寒くなった夜の街で薫子を寒そうに白い息を吐きながら考え事をしていた。
(はるか、この前の社長さんの件で大分落ち込んでるな。何とか元気づけてやりたいけどどうしたら良いんやろ・・・)
そう思いながら薫子は何か温かい物でも買おうとコンビニに入っていく。
「いらっしゃいませー!」
(この店員相変わらず声デカいな・・・何か肉まんかコーヒーでも買おかな。ん?アイツは)
薫子がふと雑誌コーナーに視線を向けると蘭朶は雑誌を立ち読みしていた。
「蘭朶やん、こんな時間におるなんて珍しいやん」
「あ、天川薫子。エヘヘみっちゃんがあと少しでシフトが終わるから一緒に帰る為に待ってるの。その待ってる間に今度デートに行く場所を調べてるの」
「デート!へぇ何か良い場所とか見つかったんか?」
「うん、ここがお勧めって雑誌に書いてあった」
そう言って蘭朶が見せた雑誌にはそこにはイルミネーションツリーの特集が載っていた。
「へぇ、イルミネーションツリーか。良いやんけ」
「特にこの”望工の樹”のイルミネーションがすごく人気みたいで夜は勿論昼でも見に行く人がいるみたい、みっちゃんと二人きりで眺めるのエヘ」
「確かにこんな大きな樹やったら昼でも見に行く価値あるな(そうや!はるかを此処に誘ってみよか。昼と夜のこの樹のイルミネーション見せれば少しは元気になってくれるかもしれんな)」
「?どうしたの?」
「あ、いや何でも無いわ・・・もう夜も遅いしウチはそろそろ帰るわ。ありがとな蘭朶!」
「あたし、お礼言われる事した覚えないんだけど?」
蘭朶の疑問も聞こえず薫子はコンビニを出ると明日はるかにどう連絡して誘おうかと考えながら家に向かって走って行った。
次の日 大橋
「ありがとな、はるか。今日イルミネーションツリー見に行くの付き合ってくれて」
「ううん、あたしも今日は暇だったから丁度良かったよぉ」
背中に天風星と書かれたコートを羽織った薫子がそう言うと右胸に制帽を被ったコウモリの羽根が付いたニンジンの様なキャラクターのアップリケとグッドストライカーと書かれたロゴが貼ってあるジャンバーを着たはるかは気にした様子も無く笑顔でそう答えるがその笑顔はどこか陰りがあった。
(はるか・・・やっぱりまだあの社長さんの事を引き摺ってるな。ウチが何とか元気づけてやらんとな)
「どうしたの薫子ちゃん?」
「あ、いやこうして二人きりで出掛けるのはあんまり無かったなって思ってな」
〈(正確には二人きりでは無いがな)〉
〈(薫子俺達も居るぜ)〉
「あぁ・・・うん、そやね・・・」
途中でテレパシーで会話に割り込んできたギンガホーンとギンガホークに薫子は微妙そうな顔を浮かべる。
(なんやろ、いつもの通りの筈やのにガッカリしとるこの気持ちは・・・)
「あ、薫子ちゃんアレって蘭朶ちゃんじゃない」
薫子がそんな事を考えているとは露知らずはるか自分達のはるか先に見知った後ろ姿を見つけた。
「エヘヘみっちゃん♡」
「蘭朶そんなにくっ付かなくても私は逃げんぞ」
「蘭朶ちゃんと一緒に居る人何処かで会った事がある様な?・・・おー」
「わー!待ち待ちぃはるか!見た感じ二人きりでデート楽しんでる見たいやしここで声掛けるのはやめときぃ!!」
「え?う、うん分かったよぉ」
「ふー・・・ん?」
慌ててはるかを止めて一息吐くとふと大橋の向こう側から虚無僧の一行が尺八を吹きながら歩いてくるのが見えた。
