死ねばレベルアップ! 行き詰ったアラフォーがなぜか最強少女に!? 第二の人生で目指す究極のスローライフ   作:月城 友麻

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65. もっと強く

 ソリスは燃えるような灼熱の痛みを背中に感じながらギリッと奥歯を鳴らした。なぜそんな女神も持っていないようなチート防具を持っているのか? テロリストとは一体何なのか? 疑問を感じながらガクリと力を失い、意識が遠くなっていく。

 

 くぅぅぅ……。

 

 ソリスは力尽き、花々の中に身を預けると、意識は闇の中へと沈んでいった。

 

「あぁっ! おねぇちゃーん!!」

 

 涙をこぼすセリオンがソリスへと駆け寄ろうとしたが、フィリアの手が強く引き留める。

 

「アカン! 今はあかんで!」

 

「離してっ!」

 

 セリオンはもがくがフィリアは毅然とした態度でそれを制した。

 

「はっ! 『今』だと? お前らに次はない。すぐに全員死ぬんだよ!」

 

 男は嗜虐的な笑みを浮かべながら両腕を高く掲げる。

 

 刹那、天空を染め上げる巨大な紅い円環が頭上に展開した。直径数十キロはあろうかという輪は雲をも超える高空に鮮やかに輝き、息を呑むほどの威圧感を放つ。

 

 それは、まるで彼らを狙っているのではなく、この星全体を破壊しようとするような途方もない悪意を感じさせた。

 

「な、なんや!?」「べらぼうどす……」「ひぃぃぃ!」

 

 世界の終焉を予感させるその光景に、彼らの心は凍りつく。

 

 そうこうしている間にも、巨大な円環の中に六芒星が息づくように浮かび上がり、その周りを幾何学模様が星座のごとく彩っていく。それは大地を覆う、途方もない規模の魔法陣。その姿は、人知を超えた力の結晶のようだった。

 

 あわわわわ……。ひぃぃぃ……。いやぁぁぁ!

 

 三人はギュッと身を寄せ合う。

 

 やがて魔法陣は息を吹き込まれたかのようにまばゆく輝き始めた。稲妻のような閃光が飛び交い、まるで生き物のように脈打つエネルギーが周囲を包み込んでいく。その威力は、太古の地球に激突し恐竜を絶滅させた隕石すら凌駕するかのようだった。

 

「くっくっく……この星ごとお前らを滅ぼしてやる。もはや女神どもなど我々逆神戦線(ディスラプターズ)の敵ではないのだ。恨むなら自分の弱さを恨むんだな! はははっ!」

 

 男は狂気に満ちた目で笑う。

 

 今まさにこの星をふっ飛ばそうとする狂人に、フィリアは一計を案じる。

 

「ちょい待てヤァ! うちらが何したゆうねん?」

 

「ほんまに、こないなん納得いきまへんわ」

 

 イヴィットもフィリアに合わせる。

 

「何した? 女神の手先は目が腐ってんのか?」

 

 男は呆れたように返す。

 

「この星なくすより仲良う暮らす方がお互いトクやで~」

 

「そうどす! そうどす!」

 

 二人は必死に説得を試みる。

 

「……。何を……時間稼ぎしてる? まぁいい、死んど……」

 

「うわー! ちょいまてぇ!」

 

「まってぇな!」

 

 二人は必死に騒ぎ立てた。

 

『レベルアップしました!』

 

 男の後ろで何かが閃き、次の瞬間、彼の胸から漆黒の炎が噴き出した。

 

 ぐふぅ!!

 

 今まさにこの星を焼こうとしていた男はいきなりの激痛に貫かれ、口から血を垂らしながら驚愕の表情で目を見開いた。

 

「ま、まさかお前……」

 

 男は痙攣(けいれん)しながらゆっくりと後ろを振り向く。

 

 そこにはニヤリと笑うソリスが漆黒の剣を男に突き刺していた。

 

「恨むなら自分の弱さを恨みなさい! はははっ!!」

 

 ソリスの目には勝利を確信した輝きが宿り、漆黒の剣を握る手が軽やかに舞った――――。

 

 がはっ!

 

 まるでト音記号を描くように優雅に振るった剣は、美しくも冷酷に男のボディーをズタズタに斬り裂いていく。

 

「ば、馬鹿な……」

 

 鮮血を吹き出しながら地に倒れ伏せるテロリスト。

 

「YES!」「間に合うてほんまによかったおす……」

 

 フィリアとイヴィットは、安堵の涙を浮かべながら抱き合い、互いの勇気と忍耐を無言のうちに称えあった。

 

「おねぇちゃーん!!」

 

 セリオンが涙をポロポロこぼしながら駆け出す。

 

 ソリスは剣をしまうと大きく息をつき、しゃがみながら笑顔で両手を開いた。

 

「おねぇちゃーん!! おねぇちゃーん!!」

 

 ソリスの胸に飛び込むセリオン。

 

「死んじゃったかと思ったよぉぉぉ……」

 

 泣きじゃくるセリオンのサラサラの金髪を優しくなでながら、ソリスは苦笑する。何しろ自分は確実に死んだのだから。

 

 でも、そんなことを説明なんてしたくない。もう二度と死んではいけないのだ。

 

「ごめんね……」

 

 泣きじゃくるセリオンをキュッと抱きしめたソリスは、これ以上彼を悲しませないよう、もっと強くならなければと心に固く誓う。

 

 二人はしばらくの間、お互いの体温を感じつつ、花畑を吹き抜ける心地よい風に身を委ねていた。

 

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