ダンジョンもし   作:ばばばばば

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もしもライオスとマルシルが恋人になったのなら(3/4)

「わるい……、本当に悪いと思ってるんだ。反省してる。俺もどうにか決めようと……」

 

 

 この厳かな王の間、そこで一番仰々しい玉座に座りながら、俺は低身低頭で謝り続けることしかできない。

 

 あれから幾つかの見合いを組んでみたが結局、俺はどの人もいい人そうで終わるだけで何の進展はなく、皆に苦労を掛けているだけであった。

 

 

「王の場合、相手に興味がないので、いくつも選択肢があっても決められないのだろうとも思っていましたが……、いい加減まず相手の名前を覚えましょう、見合い相手の名を間違えた時がありましたが、本当に失礼です。王以前に人として恥ずべきですからね」

 

 

 カブルーは辛辣な物言いだが、俺はその言葉を黙って身に受ける。

 

 いっそのこと武器はドワーフ、鍵師はハーフフットみたいに、俺に合いそうな人間を人に詳しいカブルーが選んでくれればいいのにと思いかけもするが、流石にここまで俺の自主性を尊重してくれる彼らに今さらそんな裏切るようなことは言えない。

 

 

「王よ、貴方の好みをお聞きして、でてきた言葉が西大陸のコボルトのメスに興味があると言われた時は流石にこの私も声を荒げましたよ」

 

「すまんヤアド……」

 

 

 あれは俺なりに答えねばと必死に絞り出そうとして出てきた突飛な考えで、自分でもどうにかしてたのだ。

 

 

「こっちもね、必死なのよ、せめて女性に興味を持ってもらおうとして開いたここらの土地の有力者を集めた社交パーティー、えぇ、もちろん家柄もあるけど、もしあなたがそんなこと関係なく気に入った女性がいたなら私としては応援するつもりだったわ」

 

「……その件は本当に悪かった」

 

「社交界の最後、気に入った女の子がいたか聞いたら珍しく貴方の口から具体的な名前が出てきたときはね、皆本当に喜んだのよ、ついにあのライオスが興味を持つ女の子がいたんだって大騒ぎだったわ」

 

 

 忠臣たちの視線が棘の様に体を抉るが、この目を集めるように作られた玉座に逃げ場はない

 

 

「でも必死に名簿を浚ってもその名前が見当たらない、もしかして広く参加させるために飛び入りで来た者かもしれないと方々に聞いてみてそれでも分からず、もしや使用人の中にいたんじゃないかって参加者全員に確認して、結局どうなったんだっけ?」

 

 

 もはや俺は謝罪を繰り返す絡繰りなのでは? だがそれ以外この場で俺がとるべき行動は他にないため、おれはまたも同じように赦しを願う言葉を吐き出した。

 

 

「まさか、女の子の名前が会場警備をしてたオークの警備隊で番犬をしていたメスの魔狼(ワーグ)だったと知った時は本当に驚いたわ」

 

 

 悪かった。本当に悪かった。

 

 本当に愛嬌のある子だったから思わず口についてしまっただけで、ここまで大事になってるなんて俺は知らなかったんだ。

 

 

「はぁ……、あのねライオス、ヤアドくんやカブルーは国のためって考えもあるだろうけど、私は純粋に貴方が心配なの」

 

 

 下げた頭の向こうからこちらを気遣うマルシルの声、それに俺はさらにいたたまれなく思ってしまう。 

 

 

「だから王という立場のある貴方だけど、本当にライオスが幸せになれる相手と結ばれて欲しい」

 

 

 その真摯な言葉で王の間に静寂が訪れる。

 

 そうだ。まず俺が決めなければこの話はどうにもならないのだ。

 

 もはや俺の気分や好みなどで言い出す話ではない、このメリニにとって一番益がある選択こそが、良い決断なんじゃないのだろうか

 

 俺はそう腹に決めて話を始めようとするが、部屋の隅で遠慮がちな声が上がる。

 

 

「その……、こんな雰囲気の中で大変心苦しいのですがよろしいでしょうか」

 

 

 目立たないようにあげられた片腕、なぜ自分は伝言を頼まれただけで、こんな他国の王の醜態を見せられなければいけないのかと困惑でもしているのか、暗い表情を浮かべるエルフ

 

 

「パッタドルさん、いえ、なんというかこちらもお見苦しい所をお見せしてしまい、大変申し訳ございません……」

 

 

