梅雨になってきましたね。私は寝不足かわかりませんが、目が恐ろしく充血しております。
今回はエデン条約編全般、クライマックスへ向け走り抜けていきます!それでは、どうぞ!
「これは...一体...なぜ、あなたがここにいるのですか...?」
ナギサは目を疑う。監視カメラに己の探していた人物が...死んでしまったとばかり思っていた人物が映っているばかりか、自らの計画に介入している。
なぜ、彼がここに。
「...正義実現委員会を動員しましょう。全ての戦力を動員し徹底的に捜索します」
もう、逃がさない。もう、自分たちから離さない。
ナギサはその意思を固め、歩いていく。
「待っててくださいね。今、守って差し上げますから」
「先生!ご無事ですか!」
「私は大丈夫、それよりコハル。さっきの生徒...彼が上原シンであってるんだよね?」
「うん、多分ね...前ハナコを連行するのを手伝ってもらってて、その時イチカ先輩が"シンさん"と言っているのが聞こえたの」
コハルはなんとか自らの記憶を呼び覚ます。
「...そうか。彼はなんでこのタイミングで、私たちの目の前に...?」
「それだけじゃありません。私たちが彼に初めて会った時、彼はヘイローがありませんでした。聞いたところによると戦闘方法も刀一本だけのようでしたが、先ほどは風を操っていたように思えます。何かあったのは確実かと」
先ほどの先生を守っていた時、何の前触れもなく強風が吹いていたことを思い出す。
「確かに、リンちゃんの見せてくれた写真にはヘイローがなかった...ちょっとこれは、まずいことになりそうだね...」
「ああ、もう!わからない!つまらない!」
「コハルちゃん、落ち着いて...今ここに集まっているのは、退学にならないようになんとかするためですから...みんなで知恵を寄せ合いましょう」
「知恵を寄せ合う...なるほど、しっくりきますね...ですがここは"弱くて敏感な部分を寄せ合う"という形に...」
「なるほど...普通はそのような表現なのか」
補習授業部は、結成当初のような有様に戻っていた。
「せ、先生...このままだと、私たち四人ともみんな退学に...」
「とりあえずナギサに会ってみるよ...このままじゃ置けない」
先生はナギサのところへ向かった。が、ナギサはどこにもいなかった。同様に、ミカも連絡すら取れなかった。
「...まさか、もう来ないと思っていたここにこんなに早く戻ってくるとは」
「人生とは何があるかわからないものですねえ」
「感傷に浸ってる場合!?」
あのようなことがあったのだ。ピリピリするのも無理はない。
「ってか、本当にティーパーティーのえらい人たちが私たちを退学させようとしてるなら、全部無駄じゃん!」
「確かに、ここまで...90点、範囲三倍ともなれば厳しいかもしれません」
「そもそもなんでこんなことになったのよ!なんで私たちが...こんな目に...」
「ひとまず今日は一旦休みましょう。色々ありすぎましたし...一旦休むべきです」
「そうだね...みんな、今日は一旦休もう。あとのことは明日考えればいい」
ガサ、ゴソッ。物音がする。
アズサが起きあがり、どこかへ向かう。
「...」
不審がるハナコはこっそりついていく。
「どういうことだ!何故あそこで上原シンを...あれは使わないという話ではなかったのか!」
「状況が変わった。あそこで先生を傷つけさせてはならない、マダムの命令だ」
「しかし...!」
「アズサ。忘れたわけではないだろう。Vanitas vanitatum,Et omnia vanitas.全ては虚しいものなんだよ」
「...」
そこで話していたのは、ハナコは見たこともない長身の生徒-錠前サオリと話しているアズサの姿だった。
「...やっぱりですか」
翌る日から、四人は全てを勉強に捧げた。段々と点数が上がっていき、ハナコの教え方の上手さもあり、全員が90点以上を取れるようになってきた。
ハナコとヒフミの点数は安定しており、アズサと小春もかなり点数が上がっている。
そして、試験前日の夜。
またもアズサは起きる。
「アズサ、日程が変わった」
「...?」
「明日の午前中だ、例の場所で指示を待て」
「待って、明日は...」
「何か問題でもあるのか」
「計画を早めるのは危険すぎる、まだ準備も整ってない」
「これは確定事項だ。準備をしておけ。明日になれば、全てが変わるんだ。」
「...」
「トリニティ本館に戒厳令!?」
「コハルちゃん、声が大きいです...」
「ええ、シスターフッドの方々曰く戒厳令が布告されているらしく...エデン条約が締結されるまで、立ち入り禁止だとか。別館には大量の正義実現委員会がいるそうです」
「そしたら試験が受けられないじゃない...!」
「...先生、みんな」
アズサが小さい声で呼びかける
「...私の、せいなんだ」
「アズサちゃん...?」
「上原シンを...誘拐したのも、私だ。"トリニティの裏切り者"は、私なんだ...!」
全員が唖然とする。
「...詳しく、聞かせてくれるかな?」
「元々アリウス分校の出身だったんだ、私は。今は分校の命令でトリニティへ潜入している。」
少し下を向きながら話す。
「アリウス...?」
「聞いたこともありません...」
「...アリウス分校。かつてトリニティの結束に反対したことで迫害され、現在はひっそりと分校を営んでいると聞きましたが...。」
