この麻帆良には『麻帆良クレーター』と呼ばれる陥没した地形が幾つかある。
学者の間では隕石の落下によるものではないか?と言われているが依然としてその真実は謎に包まれている。
今回はそんな多くの謎に包まれた『麻帆良クレーター』に関する話だ。
この『麻帆良クレーター』は1995年頃から発生している。
そして1999年の現在に至るまで実に5箇所のエリアに点在している。
だがこの『麻帆良クレーター』はその全てが麻帆良内の森林部にのみ発生しているのだ。
通常、隕石によってできるクレーターであるならばこういった森林部だけでなく市街地など様々な場所で発生していなければおかしい。
その全てが人目を避けるような森林部のみに発生するなど普通はありえないことなのだ。
まあ、たった5回であるため統計上のズレと考えることもできるが依然としてそのクレーター付近での隕石の確認はなされておらず本当に隕石によるものなのか?との疑惑の声は大きい。
我々『麻帆良ミステリー調査班』、通称"MMR"はその実体を知るためそういった宇宙や隕石に詳しく麻帆良で教授をしている明石教授に意見を伺った。
明石教授「はい。確かにこの件に関しては隕石ではありません」
MMR「このクレーターは隕石によるものではないと?」
明石教授「その可能性が高いですね。まず隕石自体が発見されていないという点が不可解です。何者かが隠したという可能性もありますがその痕跡や隕石の破片などもなく、またインパクトタイトなど隕石落下時に発生するような鉱物も見つかっておらず隕石である可能性は極めて低いです」
MMR「では、教授自身はどのようにお考えですか?」
明石教授「えっと……すいません。この件に関してはコメントを差し控えさせてもらいます」
MMR「え?なぜですか?」
明石教授「すいません。お引き取りください。この件に関しては何も話すことはありません」
そう教授は言い我々を追い払った。
隕石ではないということがわかっているというのになぜか話そうとしない教授。
そこに我々は目をつけた。
この件の裏ではなにかとてつもない実験が行われているに違いないと!
そしておそらく明石教授はその中核をなす人物なのだ。だから我々を追い出したと。
すぐさま我々調査班は現地へと向かった。
麻帆良の森林部はとても険しくその場所に向かうにはおよそ2時間ほどかかりとても大変だった。
そしてすぐにそのことについて我々は疑問を抱いた。
なぜこんな不便な場所で実験をする必要があるのか?と。
もし何かの実験によるものならば機材の搬入などどこかにその痕跡が残っていてもおかしくはない。
それなのにその痕跡もなく、また、何の開発もされていない森の中でで実験を行う理由があるのかと。
そうして調査を諦めかけていたその時だった。
ドン!っとまるで何かが爆発するような音が聞こえたのだった。
まさか?実験が行われている?
我々はすぐにその音が聞こえたらしい場所に向かった。
そこには新たなクレーターができていた。
我々は興奮を抑えきれなかった。
だが、こうしている場合ではない。
実験であるならばどこかに関係者がいるはず。
そうしてあたりを見回す。
すると木陰のあたりに小さな人影を見つけた。
これがその写真である。
お分かりいただけただろうか?
画像がぶれているためはっきりとは分からないが頭にある妙な突起。
更に体に刻まれた謎の光る文様。
これが人間であるはずがない。
すなわちこれは……
キ○ヤシ「宇宙人の仕業だったんだよ!」
MMR局員「「「な、なんだってー!!!」」」
そう宇宙人の仕業だったのだ。
奇しくも今年は1999年、ノストラダムスに予言された世紀末である。
つまりあのクレーターは宇宙人たちが地球に来るための実験の痕跡だったのだ!
我々はそう結論づけた。
だとするならば明石教授が隠していたことにもうなずける。
明石教授は宇宙人が襲来することが世間に知られることで起きる混乱を避けようとしていたのだ。
だが我々には真実を知る権利がある。
全てを隠そうとしていた明石教授にはすまないとおもうが、これも人々のため。
こうした宇宙人の襲来に備えて準備するのは我々なのだ。
読者の皆様もただ宇宙人の襲来に怯えているだけではなく、来るべきファーストコンタクトに備えてほしい。
「――――で、これはどういうことなのじゃ?」
そう言いながらまるでぬらりひょんのような頭をした老人が1冊の雑誌を放り投げながらこちらに問いかける。
「えっとその学園長……記憶にございません」
「記憶にございませんではないわ!どこの政治家じゃお前は!!こんな大きな痕跡を残しおって……隠ぺいするのがどれだけ大変だと思っておる。あとで明石君にも謝っておくように」
そうクワッ!と目を見開きながら怒りを露わにしている。
いや本当にこの件に関しては記憶に無いし……まあ確かに前の5件に関しては自分だけれども。
そう告げようとするも言い訳はいいと更に怒りを大きくする。
んー聞く耳ないな。とりあえず平謝りしとこ。
「全く……訓練するならば夜にしろといつも言っておるじゃろう。今後はこのような事のないように」
そうして何回か謝った結果、学園長の怒りは収まったのかそう勝手に締めくくり話はそれで終わった。
んー、本当に記憶に無いし、やった覚え無いんだがなあ。
誰の仕業なんだよ……冤罪とか絶対に許さない!
―――麻帆良学園都市某所。
「ナ、何か今、すごい悪寒ガしたネ……」
そう言いながらチャイナ服を着た少女はパソコンで何かを打っていた。
「ふー、不味かったネ。できるだけ人目の付かない場所を選んだつもりだったガ、まさかあんなところに人がいるとハ。デモ一応ばれなくてよかったネ。っととりあえず戸籍を作るカ……」
画面には様々な人間の名前や住所、家族構成などが書かれている。
そして彼女が何度かパソコンに文を打ち込むとその中に新たに一人の名前が記入された。
「これでOKネ。後は麻帆良への編入手続きカ」
そう言ってまたパソコンに向かう少女。
先ほどの名前が書かれた画面、そこには『超鈴音』という名前が追加されていた。