俺の戦闘力は53万らしい   作:センチメンタル小室

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第11話

この麻帆良に来てから1週間が経った。

特に今のところ警備の仕事を任されたりその他もろもろの戦いに巻き込まれることもなく平穏に過ごしている。

よくある感じの話だと最初の顔合わせの段階でで戦いに巻き込まれるとか手合わせ―だとかそんな展開になる事が多いので少し警戒していたがそんなものは無かった。

年齢のせいだろうか?

実際まだ7歳にもなってないし年齢的にはネギ以下だ。

そんな段階で元一般人の幼児に手を出すというのは忍びなかったのだろう。

自分で自分を幼児っていうのはなんか悲しい物があるが多分そんな感じだと思う。

そして、麻帆良の初等部に急に転校してくることになったわけだが特に何か問題があったわけでもなく、クラスメイトたちは普通に俺を受け入れてくれた。

んー普通、「どうしてきたの?」とか「なんで前の学校やめちゃったの?」とか聞いてくると思うんだがその辺りの話を聞かれることはなく普通に「遊ぼうぜ!」とか誘ってくる。

なんか人間としてできてるよな、こいつら。

受けてきた教育の違いだろうか?それとも少なからず親元を離れ学校に通っている児童、生徒がいるという環境の差だろうか?

そんなこともあって初対面の相手に対してあまり深く聞いてこない。

気になって逆にこちらから聞いてみると

 

「この業界じゃ……詮索屋は嫌われるぜ?」

 

とか言われた。

いやいやいや、お前どこの殺し屋だよ……

てかお前いくつだよ……

まあそれが理由であまりクラスメイトとは深く関わっていない。

話しかけられればちゃんと返すし、「遊ぼうぜ!」と言われれば遊ぶし、「野球しようぜ!」とか言われれば磯○くんみたいに野球する位だ。

ここまで長々と状況を話してきたが何を言いたいかというと……

 

「あー、暇だ」

 

こういうことである。

4月の最初の方ということで特に授業もなく、しかも前世が高校生だった自分にとっては勉強なにそれ美味しいの?ってレベルでヌルゲーだ。

特にやることもないし寮で暇している。

クラスメイトとか家族と遊びに行けばいいじゃないかと思うかもしれないが、休日を友人と過ごすってのはリア充にのみ許された権利であり、そんなこともなく、ましてや急に新たな環境に入れられたばかりの俺にホリデーをトゥギャザーするような友達はいなかった。

実家も割と遠いので大連休でもない日に帰ることも出来ないし、何もすることがない。

どっかの吸血鬼もどきさんも友だちができると人間強度が下がるとか言ってたし、べ、別に悔しくなんか無いんだからね!ホントだからね!

……そんなことはないです。ごめんなさい。ちょっとだけ寂しい。

でも、遊ぶような奴いないし……暇だからゲーセンにでも行くか。

というわけで出かけることにした。

 

 

 

 

 

 

―――――。

ゲーセンでは色々と暇が潰せた。

テト○スはハイスコア更新したし、魔○村もノーコンテニューでクリアした。

魔○村クリアの時はなんか後ろのほうで歓声が上がっていたが別に気にしない。

だって戦闘力53万のチート持ちだし、1F単位で操作できるためTASをやっているようなものなのだ。

そういうこともあって大抵のアクションゲームは簡単にクリア出来てしまう。

前世ではあんなに難しかったのにな。

正直1周目まではクリア出来ても2週目はクリアできなかったのに……

これがチートの効果かと少しだけ虚しくなった。

テト○スも落下速度に目がついていくしそんなに難しくなかった。

暇な時以外プレイしないことにしよう。

チートって割と不便だよなと思いつつ、画面を見るとハイスコアを更新したらしく名前を入力する画面が出てくる。

んー名前……こういう時悩むよな。

自分は割とこういう名前をつけるのに悩むタイプだ。

○ケモンとかドラ○エとかの主人公に名前つけるのに1時間位かけた記憶がある。

今回はめんどくさいので『530k』と入力した。

まあ本名のもじりだ。

そしてちらりとスコアのランキングを見ると2位のところに『EVA』という文字があった。

 

 

 

 

 

 

……気にしないことにしよう。

きっと似たような名前の人がいるに違いない。それかただのニックネームだ。

そうに違いない。

てかあのロリ何やってるの?

こんなゲームにまじになっちゃってどうするの?

いやハイスコア更新した俺の言えることじゃないけど。

そしてまた暇をつぶすために次のゲームに手をのばそうとすると後ろから声をかけられた。

 

「あのー、すいません。今日は停電の日なのでもう店閉めるんでまた今度にしてください」

 

どうやら今日は停電の日だったらしい。

この麻帆良では主に2回計画停電の日がある。

主に電力関係のメンテナンスのためだ。

この日は色々と結界が弱まり麻帆良に敵対するものが攻めてくることが多い。

……すっかり忘れていた。

そういえば寮母さんが今日は停電だから早い目に帰って来なさいねと言っていた気がする。

思ったよりもゲームに夢中になっていたらしい。

外も暗くなってきたし……帰ろうか。

自分はまだ麻帆良に来たばかりということもあって4月の段階だと警備はまだ任されていない。

というか小1にこんな重要な日に警備任せるとか頭おかしいんじゃないの?って思うし実際麻帆良の先生方もそう考えたんだろう。

こっちに来なければ特に何もするつもり無いので別にいいか。

と、そんなことを考えながら寮の方に向かって歩いているとあたりの様子がおかしいことに気がついた。

まだ停電前だし、電車は止まっていないため人がいるはずなのに周りはしんと静まり返っており誰も居ない。

そんな様子に足が止まる。

何かあるのか?と警戒していると目の前にゴスロリっぽい服を着た幼女が現れた。

……噂をすればなんとやらってやつか。

その様子に戸惑っていると目の前の幼女が話しかけてきた。

 

「貴様が五三万か」

 

 

 

 

 

 

……なんか俺に用があるらしい。

でもあれだな、こういう不遜な態度って現実、目にすると痛いな。

いやまあこういうキャラだってのはわかってるけど。

それでも、ねえ?

しかし、なんだろうか?

今のところ平々凡々街道まっしぐらの俺に対して、なにか用事でもあるのだろうか?

 

「貴様に用がある。ついて来い」

 

そう言って目の前の幼女は俺に背を向け歩き出した。

 

 

 

 

 

 

……いやいやいや、説明しろよ。

そんなこと言ってついていく奴いるのかよ。

目の前に現れたなんか強そうなキャラがついて来いっていうシーンよくあるけどそりゃ戸惑うわ。

てかコミュ障過ぎないか?

今のところ茶々丸もいないしボッチなせいか?

なんだろうこの感じ……

気まずい。ものっそい気まずい。

例えるなら風の吹いている河原で本を読んでたら後ろに文学少女が立っているくらい気まずい。

なんか無視して寮に帰るのもなんとなくはばかられるので、ついていった。

ああ、なるほどこの空気が嫌だから歴戦の主人公たちはついていくのか。

ちょっとした疑問が一つ解決した。


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