これは魔物に襲われた村での出来事だ。旅に出て…まだ彼女が死んでから一年も経ってなかったはずだ。
人間の繁殖行為に伴う熱意、思い入れは我々魔族が魔法を思う気持ちと似ているのかもしれない。繁殖行為をしている人間は彼女と過ごしていた村でもいた。人口を増やす為、人間で男女が過ごしていれば自然と行為に及ぶらしい。それを人は愛し合っているという。魔族は性欲があるのかわからない。少なからず私は人間のように繁殖行為をしたいと思わない。そもそも種族が違うせいかもしれないが、同族でも起こらないなら必要無いのかもしれない。
彼女に怒られたのを思い出す。私はただ事実を言っただけだったのだが、それはわかっても言っては駄目らしい。
「あいつら繫殖行為をした。二人とも足と腰の動きが」
「やめなさい」
「何故行為を行うか、行為の最中の気持ちを聞きたいだけ」
「人はそういった…人同士が好きになって行う行為の事を聞いても愛し合ってるぐらいしか話せないのよ」
私と村で十年来の知人になる女を指さしたら止められた。それに直接気持ちを聞いても言葉にできないらしい。彼女がいない時に改めて聞いてみたが、顔を赤くして曖昧な答えだった。性行為が愛の感情なのか?と聞いたら、それは一部に過ぎないらしい。わからない感情が更にわからなくなった瞬間である。
「懐かしい匂いね」
私は久々に嗅いだ人の血肉の匂いに少し気持ちが浮いている。男性が中心に魔物に立ち向かったのだろう。獣型の魔物だったらしいが、村の男性の大半が立ち向かい死んだようだ。結婚した男女の場合は、男が率先して自分たちの住処を守る行動をする。だが、それと関係なく男性というだけで命の危険のある場に向かうらしい。個体差はあるらしいが。
「そこの君!まだ魔物がいるかも」
「ッ近づくな!そいつは魔族だ!」
この時期は村での生活感が抜けてなかった。角を隠す事もせず、普通に人間に近づいていた。その結果の返答は魔法だった。
『雷を放つ魔法』
村が全滅しなかったのは、それなりの魔力を持つ魔法使いがその村に住んでいたせいだった。
『防御魔法』
「な、人間の魔法を魔族が!?」
そこらの魔物相手なら問題ない威力だったが、私を相手にするには魔力量も威力も足りてなかった。雷が私の防御魔法に当たり辺りに拡散して消えていく。追撃があるかと思ったが、警戒して動きが止まったので話しかける。
「私は貴方達を殺さない」
「魔族の言葉を信じるとでも?」
魔族とわかった瞬間攻撃した魔法使いの女は、それなりに魔族を知っているようだった。こういった人間がいると話が進みずらいので嫌だ。周りの生き残りも私を警戒している。邪魔だから殺そうかと思ったが、彼女との知識で手を止めた。人間は困った時には助けると警戒心を解くと知識でわかってるから。
「…困っていることはない?」
「お前がいることだ」
「違う。この村の現状で」
「はっ!見てわから…いや理解できないか。勇敢な奴らは死んだ、女は生き残ったがそれだけさ。村はもう住むのも難しい、男手がいない村なんて後がない。理解したか?」
「それは子供が産まれないから?」
「ッさっきから何が目的だ魔族!馬鹿にしてるのか!」
叫ぶ魔法使いを置いておき、辺りを見ると魔物の傷跡が残る民家。食い散らかされた死体、それを見て泣いている者、現実を見ない者、こちらを警戒し続ける者。様々な者たちがいる。この者達全員を助ける方法。
「つまり、生き残る為に必要な家とか愛してる者達がいなくなったから困っているのよね?」
「だから何だ」
「少しなら知ってるわ。村を復興させたいなら、目的に対して行動する意思を持てばいいのよ」
私がそう言ったら、魔法使いは顔を歪めて言葉を発さなかった。その代わりに周りの女達が声を上げて叫び出した。ふざけるな!、あの人が死んだのに!、化物め!罵倒が私を襲った。
「人の心がわからない化物に助けられる事はない!出ていけ!二度とそのツラ見せるな!!」
「よかった。ちゃんと意思はあるじゃない、手伝ってあげる」
私は二つの魔法をかけた。魔法使いの女は私が魔法を放つとわかると前に出てくれた、他の者達を守る為に。
『女性に男性器を生やす魔法』
『生存本能を引き上げる魔法』
生存本能を引き上げる事で性欲を増大させ、繁殖行為を促す為に開発した魔法だ。後に改良して性欲のみを増加させる魔法にするが、この時使用した魔法はその原点のような位置づけになる魔法だ。
彼女に怒られた事だが、物を貰う。人間的に言うなら盗む行為は犯罪、駄目な行為なのだ。そこに自分が必要な物があるのに何で貰っては駄目なのかわからない。代わりの物を取ってくればと行動すれば、また別な人に迷惑をかけると怒られた。住んでる村の住民でもない人間なら問題ないと考えたのも駄目らしい。それをすると人間内での行動が難しくなるからやっては不利益になると教えられて以来、私は貰う行為はしていない。
「フゥーー…フゥーー!何をっした!?」
「貰うのが駄目なら増やせばいい。安心して愛し合って、この村全体にかけておくから」
優秀な魔法使いを産出する村がある。だが、その村で産まれた魔法使いは皆が女性である。元々の村の名は忘れられ、今の時代ではこう呼ばれる。【魔女の村】と。
魔法使いを束ねる大陸魔法協会において、魔女の村出身とわかった際に取る行動がある。
「またレルネンが邪魔をしたな。ちっ」
「…魔女の村の者は危険です」
「優秀な者達には違いない」
「品位にかけるかと」
「ゼンゼ、お前まだ生娘の如く襲われたことを」
「ゼーリエ様?」
ため息混じりに大魔法使いゼーリエは思い出す。あれは何回目の試験だったか、毎回あの村の出身が必ず選考に残るので記憶が曖昧だ。だが挙って会った時は面白い反応をする。
「うわ、凄い魔力量。湖かな?」
ゼーリエが気まぐれに試験を行った時の事だ。出会って早々、自らの魔力制御を看破し、恐れどころかもっと別の感情を持って接してきたのだ。それ故に珍しくゼーリエは未知の体験をした。
そそり立っていた・・・女のまたぐらがだ。しかも短いスカートを履いていた為に、少し中身が見えてしまう程の物が目に入る。
「興奮しました。子孫を残しませんか?」
「お前、面白いな。合格だ、次」
「人妻としてどうでしょう?」
「私より強くなれば考えてやる」
あれ以来あの女の魔法使いとしての実力は伸び続けている。時々、私に挑戦しに来るのは密かな楽しみだ。時が経つにつれ挑戦者が増えていく。このサイクルを生みだした魔法使いにゼーリエは死後に称号を与えた。
魔女の村…その始まりの魔女の名は【産ませの魔女 ゲブーアト】
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