第58話 始動!資材徴収作戦
人は喧嘩をする。どんな些細な理由でも
「あー!真珠のプリンが無いー!!ママーアタシのプリン勝手に食べたでしょー?」
「えーあのプリン?消費期限が昨日までだったし真珠が全然食べないから要らないと思って食べちゃったわよ」
「今晩食べる予定だったのよー!何勝手に食べてるのよー!?」
「知らないわよ、食べる予定があったならプリンにそう書いておきなさいよ」
「~~~~ママのバカー!こんな家出てってやるー!!」
「あ、真珠!」
どんなに仲が良くてもふとした切っ掛けで嫌いになる事もある。
「あーママー!アタシのあの服捨てちゃったのー!?」
「ゴメンね~キウィちゃん。でももうボロボロだったから~又新しいの買ってあげるから機嫌直して~」
「ひどいよママー!あの服アタシの思い出の服だったのにー!」
「あ、キウィちゃんー!」
それが直ぐ収まるか長引くかは当人達にも分からない物だ。
荒くれ無敵城
いつもの部屋では新たにサンバッシュ魔人団のマークが付いた垂れ幕に喪章が掛けられていた。それらの軍団旗を背にゼイハブは残った軍団長であるブドーとバットバスを召集し、さらにシェリンダ、ビズネラも集まっていた。
「来たなオメー等」
「船長、魔獣が遂に孵化したって本当か!」
「あぁ、サンバッシュが命がけで成功させてくれたぜ。遠目で見てみたが幼体だがダイタニクスや地球魔獣を上回る強さが期待出来そうだったぜ。流れは確実に俺達に向かっていると言って良い」
ゼイハブの言葉を聞き幹部達に嬉しそうなどよめきが湧いた。
「では船長、次の行動隊長の役目は・・・」
ブドーの言葉を続ける様にゼイハブは手を前に翳し宣言をした。
「魔獣を成長させる。俺達の新たな船となる魔獣・・・・モビーディグをな!!」
「船長モビーディグとは?」
「かつて俺の故郷の星に伝わる伝説の魔獣の名だ。俺の先祖はかつてこの魔獣を捕らえる為に挑んだと言われている。験担ぎには丁度良い」
「なるほど」
シェリンダの問いにゼイハブが答えていると改めてブドーとバットバスに向く。
「さて、ブドー、バットバス、テメー等はモビーディグの成長させる作戦はあるか?」
その言葉を聞き、バットバスがズイッと前に出る。
「だったら船長その仕事は俺にやらせてくれ!前に地球魔獣を成長させた実績のある俺が適任だ!!」
「ふむ、ブドーテメーは何かあるか?」
「・・・いましばしの時間を頂ければ万全の作戦を用意出来まする」
ブドーの言葉を隣で聞いていたバットバスはバカにした様に鼻を鳴らした。
「ハッ!なんだ?ブドー慎重すぎて随分作戦立てるのが遅ーな!!こっちはもうビズネラが立ててあるぜ」
「はい、それはもう十分な数のプランを練っております」
それを聞きゼイハブは次の行動隊長を決め、フックで刺した。
「よし、次の行動隊長はお前だバットバス。ブドー、テメーは待機だ」
「・・・・承知」
ゼイハブにそう言われブドーは退出し、後にはゼイハブ、シェリンダ、ビズネラが残る。
「バットバス、俺の右腕としてモビーディグ成長作戦必ず成功させろよ?」
「任せてくれや船長!モビーディグは必ずデカくしてやるぜー!!」
荒くれ無敵城 ブドー私室
「御大将、何故積極的に名乗り出なかったのです?」
部屋で正座するブドーの前に膝を着きながら虚無僧にタコが混じった様な姿をした魔人ー虚無八はそう問いかける。
「既に魔獣の調査は終わっております。我らも魔獣を急成長させる作戦も立てる事も可能だったはずです。このままではバットバス共に手柄を取られます!」
そう意見する虚無八にブドーは静かに口を開く。
