俺の戦闘力は53万らしい   作:センチメンタル小室

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第9話

さて、古菲から逃げてきたわけだがなんとなくあのまま寮に戻るというのも憚られたので麻帆良のとあるカフェに来ている。

いや、だっていつも送り迎えされてるのに今日だけなかったら同じ寮のやつとかうざいじゃん?

振られたの?ねえ今どんな気持ち?どんな気持ち?みたいなこと言って来られそうで怖い。

主に豪徳寺とかそのへんは嬉々として突っ込んできそうだ。あと古菲の隠れファン。

そんなわけで今は主に時間つぶしをしているわけだ。

 

「あー、コーヒーうめえ……」

 

コーヒーの苦味と酸味が味蕾を刺激する。

うん、現実逃避って最高だな。

しかし、古菲の修行どうしようか。

気の開放と抑制を教えられないとなると、今やってる基礎練習が終わると修行が停滞するんだよな。

そう色々と考えながら、ぼうっとしていると上から声が降ってきた。

 

「貴様、こんなところで何をしてるんだ?」

 

声を聞いて顔をあげる。

そこにはゴシック系の服をきた幼女がいた。

 

「なんだ、エヴァか。そっちこそ何してんの?」

 

『エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル』、『闇の福音』と呼ばれ、魔法世界では600万ドルの賞金首だった吸血鬼の真祖だ。

今は能力の大半を封印され、10年以上も中学校に通っているがそれでも、この麻帆良内の魔法使いたちで知らないものはいないほどの実力者である。

「ふん。ここのケーキはなかなか美味いからなよく来るんだ。で、そっちはどうなんだ?」

 

「ああ、ちょっとした時間つぶしだ。寮に帰っても特にやることないしな」

 

「ほう。弟子をとったと聞いたが割と暇なんだな?それとも何だ。逃げられたのか?」

 

そう薄ら笑いを浮かべながらこちらに尋ねる。

 

「ブハッ…ゲホッゲホッ……そ、そ、そんなことねえし?別に逃げられてなんか……」

 

少し図星をつかれたので飲んでいたコーヒーを吹き出してしまう。

いや?逃げられてないよ?むしろ自分から逃げたというか……あ、こっちのほうが最低だわ。

そんな様子を見てか愉悦の笑みを更に深くするエヴァ。

 

「ほうほう。それで?何があったんだ?今は気分がいい。少しくらいなら聞いてやらんでもないぞ?」

 

……こいつおちょくるきまんまんだろ。

気を落ち着け、冷静さを装って返す。

 

「別に逃げられてねえよ。ちょっと修行が一段落したから暇だっただけだ」

 

「ふむ。お前が弟子をとってからまだ、1周間も経っていないと聞いているが、それで結果が出ているとはまさか貴様が師としても優秀だとは知らなかったよ」

 

……なんでそこまで知ってんだよ。

情報早すぎねえか?どっからそんな情報掴んでくるんだか……あのパパラッチあたりか?

 

「そ、そうなんだよ。まさか自分もここまで人に教えるのが上手いとは思ってなかったな。HAHAHA」

 

そう、ごまかす方向に話を進めようとするが、

 

「ほうほう。で、実際どうなんだ?まあ貴様のことだ。大方、"アレ"を見せろと言われて逃げてきたというところだろう?」

 

と、先回りされた。

なんで分かるんだよ……

こいつエスパーか?読心の魔法でもあるんだろうか?

 

「図星といったところか。なんで分かるかって?経験もそうだが、貴様の行動はわかりやすいからな。大体そうじゃないかと思っただけだ」

 

……地の文と会話しないでください。

というか、俺ってわかりやすいのだろうか?

