デク-1.0   作:今日は晴れ

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 今回は完全なギャグ回です。
 
 読まなくても本編とは何の支障もない上に、全員キャラ崩壊してます。
 
 格好良いステインしか認めない方と、
 真面目に働いてる死柄木は違うだろうという方はバック推奨

 ※一部描写追加しました。
 最後の死柄木が送り出すシーンに追加ありです。

 2024/09/20 ステインと死柄木弔の出会い回想シーン追加しました。


閑話 『悪者のレストラン』

 

 その店は、「レストラン」とだけ呼ばれている。

 窓は小さく、換気扇のみの扉のないビル。

 その二階建てのビル内部には、一組の客をもてなすだけのテーブルと椅子があった。

 老夫婦が趣味で経営するような店だが、一般人が開店以来、来客した事はない。

 

 この店を利用するのは、政治家や上場企業の上役、それに、一部の高名なヒーローだった。

 他の客らからの紹介がなければ入れない店であった。

 そして、その利用料金は、一食につき最低一千万円、と、小さな家が建つ値段だった。

 

 だが、この店は連日予約で埋まっている。

 

 その理由は、完全に秘匿されているため。

 高額な料金を請求する料亭は、一部の店では、値段の割に料理の質が良くないとの悪評がたつことがある。一般人が大枚をはたいてその料理を食べても、美味しくなかった、と評価される。しかし、そういう店に足を運ぶ客は絶えないし、決して潰れない。

 それは当然の話だ。そういった類の店では食事をメインに出すところもあるが、食事のための店ではない場合がある。

 どんな話をしようとも、聞かれることはない、秘密話のための店なのだ。

 

 例え、客がどんな話をしようとも、法に触れる話をしようと、その話を耳にした従業員は警察に通報することはない。また、他の客と会うことがないように調整されているため、どんな話をしても、盗聴される心配がない。

 店員から記者が聞き出そうとしても、漏れることはない。

 だからこそ、料理の質が劣っていても、利用する客が絶えないのだ。

 

 「レストラン」は、特に徹底されていた。

 

 そういった料亭の弱点である出入り口がなく、従業員が直接客の家まで送迎をするから、誰と会おうとも露呈することはない。

 そして、この店には、地下室があり、どんなことがあっても、どんなことをやっていても一切従業員は、手を出さない。

 

 ただの料理を楽しむだけなら、一千万円。しかし、プランの中には、通常の社会では味わえないサービスもあり、最初の()()から()()()まで、店がやってくれるのが、レストランの特徴だ。その場合、数倍の値段を要求されるが、人気であった。

 

 ただし、レストランを利用するには三つの決まりがある。

 

 一つは、支払いは現金のみ。例え、億を超えようとも、現金しか受け付けなかった。

 一つは、従業員たちの詮索はしない。例え、異形型である()()の従業員に対して、異形だと差別しても、その詮索はしない。ウェイターが手のオブジェを顔に貼り付けていも、同じ事だった。

 

 そして、最後に、出された料理は決して残さない。例え、料理が目的でなくても、絶対に残してはいけない。

 

 これを破った者たちは、客に思わない、とされて、例えヒーローでも帰ってこなかったものもいた。

 

 

 しかし、破られたのは一つ目と、二つ目だけだった。

 

 三つ目は、誰も破ったことがなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この店の料理は、美味かった。

 

 

 

 ☆

 

 「水晶コーラです。ティスティングを」

 

 黒い靄に頭部が隠れた怪人――黒霧が、椅子に座っているステインにコルクを差し出す。

 

 ステインは顔面を覆っていた包帯をまくし上げ、そのコルクを、鼻がそぎ落とされた鼻腔で嗅いだ。

 

 「あ~……あまぁい……」

 

 過去にステインと対峙したヒーローたちなら目を疑うだろう。

 ステインは至高とも、極楽ともいえない表情を浮かべ、うっとりと目を細めたのだ。

 

 いつも殺気に満ちていた、常に警戒心に溢れ、店に入ってきたとき、警戒を解かなかったはずの殺人鬼が、一瞬とはいえ、呆けた顔を浮かべたのだから。

 

 無論、すぐにいつもの張り詰めた表情に戻るが、ヒーローたちを殺害、再起不能たらしめた一流の戦闘マシーンとは思えなかった。

 

 ステインは匂いを嗅いだコルクを投げ捨てるが、それを咎めることはなく、バーテンダーである黒霧はテーブルに置かれたグラスにコーラを注ぐ。

 

