デク-1.0   作:今日は晴れ

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 ヴィジランテ 僕のヒーローアカデミア ILLEGALS、面白かったです。


第十一話 緑谷出久:職場体験

 

 「明日の7時丁度の新幹線でいけ。東京駅で迎えがあるはずだ」

 

 雄英高校の職員室にて、相澤は緑谷出久と青山優雅に新幹線のチケットが入った封筒と、諸注意と書かれたプリントを渡す。

 二人はその用紙を受け取り、内容を確認する。

 職場体験中、下宿先はお邪魔するヒーロー事務所の仮眠室であることや、二人は同時に行動すること、学ばせてもらうヒーローは夜型の勤務が多いが、二人のために期間中のほとんどは日中に活動すること、それでも、三日に一度は夜勤のため、その日は彼の相棒(サイドキック)と行動を共にすること、などが書かれている。

 

 「職場体験中、本来はヒーローネームとコスチュームで行ってもらうが、お前たちには()()()()()()()()()。だから、体操服と個人名でやってもらう」

 

 さらに相澤は出久と優雅が申請していた体操服のサイズと同じモノが入った紙袋を用意していて、毎日換えの着替えとして、それを渡した。

 

 「毎日、レポートを提出しろ。ありがたいことにお前たちが世話になるヒーロー事務所でパソコンを貸してくれるそうだ。何があったか、職場体験の内容は書かなくていい。その代わり、なにを学んだかを書け」

 

 はい、と二人は返事をする。相澤はその顔に、あぁ、これだ、と僅かに肌が粟立つ。

 除籍がかかっているとはいえ、大抵の生徒は真面目に聞くが、それ以上に本物のプロヒーローの事務所にいけることに目が輝いて、興奮を隠せなくなっているものだ。

 だが、この二人は、どこまでも、凪いでいる。

 

 静かに、ただただ、静かに、()()を聞いていた。

 

 その様子に、相澤は静かに戦慄を覚えた。

 

 相澤は個性把握テストの際、1年A組の生徒全員に、困難を与える、と宣言したが、嘘偽りはない。

 自分がそうであったように、プロヒーローになるからには、それが一番の近道かつ、王道で、ヒーローとは、その理不尽を乗り越えてからこその、あり方だと考えがある。

 

 しかし、それでも、生徒たちは子供なのだ、多少、他より個性が使えるだけの子供でしかないのだ。

 そして、相澤が教育をするのは、子供たちをヒーローにするため。この二人のように、兵士にするつもりはなかった。

 

 「それと、二人とも――」

 

 相澤はコピーされた用紙を見せる。二人のヒーロー仮免許のコピーだ。

 本来は職場体験やインターン先に提出する書類の一部であり、何よりも重要な書類であったが、

 

 「職場体験中、ヒーロー仮免許を使ってのヒーロー活動は一切禁止、ヒーロー仮免許取得は通達はしてあるが、あくまでも、先方には仮免許のない学生として扱うようにいってある。もしも仮免許の範囲でヒーロー活動をしたら――」

 

 相澤はコピー用紙をちぎる。破り捨てる。

 

 「問答無用で、除籍。それを肝に銘じていってこい」

 

 理不尽だろう。理不尽以外、何もない。せっかく苦労して手に入れた仮免許(ライセンス)を使用できない、してはいけないなど、苦痛でしかない。真っ向からの、努力の否定だ。それほどに、理不尽な言葉なのだ。しかし、抗議の声をあげるわけでもなく、二人は、はい、とだけうなずき、あとの通達はなしと伝えると、一礼して職員室から離れた。

 

 二人がいなくなった職員室にて、相澤はスマホで二人の個性把握テストの様子を再生する。続いて、入試の時の映像をみる。

 それは、ヒーローの動きではない。完成された、兵士の動きだった。

 自分が死んでも、仲間につなぐための、完成された組織の構成員の動き。

 捨て石になるための、教育を施された者の行動だった。

 

 あまり、特定の生徒に肩入れするのは良くないと分かっている。教育者失格であり、まだ、A組には問題がある生徒が山ほどいる。

 

 しかし、それでも、二人に肩入れしてしまう。

 

 昔の自分に似ている、などと戯れ言を言うつもりはない。自分は自分で、二人は二人だ。

 

 相澤は思う。二人に何があったのか知らない。過去を探ろうとして、ヒーロー公安委員会から直々に止められた。

 つまり、それほどに闇を背負っている。

 

 だが、二人を、A組の担任になったからには、見捨てるという選択肢は最初から存在しなかった。

 

 二人が背負いすぎているものを、その荷を下ろせることを、この職場体験で見つけられることを祈り、相澤は二人を送り出す。

 