 西のエルフの外交官、エルフの国の窓口としてメリニに派遣されている彼女、建国の時に後ろ盾もしてもらったエルフの国はメリニにとっても優先的に対応する必要がある国の一つだ。

 

 そんな彼女が持ってきたエルフの国からの親書、何よりもまず王へ伝えなければと通した城の者達の判断は間違いない。

 

 彼女の誤算は、ちょうど俺が皆に説教を受けている真っ最中であったことで、俺がそれから逃れようと彼女をすぐ通すように伝えていたことであろう。

 

 その姑息さがさらに彼らの怒りという火に油を注ぎ、この他国の要人の前で臣下に叱られる王という図式が生まれてしまったという訳である。

 

 

「……お待たせしましたパッタドル殿、ではお話を伺いましょう」

 

「え、えぇ……、では女王陛下に変わり、ヴァリ家のパッタドルが親書を読み上げさせていただきます」

 

 

 気まずそうに懐から瀟洒な作りの丸筒を取り出し、そこから真っ白な紙を開く。

 

 時候の挨拶と、こそばゆいがこの国と俺を称える言葉、そしてそのフワフワとした内容が残り一文で終わりというところで、あとがきの様に書かれた本音

 

 

「……時にライオス王に在らせましては、その隣を支える奥方を探されているとの話をお聞きしております。もしよろしければですが両国の友好の証として何時でも我が国は助力を惜しみません」

 

 

 彼女が読み上げた後、紙を筒に入れ直し、カブルーに手渡す。

 

 そんな一連の動きを見た後、俺は手紙の内容を再度思い返し、飲み込んでから彼女に言葉を伝える。

 

 

「それは……、うん、よかった。困ったら助けてもらうよ、返事は後で手紙で送らせて……」

 

「いえ、申し訳ないのですがそれは認められません」

 

「やはりそうか……」

 

 

 臣下たちの当たり前だろうがという視線

 

 なんとなく俺はこの手の仕事をしていて思うのだが、言いたいことがあるならそう書けばいいのではないかと思い、瞑目する。

 

 

「一応聞かせてもらいたいのだが、この手紙はどういった意図で?」

 

 

 俺は目の前の彼女にそう問うと、彼女は事前に用意していたように説明しはじめた。

 

 

「東大陸のドワーフ達が貴方の国へ見合いの話を持ってくる予定です。しかも相手はかなり強引に来るでしょう」

 

 

 どこでどうやってその話をエルフ達が知ったのかはともかく、東のドワーフ達から見合いの話が来ると聞いて、俺は無いは無いなりに頭を働かせてその理由を考える。

 

 

「なぜ? どうしてそれで君たちがこんな話を持ってくる理由になるんだ? 俺の嫁探しで張り合ってるつもりなのか?」

 

「張り合うってライオス……、そんな子供みたいな言い方……」

 

「その、言い辛いのですが、このメリニはエルフとドワーフの中間地点、いわゆる緩衝地帯です。互いに相手を警戒することを考えれば、この国での影響力を相手方より持っていたいと互いに考えているわけでして……」

 

 

 緩衝材よばわりされたのが気に入らないのか、ヤアドは露骨に不機嫌そうな顔をする。

 

 

「むぅ……、昔からこのメリニは両文化が衝突する場所故に栄えた歴史があります。この国の宿痾ですね……」

 

「影響で考えれば、ここは東大陸、エルフよりドワーフ人口が飛びぬけて多いですが、文化で言うならエルフ文化も根強いですからね……、まぁ互いにこの国を相手の影響下にある国と思っているようですのでどうしようもない……」

 

 

 心根が真面目なのだろう、エルフの国からの外交官である彼女は心苦しそうな表情である。

 

 

「つまり王の見合い話が云々というよりは、このメリニという国はエルフとドワーフの間にあってどのような立場を取るのか見たい、そういう話で……、まぁ、言ってしまえばライオス王のおっしゃる通り“張り合ってる”わけです」

 

「なんとも身勝手な話だ……、本音を言えば今すぐ両国に断りの返事を叩きつけてやりたいですね」

 

 

 ヤアドの恨み節がこもった言葉の圧に、エルフの彼女は思わず気おされて一歩下がってしまう。

 

 

「ヤアド、落ち着いて、これも早く身を固めなかった俺のせいだよ、怒りなら俺に向けるべきだが……、これもあまり意味はない、俺が言うのも不本意だろうがこれからどうすべきかを考えよう」

 

 

 俺の言葉に今にも唸りそうな表情を浮かべるヤアドに申し訳なさを感じながら皆を見回す。

 

