「...私たちは、こんなものに今まで支配されてきたんだ」
「あれが、本当の...」
「どう見ても化け物にしか見えませんが...」
「サオリ、ミサキ、ヒヨリ。怖がらないで、私がついてるから」
「ああ、そうだな」
「うん、あの怪物を倒そう」
戦いの火ぶたは切って落とされた。ベアトリーチェはシンを投げ捨て、悍ましい叫び声をあげる。同時に、ミメシスが10体ほど出現する。
「ミメシスまで出してくるとは...厄介だが、敵ではない!ミサキ!」
「分かってるから!」
セイントプレデターが火を噴き、ミメシスを一掃する-はずだった。
「何っ...!?」
ミメシスはある程度損傷を受けているものの、未だすべてが健在。
「今の私は崇高へと至る道を進んでいるのです!そのような攻撃、私が生み出したものを壊せるわけがないでしょう!」
「なら...!」
ヒヨリの対物ライフルが轟音を奏でる。ミメシスの一体が消滅する。
「これなら倒せるみたいです!」
「ならミメシスの対処は任せたぞ、ヒヨリ!」
「は、はい!」
サオリからの言葉を受けてヒヨリは奮起する。
「小癪な餓鬼ですね!」
刹那、赤黒い光がベアトリーチェの足元から立ち上ってきて、頭のような部分へ集まる。そして。
「キえテしまイなサい!」
暴力的なまでの光の線が、サオリを襲った。
「ぐっ、あああっ...!」
しかし、光を受けたのはサオリではなかった。
「上原シン...!?」
「シン...!」
ヘイローが砕けかけているにもかかわらずサオリの前に立ちはだかり、そしてすべての攻撃を一身に受けた。
しかし、当然人が耐えられるものではない。ヘイローの外円の残った部分が割れていく。そして。
「-----あ」
パリンッ。
ヘイローの外円部分が、完全に消し飛んだ。
身体から神秘がなくなっていったのを感じた。僕の神秘は、すでに奴に吸い取られて消えかけてしまっているんだ。残りは5%といったところだろう。
「...でも」
それは、抗うことをやめる理由にはならない。
それに、あいつがあそこまで強くなっている以上、先生だけで解決できるとは限らない。
そうしたら僕の役目はここで終わるんだろう。でも、ここでなら。
「キえテしまイなサい!」
ベアトリーチェがレーザーのような何かをまさに放とうとしている。
あれが当たったら錠前サオリは死んでしまうだろう。
なら,僕が。
「ぐっ、あああっ...!」
犠牲になるしか、ないだろう。
「...サオリを殺すつもりでしたが、まあいいでしょう。これで最大の邪魔者たる上原シンは消えました」
「シン、シン!しっかりして!」
私はシンに駆け寄って状態を確認する。
「...先生、大丈夫です。僕は...僕は、もうすぐ死にますが。まだ死ぬわけにはいかないので」
その瞬間、本能的な恐怖を感じる。まるで自分が今話しているものは、「恐怖そのもの」であると言わんばかりに。
「ひっ...!」
それを発したのはスクワッドの誰だったか。
「ベアトリーチェ」
「...恐怖の本当の姿、見せてやる」
シンは立ち上がって、手を上へ向ける。
「もはや恐怖を縛る枷は消え、この地は恐怖で満たされる。わが身を代償に、この地に恐怖を呼び起こさん」
風がどこからか吹き始める。いや、風が集まっている、と言ったほうがいいだろう。
「スクワッド、全員目を背けろ。お前らがこれを見たら、二度と立ち上がれなくすらなるだろう。」
「待って、それってどういう」
「シン、だめだ...それは絶対に使っちゃいけない!直感でわかる..それは危なすぎる!」
「先生...僕が死んだら、ミカ様をよろしくお願いします」
「駄目だ...!」
「反転」
厳粛な鐘の音が鳴り響く。竜巻がシンの体を覆う。
表現しがたい色の光が竜巻の中に見える。そして。
「...覚悟しろ、僕が死ぬより先に倒してやる」
白い髪、2歳程度年を取ったように見える体、黒い右の羽根。ヘイローは十字状の光の奔流のようになっている。
そして、左腕が、左目がある。
何故だ。なぜこうなっている。
私の計画は完璧だったはず。上原シンより神秘の大部分とかけらほどの恐怖を奪い、「崇高」へと至る道筋を立てた後ロイヤルブラッドの神秘を奪い、「崇高」へと至る。
しかし、現実は違う、
「なぜ、なぜですか...上原シン!あなたがなぜ、恐怖を...それは神秘と、お前の本質とは相いれないもののはず...!」
「僕はもともとこの世界の人間じゃない、悪かったな」
「舐めるなあああああああああああああ!この、クソガキが...!」
「クソガキで結構!お前が消えてくれるんだったら何にでも魂を売るさ!」
銃弾の一撃一撃が体を削り取っていく。
「こうなったら...!」
もうどこにでもいい。カタコンベの能力を応用できるよう仕込んでおいたのだ。これでどこでもいい、どこかに飛ばせれば。
「私の目の前から、消え失せなさい!」
上原シンの体が一瞬光った後、消えた。
目の前でシンが急に姿を消した・全く理解が及ばない。
「ああ、先生。ご安心を。彼は生きています、ただどこかへと転送されただけですので」
「...だとしても。お前をつぶすことに変わりはない。」
全ての舞台装置は、状況は用意されました。
姫は孤軍奮闘し、少年は命をなげうった。
聖者は覚悟を決め、罪人の少女たちは罪を晴らそうとする。
そして、最後のピースがそろいました。オルガンの音が鳴り始めます。