今回は結構オリジナル設定が多いのでご注意を。
オリキャラと名前のなかったキャラに名前をつけているのもご注意ください。
とあるマンションの一室に、三人の男女がいた。
オールマイト、火伊那がテーブルを挟んで座っていた。
「粗茶ですが」
出久がオールマイトの前に紅茶を出す。
「ありがとう!」
オールマイトは白い歯を見せる笑みを浮かべ、
(おぉ! 今日はちょっと口角が深い、やっぱり笑顔だけでもすごい迫力だ! 生のオールマイトは!)
「いただきま……あっつーい!」
しかし、ティーカップに一口つけたオールマイトは盛大に噎せ、煙と共にその筋肉質の体は一気に萎んで、枯れ木のような、筋肉など一切もついておらず、目の周りのクマが大きい男性に変わってしまう。さきほどパツパツで、今にもスーツの生地がはじけ飛びそうだったのに、スーツの裾はかなり余ってしまった。
だが、出久も、座っている火伊那も、その変貌には動ぜず、出久はごめんなさいっオールマイトっ! 熱かったです!? と慌てていた。
「――……やはり、知っていたんだね、私の
火伊那は心底どうでもいいようにうなずき、出久はおどおどとしながらも頷いた。
「改めていうけど、私の一般に知られている姿が時間制限付きだってことは一部の人間にしか知られていない。それらを知っている理由は――」「私たちが公安の人間だからだ」
火伊那はオールマイトと一切視線を合わせず、紅茶に映る自分の顔を見ながら話す。
「やはり、か……」
オールマイトは天井を見上げ、ため息をついた。
今日は、この来訪は、オールマイトが直々に、彼たっての希望で真実を知るためだった。
二週間前、オールマイトは出久に出会った。
そこで、オールマイトは出久の異常さを知った。
本来許されない年齢なのに、仮免許のヒーロー資格を持っていることもだが、最初に、地下通路で出会ったとき、ヘドロヴィランを捕らえていた手際の良さや、ヘドロヴィランのような異形系個性を捕獲できるような道具を有していること。
なによりも、ヘドロヴィランを、人質ごと殺そうとしたことだ。
出久は人質――爆豪勝己の個性は爆破で、火に耐性がある、と説明した。それは事実なのだろう。あの程度の炎では、爆豪は死ななかったかもしれない。
だが、ヘドロヴィランは
ヒーロー業務において、ヴィランは生け捕りが絶対条件だ。
一人では手に負えない場合は応援を呼ぶし、仮に重傷を負わせても、死なせることはない。
殺害に至ったヒーローには重大な処罰が下される。最悪、ヒーロー資格が剥奪される。
だからこそ、多くのヒーローは、否、全てのヒーローは殺害を意図してヴィランを攻撃する者はいない。
だが、この少年は、最初から、炎を浴びせればヘドロヴィランがどうなるかを知って、有効を通り越し、殺害できるとして、火炎放射の攻撃に切り替えたのだ。
そんな癖がつかないようにヒーローは、高校のヒーロー科で矯正される。
あれは、どう制圧ではなく、どう殺害するのが効率的かつ効果的かの癖がついている人間の行動だった。
そんな人間に難関の仮試験を突破できるとは思えない。
ただ、特例というのがオールマイトの気づいた点だ。特例がついた仮免許。
本来の公安からの特例は、運営している公安側に何かしらの落ち度があり、突破できるはずの試験であったが不合格になった者たちへの合格の印だった。
けれど、出久が受けた年の仮試験には、特例合格者は存在していなかった。いや、書類上は存在した。特別合格者に緑谷出久の名前があった。だが、免許証に記載された年に仮試験を受けたヒーローたちに確認したが、特別合格者はいなかった、と証言されたのだ。
後日の発行か、と考えたが、試験日に即日、緑谷出久の特例仮免許が発行されている。
