ぜんぶ、あげました。   作:釘パンチ

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守護
ファンファーレ 自分の他のフォロワーすべてに3ダメージ。


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「先生……あっ……」

「……これで五回目ですよ」

「あ、あはは……やめてよリンちゃん」

 

 先生がミレニアムに出張中、会長がうっかり彼を呼んでしまった回数をリンにカウントされてしまい、乾いた笑いが出てしまう。

 

「少しくらいなら様子を見に行ってみては? どうせ今日のノルマ分の仕事は終わってますよね?」

 

 本人が目の前に居る時は、人目を気にせずイチャイチャするくせに、妙なところで気を遣う会長にリンは面倒臭く思ってしまう。

 

「い、いやー……それはそうなんだけど、先生のお仕事邪魔するのも……ね?」

「いつも私達役員は二人に振り回されているのですがそれは……?」

 

 カヤがつい口にしてしまった言葉が会長にトドメを刺してしまい、机に突っ伏した。

 別にそれが言ってはいけないことだったり、虚言ではないため誰も何も言わなかった。

 

「……リンちゃん。カヤ防衛室長がいじめてきます」

「……私にそう言われましても」

 

 連邦生徒会役員は実はカヤにあまり強く文句が言えない。

 日々見せつけられる先生と会長のイチャイチャで強制摂取させられる糖分を打ち消すために、彼女の淹れるコーヒーが必要不可欠なのだ。

 

 一方その頃。

 先生はミレニアムの要請で呼び出されて、シャーレの権限がないと少々面倒臭い案件の処理を行っていた。

 戦闘が発生し得る案件でもないデスクワークなので、命の危険もなく、むしろ会長が居ない分、先生は書類に集中出来た。

 

「お昼か……そろそろ休憩にしようか」

 

 時計の針が頂点を指し示していたため、作業の手伝いを申し出てくれたユウカに声を掛け、持参していた弁当箱を取り出す。

 

「珍しい……先生がお弁当だなんて。いつもコンビニかファストフードなのに」

「いや、まぁ……たまにはね」

 

 割り箸を微妙に上手く真っ二つに割れず、それに釣られて先生も微妙な気持ちになり掛けるが、そんなことに負けていられない先生は弁当箱の蓋を開けた

 

「……先生、これは?」

「ふぅー…………やられた」

 

 先生の珍しい生態が気になったユウカの目に入った弁当の内容は想像を斜め上に越えるものだった。

 二段に分かれた弁当は片や普通に唐揚げやだし巻き卵、ほうれん草のおひたし、ポテトサラダ。それに加えて彩りでミニトマトやら妙に女子力の高いおかずの構成だったのだが、そんなことよりメインの白米の方がユウカの脳ミソを破壊した。

 

「いや、ね。会長にお弁当持っていけって言われたんだけど……こんなコッテコテなのをお出しされるとは……」

 

 先生も流石に生徒に貰う弁当の白米の上に桜でんぶでデカデカとハートが書かれていると照れよりも先に呆れが来てしまう。

 それはそれとして味は良いことは知っているので、美味しくいただくのだが。

 

「せ、先生って既婚者でしたっけ? そもそも子供居ましたっけ? よく先生が小学生くらいの娘と手を繋いで歩いているって噂がミレニアムに流れているんですが、もしかしてそういうことですか……?」

「え? あー、私には子供なんて居ないし、結婚もしてない独身だよ。そもそもそんな暇ないしね。暇があっても生徒の方が大事だし」

 

 妙に早口で捲し立てるユウカに若干圧倒されながらも、微妙に事実と解離している噂が流れていることに対策を考えながら、その噂を否定する。

 

「で、ですよねー、そうですよねー」

「先生! お昼です! お昼休憩してますよね! 一緒にお昼ご飯食べましょう!」

 

 最近は特に大事件もなく落ち着いてきているとはいえ、常日頃キヴォトスを西へ東へ、北へ南へと大忙しの先生にそんな暇が有るわけがないとユウカが安堵のあまり胸を撫で下ろしていると、突如会長がミレニアムのセミナーの執務室の扉をガラリと開けて中に入ってきた。

 

「いや、そっちの仕事は?」

「私は超人です。あれくらいのことはもう午前中に終わらせています! なので、先生褒めてください」

「え、嫌だけど?」

 

 会長はナチュラルに先生の隣を確保して自分でも持ってきたおかずの内容が完全一致した弁当を広げ始めた。

 ユウカの蘇生しかけた脳が再び破壊されていく。

 

「ちょ、ちょっと! ここミレニアムの生徒会なんですけど! 連邦生徒会とはいえ横暴なのでは!?」

「シャーレは私直轄の組織ですし、エブリディいっしょなのは当然のことでは?」

 

 先生が暇な時間を狙ってわざわざ二人きりになる時間を生成したユウカは会長に抗議したが、至極正論なナチュラルマウントに膝を付かされた。

 

「い、いや、それでも、今お時間いただいてるのは私ですし……」

「私は先生にぜんぶあげてますし、先生も私にぜんぶくれてますよ? お時間も朝だけではなく、昼も夜も、いただいてますし」

 

 会長本人はマウントを取っているつもりはありません。と言った表情ではあるが、それも表面上の話で本当はバチバチにマウントを取るためにわざわざ相手に合わせたワード選びをしていることについて、敢えて考えずに先生は横でバクバクと弁当を食べていた。

 というか、そうでないとキャットファイトに巻き込まれるのは確定だった。先生も流石に命が惜しかった。

 

「そ、そんな……! 先生!」

「いや、朝も昼も夜もって……容赦なく仕事振られてるだけだから」

「先生、昨日シャンプー切れてたんで詰め替えておきましたよ。そろそろ暑くなってきますし、いつものクール系のに変えても良いと思いますよ」

 

 嘘は言っていない範囲でやりきろうとする先生に、会長の先生の生活用品を把握していますよアピールが炸裂し、冷や汗が止まらない。

 

「ええい! 明日への逃走!」

 

 何かが起きる前に先生はミレニアムの高層ビルの窓を開けてそこから飛び降りて脱出を図った。




ちょっとした後日談


「先生、お弁当箱洗うので早く出してください」
「ありがたいけど、なんだろう? ナチュラルに住み着くのやめてもらって良いか? 俺の一人の時間ってどっかなくしちゃったかな? 時は金なりって言うけど、税金ってそういう徴収方法だっけ?」
「はて、なんのことやら……とりあえず明日の分含めて晩御飯作ってるんで冷める前に食べてくださいね?」
「…………」
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