「そうだ。私は生まれてこの方、ずっとそこにいた。アリウスとしての任務を受け、今はこの場にいる。その任務とは...」
「ナギサさんを殺害すること、ですね」
ハナコが話を遮る。
「知っていたのか」
「申し訳なかったのですが、夜な夜な起きていたので少しつけさせてもらいました」
「...なら、話が早い。アリウスはティーパーティーを潰すためならなんでもしようという気でいる、そのためにまずティーパーティーの聖園ミカを騙し私をトリニティへ入れた。」
「なるほど...ミカさんは政治には詳しくないと聞きますし、おそらくミカさんを全て終わったあとスケープゴートにするつもりだったのでしょう」
どこか納得したようにハナコがそう言う。
「そして、その次は百合園セイアを襲撃するとともに上原シンを回収した。
「そ、それが私たちの補修授業部にどう関係あるの?アリウスについてはわかったけど、わからない...」
「「「...」」」
全員が沈黙する。
「明朝、アリウスの生徒たちがトリニティへナギサの命を狙って侵入する。私は、ナギサを守らなくてはならない」
「あ、明日...!?」
「うん、私はどうにかしてそれを阻止しないと」
「本館には戒厳令、別館には大量の正義実現委員会...襲撃には絶好のタイミングですね」
「...教えてくれてありがとう、アズサ。きっと君にとって勇気が必要な選択だったはずだ」
先生はアズサに声をかける。
「私が後はなんとかしよう。それが大人としての責務だから」
「そういえば、アズサはティーパーティーをやっつけにきたのに、なんでナギサ様を守るの?」
「...」
「アズサちゃんは最初からそれを目的に来たのでしょう?」
ハナコがそう指摘する。
「アリウス側には大丈夫と言っておいて、襲撃の日程を把握。ナギサさんを守る...いわば二重スパイをやっていたのでしょう?」
「...よくわかったね」
「誰の指示なんですか?」
「誰の指示でもないよ。これは、私の意思。」
少し上を向く。
「桐藤ナギサが死んだら、エデン条約は取り消しになる。その時アリウスみたいな学校がまた生まれないとは思えない。」
「...つまり。私たちもアリウス側も騙していた。そういうことであってますか?」
「は、ハナコちゃん...」
「...ああ、相違ない。今みんなが退学の危機に陥ってるのは、私のせいだ。」
「それは違うよ」
先生は断言する。
「元々の原因は、不信感さ。トリニティも、アリウスも。互いを信じられなかった。それが今回の原因じゃないかな。ナギサがもし、補修授業部のみんなを信じていたなら。ミカがもっとナギサを信じていたなら。きっとこんなことにはならなかったはずだよ」
「...そうですね。今のナギサさんのように、誰も信じられない人を変えるのは難しいです。そうでなくとも、他人を信じるのは難しいことです。ですがアズサちゃんは私たちにそれを明かしてくれました。黙っている道もあったのに。それはきっと先ほど先生が仰ったように、勇気のいることであったはずです...ごめんなさい、少し意地悪がしたくなってしまって」
ハナコは謝罪する。
「...本来ならアズサちゃんのようなスパイは、誰にも知られずにいつの間にか消えている。そのようなことが普通なのでしょう。しかし、アズサちゃんはそうしませんでした。それは...この空間が楽しかったからなのではないですか?」
「...そうかも、しれない。私は....まだ、この空間にいたいんだ。みんなで何かをするということ。私はそれを、まだ続けていたい」
「アズサちゃん...」
「...知ったような口を聞いてしまいましたが、その気持ちはわかるんです。何せ、同じように思った人がいるのですから」
ハナコは遠いところを見る。
「なぜか要領がよく、何をしても褒められ...政治的に利用され。その人にとってトリニティは、嘘と欺瞞に塗れた学園でした。その人は、学校を辞めてしまおうとしていました」
「...しかし、その人とアズサちゃんは違ったんです。アズサちゃんは『Vanitas vanitatum』...全ては虚しい、ということを知っていながら、『それは最善を尽くさないことにはならない』と言っていました。そうして、やっとその人は気づいたんです...学校生活の楽しさに」
ハナコは笑顔になる。それは、初めて見た本心からの笑顔だった。
「...アズサちゃんのいうとおりですね。全てが虚しくても、抵抗をやめてはいけません」
「...アズサちゃん。学園生活を諦めたくないのでしょう?」
「..うん。」
「なら。私たちはナギサさんの罠を潜り抜け、アリウスからナギサさんを守らなければなりません」
「でも、どうやって...?」
「ここにいるのは、トリニティの自称平凡と、ゲリラ戦の達人と、正義実現委員会の優等生と、トリニティの全てに精通している人ですよ?その上、ちょっとしたマスターキーのような先生もいらっしゃいます」
「ま、まあね...」
「この組み合わせであれば。トリニティくらい、半日で転覆させられますよ♡」
「...転覆?!」
ご閲読ありがとうございました!
次回、いよいよクライマックスです!
水曜日あたりに投稿できたらな、とは思っておりますが、おそらく5000文字程度になるのであまり当てにはしないでおいてください...
少なくとも土曜日までに投稿できるよう頑張ります。
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