そもそも、その年の試験の様子を、オールマイトは自らの目で記録映像を確認したが、緑谷出久は写っていなかった。
免許発行は五年前。五年前、出久は僅か9歳。明らかに高校生とは思えない出久が試験を受けられるはずがない。
ならば、この特例の仮免許は、公安が直々に発行したのは確かだった。
そして、二人が公安の人間だとわかるのは、出久の義母である火伊那の存在だった。
「……確認ですが、お母様はレディ・ナガン――筒美火伊那、さんでお間違いないですね?」
オールマイトの問いかけに、彼女は頷いた。
「あぁ、私は筒美火伊那、こっちは義息子の緑谷出久、それで――」
ティーカップを置いた火伊那は自分を指さし、次に出久、そして、最後に彼女たちの後ろに立てかけてあった十字架を指して、
「娘の、筒美珠雨華だ」
この場所にいる全員を説明した。
☆
「緑谷出久、14歳」
オールマイトは持っていた封筒を取り出す。極秘、と書かれた封筒には三枚、入っていた。
その一番上の書類は、出久の顔写真とプロフィールが載っている公的な戸籍だった。
「――……椎倉小学校卒業、今年の三月まで三味中学校に在籍」
書類を二人に見せる。どこの小学校を学校に入学や卒業、転入が書かれている書類は詳細だった。だが、
「警察の友人に調べてもらったよ、出久くんが在籍していた公的な記録はある。だけど、記録上、在籍していたクラスメイトは一切、君のことを覚えていなかった」
それなら、不登校や保健室登校だと思うだろう。ただ、もう一部、持ち込んだ封筒をオールマイトは開く。
そこには、
「これは、ちょっと無理をして、出久少年と同じクラスとされる子の、アルバムから借りた写真だ」
何枚も、出久は写っている。出久が写っている写真が何枚もあった。
どれも、クラスメイトと同じく、親しげな表情を浮かべ、馬鹿騒ぎをしたり、ふざけている写真だった。いじめられているわけでもなく、ただただ、友人として当然の態度といったように。
「彼らは、誰も
それは小学校の在籍していたはずのクラスメイトも同様だった。
「……先日人質になっていた爆豪少年に聞いてみた。彼は唯一君を覚えていたよ、5歳まで一緒で、同じ幼稚園に通っていた、とも教えてくれた」
オールマイトは言うべきか言わざるべきか、数瞬悩んだが、口にする。
「爆豪少年だけだった。
最後に、机の上に乗せた写真は、幼い爆豪勝己とその母親、そして、同じく幼い出久とその母親・引子が親しげに、屋外で弁当を広げて食事をする写真だった。
「家族ぐるみで付きあいがある写真が大量にあるのに、爆豪少年以外は誰も覚えていない」
オールマイトは二人をみる。
「貴方たちは、公安の、記憶処置を受けたね?」
公安職員の葬式は参加者が少ない。そう、ヒーローたちから冗談交じりで語られる都市伝説がある。
公安の職員はヒーローとよく接するのに、ヒーローと接しすぎて、それ以外の人間と関わらないからだ、が実情だ。
けれど、冗談に真実はこうだ、と言われるのだ。
公安の極秘任務に関わる職員は、周りの者を巻き込まないように、親しかった者でも忘れてしまう特別な個性の処置を受ける、と。
受けた者は親や子供であろうとも、全く会ったことのない他人として、やがて忘れられてしまう。それが過去の事でも、と。
オールマイトも耳にした馬鹿げた都市伝説。
だが、その実物に出会ってしまった。
その処置を受けさせ、発覚すれば非難は避けられないヒーロー免許の発行。
こんな手の掛かる処遇を受ける少年は、人殺しに忌避感がない。
自ずと、今までの人生がわかってしまう。
「私は受けてねェさ……」
そう、自嘲気味に火伊那は口を開く。
