイラが察するのは不可能だ。

 

 いや……アイラじゃなくても無理だろう。

 そうなれば自然と対立が生まれてしまう。

 

『生意気な奴ね……! 分からせてやろうかしら……!』

『何急に。言っとくけどボクは君なんか興味――』

『あら? 逃げるの〜?』

『……上等、ボクの力をみくびるなよ……』

 

 側にいたアルタはひたすら慌てていた。せっかく他の子と仲良くなれるかなと思ったのに、アイラとベガの相性がめちゃくちゃ最悪で互いに「分からせよう」としているのだ。これが普通の少女ならまだしも、お互い機人である。

 

 殺し合いになったら――と思ったが、内容は思っていた内容より優しかった。

 

『うぐ……! 足はや……!』

『ボクの勝ち、アイラは足が遅いね』

『うがー!!』

 

 まずはアガト近くの平原にて駆けっこ。

 勝者はもちろんベガで、アイラはかなり置いて行かれた。ベガはドヤ顔をかまし、アイラは歯噛みした。まさかここまで差があるなんて――しかしアイラはまだまだと次なる勝負を挑んだ。

 

『銃の組み立ては私の勝ちね!』

『……ボクの知らない分野じゃん』

『負け犬の言い訳ね〜』

『む……』

 

 アイラはケリーの下で学んだ銃の仕組みを活かした競技で、かなりせこいやり口で勝利をおさめた。納得のいかないベガも負けじと勝負を挑む。

 

『ふん』

『いったぁ! あんた力強すぎ!』

『腕相撲はボクの勝ちだね』

 

 ある時は力比べ勝負で腕相撲したり――

 

『機械兵器の知識は私が上みたいね』

『まだ勉強してないもん……アイラはズルしないとボクに勝てないの??』

『あんただって自分に得意なジャンルで勝負してるじゃない!』

 

 工房にて保管された機械兵器の名前を当てたり――などなどの勝負を重ねた。お互いに負けては勝ち、負けては勝ちを繰り返していく中で2人は奇妙な関係性が構築されていく。アイラはいつしか「気に食わない奴」から「ライバル」へと認識を改め、ベガは「興味ない奴」から「負けたくない人」へと変わっていった。

 お互いに反発し合いながらも、なんだかんだで認めているような……いじらしい関係が続いた。

 

『ベガ! 今日も勝負よ!』

『ふん、また負かしてあげるよ』

 

 アイラはいつかしかベガに認められたいと思い、ベガはそんな彼女と話すのが自然になっていた。しかしその関係性はアルタとベガの2人が狩人として、アガトの守護者としての立ち位置を確立するまでの間だった。

 

『――勝負する時間ないから』

『え……』

『アイラも狩人になって、皆を守りたいんでしょ? ならボクにかまけてる場合はないと思うよ』

 

 ベガはひと足先に()()になった――アイラはそう感じてしまった。アルタとベガは戦闘を通じて精神的にも成長し、子供特有の落ちつきの無さが薄らいでいったのだ。ただそれはアイラから見ればの話であり、ベガ自身はなまじ経験があるからこそ()()()()()だけだったりするが、アイラには分からなかった。

 

 ――置いてかれたくない――

 

 ライバルだと思っていたベガは、どんどん遠くなっていく。

 

 ――前みたいにまた勝負しようよ――

 

 口では生意気なことを言っていたけど、本当は楽しかった。

 

 ――もっと私を見てよベガ――

 

 いくらでも謝るから友達って認めてよ。

 そんな切ない思いを抱えた彼女は、ついにノラを意図せず巻き込む形で事態を悪化させてしまったのだ。

 

「――止血剤と麻酔打った、傷も縫合した……ノラ、大丈夫?」

「ありがとう……おかげで、今はマシかな」

 

 懐かしい記憶を思い返しながら、カリウス直伝の応急処置でノラの傷を塞いだアイラは、安堵のため息を吐く。呼吸なんてしない機人だが、人間の振る舞いをインストールされた事によって彼らもため息を吐くのだ。

 

「雨……止まないな……」

「運がないな、俺たちは」

「……そうね」

 

