七ノ浜町 浜辺
「舐めんな。テメエら倒してロコやレオパルトを目覚めさせてやる影手裏剣!」
ルベルブルーメ・アヌベドはそう叫び影手裏剣を投げつける。
「フッ」
「ハァ!」
それに対し氷度笠と怒濤武者は苦も無くそれを弾きながらルベルブルーメ・アヌベドに接近する。
「な!?」
「ルベルちゃん!」
「危ないのだわ」
「何をやっている」
ルベルブルーメ・アヌベドが斬りかかられる前に氷度笠の前にベーゼ・クヌムとマキナが前に立ち塞がり、怒濤武者にはイミタシオが切り結んだ。
「ベーゼ、マキナ・・・」
「ルベルちゃん、1人で突っ走ったらダメだよ」
「強敵には皆で当たるのだわ」
「わ、悪い、ちょっと焦りすぎてた。アタシはアタシの出来る事をさせてもらう、影縛り!」
「ぬ!」
2人に言われ冷静になったルベル・アヌベトは自分の役割に徹する様に氷度笠の足下の影を伸ばしさっきよりも強く拘束する。
「今だ2人とも!」
「ナイスですルベルちゃん!」
「貰ったのだわセルケトの鋏」
ルベル・アヌベドが作った隙を狙い氷度笠を倒さんとベーゼ・クヌムとマキナがそれぞれ武器を振り上げ攻撃を仕掛ける。
「愚かな、まだ頭は動くぞ。フッ!フッ!フッ!」
それに対し氷度笠は頭を動かし口に咥えた楊枝を三連続でベーゼ達に向かって吹き放った。
「2人とも危ないのだわ」
「ッ」
「マキナ!」
マキナは咄嗟に攻撃に使っていた鋏をベーゼ・クヌムとルベル・アヌベドを守る様に振るい叩き落とし、自分に向かってくる針は防げず突き刺さる。
「グッこの針は貫通しなくて幸いなのだわ」
「ほぉ、何か妙だと思ったら人形だったのか貴様。だが氷針が効かない程度何の問題では無いフンッ」
氷度笠は影の拘束を破りマキナに向かい刀を構え一閃する。
「抜刀無惨切り!」
「ガッ!?」
先ほど斬りつけた一閃よりも強烈な斬撃を受けマキナは今度は片腕を切り飛ばされ膝をつき切られた全身からバチバチと火花が散っていた。
「マキナちゃん!このぉ!メナス」
「遅いフッ!」
切られたマキナを見てベーゼが激高してメナスヴァルナ-を放とうとするがその前に氷度笠が楊枝を吹きベーゼの腕に突き刺した。
「しまっ」
「ベーゼ!!」
ルベル・アヌベドが近寄って針を抜こうとするもその前にベーゼ・クヌムが倒れ冷たくなる様に眠ってしまった。
「クソ、ベーゼ達がピンチだ。で、こっちも!」
「その通りだ。よそ見をしている暇は無いぞイミタシオ」
少し離れた所ではイミタシオは苦戦しているベーゼ達の姿を横目で見ながら怒濤武者の振るう刀を大剣で打ち合っていた。
「このぉ!」
刀ごと怒濤武者を叩き切ろうとイミタシオは思い切り大剣を振り下ろすが怒濤武者は半歩だけ動いてそれを躱すとそのまま足で大剣を押さえつける。
「う、ぐ・・・抜けない!?」
「愚か者め、身の丈に合わぬ武器を振るうからそうなるのだ。邪心両斬!」
怒濤武者はそのままイミタシオに止めを刺そうと刀に邪悪なエネルギーを纏わせ振り下ろした。
「ッ!ペイントフル#8」
「グッ!?何の!!」
咄嗟にイミタシオは痛みの感覚を数百倍に引き上げる薬を撃ち出し怒濤武者に当てるが怒濤武者は一瞬怯むが直ぐにそのまま刀を振り下ろし、イミタシオは大剣を消して後方に飛び間一髪で両断されるのを回避した。
「ハァハァ・・・何なんだお前ペイントフルを当てたのに何で直ぐ動けるんだ?」
「侮るなよこの程度の痛み、御大将の忠誠心を思えば蚊に刺された様な物よ」
「クソッ、ベルゼルガみたいに気力で耐えきるタイプか・・・ハァハァ・・・」
怒濤武者のタフさにうんざりしながらも再び大剣を生成しようとしたが段々息苦しくなってくる事に違和感を覚えた。
「ハァハァ・・・何だ・・・?何でこんなに息苦しくなってるんだ?」
「どうやら耐えられなくなってきた様だな」
「何だと?何か仕掛けたのか」
