俺の戦闘力は53万らしい   作:センチメンタル小室

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第5話

古菲を弟子にしてから2日目。

 

今日も彼女に引っ張られて学校に行った。

 

やはりと言うか、なんというか昨日と同様にクラスメイトたちに迫られ、戦闘に巻

き込まれそうになったが面倒だったので逃げた。

 

そしてまた放課後迎えに来た彼女に引きずられて、世界樹前の広場に来ている。

 

あ、昨日古菲が破壊した石畳の床は綺麗に治っていた。修理はええな。

 

で、俺は何をすればいいんだろうか。

 

無理矢理師匠にされてしまったわけだが、任された以上なにもしないというのも悪

い気がする。

 

こういうところが、ヘタレだとか押しの弱さに現れているんだろうが昔からの性分だ。変えようがない。

 

昨晩考えてみたが、何を教えればいいのか見当もつかない。

 

自分の強さは生まれ持ったものだし、武術についてはあまり詳しくない。

 

せいぜい手加減のためにボクシングとか、空手とか柔道とか日本において割とメジ

ャーな武道を見ていたくらいだ。

 

中国拳法について聞かれたところで漫画程度の知識しかない。普通に彼女のほうが詳しいだろう。

 

ドラゴンボール流の『気』の使い方?なんとなく「はぁぁぁぁ!!!!」ってやれば出来たので参考にならん。

 

というわけで素直に聞いてみることにした。

 

「教えてもらいたいことアルか……」

 

が、そう言って彼女も首を捻る。

 

少しの間考え、思い浮かんだのかしばらくすると返事が帰ってきた。

 

 

「んー、特にないアルね!」

 

 

ずっこけた。比喩じゃなく本当に。

 

いやそれならなんで弟子になったし。昨日行ってた『それに……』ってのが理由か?

 

わっかんねー。それについては答える気なさそうだし、どうしようか。

 

と、考えると昨日気になったことを思い出したのでそれについて聞いてみる。

 

 

「そういや、お前『気』使えたんだな。どこで覚えたんだ?」

 

「ン?それは何アルネ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

……

 

『気』を知らない?なら知らないで使ってるってことか?どういうことだ?

 

考えるが分からない。なのでそれについて説明する。

 

 

「あー、昨日使ってただろ?あの遠当てだよ」

 

 

それを聞いて納得言ったようで彼女はすぐに答える。

 

 

「ああ、あれアルか!それは確かリーゼントの……名前は忘れたアルが彼の真似したら出来たアル」

 

 

 

 

………

 

そういや前に豪徳寺に挑まれた時、面倒だったからって、他の武道四天王のとこに行けよって言ったな。

 

古菲のとこに行ったのか。

 

豪徳寺、技盗られてるぞ……。しかも名前覚えられてないとか……ドンマイ!

 

てか真似して簡単に出来るようなものなのか?あれ?

 

たしかそれが1ヶ月くらい前だったから……覚えるのはええな。

 

俺が言うのも何だがチートじゃね?

 

そして昨日思ったことを話す。

 

 

「んーお前あの遠当ては合ってないんじゃないか?なんというか威力不足だし、お前どちらかというと近接戦闘のが得意だろ。中遠距離向けのあの技は牽制としては使えるかもしれんが隙が大きすぎる」

 

 

これに関してはあながち間違ってないだろう。

 

53万に対しては大体の技は威力不足になってしまうが魔法の矢、1発程度の攻撃なら麻帆良では受けられるような奴はたくさんいる。

 

あれくらいなら、ない方がむしろいい。今の『気』の量だと貯めに時間が掛かるし隙も大きい。

 

瞬動術で補うとしても、ヒットアンドアウェイ繰り返したほうが彼女の得意な体術も活かせてよさそうだしな。

 

お、なんかこれ師匠っぽい!

 

なんとなく師匠としての威厳っぽいものを出せた気がする。

 

 

「そうアルね……。あれは最近行き詰まってて、何かを変えようと思って覚えた技アルネ。確かに合ってない感じはしたアル」

 

 

そう少し考えるように答える。

 

へー、スランプなのか今。

 

さっきは教えてほしいことは特にないとか言ってたけど、それを変えたくて弟子なんて言ったのだろうか?

