「いけません...バルバラ、アンプロジウス、複製たち!私を守りなさい!」
しかし不快な声はしない。
「なぜ...なぜ現れないのですか!」
代わりに流れてきたのは、慈悲を乞う歌だった。
「...これは、Kyrie eleison?」
「ミカ...!」
「なりません...なりません!このような慈悲を語る歌を私の領地で響かせるなど!ふざけた真似を...しかし、一体どうやって?蓄音機も全て破壊したはず...」
「奇跡は起こる、どこでも、何度でも、誰にでも。」
「先生、まだそのような戯言を信じているのですか?全く、愚かです」
「生徒は呪いや虚しさを謳う存在であるべきで、そのような状況の中で私たち大人に搾取されるのです!」
「...私の生徒に、それ以上喋りかけるな」
「何!?」
「あなたは教えを捻じ曲げ、自分のために利用し、子供たちを奈落へ落とした...私はあなたを絶対に許さない」
先生とベアトリーチェ、二人の大人の意思がぶつかる。
「よ、よくも私に...そのような言葉を...!」
ベアトリーチェが巨大化する、そしてシンから取り出した装置を掲げ、握り潰そうとするが...
「返してもらう」
シロコのような長身の女性がそれを奪い取った。
「何をするのです!?」
「これはもともと私たちのもの、そしてもうすぐこの世界から消え失せるもの。時期にあなたの奪った力も消え失せる」
「君は...!?」
「...そっか、まだこの頃には。まあ、すぐ忘れること。じゃあ、またね。」
「待ちなさい!」
ベアトリーチェは光線を放とうとするが、頭部を押さえ始める。
「なっ、力が...どう言う、どう言うことなのです...奪った、チかraが...」
「...消え出したね。そしたら。」
謎の少女は消えた。
同時に、私たちの頭から何かが消えていく感覚がする。
「やめろ...それは、消えちゃいけないもの-」
しかし、あっさりと記憶からは消えてしまい。
次の瞬間にはもう、少しの違和感と共に「上原シンという生徒がいなかった」ことになっていた。
「ああ、そうですサオリ!貴様を新しい生贄として捧げましょう!貴様が私の計画を台無しにしたのですから、その代償を払わせなくては!」
「...いくらでもどうぞ、マダム」
サオリの口から出てきたのは、予想だにしない言葉だった。
「リーダー!?」
「リーダー、何馬鹿なことを言ってるの!?」
「私に未だ支払える代償があるというならむしろ感謝したいくらいさ!さあ、マダム...私はここにいる、持っていくがいい!」
サオリは死ぬ気かもしれない。でも。
それをさせるわけには、いかない。
「最後の戦いだ、みんな行くよ!」
「...来たか」
「記憶の消去は始まったみたいだね」
「うむ。さあ、プレナパテスよ...ナラム・シンを目覚めさせ、本来の役割に戻せ」
箱に生徒情報の登録を行う。
そこには、上原シンでなく「ナラム・シン」と書かれていた。
「再定義は完了した、あとは我々で」
そう言うと、司祭たちと上原シンの体は消えた。
「はああああああああ!」
傷だらけのサオリは攻撃を一身に受けながらも反撃を開始している。そこにミサキとヒヨリの支援攻撃も加わる。
「リーダー、左!」
セイントプレデターの攻撃とサオリの回避がほぼ同時に行われる。
「間、失礼します!」
アイデンティティがサオリの横の敵を貫通し、ベアトリーチェに攻撃する。
「なぜ...なぜ私がこんな餓鬼どもに!」
「意志の力をみくびったからさ...子供の持つ、夢と友情、希望への意志を」
「ありえない...ありえない!」
「全員、息を揃えてベアトリーチェへ攻撃を...!」
「「「了解!!」」」
ミサキのセイントプレデターが、ヒヨリのアイデンティティが、サオリの制式ライフルが。
一斉に火を吹いて。
そして、ベアトリーチェは断末魔をあげて倒れた。
「なぜ、なぜですか...ありえない!私の意識が、私の領地が、ワタシ、の...」
「...終わったのでしょうか?」
「ああ、そうだな...」
「あ、そうだ!姫ちゃん!」
「あ、アツコ...!」
「まだあそこに!」
3人は急いでアツコの元へ向かう。幸いにしてベアトリーチェが出した茨は全て枯れている。
「アツコ、頼む...目を覚ましてくれ」
「ひ、姫ちゃん...」
「外傷がひどい、出血過多だね」
「...頼む」
皆は信じた、奇跡を。
聖人と呼ばれたものでさえ。そして。
「...サオリ、ちゃん?」
少女は、目を覚ました。
「...ここは」
おかしい。先程までベアトリーチェに囚われて、バシリカに精神が閉じ込められていたはず。なのに、なぜこのような百鬼夜行のような建物にいるのだ。
「おや、お客さんかえ?妾以外がここに足を踏み入れるとは...初めてのことじゃの。いかにしてこの白昼夢に見えたのじゃ?」
「...君は、誰だ?私を認識できるのか?」
「...ふむ。飲み込まれる一歩手前であった、と言うところか。」
「飲み込まれる...?」
「其方、男と知り合いであったろ。その者が今どうなったか、存じておるか?」
「...どうなった、とは」
「消えたのじゃよ、存在ごとこの世界から。跡形もなく」
「...な!?」