長く続きましたエデン条約編も、今回で一応の完結でございます。
魂込めて書いたエデン条約編、最後までお楽しみいただければこれ幸い。
それではどうぞ!
「ハスミ、どうしてここが...!?」
「それについては私たちが説明しよう」
「ミカさん、先生、ご無事ですか...!?」
石を靴が叩く音がする。
「ナギちゃん、セイアちゃんまで...!?」
「ああ、久しいね。ミカ...」
ハスミの入ってきたところから正実の部員が大量に入ってくる。よく見るとシスターフッドやミネ団長の姿も。
「...悪夢の末に、ある人と出会った。そして取引をした。それが今言えること。君は未だ悪夢のなかにいるかもしれないが、悪夢は覚めるからこそ悪夢なんだ。それと...ナギサは、君を助けるためならあらゆる権力を手放そうとしてでも周囲を総動員させた。さあ...帰ろう、ミカ。」
「...セイア、君は大丈夫なのかい?」
「ああ、おかげさまでね。全能感すら覚えるほどだよ」
「ならよかった...」
先生は胸を撫で下ろす。
「...しかし、ミカ。彼のことは...」
「...覚えてるの?」
「ああ、私だけはね...私もまた、彼の最期の言葉をどこかで聞いたんだよ」
「...彼は、幻じゃなかったんだね。よかった...!」
「ああ、そうだ。幻なんかじゃない...存在しているんだよ」
「...ここがアリウス自治区。セイア様のおっしゃったように、救護せねばならない方が多くいらっしゃいますね」
「誰だお前は...!?」
「ふんっ!」
鈍い音が立て続けに2回する。そのあと残ったのは気絶したアリウス生だけだった。
「...いけません、私をお許しください。個人的な感情によって果たすべき義務をおろそかにしました。彼女たちもまた救護が必要な方ですのに...セリナ、ハナエ。彼女たちを治療してください」
「は、はい...団長」
「そして、私がこれから生み出す負傷者も速やかにお願いします...参ります!」
「だ、団長...」
「まさに『ミネ団長が壊して騎士団が治す』という私たちのモットーですね!久しぶりの救護騎士団、本領発揮です!」
「そんなモットーなかったと思うのですが...」
セリナは困惑する。そんなことではなかったはずなのだけど...
「さあ、テキパキと動いてください!信念と誇りを胸に。適切に、必要なところへ救護を!アリウス自治区を解放し、先生とミカ様を救うのです!」
「はい!」
「夜明けに呼び出されてこんな任務だなんて...うわーん!」
「その後、正義実現委員会の長やその部下による苛烈な攻撃でアリウス自治区は制圧されました。これがこの事件の顛末です、黒服」
「ご苦労です、ゴルゴンダ。それにしても...なぜこのタイミングで色彩が介入を?まだこの世界には至っていないはず」
「上原シンはもともと色彩を有していた...色彩側が彼を探していたとしてもおかしくはありますまい。私たちも本格的に対策を練らねばなりません」
「しかし、上原シンはなぜ聖園ミカを除く理内の存在の記憶から消えたのだろうか?まさか...いや、そのような悍ましいことなど。」
「残念ながらその悍ましいことがなされてしまったと考えられます、彼はテクストが書き換えられたのでしょう。いずれその影響は我々にも波及するはず」
「...なんと恐ろしい。」
『…ごめん、ミカ』
「これで理解しただろう。上原シン、お前の存在は誰からも忘れられている。あの少女は例外だろうが...時期に彼女も忘れるだろう」
司祭たちの用意した画面には僕のことを忘れ去った先生が写っていた。
所詮は、こいつも偽りなのか。
「...は、はは」
「我々の命令を受け入れよ」
「我々の指示にのみ従え」
「我々の尖兵となれ」
そして、司祭たちは歪んだ笑顔が刻まれた仮面をぼくにつけた。
ああ、恐怖が、身体中に。
「...しかし、恐怖と神秘は一定の比率を保たせねばならない」
「であるならば、これを攻撃すれば神秘が出現するはずだ。」
オートタレットが出現し、僕に断続的に20mm弾を撃ち込む。
声が出せない、痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。
「...よし、よかろう。適量の神秘が出現した」
「これで此の駒は再び我らのものだ。」
「もはやこれに意思はない...プレナパテスよ、これを先兵として扱い、世界を破滅させよ」
「こっち、早く」
「...あれ、リーダーは!?」
「リーダーなら私に皆を頼むって言って去っていったよ、本当に勝手な人」
「リーダー...そんな...」
「ずるいよ、サオリ。こんなふうに足枷を残すなんて...私には重すぎる」
ミサキは若干の羨望を覚える。
「大丈夫、ミサキ。サオリにはもうちょっと時間が必要なんだよ。己を知り、自己を振り返る時間が。自分の命題を知るための時間が」
「...姫」
「リーダーは、サオリ姉さんは帰ってくるのでしょうか...?」
「うん、帰ってくるよ。サッちゃんならね」
「今後、私たちだけで生きていかねばならないのですか...?」
「うん、いつまでもサッちゃん頼りじゃいけない。」
「...私たちは、これから一体どうすれば?」
「私たちは大丈夫だよ。たとえ私たちの居場所がどこにもなくとも...ね。アズサはコンクリートに咲いた花を見て、こう言ってた。それがたとえ虚しいことであっても、抵抗するのをやめるべきではないと。だから、ね?」
そう言って歩みを進める彼女らの足元には、一輪の花が咲いていた。
「...それで、ミカ。シンのことを君はどのくらい覚えている?」
「全部、私が経験したこと全部。私が起こそうとしたクーデターのことも、調印式のことも、そしてアリウス自治区のことも。」
「それは安心した...だが。彼は...次に君と対峙するときは彼じゃないだろう」
「...どういうこと」
「私はあの後、ある人と会った...此の世界のことわりについて熟知している人だったんだ。その人が言うには...シンは『テクスト』...つまり、本質が書き換えられた可能性がある、と。」
「それが書き換えられたら、どうなるの...?」
「彼の書き換えられた後のテクストは、おそらく。敵勢力の思い通りに動かされると言うものだろう...彼は完全に敵勢力の尖兵となったかもしれない」
ご閲読いただきありがとうございました!
テクストの書き換え...恐ろしい。
今回でエデン条約編は完結でございます。次回からは...実はまだ決まってないんですよね。どうしよう。
最終章までは確実に描きます!
気づけば半年以上、番外編含めず50話も投稿していました。ここまで頑張れたのは読者の皆様のおかげです。
皆様に心から感謝申し上げます。