思ったより筆が進んだので早めに投稿してみました。
今回ちょっとボリューム多めですが、例の空間ラストになります!では、どうぞ!
P.S.
2025/03/14 23:29 バグか間違えたのかわかりませんが、同じ内容が2話投稿されていたので戻しました。
「...うん、これでもう未練はないかな。行こう、シン君。どこか、違う場所へ。」
「ええ、静かに...僕たちが僕たちらしくいれる場所で。」
僕たちの意思は同じだった。平穏に、静かに。二人とも知らない場所へ行きたい。
だから、ひたすらに動く。二人とも知らない場所にたどり着くまで。
明かりの集まった墓地から歩いて去っていく。
「どの方向に行こう、確か左だとアビドスのほうで、右はゲヘナのほうだったはず」
「左に行きましょう、ゲヘナは...惨状だと聞いております」
「そうだね...ちょっとかわいそうだよね」
ゲヘナ学園は万魔殿議長の羽沼マコト、風紀委員長代理天雨アコが協力して滅びへの対抗をしていた、と聞いている。混沌を是とするゲヘナ生だけでなくミレニアム、トリニティ、果てはレッドウィンター...あらゆる学年の抵抗を試みる勢力が団結していたという。
結果は、全滅。羽沼マコトと天雨アコが防衛作戦を練っていた際に突如侵入され、抵抗するももともと戦闘要員でなく指揮要員であった二人は抵抗虚しく死亡。指揮系統に大混乱が生じ、あの狼一人で殲滅したそうだ。風紀委員会は最後まで猛烈に抵抗し、焦土作戦まで行ったと聞いているが...その顛末は壮絶なものだったらしい。
本来の風紀委員長、空崎ヒナがいたらまた結果も違ったかもしれないが、彼女はアビドスの廃線となった鉄道の駅で死亡しているのが確認された。幸いだったのは彼女が愛していた先生の死を知ることがなかったことであろうか。
「シン君、お水持ってるよね?」
「はい、3か月分は」
「ならオッケー!いこっか」
そうして僕たちはアビドス砂漠へ向かう。誰も知ることもないし、誰にも伝えることのできない旅へ。
僕たちはアビドス砂漠を歩いた。たくさんのものを見た。横たわり動くことのない大きな機械の蛇、壊れたロボットしかない軍事基地、いくつもの埋もれた学校の校舎、人気の一つすらしない町。
ポスト・アポカリプスとはこういうものを言うんだろうか。
そんなこんなで、2週間がたった。
「...変だね。もうかれこれ2週間は歩いてるけど...今週はずっと夜。」
「白夜なら聞いたことがありますが、このような現象は初めてですね」
ミカ様の容態も悪化しているようで、1日に数度頭の痛みが起こる。水の消費速度も思ったより早い。
「ごめんね...私の体調のせいで砂漠から出るの遅れちゃってる」
「そんなことはありません、お気を強く」
ミカ様がいなかったら僕はきっと狼に殺されているか、そうでなくとも自殺していただろう。
僕が生きているのはミカ様のおかげだし、進行速度も遅くはない。
「きっともう少しでアビドス砂漠からも出られますよ」
そのとき、背後から恐ろしいものの気配がした。形容しがたい、いや。形容してはならない何か。
「残念だけれど、あなたたちがここから出られることはないよ」
後ろから忌々しい声がする。あの狼だ。
「っ...あなたは!」
「まだ生きてたんだ。あなたは神秘が強すぎて恐怖にも適応できず、もう死んだかと思ったけれど。まあいいや...恐怖も神秘も持ってるあなたは今、ここで叩き潰さないと」
「あいにく...悪運だけは強くてね。それに、わざわざ私をつぶしに来るってことは私が脅威ってことでしょ?
