うてな達の学年は社会見学で有名な地元の化粧品メーカーATENA社を訪れていた。
ATENA本社前
「は~かったりぃな~なんでこの時期に社会見学に行かなきゃならないんだよ~?」
バスから降りたキウィはそう言いながらクラスメイトからやや遅れながらダラダラと歩いていると同じ班員のうてなと小夜が困った顔をしながらキウィに近づく。
「し、しょうがないよキウィちゃん。バルバンの破壊活動で色々ごたついちゃったんだから・・・エノルミータも原因の一端かもしれないし(ボソ)」
「え?うてなさん何か言った?」
「う、ううん。何でもないです」
そんな事を話していると同じ班員の眼鏡を掛けた女子生徒がうてな達に鋭い声を向ける。
「ちょっとあなた達!何ダラダラ歩いてるの!皆と遅れてるわよ」
「ちっうるせ~な高田の奴」
「まぁまぁキウィちゃん」
「遅れてるのは確かだし見学を早く終わらせる為にも早く合流しないとね」
「・・・分かったよ~」
その様子を少し離れた所で別の班になった薫子とはるかが見ていた。
「あ~あ小夜も災難やな。アホのキウィだけじゃなくて口うるさい高田と一緒の班になるなんて」
「あはは、高田ちゃん厳しいからねぇ」
そんな事を言いながら本社のロビーに入るとそこには黒いビズネススーツに身を包んだ女性が出迎えた。
「皆様本日は我が社の見学に来てくれてありがとうございます。私はATENAの社長、花央 香(かおう こう)と申します」
「(あ)」
「(どうしたんはるか?)」
ATENAの社長の顔を見たはるかは思わず小さな声を上げそれを聞いた薫子が声を掛ける。
「(あ、うん、あの社長さん昔あたしの近所に住んでいたお姉さんかもしれないんだ)」
「(そうなん?)」
「(うん、そう。お化粧や香水の事色々教えて貰ったんだよぉ)」
――――――
―わ、すごい良い匂いがするー!
―フフ、そうでしょ。香水はね女の人を魅力的にしてくれる魔法の水なのよ。私は将来こんな魔法みたいな香水や化粧品を作って皆に喜んでもらうのが夢なのよ。
――――――
「(ふ~ん、だったら聞いてみたらどうや?わたしの事覚えていますかって)」
「(さ、流石に沢山の人が居る前で聞くのは恥ずかしいよぉ・・・それに大分昔の事だしあの人もあたしの事覚えてないよぉ・・・)」
「花菱さん、天川さん何してるの?もう皆移動してるよー」
「あ、ごめん田島さん今行くね」
他の班員に言われはるかと薫子は内緒話を切り上げクラスメイト達について行った。
――――――――
「この様に我が社の香水や化粧品は自社で開発した独自の製法で生み出した物になります。それらの瓶詰めや梱包を完全機械化する事によって素早く、正確に大量に生産して全国のお客様に行き渡る様になっています」
そう言いながら花央はガラス張りの壁の向こうで商品を作っている大量の機械を紹介する。
「あ、何だか凄く良い匂いがする・・・」
「うてなちゃんこの匂い好きなの?だったら・・・ハイハイハイ!この匂いってどうやったら作れますか?」
うてなを喜ばそうとキウィは手を挙げてどうすれば匂いを作れるのかと質問すると花央は少し苦笑する。
「それはさすがに企業秘密ですから言えませんね。ですがこの匂いのする商品なら後で教えてあげますね。値段もお手頃ですから買いやすいですよ」
「やった~!ありがとうございます~・・・・ん?」
キウィが喜んでいると向かい側の通路から掃除用具を乗せたカートを押す清掃員に怪訝な視線を向ける。
「どうしたのキウィちゃん?」
「あの清掃員どっかで見た事ってみち子じゃ~ん、おーいみち子~」
「げっ」
清掃員がみち子だと気づくとキウィは声を掛け掛けられたみち子は嫌な顔をする。
「ど、どうも、田中さん・・・」
「こんな所で何やってんだよみち子~?」
「見て分からんか、清掃のバイトだ。時給が良いんだよここは」
「え~正社員にならねぇのかよ~」
「うるさい。このご時世にそう簡単になれる訳ないだろうが」
「田中さんその人達は知り合いなの?」
「しゃ、社長・・・!」
キウィと話していたみち子だったが社長の花央に見咎められ慌てて姿勢を伸ばした。
「知り合いと話したい気持ちは分かりますけど流石に仕事中にそれも社長の前で話すのは感心しませんね」
「も、申し訳ありません社長!!」
「はぁ・・・次からは気を付けて下さいね」
「はい!申し訳ありません!・・・・・(キッ)」
「ひっ」
社長に謝りながらも社長から見えない角度から睨み付けるみち子にうてなは思わず悲鳴を上げてしまう。
「さて、ここまで案内して来ましたが何か質問はありますか?」
花央がそう言うとうてなの班の高田が手を挙げた。
「はい、そこの・・・」
「高田です。あの前にネットニュースで見たんですけど、この会社は製品を作る際大量の廃棄物が出るってあったんですけどそれらはどう処理してるんですか?」
