この物語の結末、どうか見届けてください。
「そこまでです」
異質な声が響く。明らかに大人の手によるものであることは明らかに思えた。
「ああ、驚かせてしまったなら申し訳ありません。私はゲマトリアのゴルゴンダ…挨拶は省略とします、私達はいつかお会いしたかもしれません」
「私は戦いに来たのではありませんよ、先生。ただマダムを連れ戻しに来たのみ」
コートを着て首級の代わりに額縁を持ったデュラハンのような大人はそう語る。
「あなたに勝てるとはとても思えませんので。ゲマトリアの誰もがマダムのように怪物となれるわけではありません」
「…私を連れ戻す?」
「ええ、マダム。これで証明されたのです…あなたは先生の敵対者などではないし、この物語の登場人物とすらなり得ない」
「…!」
「貴女の行動全てはもはや知らなくていいもの、となりました。貴女は敵対者どころか登場人物ですらない…ただの舞台装置なのですよ」
ベアトリーチェは口を歪めて悔しがる。
彼は本当にベアトリーチェの仲間なのか?
「先生、あなたが介入したこともありますが…もう一つ大きな力が働きました。すべての概念が変わったのです…物語の結末は、こうでなかったはずでした」
「…」
「友情で苦難に打ち勝ち、勝利する物語でもなく、一人の犠牲で成り立つものでもないはずでした」
先生の顔にかすかな怒りと不快感、そして疑問が見える。
「…失敬、ご気分を害されたようですね。私はマダムを回収して帰るとします。マダム、起きてください」
「ゲホッ…お前は…」
「待って!」
「ああ、先生。止めようなどと考えないでください。私は多くの兵器を開発できます…あなたの見たヘイローを破壊する爆弾もその一つ。無論使う気はありませんが…すべて廃棄するつもりですので」
先生の顔に俄に驚愕が浮かぶ。
「失礼しました、先生。では。」
そう言うと、二人の大人は消えた。
「…四人とも、無事?」
「うん、私含めて無事だよ、先生。」
初めて喋る少女、秤アツコは思っていたより強い少女のようだ。
「よかった…」
「…さて、先生。約束通り私は先生の言うことに従おう。なんでも命令してくれ」
「リーダー!?」
「こういう約束なんだ、私は罪人。ここまでしても助けられる資格なんてない」
「…なら、四人とも。これから一生懸命生きること。辛かったら私を頼っていいから。」
「…それだけ、か?」
「うん、それだけ。でも、それが一番大変だと私は思うよ。希望を失ってもまた新しい希望を見つける、それが生きることだから」
「…ありがとう、先生」
そういったのは誰だったか。アリウススクワッドは、これまで多くの罪を犯した。これからも決して明るくない人生を歩むだろう。しかし。
彼女らの人生に、希望あれと。そう願うのは罪ではないだろう。
「先生、聖園ミカと…あれ、誰だっけ」
「…うん、行ってくるね。」
ミカはまだ戦っているだろう。手遅れになる前に、行かないと。
…あれ、でも。ミカは…?
「ミカ!」
「先生…シン君が、シン君が…連れ去られて…」
「…ミカ、シンって誰?」
「え…?」
ミカは意味がわからないと行った様子で目を白黒させる。
「忘れたの?調印式で巡航ミサイルを防ごうとした、正実の私についてくれてた男の子だよ!」
「…ごめん、誰のことかわからない」
「先生!」
「でも、なにかその名前に違和感があるのは確かだよ。私の方でも捜査してみる」
「…先生のことなんか、嫌い」
ミカは信じられない、失望したという様子で先生のことを見やる。
「…ごめん、ミカ」
刹那、壁が崩れる。複製の生き残りがなだれ込んでくる。
「危ない―」
しかし、複製は一瞬で消えた。
「ご無事ですか、お二人とも!」
正義実現委員会、副委員長。羽川ハスミは部下を引き連れて突入した。