?」
ミカ様と狼が相対する。
「でも、それも今日で終わり。あなたたちは何も残すことなく、死ぬ。」
「それは違う。僕たちは思い出を、長く短い旅をしてきた。今は伝えることはできないけれど...きっと誰かが見つけてくれるし、きっと生きて誰かに伝える」
覚悟は決まった。あとは戦って、勝つ。
「シン君...その目は、覚悟が決まったみたいだね。行こうか」
「はい」
刀を抜く。
たとえ、この命を捨てようともミカ様をお守りして見せる。
「何か勘違いしてるみたいだね-」
狼の姿が消える。
「天の利と地の利は私にあるし、人数も互角。圧倒的に有利なのは私」
狼が後ろに現れる。何を言っているんだ、アビドスにはこんな生徒はいなかったはず。天の利...は、たぶんこの夜が続いてるのと関連してるんだろう。
それに、今のところ狼に協力者はいない...はず。
「それでも、僕たちはお前を倒して先に進んで見せる」
振り返って刀を振る、が狼はもうそこにはいない。
「遅いよ」
また後ろに...!?
「シン君、私のほうに!」
確かにミカ様と背中合わせなら狼にも対応できるかもしれない。
「...まだわからないみたいだね」
上から何か甲高い音がする。
「シン君...!」
ミカ様が上に覆い被さる。
轟音、閃光、熱。僕にとっては致死量であるそれを受ける。
そのまま、僕は気を失った。
「まさか、ミサイルを耐えてそれも守るなんてね...」
「言ったでしょ、悪運だけは...強いって」
ミカは立ち上がる。少年と、自分が愛した世界を守るために。
「いくよ」
ミカと狼の姿が消える。銃声と形容し難い音、そして殴り合う音だけが聞こえる。
次に二人が現れた時、ダメージがより大きいのはミカの方であった。至る所から血が流れており、立っているのも本来ならやっとという状態。対する狼は腕や足に数箇所の出血はあるものの、致命傷には至っていないようだった。
「...やっぱりそっちは神秘が強すぎて恐怖に適応できていない。」
「そういうあなたは大事なものを失ったみたいだね...!」
狼の注意が一瞬それる。
「もらったよ!」
ミカは全力で拳を叩き込む。
狼は後方に大きく吹っ飛ぶ。アビドス砂漠に一時、静寂が訪れる。
「ごほっ、げほっ...」
その時狼の後ろから声がする。気絶していたシンは目覚めたようだ。
「...あなたは私たちの仲間にするつもりだったけれど、気が変わった」
吹っ飛ばされた狼は倒れているシンに近づく。
「させない!」
「残念、それがあなたの弱み」
シンと狼の間に立ちふさがったミカを、狼は全力で攻撃する。
爆弾、ショットガン、ミニガン、AR、ドローン、果ては対潜ヘリまで。
「ミカ...様?」
「だいじょう、ぶ、だから...!」
どう見ても大丈夫ではないミカの様子にシンはどんどん余裕がなくなっていく。
大きな羽は既に血にまみれ、体のあちこちに銃弾が貫通している。
「やめてください、もう、もういいです...!もうやめてください!」
「いやだ、私は君を守-」
パリン。何かが割れる音がする。
「あ-」
ミカは倒れる。
「残念だったね、あなたはこれを死ぬのを見ることしかできない。ヘイローが割れた人間は例外なく死に至る」
そう言い捨てて狼は背中を向けて歩いていく。
「貴様ああああああああ!」
シンは刀を抜く。彼を今突き動かしているのは純粋なる怒りだった。怒りが彼を支配し、怒りで動いていた。
それゆえ、動きも単純になった。
「くだらない」
刀は狼に届くことなく、シンは狼の蹴りで吹き飛ばされた。
「シン、君...」
シンの顔が絶望で染まる。ミカからはどんどん生気が失われ、狼の言うとおり死に至ることは疑いようがなかった。
「お願いです、生きてください...ミカ様、あなたは-」
ミカの人指し指がシンの口に当てられる。
「シン君、どうか生きてね。私はもう死んじゃうだろうけど、君はまだ死んじゃダメ。本来なら君は死んじゃったかもしれない、けど。私たちは、その運命を変えられたの。これは私たちの手でなしたこと、偶然でも奇跡でもない。だから...君は私の分まで歩んで、たくさんの未来を-この絶望しかない世界を変えてほしいの」
「いや、です...ミカ様がいない世界なんて...」