 暗い洞穴の外、曇天が覆う世界をぼんやりとした眼で2人は眺める。まるで身の程知らずだと神ですら自分達を叱りつけているような気がしていた。

 

 

 

          *   *   *

 

 

 

 ――勝負しなさい! ベガ――

 

 快活な笑みを張り付けたあの子(アイラ)が、ボクに食ってかかる。最初は理解出来ない人だと思った。何でよく知らない癖に距離感が近いのか、周りを信用していないボクからしたらちょっとした恐怖の対象でもあった。

 

 何故ボクに構うのだろうか。

 見ず知らずのボクに何を期待しているのか。

 ボクの理解者なんて沢山も要らない。

 

 そんな風にして拒絶したのに、アイラはボクの壁を勝手に乗り越えてきた。

 

 ――ボク、アルタ以外は――

 

 ――あら? 負けるの怖いのぉ?――

 

 ――何だと……この!――

 

 勝負をふっかけられた時は特にうざかった。

 どう足掻いてもボクのが上だ。見ただけで情報が入ってくるボク相手に勝ち目はない。だけど彼女は諦めずに食らいつき、ボクが得意としない内容で勝ちに来た。

 

 ずるいと思ったが、生き残るには結果が全て。

 こんな理不尽なんて乗り越えなきゃ、アルタと生きられないと考えたボクは何度も彼女と勝負して、勝ったり負けたりを繰り返してきた。中々つかない決着に業を煮やしたりしたけど、心の中で楽しんでる自分もいた。

 

 これがひょっとして()()なのかな。

 ボクはらしくない感情に困惑しながらも、勝負する時間を楽しんでいた。

 

 だけどそんなボクの考えが変わったのは、アルタと一緒に狩人として認められだしたタイミングだった。ひと足先に色々訓練していたという事もあって、この年じゃかなりイレギュラーな正式認定を経て、ボクの思考はより最適化された。

 

 それと同時に昔と変わらないアイラを見て、ボクは苛立ちを覚えた。もうすぐ君は狩人の試験を受けられる年になる、なのに遊びにかまけていたら目標が遠のいてしまう。

 ボクは彼女のためを思って避けるようになった――が、それがより深い溝を生み出していた。

 

 ボクはいつしかアイラに対して無意識のうちに、冷たい態度をとるようになってしまった。本当は嬉しかったと言う事も出来ず、何となく分かるだろうとボクは思っていたけど……結局思いや考えは言葉にしないといけないと分かった。

 

 

「――ぁ?」

 

 ボクは意識を浮上させて、木目が並ぶ天井を眺める。あれから逃げるように自室に閉じこもったボクは、どうやらアイラと出会ってからの日々を思い出していたようだ。

 

「……謝りに行こう」

 

 今思えばボクは誰かに謝るといった事をした覚えはない。軽く会話した際に言ったことはあるかもしれないが、わざわざ謝りに行く事はしなかった。

 

「……」

 

 少しアイラに会うだけだ――でもちょっと怖い。

 ボクはかなり酷いことを言ってしまったと思う。自ら歩み寄ってくれた子に対して、何で真似をしたのか自分で自分を叱りつけたくなる。

 

「よし」

 

 ウジウジ悩むのはやめだ。

 すぐ行こうとボクがドアの取手に触れた瞬間だった。

 

「まだ見つからないなんて……」

「……心配だ」

「山の天気は段々荒れてきている、俺たちも……戻らざるを得なかった」

 

 ファナとアルタ、そしてローグの心配そうな声が聞こえてきた。ボクは声のトーンから、3人の話が深刻なものだと確信して一旦息を潜めた。

 

「アイラとノラは……無事かな」

 

 アルタの言葉を聞いてボクの頭は真っ白になった。

 2人に何があったの――と。

 

「いずれにせよ……この天気が良くならない限り、探し出すのは難しい」

「2人はどこまで行っちゃったんだ……」

 

 気づけばボクはドアをこじ開けていた。

 

「どう言う事?」

「ベガ……」

「ねぇ、アイラとノラに何があったの……!?」

 

 それからアルタは事のあらましを説明してくれた。

 昨夜未明にアイラとノラは無断で武器を持ち出してアガトを出ていき、恐らく山岳地帯の奥へと向かっていった事。すでに消息がわからなくなってから半日以上が経過しており、ローグ含めた狩人たちは全力で捜索を行っている事。