 上品な黒と、美しい白の気泡のグラデーションが素晴らしかった。

 

 その美しさに見とれることなく、むしろ、見とれないようにステインは一口で飲み干すが、

 

 「…………あ~」

 

 顔が蕩けていた。

 我慢、できなかった。

 

 「お待たせしました。前菜……インスマスイクシオのカルパッチョです」

 

 奥から、死柄木がやってきた。いつもと同じように、左手を顔面に貼り付けていたが、笑みを浮かべているのが分かる。

 

 死柄木は両手でトレーを掴まず、両腕にトレーを橋を架けるように乗せ、テーブルに料理を置くと、その蓋を手で掴み、蓋が消滅する。

 

 そこには、三切れの魚料理、カルパッチョであり、見た目も鮮やかで美しかった。

 しかし、ステインは持ち込んでいたナイフで料理を刺して口に運ぶ。

 

 行儀作法もないが、ステインは必死だった。

 

 この店に来るのは三度目だが、一瞬でも気を抜くと、飲まれる。

 美味すぎる料理に。

 

 「ぐぅ!」

 

 ――なんだこの、多幸感と全能感は!!!!

 

 丸呑みにしろ、ステインは自分自身に言い聞かせるが、何もせずとも口が、顎が、歯が動き、噛みしめてしまう。

 そのたびに、あふれ出す旨味と、舌が踊り出すハーモニーが堪らない。

 

 なんとか、五十回だけの咀嚼で済ませて飲み込んだ。

 

 「はぁはぁはぁはぁ……」

 

 どっと、汗が出てきた。

 最初、来店したときはこの店の料理を味わうことがないようにしていたが、出された料理を侮辱目的でナイフで刺し、口に運んだのが間違いだった。

 

 そのとき、ステインはヒーロー殺しなどで恐れられる殺人鬼ではなく、一人の人間に戻った。

 幻視したのは、母の、生命の生まれた母なる存在――海に沈んでいく自分だった。

 

 気がつけば、ステインの頬を涙が伝っていた。

 

 その後、我に返ったステインは毒を盛っただろう、と大暴れ寸前まで行ったが、厨房の食材を全て見せられ、理解した。

 

 純粋に、美味すぎるのだ。

 

 「次――」

 

 これは、この店と、ステインの勝負だった。

 一度も料金は払ったことはないが、勝負であった。

 

 「アカムツのブリュデホルフフラルトテニニャックソースでございます」

 

 「ぎひぃぃぃぃぃ!!」

 

 ステインはのけぞり、痙攣する。

 

 「ポルグ・ネッスのララバハペーニョチェトクゥァ風です」

 

 ステインは気がついた。

 今、自分がいるのは廃墟だ。

 そこで仮面を被っている。

 覚悟が足りなかった、過去の自分がいた。

 

 『もはや仮面はない』

 

 そういって、鼻のあったところを何度もナイフで削り取ろうとしたため、死柄木が流石に止めた。

 

 ☆

 

 「いかがでしたでしょうか? ステイン様」

 

 全ての料理の提供が終わり、一度休まれては? と死柄木が提案するが、不要だ、として元の場所に戻せ、そうステインは命じる。

 

 「悪くない――……」

 

 顔を背けながら、死柄木の返答に応じた。

 

 「それはそれは、何よりのお言葉を頂戴しました。

 

 また、私どもの招待を――」「……それは俺が決める」

 

 死柄木がテーブルに置いた写真と、()()()()()――東京のとあるヒーロー事務所が書かれたメモをステインは瞬時に記憶し、破り捨てた。

 ステインは黒霧が明けた黒い靄に足を向けた。

 

 「それでは、またのお越しを、従業員一同、お待ちしております」

 

 そうして、ステインは黒い靄ーーワープゲートをくぐる。送迎を担当する黒霧はバーテンダーの制服から、送迎手の礼服に着替えていて、ステインに続いた。

 黒霧に対になるような、()()()()()()()()()()()()()、この店のシェフと共に死柄木は恭しく一礼して見送った。

 

 

 

 

 この店の名は「レストラン」

 

 通称、『悪者のレストラン』。

 

 今日も、悪者たちが利用する、極上の料理を提供する至高の場所だった。

 

 悪意は、少しずつ動き出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 黒霧に案内されたステインは路地裏を歩いていた。

 

 腹は膨れたが、動きには何の支障もない。むしろ、力がみなぎっていた。

 

 月光が路地裏に照らしている。ステインは思い出す。

 

 死柄木弔に出会ったのは丁度こんな夜であった。約一年前の、こんな夜、月明かりが綺麗な晩であった。

 