「・・・虚無八よ。其の方は先に死んでしまったが故に知らぬ事だが、嘗て拙者はギンガの光を手に入れる作戦を行った時、最後の最後で怒濤武者が手に入れたギンガの光をイリエスの奸計に嵌まりギンガマンに奪われたばかりか船長に反逆者の汚名を着せられ投獄されてしまった事がある」
「何と・・・!?しかし今はイリエスはもう死んでおります。妨害の心配は」
「バットバスやビズネラがそれをやらんという保証は無い・・・”鳴かぬなら、鳴くまで待とう、ホトトギス”・・・虚無八よ機は必ず訪れる。いずれ来る時まで配下の者達には引き続き魔獣の調査と鍛錬を続けるよう伝えよ、くれぐれも早まった真似はするなよ」
「ハハッ!」
ブドーの命を受け虚無八は一礼をして部屋を出て行くと、ブドーは気持ちを静める様にギラサメを横に持ち刀身を一度抜くと再びカチンと収めた。
――――――――
「マグダース!!」
「ダアァァ!!」
再びいつもの部屋で新たな行動隊長になったバットバスが名前を呼ぶと扉から赤いU字磁石の様な兜を被り茶色に金縁の鎧を纏った魔人ーマグダスが多数のヤートットと共に入ってきた。
「俺達は?」
「「「バットバス魔人部隊!!」」」
「ヨロヨロなのは?」
「「「トレスマジア!!」」」
「ぶっ飛ばすのは?」
「「「俺達だ!!」」」
ワアァァアアア!!
シュプレヒコールが響きヤートット達がしばらく騒ぐとやがてそれがピタリと収まり整然と整列をした。
「よーし今からビズネラが作戦の説明をする耳の穴かっぽじってよーく聞け!!」
バットバスの言葉を受けビズネラは作戦ボードに貼られた地表の図を指し棒で示す。
「現在モビーディグはケガを癒やす為に地中深く眠っています。しかしモビーディグは重症を負っていて、その状態で急成長エキスを流し込んだら最悪死んでしまうか、よくて傷が残った状態で急成長してしまい弱点になりかねません」
「だったらどうするのだ!」
ビズネラの説明を聞きシェリンダは苛ついた声で聞き返しそれに対しビズネラは黒い土管にドリルが付いた様な設計図を作戦ボードに置く。
「ですので、モビーディグが傷を癒やしている間に色々と準備をしておきます。今回はこの地中貫通機を作ります。このマシンに魔獣の嫌がるエネルギー波を出す装置を積みモビーディグを囲う檻にする為に大量生産します」
「テメエ等の任務はそれを作るのに必要な宇宙えー」
「宇宙合金。それが無ければ代わりの物で構いません、例えば車の装甲とか」
「そーだ、そーだ車だ車だ!それを大量にバラして持って来い!!」
ビズネラが補足するとバットバスがそれに乗っかる様にビズネラを突き飛ばして説明する。
「任せろ、沢山車を集めてきてやるぜ!」
「よーし!行ってこい!!作戦失敗した奴は?」
バットバスのその言葉に応える様にマグダスやヤートット達は腕やカトラスを上げ宣言する。
「「「「テメエで頭を食い千切れ!!」」」」
――――――――――――
街中
「しかし、この前の廃屋敷なんやったんやろうな?」
はるか、小夜、薫子の3人は街を歩きながらこの前の廃屋敷の事を話していた。
「そうね、やはり考えられるとしたらエノルミータかバルバンだと思うけど・・・」
「まぁあのバルバンの亡霊が出てきたからバルバンの仕業やと思うけど・・・それにエノルミータのふざけた思惑が便乗した感じやろうな・・・多分やけど」
薫子はそう言いながらも何処かしっくりきてない表情を浮かべていた。
〈すまねえなサルファ、その時テレパシーが通じてれば何か助言出来たかもしれなかったんだが〉
