ぜんぶ、あげました。   作:釘パンチ

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Q.漢字二文字で答えよ

(先生……! 先生! いかないでください!)

 

 会長はある一報を聞いた瞬間に、周りの制止を振り切って病院まで全力で走っていた。

 途中にバス乗場やタクシーが視界に入り、自身の足よりそちらで移動する方が確実に早いのだが、身体を動かしていなければどうにかなってしまいそうな程自分が取り乱していることを自覚して、走ることを選んだ。

 

(……先生の、病室)

 

 面会の受付をどうやって済ませたのか、エレベーターを使ったのか階段を使ったのか。

 そんなことすら記憶に残っていない状態で何とか病室にまで辿り着く。

 

「……失礼します!」

 

 病室で騒ぐわけにはいかないと、深呼吸してから扉を開いた会長は声量を抑えようとして、逆に大きな声が出てしまった。

 

「会長。わざわざ来てくれたんだ。ありがとう」

 

 病室内のベッドの上で先生は腰を起こして、サブのタブレットで作業をしている。

 それを見た会長から放たれたプレッシャーを感じ取ってか、すぐにその手を止めた。

 

「……来てくれたんだ。じゃありません! 不発弾の爆発に巻き込まれたって聞いた時、私心臓が止まったかと思いました!

 いえ、止まりました。二秒ほど!」

 

 備え付けの丸椅子に座った会長は、改めて先生の頭の包帯と腕から伸びている点滴を見ると胸が締め付けられる。

 今こうして、自分がここに居るせいで、こんな怪我をさせてしまったと思うと、やはりここに居るべきではないとすら思ってしまう。

 

「大丈夫。これくらいで死にはしないし、死ねるほどの修羅場切り抜けてない」

 

 安心させるように先生は余裕そうに笑って会長の頭を撫でる。

 それでも、何度か死にかけて、最後は笑ってみせて、その度に喪いそうになる痛みを感じたことを、『彼女』越しに覚えている。

 いつでもどこでも生徒の為に代償を厭わない彼だから、その笑顔がいつか見れなくなってしまったら、誰も救われない。

 

「先生……私……将来なりたいものがあるんです」

 

 連邦生徒会長という肩書きをもらって、キヴォトス内でできないことはない能力を手にしても、未だに手に入らないものが会長にはあった。

 

「そうなんだ。手伝えることなら手伝うよ」

「……でも、先生が居ないとなれないんです。だから、先生には怪我なんてしてほしくないんです」

 

 それを直接口にすれば、先生は拒まない。否、拒めない。

 だけど、そうしてしまったら、彼が『先生』ではなくなってしまう。

 そんなことは誰も求めていない。喜ばない。

 段々、自分の欲と理性と安心がぐちゃぐちゃになって会長の頬に水分が溢れる。 

 

「先生……」

「会長……」

 

 この場に相応しくない感情が膨れ上がって、先生の首に手を回した会長が徐々に距離を詰める。

 誰かに見られる可能性もあるのに、怪我人の先生に慰めを求めてしまう。

 

「会長、現役の人間が言うことじゃないけど、教職だけは絶対にやめとけ」

 

 会長は一週間先生と口を利かなくなった。




本当は一ヶ月くらい口を利かない予定だった会長だが、イチャイチャがなくなって作業効率が上がってキレたことに加えて我慢できなくなって続かなかった。
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