 

「まず、普通に断ってはダメなのか?」

 

「おすすめはしません、私たちが……、というよりドワーフはこのメリニをエルフ側に与していると考えている者達が主流派みたいですから」

 

「そうか、本当に誤解は解けそうもないのか?」

 

「ふん、こちらはドワーフも大臣として重用して取り立てているのです。それでも疑る奴らの偏屈さを考えれば難しいでしょうね」

 

 

 ヤアドが毒を吐くが、そこで話を終わらせてしまってはどうしようもない、俺はヤアドをなだめながら一つ一つの理由を聞いていく。

 

 

「彼らが偏屈かは置いておいて、確かにこの国を一番に承認してくれた君たちエルフは友好国だ。しかしだからと言って、俺としては別にどちらか一方を贔屓しているつもりはないと思うのだが……」

 

「それは……」

 

 

 彼女は控えめに目線を動かす。

 

 その先にはマルシルがいて、視線の合った彼女は驚いたように目を瞬かせた。

 

 

「えっ私!?」

 

「その、こんなこと口に出すのも失礼なのですが、向こうの火種の一つとしてドワーフの国の者達が王とマルシルさんの距離が近しいことに変な勘ぐりをしていまして……」

 

「はぁ!? 私とライオスが!? なんで!?」

 

「……なるほど」

 

 

 俺も態度には出さないまでもマルシルと同じように少なからず動揺する。

 

 

「もちろん向こうの口さがない噂です。ですがドワーフは “エルフが王に近しい女性として居て、もしかしてメリニの国母がエルフとなるかもしれない” そのような勝手な疑念を持っているということはお伝えさせてください」

 

 

 疑念を解消するにはドワーフの国から来る女性と結婚すればいいのだろうが、それがまずいことぐらい俺にもわかる。

 

 

「どちらも娶る……、いや論外か」

 

 

 どちらかに肩入れした時点でこの国にとってリスクが大きい、中立を貫かなくてはいけないのだろうがそれも過ぎれば結局は両国に潰される。

 

 

「今すぐ俺が今までの縁談しただれかと結婚するのはどうだ? 断り文句としては真っ当だと思うが」

 

「ううむ……、エルフとドワーフに睨まれたい国はありませんので、この話が出た後では他のトールマンの国は一歩引くでしょうな、新たに探すにしても時間があるか……」

 

「国内で相手を選ばなければそう時間はかからないと思うがどうだ?」

 

「それは、そうですが……、くそっ、王にはもっと良き相手を選んであげたかったというのに……、すぐに今までした見合い相手から事情を説明する文を出しましょう! 」

 

 

 ヤアドの言葉には俺を慮る気持ちがあった。

 

 しかし、これは俺の無能さが引き起こした事態でもある。

 

 

「そもそも俺は尊い血筋でもないし血統は関係ない、皆が言うように俺が人に無頓着過ぎるのが悪い、カブルー、君が見て俺とうまくやれそうな人は知らないかい?」

 

「……僕が思うにあなたには牧歌的な人か、いっそ権力に札付いていない気の強い仕切り屋、……あとはさっぱりした楽天家な女性なんて合うと思いますが……」

 

「君が選んだ人なら俺は間違えないと信じてるよ」

 

「勝手なこと言いますね……」

 

 

 情けないが、俺はそもそも人を見る目がないとチルチャックやシュローにも言われていた。

 

 ならば初めからカブルーに頼ればよかったのだ。

 

 絶対にはずれがない正解を知っていながら、どうして俺は今まで悩んでいたのだろうとすら思うのだが……

 

 

「ライオスは本当にそれでいいの……?」

 

 

 なぜだろうか、マルシルの少し悲しそうな顔をみて、自分の中に言語化できないわだかまりを感じてしまう。

 

 

「あぁ、相手は分からないけど、俺は相手のことを好きになってみたいと思ってるよ」

 

 

 だから、心配ないからそんな顔をしないで欲しい、そう言おうと口を開きかけるが……。

 

 

「……本当に申し訳ございません」

 

 

 そんな言葉をつぶやく外交官の一言、次いで王の間に従者が略式的に入り口から声を張り上げる。

 

 

「東のドワーフの外交官がお越しになられております! 王に急ぎの文があるとのことです!」

 

「えっ、今!? そ、そんな」

 

「……パッタドルさん、一緒にいると揉め事もあるでしょう、すぐに離れた方がいい」

 

 