 ☆

 

 「最初から除籍の危機かー……」

 

 下校の時間になって、生徒たちが帰路についている雄英高校の校門を、出久は隣の優雅と並んで歩いていた。

 

 「先生、気がついていると思うかい? 出久くん」

 

 優雅の問いかけに、出久は顔を横に振った。

 

 「流石に雄英高校の教師とはいえ、無理だと思うよ、僕たちの経歴を知ることは。ただ、怪しんでるだろうね」

 

 思い返せば、かなり派手に動いてしまっている。

 あとから気がつくとは迂闊だが、手を抜けないし、十年近くの行動を変えることは容易ではなかった。ついつい、本気を出してしまった。戦闘員として、工作員として、二人は一年近くのブランクがあり、それが出てしまった。

 

 「……そっか、僕は、正直ほっとしたんだ」

 

 優雅の言葉に、出久は優雅の肩に手を置いた。

 

 優雅は、戦闘が得意じゃない。否、戦闘に良い思い出がない。

 優雅の両親は無個性だった優雅が少しでも生きやすいようにAFOにたどり着き、個性を譲渡された過去がある。しかし、AFOに悪事を強要され、その所為で、両親は逮捕され、富裕層だった青山家は資産没収によって没落した。

 優雅は両親の釈放を望み、出久と同じく公安の犬になった。

 

 ただ、優雅を待っていたのは壮絶な待遇(いじめ)だった。

 

 公安直属の戦闘員には、出久のように無個性、もしくは家族に恵まれずに公安に行き着いた子供が多い。表で活躍できる個性持ちには、出久のようにヒーロー仮免許を取得させ、表側のヒーローの相棒として戦わせることもあるが、優雅が公安についたとき、ただの臆病な子供だった。

 

 無個性の子供たちから、また家族に恵まれなかった個性持ちから、訓練期間中は自分たちをこんな目に陥れた宿敵に個性を与えられた裏切り者として日常的な暴行は絶えなかった。任務に出るようになってからも変わらず、むしろ、命の危機に直面することが多い任務だからこそ、時に捨て駒のような扱いもされた。重傷を負ったことも、一度や二度ではすまない。生死の境を彷徨ったこともある。

 

 そんな優雅に手を差し伸べたのが、出久だった。

 

 出久と相棒(バディ)を組み、優雅は頭角を現した。本人の意思とは裏腹に、天稟が優雅にはあった。

 そのために今まで生き延びたとも言える。そして、首席入学ということも、彼がいかに優秀かを示していた。しかし、どうしても戦闘には苦手意識があるのだ。もしも、今も命令でなければ、ヒーロー科には入学しなかっただろう。

 

 「……まって、クラスメイトがきた」

 

 言葉を続けようとした優雅に、出久が止める。

 背後から、眼鏡をかけた同じクラスメイトがやってきたのだ。

 

 「二人とも、大変だったね」

 

 眼鏡をかけた生徒――先ほど、クラスで自己紹介をしようとなって、彼は飯田天哉と名乗っていた――がやってきた。

 

 「えぇ、本当にやらかしました」

 

 出久はいつも通り、少し困った笑みを浮かべ、真面目な優等生の皮を被る。

 

 「でも、僕のアピールポイントでもあるよ☆ このままスカウトされちゃうかも☆」

 

 優雅も笑い、瞬時にナルシストな学生の皮を被った。

 

 「しかし、まさか知らなかった。まさか個性把握テストにあんな事情があるとは――」

 

 天哉が個性把握テストについて感想を述べ、真面目だなぁと二人は思いつつ、天哉の話を聞いていたからこそ、出久は口を開く。

 

 「そういえば、飯田君の名前と個性からして、インゲニウムのご家族?」

 

 天哉は強ばっていた顔から一転笑顔を浮かべ、

 

 「ぼ……俺の兄だ。俺は次男なんだ!」

 

 嬉しそうに、そう話した。

 

 「僕たち、明日からインゲニウムのヒーロー事務所、チーム『IDATEN』にお世話になるから、飯田君からお兄さんによろしくって言っておいてよ」

 

 「個人的な贔屓はできないけど、伝えておこう。兄さんはすごいヒーローだから、二人とも、学ぶことが――は! 除籍がかかっているんだな、すまない」

 

 除籍だという案件を思い出した天哉は落ち込むが、二人は気にしないでと話した。

 

 「あー! まってよ! 三人ともー!」

 

 そんな三人の更に後ろから声をかけられる。

 ボブカットの茶髪の女子生徒だった。

 

 「む! 君は確か――」

 