投げやりに、そう、話す。
「犯罪者だってことも忘れてもらってもいいのに、ね……」
火伊那――レディ・ナガンはヒーロー資格を剥奪されている。
同僚のヒーローを口論の末に殺害、公安の職員が逃亡を手助けし、数年後、公安の職員と共に捕縛、そして、
「私は、いま、タルタロスに入ってるんだろう? 公には」
オールマイトは二枚目の書類を見せた。
そこには、筒美火伊那の、指摘がそのまま記されていた。
経歴は輝かしい。しかし、最後から二行目に、口論の末、同僚のヒーローを殺害し、逃亡。
最後の欄に、『現在、タルタロス収監中』と記載されていた。
「それと、オールマイト、一つだけ間違いがある。私は公安職員じゃない、今はしがないOLだよ……」
そういって見せた運転免許証には、彼女の顔写真と、別名が記載されていた。
「今でも、必死なんだよ、気を抜くと、出久と珠雨華のことを忘れちまう。今まで一人で生きてきたように考えたときは、ぞっとした。旦那も同じ処置を受けてたから、毎日仏壇に手を合わせて、娘と旦那の顔を、あぁ、こんな顔だったんだって思い出すのさ」
オールマイトは、居間に置かれた仏壇、そこに飾られている遺影をみた。
白い髪の青年がいた。
オールマイトは
白い髪の青年が大輪のような笑みを浮かべている。その笑顔と同じだが、顔つきは火伊那の特徴をもった少女、それと恥ずかしそうに顔を背ける火伊那の写真があった。
「ひどい親だろう? 娘とそのパートナーが公安で仕事をする代わり、私はシャバにでれた。なのに、大恩人な二人がどんな顔なのかも、顔を合わせるまで覚えちゃいない。どんな仕事をしてるか、させられているかもね……」
彼女は、火伊那は笑った。疲れた、笑みだった。
「なぜ、緑谷少年と、珠雨華少女にそんな処遇を許容しているのです?」
オールマイトは気がつけば、話していた。
「人に覚えてもらえないほど、悲しいことはないです、まして、他人を手にかけるなど――」
ただし、説教ではない。違和感だった。
「私と貴方は、数えるほどしか会っていない。しかし、貴方は自分のお子さんに忘却や、戦いを許容させるような人では――」
「戦えねぇのさ、私は」
ゴトリ、と、火伊那の両手が地面に落ちた。
☆
レディ・ナガンは射撃の個性を持ったヒーローだった。
右手がライフルに変形し、毛髪が銃弾に変わる。
どんな獲物も百発百中の、スナイパーヒーロー。
そんな彼女の両手が、床に転がる。
「は?」
オールマイトは慌ててそれを拾い上げるが、それは義手だった。
火伊那は器用にティーカップに口をつけ、紅茶を飲み干す。
テーブルに置かれた義手を装着し直した。
「公安が私たちを捕まえに来たときに、その戦闘で、失った」
ヘラヘラと、笑う。
何が楽しいのか、自分でもわからないのに、笑っていた。
「公安は、私を、私たちをよほど捕まえたかったみたいだ。まさか、出久とその親もいるときに襲ってくるとは」
出久は悲痛な、涙を堪える。
火伊那はオールマイトの後ろを、僅かに開いた襖の奥で寝ている引子をみた。
いまでも、火伊那は思う。
――何が悪かったのだろうか?
火伊那はとある理由で公安から追われる立場になる。
恋仲であった公安職員と逃げ、二人は全国に指名手配されていた。
それでも何年も逃げられていた。
――何が悪かったのだろうか?
娘が生まれたことだろうか?
娘を連れて逃げていたことだろうか?
個性に難がある娘を、パートナーに選んでくれる無個性の少年と出会ったことだろうか?
どんなに長くても、一カ所に半年と決めていたのに、一年もいたことか?
これでお別れ、でも、いつかまた会える、と思い出に、最後に家族ぐるみで、遊園地に遊びに行ったことだろうか?