 

まあそんなところだろうな。とそこで思考を打ち切る。

 

となると、しばらくは基本の底上げした方がよさそうだな。

 

ということで彼女に提案してみる。

 

 

「とりあえず、考えてみたが今は基礎の底上げするべきじゃないか?せっかく『気』の一端に触れたんだから、それを体術に応用すればいいと思うんだが……どうだろうか?」

 

 

素人考えだがあながち間違ってないだろう。

 

彼女は遠当てを覚え、『気』の初歩を持っている。

 

それを体術に使えば、単純に強くなるだろう。

 

筋トレして強くなるのと一緒だ。

 

普通はこういう地味な積み重ねするんだろう。俺はしたことないから説得力ないけど。

 

 

「ん?あの技近接でも使えるアルか?それと『気』ってなにアル?」

 

 

え?そこから?そういや『気』について彼女知らんかったな……。

 

そうして彼女へ『気』を説明する授業が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――というわけで、『気』を使えば地力の底上げができるわけだ」

 

端折ったが簡単に説明を終えた。

 

説明を聴き終わった彼女は頭から煙を出して地面に突っ伏している。

 

そういや座学は苦手だったな。いつも赤点みたいだし……戦闘に関しては頭働くのになんでだろうか?

 

全知全能が戦闘に特化してるのかねえ……なにそれ怖い。

 

とどうでもいい方に思考がシフトしていくので打ち切った。

 

 

「それで、ワタシは何をすればいいアルか……」

 

 

座学でフラフラになりながらも聞いてくる。

 

 

「そうだな……アレやるか……。ついて来いよ」

 

 

そういって彼女をある場所に連れて行く。

 

世界樹のある麻帆良の中心部から離れ、端の方にある森まで。

 

そして目当ての場所に辿り着いた。

 

ドドドドドドドと水の落ちる激しい音が鳴っている。

 

どこかというと………。

 

 

「これは……滝、アルか?」

 

 

そう、滝である。てか麻帆良なんでもあるな。滝まで完備してるとかすげえわ。

 

 

「というわけで、滝に打たれてこい!」

 

まあ修行で滝といえばこれしかないだろう。

俺はそうサムズアップしながらにこやかに言う。

 

 

「滝に打たれて効果出るアルか?にわかに信じがたいアル」

 

 

だが彼女はこちらをシラーっとした目で見て、そう返す。

 

失敬な……こういう古典的なやつが意外と効果あるらしいんだぞ!

 

俺はやったことないからしらんけど。あ、説得力ないですねすいません。

 

しかし、まあ師の言うことだしということで彼女はしぶしぶながら滝の方へ入っていった。

 

ちなみに服は脱がなかった。

 

割と鍛錬とかで汗かいたりするので普段から着替えとかタオルは複数所持してるらしい。

 

そう言うの期待してる人には、なんかすいません。

 

というわけでしばらく彼女は滝に打たれた。

 

 

 

 

「さーて次行ってみよー」

 

そういって滝に打たれ濡れた髪を拭いている彼女に言う。

 

いやなんか誰かに修行させるのって楽しいね。

 

最初は弟子なんて面倒だなと思ってたけどなんとなく気分が乗ってきた。

 

ケンイチに修行させる秋雨の気分がわかる気がする。

 

 

「というわけで、鬼ごっこだ。俺が鬼やるから全力で逃げるように。捕まったら罰ゲームな」

 

 

「し、師父……さすがに滝の後は辛いアル……と言うかそれも意味があるアルか……」

 

 

「そうだ!肉体の限界を超えることで『気』が鍛えられるんだ!(多分)ボソッ」

 

 

「い、今、多分って言ったアル。」

 

 

「気のせいだ」

 

「絶対言ったアルー!!!」

 

 

そう文句も言うもやはり師の言うことということもあって、また、しぶしぶながらも鬼ごっこを始めた。

 

なんだかんだ彼女が体育会系なせいか目上の人には従うみたいだ。

 

それでしばらく彼女と鬼ごっこした。一応手加減したので逃げ切ることは出来たが……

 

 

「も、もう………無………理アル……」

 

 

そう言い残しガクリと、彼女が気絶したので今日の鍛錬はそこで終わってしまった。

 

んー、後、感謝のとは言わないけど突き1万回とかあったのにな……残念。

 

それにやらせておいて何だが効果あるんだろうか。

 

まあケンイチでも弟子は実験とか言ってたし……許されるよね?


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