 あまりにもなタイミングに俺は言葉を失いかけるが、カブルーは全てを察したかのように外交官の彼女へと伝える。

 

 

「張り合いをご希望されているのはエルフの方も、ということですか……」

 

「……私が本国からされた命令は今日送られてきた文をその日のうちに届けて読み上げろと言われただけです」

 

「し、 知っていたのなら伝令魔法で直ぐに教えてくれればよかったのに……!」

 

 

 いや、あえてなのだろう。

 

 エルフもドワーフと同じ日に情報を伝え、こちらに断るための余裕を潰しにかかっている。

 

 全く、王になってから自分の能無し具合が嫌になる。

 

 

「ちなみに、もうすでに相手を決めてしまったと誤魔化すことはできそうか?」

 

「……私から最後に一つ、ドワーフは王に相手がいないと下調べをした上で来ています」

 

 

 カブルーやヤアドに投げかけた俺の言葉に彼女は律義に返答する。

 

 彼女がされたという命令は“今日送られてきた文をその日のうちに届けて読み上げろ”らしい

 

 これまでのこともそうだが、この会話が本来彼女が伝えるべきことであったのかは分からない、しかし彼女は親書に対して俺に懇切丁寧に説明してくれた。

 

 

「ありがとうパッタドル、君みたいな誠実な人が外交官で俺は嬉しいよ、気をつけて帰ってくれ」

 

 

 俺の言葉にパッタドルは黙礼だけを返して直ぐに部屋を後にした。

 

 それから、俺たちは最低限の打ち合わせだけを済まして、客人をこの部屋に呼ぶ。

 

 

「来てしまったのならしょうがない、連れてきてくれ」

 

 

 相手方の外交官はただ親書のみを読み上げた。

 

 内容はやはり俺の見合いについての話

 

 いきなり本題から入るドワーフの文に、好感を覚えて笑ってしまう俺を相手は怪訝な顔で見ていた。

 

 

「あぁ、俺にそんな素晴らしい女性を紹介してもらえるとは、光栄だよ、もちろん受けさせてもらう、日取りは直ぐでもいいのかい? ……こちらに合わせると? 本当に二言はないね? いや、本当に助かるよ!」

 

 

 満足そうにうなずくドワーフの外交官に、俺は忘れていたかのように言葉を付け足す。

 

 

「あぁそうだ、偶然にもエルフの方からも同じような文が届いてね」

 

 

 外交官は表情を硬くし、こちらを値踏みするように見てくるので俺はにこりと笑いかける。

 

 

「どうせだから一緒にお二人に会って話してみたい、エルフの銀の都市にドワーフの地下街、両国の話を俺は聞いてみたくてね」

 

 

 呆気にとられた外交官に俺は快諾の意を伝えてお帰り頂いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、皆も集まったし、今夜の夕食を食べようか!」

 

 

 今日の夕食は俺が強く希望した異種混合料理

 

 西のエルフ達の好むらしいナッツ類と、東のドワーフの好むらしい香味炒め料理、それらを合わせた創作料理だ。

 

 以前動く鎧のドワーフ風炒めを食べた時にセンシに聞きかじった調理法と、カブルーが言っていた中央エルフ達がで良く食べるらしいナッツからインスピレーションを受けた一品

 

 衣には砕いたナッツを合わせ、底に張るぐらいの油で鶏肉を揚げ焼きに、パリパリに焼いた鶏肉の皮とカリカリのナッツの衣がとにかく暴力的なまでに食欲を掻き立てる。

 

 そこにエルフの好むワインとドワーフと言えばという火酒……は高価かつ貴重なため用意できなかったので代わりに魔法で冷やしたビールの二種類で二度おいしい!

 

 

「ライオス、さてはおまえ本当に馬鹿だな?」

  

「えっ、あの感じでなんで平気な顔で会いに来て私を食事に誘えたんですか?」

 

 

 何時もの三人と合わせて今日はエルフ代表としてパッタドルと旧迷宮調査隊の隊長、ドワーフ代表として向こうの外交官を呼びたかったが、すごく嫌な顔をされたので偶々警備隊の武器を卸しに来ていたナマリにきてもらった。

 

 

「ごめんねナマリ、ライオスがとにかくご飯をしっかり食べようってうるさくて……」

 

「いや、私は関係ないから良いけどさ、お前らこんなことしてる場合じゃないだろ?」

 

「うん……、まぁでも取り合えずこれから動きだす力を出すにも食事は大事だから……」

 

 

 マルシルも食事の重要性を理解してもらってるようで何よりだ。

 

