ぜんぶ、あげました。 作:釘パンチ
先生と会長は校門前で家族写真を撮った後、ホームルームが終わるのを待つため、空き教室を借りてB1サイズの用紙には、デカデカとプラナの出席する授業のカリキュラムが記入されている。しかも会長の手書きで普段書類では絶対に書かないような丸文字なのが腹立たしい。
そもそもキヴォトスの生徒の学習は殆どBDを使った映像媒体なのに授業参観は教員が授業を行うという。
「さぁ、先生。今日のスケジュールを確認しましょうか」
「嫌だ……」
プラナの授業参観という名の会長との夫婦ごっこは朝から先生の体力をほぼ全て持っていってしまった。
ただの教師と生徒の関係かと言われると、そうとは言えないが、教師と生徒ではある。
「わざわざ連邦生徒会の会長権限で理科の実験と家庭科の調理実習と体育の授業まで捩じ込んだんですよ!?」
「もしもし、リンちゃん?」
会長の行き過ぎた越権行為を聞いて、先生はノータイムでリンに通報した。
すぐさまリンがその場に駆けつけ、会長が連行されていく。その様子を先生は特に残念でもないし、当然だと思うので可哀想ということもなかった。
(ちゃんと見ていくか。約束しちゃったし)
通常のカリキュラムに戻された授業を一コマだけ見に行った先生は、数コマ分授業を見学して満足そうな表情で紫関ラーメンの屋台まで、足を伸ばしていた。
「大将、今日はスペシャルラーメン頼むよ」
最近、柴関ラーメンには新しいバイトが増えた。
別の世界からやってきたシロコが夕方からのバイトとして働き始めたのだ。
未だにこちらのアビドスの生徒と会うのは避けているらしく、セリカとはシフトが被らないように大将にお願いしているらしい。
「あいよ! シロコちゃん! 今日は暇だし、賄い作ってあげるから、もう上がって先生と一緒に食べていきな!」
「……大将、まだ時間残ってるし、流石にそれは」
「時給のことなら気にしないでいいよ! 先生が払うからさ」
「じゃあお言葉に甘えるね。ありがとう先生」
だけど、少しずつ心に余裕が出来てきたのか、笑うことが増えてきて、大将の冗談にも乗っかるようになった。
「げっ、大将それはないよー……ちなみにシロコは何頼もうとしてる?」
「スペシャルラーメン」
税込1400円。それが二人分となると結構な出費だが、別に良いかと思えるくらいには先生の機嫌は良かった。
「先生、今日は凄く機嫌良いね」
「……プラナがちゃんとキヴォトスの生徒やってて安心した。静かな子だから心配だったけど、ちゃんと友達も出来てるみたいだし、良かったよ」
先生が見てきたのはほんの一部でしかないが、それでも彼女を託された先生は、それが何より大事なだった。
「そっか。それなら……私も安心」
ある意味で、一番付き合いの長かったシロコからしても、それは嬉しいことで、少しだけ肩の荷が降りたような気がした。
「ところで、先生。さっきからSNSでとうとう先生が連邦生徒会長と子供作って家族写真撮ってたって広まってるけど、本当?」
「やっぱり保護者なんてなるもんじゃなーい!!」
これから発生するゴタゴタを考えると、先程まで先生が抱いていた親のような情緒はどこかに放り捨てられた。