その帰り道襲撃され、襲撃者を倒すために放った火伊那の銃弾が、直前で曲がるというのに、火伊那の旦那への直撃する軌道だったため、そんなことは知らない引子が
その後も、続く、どうすればよかったのかの自問自答に、
「私が、全部、悪いんだ」
涙を浮かべ、そう声を絞り出した。
「引子さんが目を覚まさないのも、旦那が、沙慈が死んだのも、出久と珠雨華が公安に所属しているのも……全部、私が悪いんだ」
頭を抱える仕草で、彼女はそう呟いた。
出久は何も言わず、ただただ俯く。
ただ、しばらく、火伊那の嗚咽が響いた。
☆
「公安は、なぜそこまで貴方たちを……」
思わず、オールマイトは呟いてしまった。
執拗が過ぎる。執拗が過ぎていた。
確かに、レディ・ナガンは人を、同僚を殺した。
それで指名手配されている。
だが、彼女の態度から、そんなことはしていない、との思いがあった。
火伊那は無言で、立ち上がる。
そうして、一冊の聖書を持って現れる。
「オールマイト、アンタに渡すモンがある。十数年ぶりの手紙だ」
聖書を開くと、火伊那は一枚の封筒を取り出した。その手は、オールマイトはその義手が最新式の高級品だと先ほど拝見してわかったが、ごまかせないほどに火伊那の手は振るえていた。
黒く変色した部分がある、封筒。その変色した物は、血だとオールマイトにはわかった。
それには、『八木俊典様』と書かれていた。
「これを読めば、どうして私たちを公安が飼っているのかがわかる。ただし、アンタには呪いになる。クソッタレの、救われない呪いだ」
レディ・ナガンは、立ち上がる。向かった先は冷蔵庫だった。冷蔵庫からウィスキーの業務用ボトルを取り出し、空になったティーカップに注ぐ。
それを持って、再び椅子に座ってオールマイトをみた。
「オールマイト、いや、八木俊典さん、どうするんだい?」
ウィスキーを一口に飲み干し、火伊那は尋ねた。
オールマイトはその封筒を手にし、裏面を観て、思わず、息をのんだ。
差出人には『室井 正義』と記されていた。
レディ・ナガンが殺人事件を起こした同時期に、死去した、ヴィランに襲撃され死亡した公安委員会会長の名前だった。
『君が八木君か、大きいね。気持ちがだよ』『八木君、しっかりしろ!』『志村君の
オールマイトの、八木俊典の正義を理解し、協力するといってくれた、宿敵との戦いで師を殺され、敗れたオールマイトを宿敵から隠すため、アメリカに送り出し、この力の成熟する時間と経験を作ってくれた、忘れられない
オールマイトは封筒を開ける。
そこには、公安が代々に渡って隠蔽していた悪行、オールマイトには何物にも代えがたい『呪い』が書かれている手紙だった。
『八木俊典様
八木君、これを読むとき、私はきっとこの世にいない。死んでいると思います。
私の死は、交通事故か病死、最悪の場合、筒美火伊那くん――レディ・ナガンに殺害された、と報道されているでしょう。
仮に私を彼女が殺害していなくても、レディ・ナガンは他のヒーローを殺した、などの罪で追われる身になっていることでしょう。
そして、火伊那君本人から、この手紙が渡され、貴方は困惑していることだと思います。
最初に明言しておきます。
火伊那君は私や他のヒーローを私情で殺害した事実は一切ありません。
彼女は、そんな悪辣な人間ではありません。
ヒーローとしても、人としても、強い正義感と責任感を持ち合わせ、まっすぐな素晴らしい方です。
では、なぜそんな火伊那くんが
この顛末を、仔細を記します。
私がこれから記すのは、私たち、公安委員会の長年に組織的に行ってきた不祥事の隠蔽と、その消去――大量殺人を行った罪の告白です。
プロヒーロー制度は、かつて、
ただ、その社会制度に取り込む際、ほとんどの