「虚無僧?映画かなんかの撮影か?」
「お遍路さんとかかなぁ?」
「それは四国やろはるか」
そんな事を話していると虚無僧の一行ははるか達とは逆の方向に去って行きはるかと薫子は不審に思いつつも気のせいだと言い聞かせ向こう側へ歩いて行った。・・・先頭の虚無僧が尺八から白い胞子の様な物を吹き出しているのも気づかずに。
荒くれ無敵城
いつもの部屋ではブドーが畳に座りながら落ち着いた様子で茶を啜っていた。
「ズズ・・・・ふう」
「エエイ、ブドー!呑気に茶なんか飲んでねーで早くモビーディグを捕まえに行かねーか!」
「心配ご無用。もうすでに作戦は開始しております故」
「何ぃ?」
苛立つゼイハブに落ち着いた様子で返しながら巻物を開いていく。
「モビーディグ捕獲作戦其の三[モビーディグは樹毒を好む物なり]」
「樹毒?何だそれは?」
初めて聞く言葉にシェリンダは疑問符を浮かべる。
「樹毒それは読んで字の如く樹が持っている毒。この星ではエニシダ、ユズリハ、エゴノキ、イチイ等があるでござる」
「だが毒を持つ樹といってもそこまで多くは無いだろ?それでどうやってモビーディグをおびき寄せる気だ」
「既に我が配下の1人虚無八が特殊な宇宙カビをばら撒いているでござる。そのカビは樹に感染する事で樹を腐らせ根から毒を滴り落とし地面を汚染する事が出来る物でござる。それを樹木の多いこの地域にばら撒き大量に感染させマゼンタの浄化を追いつけなくし、その隙にモビーディグをおびき寄せ捕らえるのが此度の策」
そう言いながらブドーは地図に記された場所に円を書くと短冊にさらさらと文字を書くとそれをゼイハブとシェリンダに見せつけた。
「尺八で 木の根腐らせ 呼び寄せる」
――――――――
大橋を渡り終えしばらく歩いていると今度はうてなとキウィの2人を見つけ、うてな達もはるか達に気づきキウィが先に声を掛けた。
「あーはるかっぴに貧乳バカじゃ~ん、何でお前もいるんだよ~ストーカーかよ~?」
「あらあらそれは此方のセリフですわ。其方こそ毎度毎度ウチらの行く場所に現れてもしかしてウチに気があるからですか?ならごめんなさいなぁ、ウチはアンタの事好きじゃありませんから」
「あ?誰がお前みたいな貧乳バカ好きになるかよ~アタシだってお前の事キライだよ」
「お、落ち着いてキウィちゃん」
「薫子ちゃん!会う度に喧嘩腰になるのいい加減にやめようよ!」
「「チッ」」
一触即発な雰囲気で睨み合う2人をうてなとはるかは慌てて引き離して宥めるとキウィと薫子は舌打ちしながらも一旦矛を収めた。
「そ、それよりはるかちゃんと薫子ちゃんも望工の樹を見に来たの?」
「うん薫子ちゃんが教えて誘ってくれたんだよぉ」
「そ、そうなんだ。サイトの写真見てみたけどすごく大きくて綺麗だったよね」
「うん昼間でも綺麗だって言うから見てみたくなって、夜の方も見れたら見てみたいけど」
「だったら見てみたらいいじゃ~ん。近くにデパートあるし最近オープンしたクエスターズって言うユッケジャン専門店があるからそこで晩飯食えば良いじゃんね~?」
「あ、それウチが言おうとしてた事を」
「まぁまぁ、薫子ちゃん、ご飯を食べるなら家に連絡した方が良いよね。うてなちゃんもキウィちゃんも良かったら一緒に食べない?」
「お、良いのはるかっぴ~」
「あ、ありがとうね。はるかちゃん」
(ンミィ・・・何やさっきと言いモヤモヤするこの気持ちは?)