 

「あの後すぐに大使館に来て、見合いの日取りを決めて、しかもそれがドワーフと同時とかふざけてるんですか?」

 

「いいや、パッタドル、“両国の友好の証として()()()()我が国は助力を惜しみません” 確かに親書にはそう書かれているのだから問題ない、それに君たちが同時に来るように取り計ったんだ。同じようなことをこちらがしてはいけない理由は無いだろう?」

 

「えぇ……」

 

「パッタドルもごめんね、うちのライオスがまた無茶を……」

 

「まぁ、食事を楽しんでくれると嬉しいよパッタドル」

 

 

 もともとマルシルはパッタドルとお茶をする関係らしく、そこそこの面識があるので食事は楽しめるだろう。

 

 

「しかも名前まで覚えられちゃって……」

 

「むしろ覚えてくれてなかったんですか? 私貴方の国が最重点で警戒すべき国の外交官ですよ? ……というか何故憐れみの表情を向けられてるんですか」

 

「それでいうなら私がドワーフ側の外交官の代わりに呼ばれた理由が謎なんだが……」

 

「いや、そこら辺の話は抜きにしても、普通にナマリとご飯を食べたかっただけだよ」

 

「はぁ……、エルフを呼んだのも私を呼んだのも、お前はマジでいってるんだろうな」

 

 

 ナマリは呆れた表情を見せるが、折角のドワーフとエルフにインスパイアされた料理だ。ぜひナマリにも食べてもらいたい。

 

 

「カブルーとヤアドも話し合いはそこまでにして食事にしよう」

 

 

 机の端で真剣そうに話し合う二人が渋々と言った様子で席に着くのを見届けてから、俺たちは食事を食べ始めた。

 

 

「揚げどりか? 流石王様、いいもん食ってんなライオス」

 

 

 俺は改めて料理の説明をするが、なぜかその反応は鈍い

 

 

「なんだそれ、エルフとドワーフ、仲直りのための料理ってか、馬鹿らしい」

 

「これはこれで美味しそうですが、確かにこんなドワーフ趣味の料理を見合い当日に出したらエルフには貶されるでしょうね、というより、肉がメインですからエルフ要素はかすむのでは?」

 

「へっ、そりゃこんな熱々の料理にはエルフ共が飲むようなワインよか冷えたラガーだろ」

 

「いえ、そうとも限らないと思います……」

 

「あん?」

 

 

 面識のない二人でさえ、なんというか自然に好戦的な会話だ。

 

 過去の歴史から種族単位での対立は深いとは知っているが……、脇にいるマルシルが少しハラハラした様子で見ている。

 

 

「ではまずビールでいただきましょうか」

 

 

 パッタドルは豪快でありながらも見事に衣を机に一切落とさず口に入れ、すかさず冷えたエールを飲んだ。

 

 

「ってお前もビール飲んでんじゃねぇか!?」

 

 

 ナマリの指摘を無視して、パッタドルは黙々と食べていく、傍で見ていて気持ちいい食べっぷりだ。

 

 

「それにしてもこいつ、うまそうに食いやがるな……」

 

「熱々の内は冷えたエールと食した方が良いのは明らかです。量もありますしひと段落したら落ち着いて常温のワインと一緒にゆっくりと楽しむべきでしょう」

 

「まぁ確かに……、いけ好かないエルフかと思ったがアンタの飲みっぷりは気に入ったよ」

 

「……お酒は初めて飲みました」

 

「えっマジか?」

 

「流石に王みずから勧められては断れません……、不義理なこともしてしまいましたし……」

 

「そうか!嬉しいよパッタドル、ぜひ楽しんでくれ!」

 

 

 パッタドルは仕事に生真面目そうではあったが、出された料理にも全力で楽しむ姿勢は俺も尊敬出来る。

 

 人の顔入りばかり見てないで、俺も冷めない内に食べるべきだろう。

 

 

 パッタドルの言葉に感化されたのか、みなまずは熱々なうちにビールで食してみることにしたようだ。

 

 

「ミスルン!? そんなに一口で食べたら口の中火傷しますよ! ほらビール飲んで」

 

「……口の中がビラビラになった」

 

 

 カブルーの方も食事前は顔の険がとれなかったが、食べてる内に向こうは向こうで盛り上がっているようでよかった。

 

 しばらくは言葉少なめな食事の場であったが、料理の熱が落ち着き、ゆっくりと食事を楽しむ余裕が出てきてからは次第に口数が増えてくる。

 