シンの目から涙があふれ、止まることはない。
「希望は残ってるよ、どんな時も」
「僕にとっての希望は、あなたなんです...だから、おねがいです」
「また、いつか会えるよ」
ミカは右手を上に、左手をシンの方に伸ばす。
「神よ、願わくば-彼に、彼にご加護を」
そう言って、ミカの体は粒子状となって消えた。
ただ残ったのはピンクと水色の光の奔流。それは、シンの体に吸い込まれていった。
彼自身が気付く由もなかったが、その時彼の頭上には本来の「聖園ミカ」のヘイローがあった。
「あ、あ...」
シンの顔が絶望に染まる。
「ああああああああああああああああああああああああ!」
絶叫。いや,発狂と言っても差し支えないほどの叫びだった。その叫びを聞くものは、誰一人いなかったが。
「...」
「...もう、どうでもいい」
「連邦生徒会の皆さんも、先生もみんな死んでしまった。ミカ様が、最後の希望だった」
「だけど、その最後の希望もなくなった。」
そう言いながら立ち上がる様は、まさに絶望という言葉を体現しているかのようであった。
「僕が、いるから。ミカ様を殺してしまった」
「僕が、僕が、僕が、僕が、僕が、僕が、僕が、僕が、僕が、僕が、僕が、僕が」
「...だから、あいつを殺して...僕も死のう...でも生きないと」
奇妙な音が聞こえてくる。視線をそちらへ向けると、黒とも白とも取れる光のような何かがあった。もともとなら恐怖を感じるようなものであるはずだったが、不思議と絶望した彼には自然と受け入れられた。
「寄越せよ...力を」
そうして、彼は自ら光に向けて飛び込んでいった。
「...得たんだ、その力を。あなたも」
「黙れよ」
「僕はお前を完膚なきまでに叩き潰すだけだ」
シンの姿は以前の面影を残さないほどに変化していた。白と黒の一対の翼、2年程度成長したように見える体、伸び切った髪。ミカのものと同じだったヘイローは中心の球体状の部分がまるで超新星爆発のようになっており、そしてミカの機関銃と刀をそれぞれ持っていた。
「でも、私たちには勝てない。」
「私たち...お前だけだろ」
駆け出して攻撃を始めようとするが、狼の隣に何者かが出現するのが見えた。
「...誰だ、お前は」
ミカの機関銃を向ける。
「教えてあげようか、これがだれか。あなたもよく知ってると思うんだけど」
「僕はそんな機械兵みたいなものは知らない。」
「そっか。これは先生。シャーレの先生だよ。」
シンは信じられないといった顔で相対する。
「冗談はやめ-」
それを言い切るより早く、機械兵のようなものはタブレットを出した。
「それは...!?」
それは、先生が指揮に使っている"シッテムの箱"であった。
『“……我々は望む、ジェリコの嘆きを。”』
『“……我々は覚えている、七つの古則を。”』
一言一句先生と同じだった。
「先生...それは、本当に、あなたなんですか?」
相手は答えずに、狼が攻撃をもって答えた。
「これでわかったはず、これが先生だって。」
「...この、裏切者が」
狼が近づいてくると刀で、遠ざかると機関銃で攻撃する。しかし狼の速度には追い付いていない。
「やっぱり慣れてないね...出力を上げればまだしも」
「すぐに対応して見せる...!」
体中に力を入れる、何をしようとしているかは自分でもわかっていないようだが、不思議と彼はそうしなければいけない気がした。
「はあああ...!!」
そうした時、シンはなぜか気を失ってしまった。
「...これをつければいいんだよね」
石製の仮面を取り出す。
「これで手ごまが増えた、とでも言いたいの。司祭たち」
それにこたえる声はなかった。
ああ、夢を見ていたみたいだ...敵陣中で眠るとは情けない。
「さて...ミカ様の敵は全部殺さないと」
そうして、彼の体は完全に恐怖に適応した。
すべての"
ご閲読いただきありがとうございました!
シン君の過去編で御座いました。
彼がもともと恐怖を持ってた理由、ミカとの関係進展が速かった理由はこれです。
これからまた時間軸は元に戻っていきます!
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