「気にせんでええよ、あの時は一般人の真珠達もおったし、変身もできんから無茶も出来んかったし、そういう意味ではあの魔人共は弱くて助かったな」
〈しかし聞く限りではその廃屋敷の一件どうも今までのバルバンがやっていた魔獣に関係する作戦とは思えないのだが〉
〈でもあの魔人をエノルミータが出したとはどうも思えないわね・・・〉
「うーんその事なんだけど・・・」
〈どうした?はるか〉
はるかは何かを考えて込んでいたが意を決して口を開く。
「あの廃屋敷、魔人は多分バルバンの仕業だと思うけど廃屋敷やお化けはバルバンの仕業でも・・・エノルミータの仕業とも違う気がするんだよぉ」
「「〈〈え?〉〉」」
はるかの言葉を聞き皆は驚いた声を上げ思わずはるかの顔を見る。
「はるか何でそう思うの?」
「うーん、確たる証拠がある訳じゃないけどエノルミータなら魔法少女に変身しているあたし達ならともかく変身して正体の分からないあたし達や一般人のうてなちゃん達を襲う様な事しない気がするの」
「確かに・・・今までエノルミータとは戦ってきているけど一般人には危害を加えた事はベーゼ達はしてなかったわね」
「けどなぁ・・・じゃああの廃屋敷は結局誰の仕業やねん・・・」
結局話が堂々巡りになっていると、街中で悲鳴が聞こえた。
「ッ!どうやら話はここまでね」
〈多分バルバンね〉
「丁度ええ、全然分からんモヤモヤアイツらで憂さ晴らししたるわ!」
「いくよぉ皆ぁ!!」
そう言うとはるか達は変身アイテムを取り出した。
――――――――――
キャアアアア!!バルバンよー!!
人々が逃げ惑う中マグダスは悠々と歩き車道に逃げようとする車に磁石の形をした刺股を向ける。
「集める物車、吸着!」
マグダスはそう言い刺股に付いてるダイヤルを回して刺股を逃げる車に向けると多数の車が引っ張られる様に刺股に吸着した。
「よーし、車をバラして来い」
「「「ヤートット!!」」」
マグダスの命を受けヤートット達は車に纏わり付きカトラスで車を斬り付けて分解して分解した物を袋に詰めていく。
「ヤートット!!」
「キャアアアア!?」
車に乗っていた一般人はバラされていく車から縮こまりながら悲鳴を上げているとヤートットに引きずり出される。
「人間は要らん!ぶっ飛ばしてしまえ!!」
「了解ッス」
「ヒィ」
ヤートットがぶっ飛ばそうと腕を振り上げた時、マゼンタがタックルを仕掛けそれを阻止して助け出した。
「これ以上の悪事はさせないよぉ!トレスマジア参上!!」
「オラァ!怪しげな魔術師にヤンキーに続いて今度はゴツイ鎧怪人かい」
「セイ!今度は何を企んでいるのバルバン!」
サルファとアズールがヤートットを殴り飛ばしたり切り倒してマグダスを睨み付ける。
「トレスマジア!資材徴収作戦の邪魔をするな!!」
〈資材徴収作戦ですって?〉
「まさかあの魔獣を捕獲する何かを作る気なの?」
「貴様等が知る必要は無い!喰らえ!」
マグダスはそう言うと刺股をトレスマジアに向け刺股に内蔵された機銃を発射した。
「「真化星獣モード!!」」
だがそれに当たる前にアズールとサルファが前に出て真化星獣モードになりそれを防ぎマグダスに接近した。
「流水の刃!」
「ヌゥ!?」
アズールの放った水の刃をマグダスは刺股を振るって弾くがその隙にサルファが接近し拳を振るう。
「雷鳥の一撃!!」
「グゥ!」
サルファの一撃を受け踏鞴を踏んで後退するがまだ倒れず反撃とばかりに攻撃しようとした時サルファの背後からマゼンタが獣撃破を放つ。
「グォオオ!?クソッ一旦引くぞ!吸着する物、車!!」
マグダスは刺股のダイヤルを再びイジって向けるとマゼンタ達の背後にあった多数の車がマゼンタ達を挟み込む様に向かってきた。