 

「いや、それでね、私とライオスが疑わしい関係っぽいから怪しんでるって……、信じられる?」

 

「どこからそんな風の噂を拾ったんだか……、まぁ私もあんまり信じてなかったけど、そういう噂が市井で流れてはいたぜ」

 

「えっ」

 

「あなたを私たちが連れて行こうとしたらライオス王が突然連れ去って、そのまま魔術顧問に据えましたからね、うちの国でも両者はただならぬ関係ではという話は出てますよ、実際の所はどうなんです?」

 

「いいや、そんな話はないよ、俺としてはマルシルがこっちにいた方が良いと思ったんだ。だって向こうにいるより、こっちにいた方がマルシルは笑って暮らせるだろう? 」

 

「ま、まぁその節は助かったんだけど……、えー……、そんなに噂になってるの……?」

 

「はい、そういえば噂と言えばなんですけど……」

 

 

 パーティを組んでいた時も思っていたが、女性同士というのは二人でも良く話すが三人揃うと加速度的に会話の量が増えるなと俺は思った。

 

 

「ライオスはヒョロいからなぁ……、向こうのドワーフに舐められないようにもう少し派手にした方がいいんじゃねぇか? あっちの奴らは財を派手に着飾る文化だからさ」

 

「ライオスそういうの嫌がるからね」

 

「一度やってみたら顔に似合わないと笑ったのはマルシルじゃないか……」

 

「エルフの一般的な感性的には華美な宝飾は好みませんから悪くないとおもいますよ」

 

「エルフの奴らの鎧は前に見たけどなぁ……、たしかにピッチリ大きさを合わせるのは良いんだが、あれは金物じゃなくてアリアドネから作ったって噂だろ? そこがそそらないというか……」

 

「へぇ、鎧にそそるそそらないとか考えたこともなかったですね」

 

「……まぁ! ドワーフの一般的な感性の話でな!!」

 

 

 そんなたわいのない話をしながら時間が過ぎれば皆の皿やグラスから食事が減っていく。

 

 そして、早めに食べ終えたナマリが皿の上の骨を倒しながら、俺の目を見る。

 

 

「それで、どうするつもりなんだよライオス、なにか考えがあってこんな無茶したんだろうな」

 

「うーん、少しだけは」

 

「あの場では時間がなくてライオスの同時に話を受ける案が通っちゃったけど、正直私、すごく不安で……」

 

 

 ナマリとマルシルの心配そうな声に、俺はフォークを置いてから向き直る。

 

 

「そこまで深い考えがあるわけじゃない、この国越しに張り合うなら、直接来てもらって張り合ってもらった方が自然だと思っただけだ」

 

「それはまさに、そうなんだけど……」

 

「その問題を持ってきた私が言うことではありませんが、両者の顰蹙を買うことにもなりかねませんよ」

 

 

 そうだそうだと同調するナマリ達、確かにその通りだが、俺は今更ながらに気づいたことがあるのだ。

 

 

「……実を言うと、俺はここ最近の見合いの日々で分かったかもしれないことが三つある」

 

 

 俺は指を立てて、彼女達に説明する。

 

 

「まず一つ目なんだが、俺はまず相手と会ってみないことには何も分からないと思っていたが、どうやら俺みたいな人間は結局、直接会っても相手のことなんてちっとも分からないということに気づいたんだ」

 

「身も蓋もない話を……、私たちの努力は何だったのよ……」

 

「いやつうか、なんでそこでお見合いの話に戻るんだよ、関係ねぇだろ」

 

「いいや関係あるね、そもそもこれは俺のお見合いの話であって、関係ないのはドワーフやエルフの方だろう」

 

「それは……、そうですよね、すいません」

 

 

 気まずそうなパッタドルを見て、マルシルとナマリが俺を同時に小突く。

 

 

「だけどよライオス、お前がいくらそう言っても問題は解決しねぇだろ」

 

「あぁ、そうだ。それで二つ目、これは本人達に聞けないから仮説の域を出ないんだが、俺が相手を理解できない以上に、もしや相手は俺を理解できていないのではないだろうか?」

 

「安心していいわ、それはほぼ実証されている定説よ」

 

「そうか……」

 

 

 まぁ……、なんとなくそんな気はしていたのだ。

 

 

「そこから三つ目の話に行くのだが、ナマリ、君にも頼みたいことがある。……みんなも聞いてくれ!!」

 

 

 俺は皆の注目を集めながら話を始めた。

 

 

 

 

 

 

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