 

 しかし運が悪い事に、昨日から土砂降りが続いている。視界も悪い上に、大量の雨によって土壌の状態は悪化している。捜索している箇所は土砂崩れの危険もあって、中々上手く進めていないのが現状だった。

 

「――帰れないのは理由がある筈……!」

 

 ボクはアイラが帰り道もわからない間抜けじゃない事を知っている。しかもそばにはノラがいる筈だ。彼らはボクとアルタのように一心同体で、付かず離れずの関係性だ。

 にも関わらず戻れていないのは、確実に何かがあったとしか言いようがない。

 

「勿論何かがあったから戻れていないとは思う。だけど……」

「手掛かりがないから、しらみつぶしに探すしかないの」

 

 アルタも歯痒さを感じているのか、顔を顰めていた。確かに雨で足跡も無くなるだろうし、狩人とて無事じゃ済まない可能性を孕んでいる。だけど何かが起きているなら、こうして時間が経つに連れて状況は悪化していく一方なのは間違いない。

 

 ただ例外は存在する――ボクの存在だ。

 

「……ボクが探しにいく」

「ベガ、俺たちは動けない。こんな最悪の天気の中で行ったら……こっちも危ない」

 

 アルタの意見は正しく大人の意見だった。

 理由は分かる、人の力じゃこの自然の猛威には勝てない。探しに行ったこっちが死ぬかもしれないからだ。

 それでも……それでもボクにはアイラを探さないといけない理由があった。

 

「アルタ、アイラが勝手に出て行った要因を作ったのはボクかもしれないんだ」

「……ベガ、そうと決まった訳じゃ」

「ボクが酷いことを言ったから! アイラは無茶をしちゃったんだ。ボクには分かる! アイラが……ボクに対してどう思っていたか!」

 

 今になってボクは漸く理解した。

 本当に人の機微を理解するのが苦手だなと自嘲する。アイラを知らず知らずのうちに追い詰めたのは……他ならぬボクだった。その責任を取る為にもボク自身の手でアイラを助けないといけない。

 

「アルタ! ボクなら悪天候でも活動出来る! アイラを……助けさせてよ……!」

「……理由は分かるよ、でも……」

 

 そう言ってアルタはファナをじっと見る。

 ファナは寂しそうな目をボクに向けると、優しく語りかけた。

 

「ベガ、貴女の気持ちは分かる。だけど……今は耐えて。せめて雨が止んだら一緒に行きましょう」

 

 違うよ、今すぐ行かないと間に合わなくなっちゃうかもしれない。こんな形でアイラともし……ずっと話せなくなるのは嫌だよ。

 

「ベガ、今は待とう……」

「……アルタ……」

 

 そう言ってボクは力無く項垂れた。

 何でこういうときだけ、子供扱いなんだと文句を言いたくなったが、喚いたところでどうにもならない。ボクは自室に戻らされると深くため息を吐いた。

 

「……」

 

 アルタは時々、大人みたいになる。

 余計なことはせずに周囲の人に合わせるように言ったりする。悪く言ったりするつもりはないけど、酷くもどかしい気持ちになったりする。だってその時のアルタは自分を押し殺しているようにしか見えないからだ。

 

 ボクが助けたいと言った時も、拳を握りしめていたのが目についた。彼だって……助けに行きたくて仕方ないのだ。

 

「……ダメだ、やっぱり……ボクじゃないと」

 

 ボクの拡張現実機能ならば……きっと人じゃわからない手掛かりも突き止められる気がする。ボクはそっと目の近くに指を置き、そのまま閉じる。

 

「ごめん皆、やっぱり待つのは嫌」

 

 勝手に行けば……間違いなく怒られる。

 下手したら狩人失格だとローグに咎められるかもしれない。だけど……それでも良い。アイラとノラという数少ない友人が居なくなるより、よっぽどマシだ。

 

「ボクは友達を助けに行く」

 

 決意を宿し、ボクは自室の窓を見る。

 バレないように動くのは、結構得意なのだ。




少しリアルでメンタルやられる事が起きてまして、更新ペースが安定しないかもです。
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