「左様、拙者の阻みの壁は壁の中の空気を吸い取ってしまうのだ」
「ッルベル!」
怒濤武者の言葉を聞き思わず後ろを振り返るとそこには苦しそうに胸を押さえるルベル・アヌベドと彼女と眠っているベーゼを守る様に片腕のマキナが氷度笠と戦っていた。それを見てイミタシオはペイントフル#8を片手で放ち怒濤武者を牽制しながら彼女達と合流する。
「クソッ一旦引くぞお前達」
「なっお前が仕切ってんじゃ「ここで反目してはベーゼが助からんぞ」クソッ」
「目眩ましするのだわ」
そう言うとマキナは切り落とされていた腕を動かし掌から拡散ビームを撃ち氷度笠と怒濤武者を怯ませると姿を眩ませていった。
「む、逃げたか」
「だがモビーディグ捕獲作戦がある以上拙者達が動く訳にはいかん。ヤートット始末しておけ!」
「「「ヤートット!!」」」
七ノ浜町 町中
「追っ手は今の所来ないみたいだな」
浜辺から撤退したイミタシオは路地裏に隠れて隙間から顔を出して辺りを確認して後ろを振り向くと切られた片腕を取り付けているマキナと壁際には変身の解けたうてなを寝かせたルベルブルーメがおり、ベーゼを寝かせるとルベルはイミタシオを睨み付ける。
「ゼェゼェ・・・何であそこで撤退したんだよ。あの氷度笠って奴を倒さねーといけねーのに」
「お前らしくない判断だなルベル-ブルーメ。あんな追い詰められた状況お前なら撤退を判断すると思ったが」
「だから!アタシをいつまでも手下みたいに言うんじゃねぇ!」
「ルベル、あんまり騒ぐと隠れているのがバレるのだわ」
「ッチ」
マキナに言われルベルは悔しそうに舌打ちして壁に背中を預ける。
「クソッ何でこんなに息苦しいんだ・・・」
「どうやら、この結界は徐々に内部の空気を吸収する性質があるらしい」
「ハァ?何だよそれ、だったら何でアイツら苦しそうにしてないんだよ?」
「知らん。見た目からして人外なんだから空気が薄くても平気な性質か魔法か何かで対策してるんだろう」
「てかマキナは平気なのか?」
「私は元が人形だから呼吸しなくても良いから平気なのだと思うのだわ。それよりこれからどうするのだわ?」
マキナがそう聞くとルベルとイミタシオは揃って顎に手を当てて考え込む。
「そうだな。ベーゼも眠らされた以上この人数であの2人に挑むのは無謀すぎる・・・やはり何とか結界から脱出してマゼンタ達に連絡を取るか結界を破壊するしかないか。ルベルブルーメお前の影で移動する能力で結界を抜けれないか試せるか?」
「先に言うんじゃねぇよ。影で移動する方法はアタシも考えてた所だよ」
「・・・・さっきから思ってたが敵対しているとはいえ何でこの状況で貴様はいちいちケンカ腰なんだ。もう少し感情をコントロールしたらどうなんだ?」
「ふっざけんな!!」
イミタシオの物言いについに堪忍袋の緒が切れたのか路地裏に響く程の怒声を上げた。
「コントロールしろだぁ!?ロード団の時にアタシやロコにあんな目に遭わせたお前に何で感情抑えてお前の指示に従わなきゃならねぇんだ!まさかお前ベルゼルガやパンタノペスカの慕われてたからって、ロード団時代の自分も慕われたって本気で思ってねぇだろうな?アタシやロコは今でもお前の事大っ嫌いだよ!!」
大声を出されて驚いているマキナを横にそう言い切るとルベルは顔を真っ赤にしながら息を荒げてイミタシオを睨み付け、それの視線を受けたイミタシオを俯く様に視線を下に向けてポツリと呟いた。
「・・・そうだな。そう思われるのも当然か・・・」
そう呟いたイミタシオは地面に正座で座りルベルに向かって深々と頭を下に下げ土下座の姿勢を見せる。
「あ?何だよそれ。今更そんな土下座一つで水に流せると思ってるのかよ」
「思わない、だが今はこうする事でしかお前に謝意を伝える事が出来ない。確かに私はロードエノルメ時代ヴェナリータに唆されたとは言え悪の首領らしく振る舞おうとお前達にひどい事をした。今更許されないだろうし、一生許さなくても構わない。だがそれでもどうか仲間を助ける為に今だけは協力してくれ、頼む!」