そういえば古菲の頼みとかも、だいたい断れてないしそうなのかもしれない……

 

「あー、降参だ。だいたいそれであってるよ。で、何なんだよ?おちょくりに来たのか?だったら帰るぞ!」

 

「フッ……そうやさぐれるな。貴様に話しかけたのは少し用があってな」

 

そう言うと紅茶を一口飲み間を置いて、エヴァは話し始める。

 

「『ナギ・スプリングフィールド』は知っているな?」

 

『ナギ・スプリングフィールド』、大戦の立役者であり『千の呪文の男』とも呼ばれ、魔法世界を救った英雄だ。

余り魔法方面に詳しくない自分でもその話はよく聞く。主にタカミチから。

まあ前世の記憶で大体知ってるがな。

 

「大戦の英雄だろ?それがどうしたんだ?」

 

「ああ、どうやらその息子がこの麻帆良に来るらしいという噂を聞いたのだ」

 

……

そういや来年だっけ?ネギ来るの。

意外と月日が経つの早いな。

もうそんな時期なのか。

 

「で?俺に何をしろと?」

 

「これから私が卒業するまで私のやることに手を出すな。」

 

なるほど。ネギが来るのに備えて吸血活動をするのね。

確かに自分が邪魔してしまえば即効で終わってしまうだろう

それこそ二度とエヴァが外に出れないなんてことにもなりかねない。

流石にそんなことをするほど鬼畜ではないのでしないが。

そう考えながら黙り込んでいるとエヴァが話を続ける。

 

「クソいまいましいことに貴様に手を出されると私の目的は100%達成されなくなってしまうからな、そうだな私のできる範囲であればなんでも一つだけいうことを聞いてやろう。交換条件というやつだ」

 

ん?なんでも?今何でもするって(ry

と、冗談は置いといて何か頼みを一つ聞いてもらえるらしい。

別にそっち方面には手を出すつもりなかったんだが……

まあ何か願いを聞いてくれるというのならありがたくもらっておこう。

しかし、願いね。特にないんだが……って一つだけあったわ。

今、丁度困ってたところだったしこんなところで解決するとは思ってなかった。

ということで自分の願いを告げる。

 

「じゃあ、ちょっと別荘壊していいか?」

 

「ああ、別荘か。別に……って、アホかー!?そんなこと聞けるわけ無いだろ!」

 

おお、なんかノリツッコミされた。

さすがボケだらけの2-Aでツッコミキャラやってるだけのことはある。

いや、まだ今の時点だとそういうキャラじゃなかったか。

んーまあ自分も壊したくて壊すわけじゃないんだけど結果的に壊れるならば一緒だろう。

だから端折りすぎてしまった。

 

「あー、言い方が悪かった。弟子の修行でダイオラマ球を使わせてくれって言いたかったんだ。まあ、その過程で壊れる可能性が無きにしもあらずだけど」

 

「……何をするつもりなんだ?」

 

「さっきエヴァが言っただろ?"アレ"をやりたいから使わせてくれってことだよ」

 

"アレ"とは気の完全開放のことだ。

エヴァには一度見せたことがある。

というかエヴァの『終わる世界』を受けた時にビビって反射的にやってしまった。

結果、一時的にダイオラマ球は使えなくなった。

うん。嫌な事件だったね……

なんかいやな事件が割と多い気がしなくもないがそれは無視する。

気にしてたらやってられないしな。

 

「"アレ"をやるのか……あの後、修理がどれだけ大変だったと思ってるんだ。貴様は」

 

「あの時は謝ったじゃん。それにお前の力を見せろとか言って向かってきたのはエヴァだったような……」

 

「あんなもの想像できるわけ無いだろう!『気』の開放だけでああなるなど誰が想像できるんだ!」

 

「……ごめんなさい。まあ今はある程度までは制御出来てるし多分壊れないと思うぞ……多分」

 

「何だその多分は。制御できるなら外でやればいいだろう!」

 

「それはちょっと……危ないじゃん?」

 

「危ないじゃん?ではない!そんな危ないものを私の家でやろうと考えるな!迷惑だ!願いならもっと他の何かにしろ!」

 

「いや、他に頼みたいことねえし……」

 

そう言うとエヴァはウッと言葉に詰まる。

そして頭を抱えて黙りこんでいる。

おそらくメリットデメリットを鑑みてそろばんを弾いてるんだろう。

しばらく待っていると答えが出たらしい、苦虫を噛み潰したような顔をして、本当にいまいましそうな顔をしてこちらに返答する。

 

「分かった。ダイオラマ球を使わせてやる。ただし絶対にこっちに手を出すなよ!分かったな!!!」

 

そう言うと紅茶を一気に一飲みにし去っていった。

壊れないといいなダイオラマ球……

そうして日が完全に沈んだのをみて、カフェを後にし寮に戻った。


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