 ☆

 

 その晩、ステインは一人のヒーローを粛正した。

 ただし、並のヒーローではなく、ランキングに入るほどの武闘派ヒーローで、かなり手こずってしまった。

 

 そんな時、後ろから拍手を送られたのだ。

 

 拍手の方角にナイフを投擲するが、拍手は止まない。

 路地裏の闇から月明かりに出てきたのは、三人の男たちだった。

 

 「はじめまして、ステイン様」

 

 白と黒の対となる靄を頭部に纏い、黒の靄は白のバーテンダーの服を、白の靄は黒のコック服を着た二人の怪人を従えた、燕尾服の青年だった。

 

 そのまま、高級レストランの接客をしている様子の、三人。しかし、ウェイターである青年は顔を隠すように左手のオブジェに頭部を覆われていた。

 

 ステインはそれは、遺体を改造したものだと、見抜いた。

 

 「……何者だ?」

 

 ステインの問いかけに、青年は笑い、

 

 「俺の名前は死柄木、死柄木弔と申します。以後、お見知りおきを」

 

 恭しく、彼は頭を下げる。

 

 そんな青年に、ステインは矛盾を覚える。

 青年は、礼儀正しく、そして、こちらへの敬意を感じる仕草だった。

 しかし、その作法が何度も何度も、付け焼き刃を無理矢理重ねた、慇懃無礼なものに感じた。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ステイン自身、よく分からなかった。

 

 だから、刀を抜く。

 

 「去れ」

 

 そんな殺気を混ぜられた警告に、青年――死柄木弔は笑った。下卑た、笑みだった。

 

 「どうか、ステイン様にご教授いただきことが、お願いがあるのです。しばし、お時間を頂戴できませんでしょうか?」

 

 畏まり、芝居じみた一礼。

 

 

 本能が訴えていた。この青年と関われば、ろくなことにならない。自分の、この変革すらにも悪影響を与える存在だ、と。

 

 しかし、理性がこうも訴えていた。

 この青年に関わらなければ、将来後悔する、と。

 

 刀を収める(ついていく)か、刀を投げつける(追い払う)か。

 そのとき、遠くからサイレンの音、そして、ステインの鼻が他者を、ヒーローたちが集まっている匂いを感じ取る。時間は残されていない。

 

 ステインは、

 

 「……貴様を粛正対象と判断すれば、殺す」

 

 刀を収めた。

 

 そして、黒霧と青年が呼んだ個性によって、ステインはとある場所に移送される。

 

 そこは、人気の無い森の中、人家の類いはない。気配もない、山奥。

 ただし、目の前にはアタッシュケースが山のように積まれていた。

 

 「ありがとうございます。ステイン様、俺たちの招待に応じてくださり」「御託はいい、早くしろ」

 

 死柄木の口上を遮り、ステインは死柄木の喉元にナイフを突きつける。

 

 しかし、死柄木は動じる様子はなく、

 

 「では、本題に。ステイン様にご教授いただきたいことは、ステイン様の行動原理――」

 

 死柄木は笑う、嗤う、嘲笑う。

 

 「信念を教えてくれよ、先輩(ヴィラン)

 

 貼り付けた仮面が剥がれ、無垢な、無垢で純粋故に残酷なことを平然とできる幼子のような笑みで、死柄木は、死柄木弔はステインに問いかけた。

 思わず、ステイン(連続殺人鬼)の肌が粟立ち後ずさるほどの、殺意と憎悪が籠もった表情だった。

 

 それが、ステインと死柄木弔のファーストコンタクト。

 

 それからが、因縁の始まりだった。

 

 

 

 





  【元ネタ解説(作者の言い訳)

 ・水晶コーラ・・・・・・トリコのメロウコーラ編で冒頭に登場したコーラ。
          
 
 ・出てきた料理・・・・・・この作品にも多大な影響を与えた内藤泰弘先生の『血界戦線』
           作者が一番好きなエピソード『王様のレストランの王様』に登場す      
           るフルコース。堕落王の素晴らしい一面がみれて、大好きになりま            
           した人類滅ぼそうとするけど。



 ヴィジランテ読んでますが、面白いですね。大分お兄さんについてキャラがつかめてきたのと、天哉くんと全然タイプが違い過ぎて、書く前に履修して良かったです。というか、半分くらい書いてましたが、全部書き直しです。
 次回更新は結構開くかも。今日は連休最終日、明日から、しばらく仕事でーす!

 また次回。
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