「・・・・・・」
イミタシオの謝罪を聞いていたルベルはしばらく黙っていたがやがて苛正しげにガシガシと髪を片手でかき回した。
「・・・テメエって本当に汚え大人だよな。そんな態度と仲間の為って言われたら断れねぇだろ・・・分かってるよガキみたいに意地張っててもロコやベーゼ達は助けられないって事くらい」
「大人なも子供を色々難しいのだわ」
「そうだな・・・早く立てよイミタシオ、どこから抜け出せるか試すぞ」
「!!あぁ礼を言うルベルブルーメ」
「うるせーよ、いちいち真面目かよ」
礼を言うイミタシオにルベルはそう返しながら周りを警戒しながら路地裏を出ると急いで結界の端へ向かっていった。
七ノ浜 結界の端
結界の端に着いたルベル達は早速ルベルの影から影に移動する能力を試すがそれも結界に阻まれ通る事が出来なかった。
「クソッ行けると思ったけど無理か」
「とんでもなくガチガチに対策されているのだわ。こうなったらもう破壊するしかないのだわ」
「待て、何か来る隠れるぞ」
イミタシオ達が慌てて隠れた直後ヤートット達が何かを探すしているかの様に走ってきた。
「いないいないッス」
「必ずどこかにいるはずッス」
「アイツらが壁の継ぎ目を破壊する前に見つけ出すッス」
ヤートット達はそう言いながら別の場所へ走り去っていき、去っていた後にイミタシオ達は隠れていた場所から姿を現した。
「聞いたなルベルブルーメ、マキナ」
「えぇ、バッチリなのだわ」
「光明が見えてきたな。その継ぎ目を破壊すれば結界を破壊してトレスマジア達に連絡が取れる。窒息する前に探し出すぞ影犬!」
ルベルが影から大量の影犬を召喚すると一斉に町中へ放った。
「行け!町の中や結界付近に妙な物が無いか探してこい」
「「「GARURURU」」」
「私も手伝うのだわ」
そう言ってマキナは腕をパラボラアンテナに変形させるとアンテナを回転させて索敵を始めた。
「おぉ!そんな機能もあったのかマキナ!」
「ついこの間あっぷでぇとしてみたのだわ。と言っても細かくは分からないから大雑把な索敵にはなるのだわ」
目を輝かせているルベルを横にマキナがしばらくアンテナを回転させているとやがてピクリと反応する。
「・・・ルベルあのビル付近に大量の戦闘員と何か変な物を感知したのだわ」
「本当か、今その付近にいる影犬と視覚を同調してみる」
そう言ってルベルは目を瞑ってしばらくすると声を出す。
「あった確かにデカいプラスチックのイーゼルみたいな物がある!多分アレだ」
「よし行くぞ2人とも」
「だから仕切るなっつーの・・・アンタがアタシらの中で一番強いんだから継ぎ目の破壊は任せるな」
「皆の為にも必ず破壊してやるのだわ」
3人はそう言いながら結界の継ぎ目のある所へ走って行った。
七ノ浜 浜辺
「何ぃ!奴らが壁の継ぎ目に向かっているだと」
「ヤ、ヤートット」
浜辺でモビーディクを待ち伏せていた怒濤武者はヤートットの報告を聞き驚いた声を上げそれを傍で聞いていた氷度笠はピクリと反応する。
「チィ、まさかこんなにも早く継ぎ目を見つけるとは想定外だ」
「・・・怒濤武者、モビーディグの捕獲は俺に任せてお主は継ぎ目の守りに迎え」
「氷度笠」
「奴らが継ぎ目に向かったならここの護衛は不要だ。今は優先すべきは御大将の作戦に邪魔を入れぬ事。それが可能なのはお主しかおらん」
「すまぬ、感謝するぞ氷度笠!」
怒濤武者は氷度笠に礼を言うと急いで継ぎ目の方へ向かいそれを見送ると氷度笠は笠のクラゲを取り出した。
「さて、怒濤武者ならば問題は無いだろうが此方も万が一にも捕獲に失敗する訳にはいかん。さらに深く眠る様に眠り薬も足しておくか」
そう言いながら氷度笠は眠り薬を取り出すとクラゲの笠に掛け始めた。