「ッ!!コイツ」
サルファが慌てて車の前に出て防御魔法を張り車が迫るのを防ぐがその隙にマグダスとヤートット達は奪った物を袋に背負い撤退していった。
「ッ待ちなさい!!」
〈待ってアズールまだ車の中に人がいるわ!あの人達を助けないと〉
「あの魔人はそれを狙って引き寄せたのね・・・」
アズールは苦々しい顔を浮かべると急いで壊れた車に近づき、中に居た怪我人を救助しマゼンタに治療を任せる。
「皆助けてみせるよぉ!ギンガホーン近くに怪我人はまだ残ってないかな?」
〈気配を探って探してみよう・・・それにしても狡猾な奴だ。それに今までの魔人と違って頑丈な奴だったな・・・〉
〈あぁアズール、サルファ、マゼンタの連続攻撃を受けてまだ動く事が出来るなんてな・・・あ、サルファ!そこの青の車に人の気配がするぜ!〉
「了解や。この車やなオリャ!」
サルファはギンガホークに言われた車に近づくとひしゃげた扉を力ずくで引っぺがすと中に居た人を救助する。
「とにかく、ここの救助終わらせたらあの魔人探し出すで!」
ナハトベース
「あの・・・キウィちゃん、真珠どうしたの?」
休みの日ナハトベースの会議室に集まったいつものメンバーで妙にブスッとした表情をしているキウィと真珠を見てうてなは恐る恐る聞いてみる。
「それがさー聞いてようてなちゃーん!ママが酷い事して喧嘩したんだよー!!」
「え?キウィもなの、真珠もなのよ!」
「え?真珠もかよ」
「そーなのよ!アレは許せないわ!!」
「あの・・・一体何があったの?」
キウィと真珠が意気投合している中うてなが話を戻そうと何があったのか聞くと真珠とキウィがうてなの方を向いた。
「そうだった、聞いてよーママがさーアタシの昔から気に入ってた服すてちゃったんだよー!!」
「真珠は楽しみにしてた限定のプリン食べられたのよ!!」
「え、ショボ・・・」
「「何だと[ですって]!!」
2人がその理由を言うとネモが思わずそう呟くと2人は揃ってネモを睨む。そうしているとヴェナリータがふわふわとうてな達の方へやって来る。
「そんなにストレスが貯まってるなら、今丁度バルバンとトレスマジアが戦ってるからから行ってきたらどうだい?」
「え!本当ですかヴェナさん!?」
「食いつきすぎだろ・・・」
トレスマジアと聞いてキウィ達より先にうてなが喰い気味反応してネモが呆れた声を出す。
「それで状況はどうなっているんですか?」
「今はバルバンの被害にあった人達を救助していてバルバンは別の場所で車の装甲を奪っているね」
「そうですか・・・ではトレスマジアの人助けを邪魔する訳には行きませんね。わたし達はバルバンの作戦を妨害してやりましょう」
「何で・・・悪の組織が正義の味方の気遣いしてんのよ・・・」
キリッとした顔で方針を言うと真珠がジト目でツッコミを入れるがうてなは気にした様子もない。
「ま~良いじゃん、折角うてなちゃんがやる気なんだしこのイライラ、バルバンの奴らにぶつけてやろうぜ~」
「はぁ・・・まぁ良いけどね」
真珠はため息を吐きながらも変身アイテムを取り出し、うてな達も同時に変身アイテムを取り出し変身した。
「さぁエノルミータ出撃です!!」
魔獣の名前の元ネタはゼイハブ船長の名前の元になったハーマン・メルヴィルの小説「白鯨」に出てくる白いマッコウクジラ「モービィ・ディック」から取らせて貰いました。
他には下手ですがオリジナルマシン地中貫通機の絵も描きました。設定として上の部分に妨害装置や急成長エキスが入ったタンクに換装出来る機能があり、用途に応じて使い分ける事が出来ます。