デク-1.0   作:今日は晴れ

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 今回はかなり注意
 
 原作と大分キャラが違う方が出ます。
 ただ、理由はあります。

 けど、気になる方はバックをお願いします。



第十話 1年A組:疑惑

 

 「お前ら、除籍な」

 

 出久と優雅へかけられた相澤の一言に、一瞬静まりかえる。

 

 「「は?」」

 

 奇しくも、二人の言葉は同じだった。

 疑問、よりも何が起こったのか、理解できない思考停止の言葉。

 

 そして、

 

 「はああああああああああ!!!!!」

 

 出久の絶叫が響き渡った。

 

 「何が悪かった? 50メートル走と持久走で時々体が重かったからあれの所為? それとも握力計を壊して測定不能にしちゃったから測定無効だったとか? いやそもそも……」

 

 叫んだかと思えば、一転、すごい勢いで出久は独り言を話し始めた。ぶつぶつと、周りの声が耳に入っていない。

 朝、教室にいたときとキャラが違い過ぎないか? そのことに周りの生徒たちはドン引きし、出久に背負われている珠雨華が誰にも聞こえないが、割と出久ちゃんって失敗に弱いし、こんな子なのよねー、と懐かしさを抱いていた。

 

 騒がしい出久と対照的に優雅が静かであったが、クラスメイトの誰かが気づいた。

 

 「き、気絶してる……!」

 

 目を開けたまま、優雅は気絶していた。

 

 「はい!」

 

 二人の肩を掴んで顔を寄せ、まだ顔が近い位置にあった相澤は、出久の絶叫に両耳を押さえていたが、やがて出久の絶叫が止み、呆然と立ち尽くす。

 気力の抜けた二人の代わりに、眼鏡をかけた男子生徒が手を上げる。

 

 「なんだ?」

 

 「二人とも決して最下位の成績ではなかったはずです! それなのに除籍とは一体――」

 

 「あぁ、最下位除籍は君らのやる気を引き出す合理的虚偽だ。

 

 ただし、除籍は本当(マジ)

 

 相澤は乾いた表情を浮かべていた。

 眼鏡の男子生徒は顎に手を当て、思案の後、

 

 「まさか、二人がサポートアイテムを使った、から!? それなら申請されて――」「違うよ」

 

 眼鏡の男子の指摘を一瞬で相澤は切り捨てた。

 

 「二人には見込みが無かっただけだ」

 

 あまりに残酷な言い方に、クラス全員が凍り付いた。

 その一言で我に返った出久と優雅は更に動きを、心臓すら鼓動を停止させたのでは? と感じるほどに動かなくなる。

  

 「教師(俺たち)は見込みがないと思った生徒に時間を割くほどに暇じゃない。だから、この二人は()()見込みなしとして――」

 

 出久と優雅の肩を抱くように相澤は手を回し、距離を近づけると、二人の顔に一枚ずつ、紙を貼り付ける。

 

 「――かなり早い、職場体験に行ってもらう」

 

 職場体験!? 全員の疑問が一致する。

 セロテープで貼り付けられた紙を取ってみると、そこには必要事項が既に、職場先まで書かれていた。

 

 「本来は五月頃、雄英体育祭での活躍をみたヒーロー事務所からオファーが君らにくる。その時にヒーローの職場を知り、実状と職務を知るイベントだ。

 

 ヒーローには何が必要とされているかを知る、絶好のチャンス」

 

 相澤は、再び乾いた笑みを浮かべた。

 

 「一週間、君ら二人には職場体験をしてもらう。当然、オファーなんてないから、こっちで決めさせてもらった。先方には既に話しているから、明日から一週間、そこに行ってもらうぞ、もしくは……」

 

 相澤がもう一枚の紙を見せる。その紙には転科届けとあり、雄英高等学校普通科の文字が。こちらも必要事項が既に書かれていた。

 

 「このまま除籍……普通科に移動するか、だ。

 どうする? 普通科にはヒーロー科を志しながら落ちて、変わって欲しい生徒はごまんといるぞ?」

 

 「「職場体験で!」」

 

 二人の声が重なった。

 

 じゃあ、そういうことで。と相澤はスマホを取りだし、入力を始める。

 

 スマホを入力しながら、

 