純粋に人を守護することを望んだ者もいましたが、多くは素行が悪い者や個性を振るえるがために所属する者が大半だったため、国家権力を付与することをためらわれたからです。
現行のプロヒーロー制度でも、受験者数に対して、合格率は著しく低く、ヒーロー飽和状態と言われる現在でも、狭き門です。
それは、ヒーローが、個性の使用許可、及び、警察権という、この二つが個人に授与され、超常社会におけるが絶対的なアドバンテージを持つ存在であることを意味しているからです。
そして、過去から現代まで、その強権を悪用するヒーローや、また、その強権を危ぶんだり、ヒーローの社会的地位低下を狙っての、監視対象団体による
八木君はさぞや驚かれることでしょう。そういった事実を全く耳にしていない、と。
それら不祥事やテロリズムが公になっていないのは、我々、公安委員会が、その違反者やテロリストを殺害し、存在そのものを抹消していたからです。
もうおわかりでしょう。
公安委員会を取り仕切る会長の立場にありながら、私は、その役割を火伊那君に行わせていました。
しかし、火伊那くんに殺害の責任は一切ありません。全ての責任は、殺害を命じ続け、公安委員会の隠蔽体質を、過去からの悪習を絶ちきれなかった私に責任があります。
本来、報道で悪鬼として私が出るべきです。死ぬことは、何もできない、ただの卑劣極まりない逃げであることもわかっています。生きて、この事実を公表し、裁きを受け、そして、私がいなくなった公安委員会が刷新され、過去の因習を断ち切るべきだということも。
ですが、その時間がないのです。
過去から続く悪習であることは、彼女の他にもそれらを行ったヒーローたちがいたことですが、彼らの結末は語ることも憚られます。
火伊那くんは、もう限界です。私は、あまりにも彼女を過酷な目に遭わせ続けた、非道を強要させ続けた。彼女の純粋な正義を裏切り続けてしまった。なので、私は彼女を逃がすことにしました。
火伊那くんを公私で支えている職員に、全てを託しました。
よって、貴方に、火伊那くんと、彼女を連れ出した職員を庇護し、公安のこの一連の不祥事を、白日の下にさらしていただきたいのです。
他の委員や政治家が公表しようとしても、私と同じ運命を辿るでしょう。
なので、トップヒーロー、オールマイトにしかお願いできないのです。
オールマイトならば、公表が潰されることがないでしょう。
職員に、沙慈くんに、証拠は渡しています。
物種 沙慈くんは、かつて、八木君が個性排斥主義集団から救出した、あの幼かった少年です。彼も、報道で凶行のことが報じられると思いますが、八木君なら、沙慈くんがそんなことをすると思わないとして、託しました。
身勝手な願いであり、恥知らずだとわかっています。
ですが、私が、彼女を逃がしたとして処される時間を、彼女が八木君の元にたどり着くまでの時間を稼ぐつもりです。
どうか、お願いします。
愚かな私に免じて、貴方の、八木君の、築き上げた平和が後退し、理想の世界が遠ざかる行為であることもわかっています。それでも、どうか、お願いします。
最後に、トップヒーローである八木君だけではなく、全てのヒーローと、ヒーローに携わる全ての皆様に謝罪があります。
貴方たちの、自分たちの国家を信じ、
室井 正義』
仏壇の遺影を、オールマイトは再び見た。
白い髪の、青年。
数十年前に、オールマイトがヒーロー活動を始めた初期に、無個性を信奉する団体から助け出した少年を、やっと思い出した。
無個性であるが故にヒーローになれず、しかし、本人が少しでもオールマイトの力になりたい、と公安の職員になったのが、彼であった。
オールマイトのようになりたいと、笑顔を浮かべている心優しい青年だった。