高田の質問に花央は顔色一つ変えず安心させる様に笑みを浮かべて口を開いた。
「そのネットニュースはいささかデマが入っていますね。我が社の商品は確かに製品を作る際に廃液などは出ますがそこまで多くはありませんし、処理もちゃんと公式の手続きに則って処理しています。皆様を不安がらせる様な物は一切ありませんのでご安心して下さい」
――――――――
一通りの案内が終わるとうてなのクラスは会議室に通され、そこに並べられた試供品の紹介をされた。
「皆様本日は見学お疲れ様でした。記念に我が社の試供品を持って帰って下さい」
花央に言われクラスの女子達は嬉しそうな声を上げて試供品を貰っていき、そんな中うてなのクラスの担任と花央が話していく。
「今日はお忙しい中ありがとう御座いました。社長自ら案内をして下さって恐縮です」
「いえいえ、若い子達に我が社の事を知って貰える良い機会でしたよ。それでは私はこれで」
花央はそう言いながら会議室を出て行くのを薫子が目敏く見つけると素早くはるかの手を取って駆け出した。
「行くではるか」
「わわ、薫子ちゃん!?」
慌てるはるかに構わず薫子は会議室を出て花央を見つけると彼女に声を掛ける。
「あの!」
「何ですか?」
「この子・・・花菱はるかって言うんですけど昔会った事はありませんか?」
「・・・・あぁ!」
薫子の質問に訝しげな視線を向けていたがはるかをジッと見つめると思い出した様に声を上げた。
「はるかちゃん!はるかちゃんね!うわぁ久しぶり、引っ越したのが七年前だから一瞬分からなかったわよ!」
「覚えててくれてたんですか・・・・?」
「勿論よ!私が初めて作った香水をすごく喜んでくれて本当に嬉しかったんだから!そっかぁこんなに大きくなったのね」
再会に心の底から嬉しそうな表情を見せる花央にはるかも嬉しそうにはにかんだ表情を浮かべる。
「(な、やっぱり聞いてみて良かったやろ)」
「(うん・・・ありがとう薫子ちゃん)」
「さて、色々話したい事はあるけど今は仕事中だしこれ以上はさっき注意した田中さんにも申し訳ないわ。今度の日曜の13時にまた本社に来なさい、話の続きは又そこでしましょう。お友達も一緒にね」
「!はい、ありがとうございます!!」
荒くれ無敵城
「御大将。壊力坊、作戦準備完了致しました」
そう言いながら僧兵に珊瑚の装飾が施された様な魔人ー壊力坊がブドーの前で跪き報告をするとブドーは満足そうに頷く。
「うむ、モビーディグは現在此処におる。此度の捕獲作戦、壊力坊お主に任せるぞ」
「ハハッ!」
ブドーが筆で地図の一カ所に丸を書いて示すと壊力坊は一礼し部屋を出て行くとシェリンダが苛立った様子で近づいた。
「おいブドー!何を1人で勝手に進めている。私達にも作戦を説明しろ!」
「おぉ、これは失礼しもうした」
シェリンダに言われブドーはくるくると巻物の紐を解いて広げた。
「モビーディグ捕獲作戦其の二[モビーディグは人が廃棄した穢れを好む物なり]」
「人が廃棄した穢れ?何だそれは」
「人が廃棄した穢れ其れすなわち産業廃棄物。此度の作戦は人が愚かにも生み出した穢れを壊力坊がそれを独自の伝手で手に入れる事に成功致した。それをばら撒く事で餌にしてモビーディグをおびき寄せるのが此度の策でござる」
「ほぉ、そりゃ面白ぇこの星の人間の自業自得のお陰で俺達はモビーディグが手に入るって事か」
「左様でござる。船長」
ブドーの作戦を聞き愉快そうな表情を見せるゼイハブにブドーはさらさらと短冊に俳句を書くとそれ見せる。
「人間の 捨てし穢れを 利用する」
――――――――
はるか達が見学に行って数日後の日曜
「どらぁ!」
壊力坊は地面に向かって大槌を叩き込むと地面の舗装された石畳やアスファルトなどがひび割れて捲れていき地面がむき出しになっていく。
「よし、ヤートット並べていけ!」
「「「ヤートット!!」」」
壊力坊の命令でヤートット達はむき出しになった地面に次々と重そうなドラム缶を置いていくと壊力坊は今度は大槌から薙刀に持ち替えた。
「そりゃあ!」
壊力坊はそのまま薙刀でドラム缶を切り裂いていき中の廃棄物を地面に染みこませていく。
「ヤートット、次を並べろ!」
「そこまでだよぉ!!」
壊力坊が次のドラム缶を並べる様に命じた時、到着したトレスマジアが壊力坊達の前に降り立った。
「バルバン!これ以上の環境破壊は許さないわ!」
「折角、あの人の所に遊びに行く所だったのに!」
「シオちゃんズはまだ来てへんけど、さっさと倒させてもらうで!」
「トレスマジア!某の作戦の邪魔をしに来たか。ブドー魔人衆が1人、壊力坊が片付けてくれる!」
壊力坊はそう言うと薙刀を大きく振りトレスマジアに斬りかかっていった。