 「二人には、圧倒的に足りていないものがある」

 

 「足りていない、もの……ですか?」

 

 「そう、足りていない。他の、ヒーロー科38人、全員にあるが、二人だけ、ない、いや、あるものがある。それをこの職場体験で見つけろ」

 

 相澤はスマホ画面を見せる。

 そこには、出久たちに渡した書類に記されたヒーロー事務所の名前――「IDATEN」があった。眼鏡の男子がその名をみて、一瞬表情を硬くするが、誰もそのことに気がついていない。

 相澤は操作を続け、よろしくお願いします、と相澤のメッセージが送信された。

 

 「一週間だ、一週間でそれに気がつかなかったら、見込み無し――今度こそ本当に除籍処分、普通科に転科ね」

 

 出久と優雅は息を飲み込んで、頷いた。

 

 ☆

 

 オリエンテーションや必要な書類は教室にあるから各自で、緑谷と青山の二人は明日、体験する職場先に移動するためのチケットを渡すからあとで職員室に来い、そう相澤は話して解散となった。

 

 相澤が職員室に向かって歩いている途中であった。

 

 「初日から厳しいね」

 

 声をかけられ、振り向けば、校舎に隠れるように立つ、金髪を逆立たせ、筋肉でスーツがパツパツに張り詰めた男――オールマイトがいた。

 

 「……オールマイトさん」

 

 相澤はオールマイトを、ヒーロー公安委員会の委員を見る。

 このNo.1ヒーローは、今年の夏頃を目処に雄英高校の臨時教師をする予定だった。

 本来は、丁度今日、四月の新学期からの予定であったが、彼が去年ヒーロー公安委員会の委員だったり、新事業の法人理事など、様々な活動を始めたため、時間が取れず、未だ高校教師の資格を取れていないため、こうしてずれ込んでいる。

 

 今でも一週間に一度か二度、雄英高校で研修を受けていた。

 

 「いきなり二人とも除籍とは、厳しすぎない?」

 

 「…………逆にお尋ねします。あの二人、何なんですか?」

 

 相澤消太の個性は“抹消”、視界に入れた個性を消す能力だが、長年の酷使でドライアイを発症していた。

 

 その眼光は鋭く、No.1ヒーローのオールマイトを睨みつける。

 思わずたじろいだオールマイトから視線をそらした相澤は空を見上げる。

 

 「――『武士道というは、死ぬ事と見付けたり。二つ二つの場にて、早く死ぬ方に片付くばかりなり。別に仔細なし。胸すわって進むなり』」

 

 相澤の口から出てきたのは、とある高名な武士の指南書の一説だった。

 

 「――……『葉隠』だね」

 

 江戸時代に成立した九州武士の、精神的支柱を描いた指南書である『葉隠』。

 相澤は今年の生徒にも葉隠との名字の生徒がいたな、と関係ないことを思い出していた。

 

 それよりも問題は、相澤が口にした一説だった。

 

 「要は、死ぬことを恐れずに何事もやれば、簡単に片がつくから死ぬか生きるかだったら死ぬことを選べ、そんな話です」

 

 詳細は違うが、大本の意味はその通りであった。

 死ぬか生きるかの選択肢で、生きることを選べば、迷いが生じる。迷いが生じれば、かえって事が片付かない。だから、死ぬか生きるかだったら、死を選び、覚悟を決めて物事に取り組めば、簡単に終わる、そんなことを説いた話だ。

 

 「――……二人が、死を選んでいる、と?」

 

 オールマイトの言葉に、相澤は頷いた。

 

 「あの二人は、何を見たんです? 何を経験したんです? 面構えが違う、プロヒーローでも、あんな表情をした奴は滅多にいない。この間の実技試験を見た時、心底ぞっとしました。

 

 最初から、死を恐れていない。

 

 己の腹が個性で焼かれても平然としていた青山、プロでも恐怖を抱く0ポイント仮想敵に笑顔で、麗日を見つける前から襲いかかった緑谷。

 

 極めつけは――」

 

 持っていたスマホの画面を見せる。

 先ほど、個性把握テストで計測機械が記録した映像が流れた。

 そこには、50メートル走を後ろ向きにレーザー光線を発射し、一瞬で駆け抜け、ゴールを突き抜けて不時着、右肩が外れたように力が抜けているが、平然と関節を入れ直す青山優雅。