皆で一緒に食べようと提案するはるかに薫子はどこか悲しそうな表情になりながら胸に抱いた気持ちに戸惑っていた。
「お、見えてきたアレが望工の樹ってえぇええ!?」
キウィは見えてきたらしい望工の樹を見つけると驚いた様な声を上げた。
「うっさ、いきなり叫んでどうしたねん?」
「これが叫ばずにいられるかよ!アレ見ろアレ」
そう言ってキウィが指さした先にはイルミネーションが施された大きな樹に白い綿の様な物が纏わり付いていた。その近くには先程見かけた蘭朶とみち子が居た。
「あ、花菱はるかと天川薫子と阿良河キウィと柊、うてな・・・・!」
「あ”」
「お~ランランとみち子~お前等も望工見に来たの?」
うてなを見つけた蘭朶はうてなを睨み付けそれにうてなはビクリとなるがキウィはうてなを隠す様に前に出て蘭朶に質問する。
「うん。みっちゃんと一緒に見に行こうとしたのにこんなになってた・・・」
「この樹だけじゃない周りにある木も軒並みこんな状態だ」
「マジか・・・なんなんやこれコレ?綿?蜘蛛の巣か?」
〈(触るな薫子)〉
薫子が調べようと綿の様な物に触れようとした時テレパシーでギンガホーンが止めに入る。
〈(これは昔銀河で見た事がある。強力な感染力を持つ宇宙カビだ)〉
「(宇宙カビやって?)」
〈(あぁ、樹に感染して腐らせてその根から毒をまき散らすタイプのカビだ。コイツはその仲間だろう)〉
「(そんな。あたしのアースで浄化出来ないのぉ?)」
〈(浄化は出来る。がコイツは感染スピードが速くてマゼンタ1人では追いつかない)〉
「(じゃあどうすれば・・・)」
〈(手はある。このカビは私が知っているのと似ているがどこか不安定だ。恐らく何かの術で再現された物だ)〉
〈(そしてこんな事する奴らなんてバルバンしか居ねぇ!)〉
「(ッあの虚無僧)」
ギンガホークの言葉を聞き薫子の脳裏に先程すれ違った虚無僧の一団の姿が浮かび険しい表情を浮かべる。それを見て蘭朶はテレパシーを送る。
「(何か分かったの?)」
「(あぁ、バルバンの仕業や。さっきすれ違った虚無僧の奴らが多分ばら撒いたんや!)」
「(直ぐに追いかけに行くよぉ!)」
「(!分かった。あたしも後で追いかける。ペスカとシオちゃんにもテレパシー送っとく)」
「(お願いね)」
テレパシーでそう取り決めるとはるかと薫子は思い出した様に大声を出した。
「あー!そう言えば大事な用事があったの思い出したよぉ!直ぐに帰らなきゃ」
「ウチもそう言えばオカンに宅配の受け取り頼まれとったわー!一旦帰るわ」
そう言うとはるかと薫子は元来た道をダッシュで走って行った。
「あ、はるかちゃんと薫子ちゃん・・・行っちゃた」
「アイツらせわしねーな~アタシらはどうする~ランラン~?」
「あたしも帰ろうと思う・・・行こみっちゃん」
「・・・そうだなイルミネーションツリーがこれでは見る意味が無いな」
蘭朶のアイコンタクトを受けみち子は頷くと蘭朶と一緒に帰り支度をしていく。
「柊うてな。お前達も樹がこんな宇宙カビに侵蝕されているんだ。見るのを辞めて早く帰るんだな」
そう言うとみち子は蘭朶と共に何処かへ去って行った。
「ちぇ、偉そうに~どうするの~?このまま帰る~?」
「・・・いえ、これはどうやらエノルミータが出る必要がありそうです」
「え?何で」
「先程みち子さんは樹に付いていた綿みたいな物を宇宙カビと行っていました。どうやって知ったのか知りませんがこれの正体に気づき更に宇宙の物だと言ったんです。つまり宇宙海賊バルバンがこの被害を出していると言う事です」
「お~すごい論理の飛躍~」
「何にせよこんな事をやるのはエノルミータ以外ではバルバンしかいません。だからみち子さんと蘭朶さんは去って行ったんです。ならばわたし達も変身して魔法少女の戦いの観戦とバルバンの妨害をしてやりましょう!」
「了~解♡」
並木道
「さてこれだけ汚染すればモビーディグも出てくるはずだが」
並木道で胞子をばら撒いて樹を粗方感染させた虚無僧はそう言いながらモビーディグが出てくるのを待っていると虚無僧を見つけたマゼンタ、サルファが追いついてきた。
「見つけたよぉ!あなたが木々をこんなにした犯人だね!」
「だったら?」
「痛い目見たくなかったら早く元に戻しぃ!」
「フ、それは無理な相談だ・・・私を倒せば話は別だがな」
そう言って虚無僧は変身を解き虚無八の姿に戻ると同時にお供の虚無僧も変装を解きヤートットの姿に戻り新たなに現れたヤートットと共にカトラスを構える。
「ブドー魔人衆が1人虚無八。御大将ブドー様の命によりモビーディグはブドー魔人衆が頂く」
「うっタコ・・・」
「どうしたマジアサルファ?臆したか」
「ッ誰がビビッてんねん!多少タコが混ざってる位で怖い訳あるかい。唸れ星獣モード!」
虚無八の挑発に気丈に返すとサルファは星獣モードになり強化型獣槍の爪を構えて突進した。
ちなみに望工はモークの字を適当に当て字にして付けた名前です。