ぜんぶ、あげました。   作:釘パンチ

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偽連邦生徒会長のせいで気が気ではありません。誰よあの女!!


ここはあの女のハウスではない。

「先生! いい加減にしてください!」

「へ? 何が? 残業時間なら今月はまだ三桁行ってないけど?」

 

 今日も今日とて平和で暇なキヴォトスであろうと、先生は忙殺されていた。

 いくら処理しても書類の山は増えていき、その間にも各学園の生徒からの呼び出しが鳴り止まない。

 

「それはどうでもいいです!」

「良くないだろ!」

 

 先生の残業は日平均十時間。

 さらに会長に構う時間を考慮すれば、先生の自由時間など無いに等しい。

 

「私との時間減ってませんか!? 最近お仕事が終わったら私に構わず帰っちゃいますし……! 私は先生に全部あげてるのに!」

「あのな、会長」

 

 生徒との約束の時間に間に合わせるために掛けたアラームが鳴る中、先生は嘆息する。

 こういう時手っ取り早い方法はいくつかあるものの、それすらほんの少し億劫であるくらいには疲労が溜まっている。

 トイレと風呂以外の全て会長がプライベートで付きまとってくるのは、鬱陶しいことこの上なかった。

 

「歯に衣着せずに言うけど、たまに邪魔……ほんとに」

 

 先生が苦い表情をしているのは、決してコーヒーのせいではなく、日頃の会長の言動を振り返ってのことだった。

 

「酷い! 酷いですよ先生!」

 

 デスクを叩きながら立ち上がった会長は、先生のデスク周りの安全を瞬時に判断して彼の腰に抱きついた。

 

「先生にメンヘラだる絡みしたり、おぎゃった後に貢ぐのが私のライフハックなのに! 多忙な私の楽しみを否定するんですか!?」

「そういうとこ……」

 

 流石にそろそろ出発しなければモノレールに遅れてしまうため、腰に会長が引っ付いたまま席を立つ。

 

「わー! 先生に捨てられるー! 捨てないでー!」

 

 会長の大声が連邦生徒会室に響くがいつもの茶番に慣れてしまっていて、全員気にも留めていない。

 そのままズルズルと会長は引き摺られたままサンクトゥムタワーの出口まで、先生の腰に抱きつくことを止めなかった。

 

「疲れた……ほんっとうに疲れた。こっから会議あるの……? マジ? リモートにしようよ。せめて」

 

 それから半日後、会長から指定の場所で全校で行われる花見大会について詰めたいと連絡が来たため、渋々嫌々ながらにGPSを頼りに歩いていた。

 

 上の命令には逆らえない。下請けの辛いところである。

 

「……こんなとこになんでぼろアパートがあるんですかね」

 

 先生の記憶では空き地だった場所にぼろアパート(二階建て)が鎮座していた。

 

(どうせ乗らないと終わらないんだろうなぁ……)

 

 一室だけ明かりの灯っている部屋のドアを開けると、制服の上にイチゴのアップリケの付いたピンクのエプロンを着けて正座をしていた。

 

「お帰りなさい先生! ご飯にしますか? お風呂にしますか? それとも──」

「寝る」

 

 新築のぼろアパートまで作って何をするかと思いきやこんなことになると最早どうでも良くなってきた。

 

「先生! あっ! アナタって呼ばれたいんですか!? 先生もベタですねぇ……」

「うるせぇぞ!!!」

 

 会長が騒いでいると隣の部屋から野太い声と共に壁を叩く音がした。

 

「えぇ……入居者いんの?」

「居ませんよ? 一定以上の音を検知すると勝手に鳴る仕組みが隣の部屋にあるだけですから」

「何のこだわりなんだよ」

 

 四畳半の部屋のちゃぶ台をどかして布団を敷く。

 どうせ花見大会の話は釣り餌でしかないと理解したため、寝ることしか頭になかった。

 

「お休み」

「おやすみなさい。先生」

 

 上着を脱いで布団の中に入って先生はすぐに寝入る。

 

 不満はあるが、文句はない。

 会長は布団の中には入らずに、枕元に正座して先生の寝顔を眺める。

 

「本当はプラナちゃんにも来てもらおうと思いましたが……ふふっ、やっぱりこれは誰にも……」

 

 ほんの少しの独占欲を燻らせながら会長は自分も眠くなるまで先生の寝顔を満喫した。 

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