 

 画面が変わって、出久は握力計に思い切り力を入れ、ごきり、と握力計を握り絞めた拳から、嫌な音が鳴って握力計が壊れた。

 無論、出久の指がおかしな方向を向いている。その指に平然と布を巻き付け、元の位置に無理矢理、嫌な音を奏でながら、戻した。治癒能力も底上げされていると言いながら。提出された書類上、それは事実だったが、痛みに表情を歪めることはなかった。

 

 「個性の限界、いや、身体の限界を考えていない。普通の、普通の生活を送っていた人間なら、無意識下にセーブする力すらもあの二人は意図的に、自傷を構わずに行う。更に、一切の手助けも必要としない。

 

 その上、二人ともヒーロー仮免許取得済み、そのことで開示請求を依頼して出された書類は公安からの直々な黒塗り(秘匿事項)

 

 申請されたサポートアイテム、青山のベルトには仕込み刀、緑谷に至っては通常火器すら搭載された重砲火器、戦争をするつもりですか? 更に……」

 

 相澤はオールマイトを見た。

 

 「去年、一クラス全員を除籍したときには何も言ってこなかった貴方、オールマイトさん(ヒーロー公安委員)が直々のお出まし、となってる。

 

 何を隠してるんですか?」

 

 オールマイトは笑顔のまま固まっていた。

 

 本来、担任教師である相澤に話すべきだろう。

 しかし、これはヒーロー公安委員会全てに関わることであり、ヒーロー公安委員であるオールマイトの口から説明しては、公安委員会の職務を逸脱していた。

 

 とりあえず、心の中で、青山少年、緑谷少年、サポートアイテムは正直に申告しすぎ! と思いながら、その日はさらに追求しようとする相澤をごまかした(逃げ通した)

 

 

 ☆

 

 

 同時刻、とある地方都市の繁華街には、一風変わったビルがあった。

 ビル街の雑踏に佇むそのビルは、カーキ色でおしゃれな印象を与え、五階建てくらいが多いビルでは珍しい二階建てのビルだった。

 だが、一番の特徴は、換気扇や窓はあったが、扉が一切ないのだ。

 窓も小さく、到底人が入れる大きさではない。

 

 このビルには、看板も掛かっていない。

 

 何をしているか、どうやって入るかすらも不明なビル。近所に務める働き手や、住民も知らない謎のビル。

 

 そのビル内部では、都市部の雑踏には似つかわしくない、クラシック――四季が流れ、アンティーク調のテーブルと椅子が置かれていた。

 

 室内の照明も間接照明で明るすぎず暗すぎず、空調も心地よい。

 

 一見すると、高級なレストランであり、現に、この室内――店内には、なんとも食欲を刺激する香りが漂っていた。

 

 そんな店内に、突如、黒い靄が発生する。

 

 その靄から、一人の、頭部が黒い靄で隠れ、黄色い一対の目だけが爛々と輝く怪人が現れ、そのあと、

 

 「はぁ~……」

 

 店内の匂いをかき乱す、思わず、鼻をつまんでしまう血の香りを漂わせた、赤いぼろきれをマフラーにし、顔面に包帯を巻き付けた男が現れる。

 

 「お待ちしておりました、ステイン様」

 

 だが、店内にいた男――燕尾服に、()()()()()()()()()()()()()()()()()は気にする素振りを見せなかった。

 

 「今宵は我々の招待に応じていただき感謝の言葉も――」「御託はいい」

 

 青年の話を打ち切る。

 ステイン――全国各地でヒーロー殺しと恐れられるヴィランは、青年の首元に刃を突きつけるが、青年は余裕の表情を崩さない。

 

 「何のようだ? ()()()()

 

 ステインから名前を呼ばれた青年――死柄木弔は、上着のポケットから一枚の写真を取り出し、ステインに見せる。

 

 「この少年をステイン様に()()していただきたい」

 

 写真に写っていたのは、一人の少年だった。

 髪が爆発したようなヘアスタイルのそばかすの少年――緑谷出久であった。

 

 





 
 今話の要約



 相澤先生「おそらくなんかあった生徒だ。
 
      面構えが違う」


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