『オールマイトさんっ! お疲れ様っす! あとの事後処理は任せてくださいっす!』
俺はオールマイトに助けられたんだぜ! と周りにいって憚らず、事件解決後に公安が絡む案件だと、率先してやってきていた青年。
――いつからだろう? 彼が現場にこなくなったのは。
いや、現場に来ていた。
毎回、彼だった。
――いつからだろう? 彼を、彼と認識しなくなったのは。
『はじめましてだね!』
彼は、オールマイトの差し出された手を取る。
少しだけためらいながら、笑って。
よろしくっす! と何度も、その挨拶を行っているのに、毎回、笑顔でオールマイトに笑いかけてくれてくれた。
――いつからだろう? 彼がレディ・ナガンと共に罪を犯して逃げた、と報道されたのに、レディ・ナガンだけを覚えていたのは。
オールマイトの目から、一筋の涙がこぼれた。
ただただ、自分が情けなく、火伊那をみる。
「なぜ、なぜ……私は気づけなかったんだ、彼にも、君がそんなことをするヒーローじゃないとわかっていたのに――」
もしも、違和感を感じていたなら、もしも、この事件に疑問を抱いていたなら、
この手紙を受け取ることができただろうに……。
そうすれば、今頃、緑谷出久と筒美珠雨華は公安に所属せず、引子は元気に暮らし、火伊那、沙慈、珠雨華は三人で暮らせた、ありふれた幸せを送れていたはずだった。
オールマイトに湧き上がるのは自責の念だった。
彼らは自分たちがどんな目に遭おうとも、変わらずに接してくれた。
どんなに辛く、悲しく、助けて、と泣き叫んでいたのか、それを助けられるはずのオールマイトは
助ける象徴となりたい、と願った自分の夢を、支えてくれた人たちが、苦しんでいたというのに。
ただただ、自分の無力を、無知を、無能を、オールマイトは呪った。
そんなオールマイトをみて、これは本物だ、火伊那は笑う。ただし、困ったように、
――あぁ、オールマイトは最高だな、沙慈、出久。
よく二人でオールマイトの魅力を語っていたのを思い出す。幼稚園児相手に大はしゃぎして語る夫に呆れたものだったが、これは好きになる、と今更に魅力がわかった笑みだった。
そんな思いを隠しながら、火伊那は口を開く。
「知らなくて、当然だよ。貴方の元に私たちは行かなかったからさ」
火伊那の口から出てきたのは、
「だって・・・・・・」
もっと絶望の言葉だった。
「会長を、私が殺したからだ」
当時、
会長はその問いに答えず、辞職が何を意味するのかわかっているのか? と懐に手をやって聞いていたのだ。
だから、右手を、銃に変形した右手を構えた。
『なら、これをもって沙慈くんと逃げなさい』
ただし、予想に反して、会長の懐から取り出されたのは一通の、八木俊典への手紙だった。
だが、引き金は引かれていた。弾丸は、発射された弾丸は、会長の胸に突き刺さった。
「自分の意思で、
ウィスキーをあおって飲み干す。
そういって、涙を流す火伊那は、筒美火伊那は、
今回の話の要約
レディ・ナガン「時代や環境のせいじゃなくて、全部悪いのは私のせいなんだよ!
改変した経緯
レディ・ナガンさん、本人が言ってるけど闇墜ちしなかったホークスさんと違ったのは周りに心の支えがなかっただよね
それと、AFOの作る秩序がいいって言ったのは自分が守っていた日常の尊さ知らなかったからだよね
↓
なら、オリジナル設定で実は罪悪感バリバリで死んでも守ろうとしてくれていた上司と、彼女を支えてくれるオリジナル彼氏を投入。
一緒に逃げて、彼氏は旦那にパワーアップさせて、二人の間にできた娘ちゃんとの三人での平和でありふれた生活で、自分が守っていた普通の暮らしの尊さを理解してもらうね!
↓
そして、全部ぶち壊すじゃんね!(悪鬼スマイル)
次回の予告
出久「まだ