 「麗日お茶子です! 駅までなら一緒に行こう!」

 

 背負っている珠雨華が不機嫌になるのでは? と一瞬、出久に考えがよぎったが、珠雨華は寝静まっている。今日は個性を多く使って、パワー切れになっている様子だ。数日間は個性を使わない限り、起きてこないだろうな、と推測する。

 お茶子の提案を断ることもなく、四人は歩き出した。

 四人の会話は中学校のことや家族のことなど、和気藹々とした時間が流れる。といっても、一週間もクラスから離れるし、記憶処置を受けた出久と優雅は忘れ去られるだろう、職場体験後もヒーロー科に戻ってこれるという前提があるが、それでも、今は楽しもう、そんな風に出久が考えて会話を楽しんでいた時――

 

 「そういえばさ、出久くん、珠雨華ちゃんって誰なの!?」

 

 お茶子から爆弾が投下された。お茶子はめちゃくちゃ目を輝かせていた。他人の恋の話を聞きたい、女性の顔だった。

 あれ? 僕は記憶処置受けたのに、みんな、珠雨華ちゃんへの告白、覚えてない?と出久は考え焦ったが、長年の優等生の仮面で、秘密です、とだけ応えた。

 

 ただ、疑問が残される。

 いくらインパクトが強かったとはいえ、クラスメイトが覚えすぎていないか? 流石におかしくはないか? 公安に相談した方がいいかとも考えた。

 

 駅でお茶子と天哉と別れ、同じ車両に乗った優雅に、出久がそんな疑問を呈すると、

 

 「? この腕時計つけてるときは、僕たちの記憶処置の効果は無くなるよ」

 

 公安の犬であることを示す腕時計を優雅は見せる。

 だからこの一年、みんな覚えてたでしょ? と言われ、出久の動きが止まった。

 優雅曰く、この時計には、まだ簡易的だが、記憶処置妨害の機能があり、後々、しっかりと記憶処置を除去できる技術が確立されたら、自分たちに施されるとのこと。

 逆に、公安の任務に参加するときは、この腕時計を外して任務にあたれ、と言われていることなどを話す。

 任務の時は腕時計を外せ、とは言われていたが、その理由は出久にはなかった。

 

 優雅と別れ、無言のままに出久は帰宅すると、腕時計を持ってきたヒーロー公安委員会の委員長に電話をする。そして、腕時計の件を問いただすと、委員長は一拍の間を置いて、あ! と叫んで通話がきられる。

 そのあと、メールにて、めんご、とだけ書かれていた。

 

 どうせ覚えてないから、と、中学校で文化祭や体育祭の打ち上げで、結構大胆なこと(はっちゃけていた)をしていたことや、後悔はないが、クラスメイト全員が入試にて、出久の珠雨華への告白を覚えていることなど、出久は、その日、家のベットにて転げ回って悶絶した。

 

 ☆

 

 次の日の朝、東京駅に降り立った優雅と出久がいた。出久はいろいろな意味で昨晩眠りが浅く、寝不足気味だが、支障はない。

 

 建設から数百年が経つ東京駅の新幹線ホームに、雄英高校の制服と、雄英高校の生徒が外部活動をする際に持たされる校章の入ったボストンバックはかなり目立っていた。

 

 そんな二人を見つけて、一人の好青年が近寄ってくる。

 

 「緑谷出久くんに青山優雅くんだね?」

 

 浅く切りそろえた黒髪に、しっかりと着込んだスーツに、スポーツ用のサングラスをかけた青年が声をかける。

 二人に、青年はとある手帳を見せた。

 

 それは、プロヒーローであることの証であるプロヒーローのライセンスであり、青年の顔と名前が載っていた。

 

 青年はサングラスを外し、精悍な顔を見せる。

 手帳には、飯田天晴、ヒーロー名インゲニウムと記載があった。

 

 「インゲニウム、飯田天晴です。これから一週間よろしく頼む、二人とも」

 

 二人に手を差し伸べ、天晴――インゲニウムはにっかりと笑った。

 

 





 ヴィジランテ 僕のヒーローアカデミア ILLEGALS を読んでる時の感想


 一巻を読む作者「ほう、これは曇らせ甲斐がありそうな主人公だ」ニチャア


 九巻を読む作者「ん? 流れ変わったな・・・」


 十四巻を読む作者「ひ、人の心とかないんか・・・」ガクブル


 十五巻(最終刊)を読む作者「ベルセルクだ・・・血と臓物がない、ベルセルクだ・・・」


 本当にスピンオフ漫画かと思うほど、エグかったです。これ以上曇らせできないよ、この作品・・・。

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