蒼き炎のストライカー   作:FT治療法

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確認する時受験の合格発表みたいな気分になります。


二話

 続いての一次選考では五チーム総当りのリーグ戦が行われる。勝ち点上位二チームが次の選考に進むことが出来、敗退する三チーム内の得点王三人も勝ち残れる。

 

 敗退した吉良を抜いた十一人、それが俺達チームZだ。来たるチームXとの試合に向けて作戦会議を始める。しかし、全員がFWということもあってポジション決めには時間がかかった。

 

「俺がFWだ!」

「いいや、俺だね!」

 

 俺が俺がと主張の激しい面々。そんな時に平等な提案をしたのは久遠渉だった。

 ここはシンプルにじゃんけんで決めよう。時間もなくこのままでは埒が明かないと心の中では分かっていたのか、一同は不満げながらもその提案に乗る。

 

 最終的にその勝負を制したのは潔。勝った彼から順番にやりたいポジションを宣言していく。

 

「高園寺くんはどこがいい?」

「……右サイドハーフだな」

 

 上位だった俺は前線のポジションを獲得することが出来た。

 今回の作戦はCFの潔を中心に勝ちに行くという曖昧なもの。しかし、まだそれぞれの特性や能力を把握出来ていない状況ではそうする他ない。

 

 コートに入場するチームZの向かい側からチームXが現れる。その中心にいる十番、その堂々たる佇まいはまるで自分以外の全てを見下しているようだった。

 

 キックオフはこちらから。蜂楽のパスを受けて潔がドリブルを始める。

 三人のプレスを見て抜けないと判断したのか、蜂楽に戻す素振りを見せる。

 

「潔!」

「高園寺、頼む!」

 

 潔からのパスを受けて右サイドを駆け上がる。一人、二人と抜き去りアタッキングサードへ侵入。中へカットインし、シュートコースを狙う。

 ゴール前に潔、逆サイドに我牙丸吟、マイナスのスペースには雷市陣吾と國神が走り込んでいる。

 

「おい、俺より目立つな」

「俺はエースストライカーだ。目立ってナンボだろ」

 

 目の前に立ちはだかる十番、馬狼照英との1on1。体格の大きい彼の横を潜る様に重心を下げたドリブルで抜きにかかる。

 左に潜行し、そこから意表を突いたルーレットで切り返しながら外にパス。カットインして空いたスペースに蜂楽が走り込んでいた。

 

 蜂楽がクロスを上げると、雷市と臥牙丸が反応して中に飛び込む。ニアに走り込んだ雷市の頭上を抜け、ファーの臥牙丸にボールが飛んでいく。しかし、そのヘディングは惜しくも届かない。左サイドでこぼれ球を拾った潔がマイナス気味に中へパスを入れる。

 

「ナイボ」

 

 フリーな國神の左足による強烈なミドルシュートが炸裂する。その威力にキーパーは動くことが出来ず、ネットに突き刺さるボールを眺めていた。

 チームZ初得点は國神が制した。

 

「っしゃオラァ!」

「ナイスシュート、國神!」

 

 互いに駆け寄りハイタッチ。一方、ボールの来なかった雷市は忌々しげに舌打ちをする。

 

「おい潔! 次は俺に出せよ」

「いや、次も俺が決める」

「あぁ!?」

「あ、あはは……」

 

 雷市と國神の言い合いを他所に、チームXのキックオフで試合が再開する。馬狼はボールを持つとすぐにドリブルを開始した。

 

「俺の前に立つな、ブチ殺すぞ」

 

 プレスをかける潔をヒールリフトで華麗に躱す。続いて雷市、國神の二人がかりで押さえ込みに行く。

 

「行かせねぇよバァーカ!」

「止める!」

「チッ、雑兵が!」

 

 フィジカルの優れた中盤二枚にプレスをかけられるも、馬狼はボールをキープし続ける。蜂楽が寄ってきているのが見え、仕方無しに味方へボールを預けた。

 

 中盤から右サイドへ、右サイドから中盤へ、中盤から左サイドへとボールを回すチームX。そして前線まで運ばれたボールは再び馬狼に渡る。

 久遠、成早朝日を連続で股抜きし、ペナルティエリア外からシュートモーションに入る。放たれた正確無比なシュートはゴール右上に突き刺さり、両チームの得点が並んだ。

 

 このゴールをきっかけにチームXの中心は完全に馬狼となった。

 勢いづくチームXの猛攻は続く。味方のサポートを受けた馬狼を中盤で止めることが出来ず、その突進力とキックを活かした馬狼のワンマンサッカーにチームZは防戦一方だ。

 

 そして、マークを振り切った馬狼のシュートが再びゴールを割る。その瞬間にホイッスルが鳴り、チームZは1対2とビハインドでハーフタイムを迎えることになった。

 

「クソっ、なんなんだよあの十番! 止まんねーって!」

「ぶっちゃけ、アイツに単体で勝てる奴なんてうちに居ないっしょ」

「二人じゃ止まんないよ、三人!」

「それじゃ他が空く。二人以上はかけられないぞ」

 

 各々が馬狼を止めるための案を出し合う中、俺は一人思案する。

 あの暴走機関車に必要以上に構っていても仕方がない。止める手段が無いのなら、アイツ以上にこちらも点を取るしかない。

 

「皆、聞いてくれ」

 

 こういうのは苦手だが仕方がない。手を叩いて皆の意識をこちらに集める。そして、俺が考えた作戦を説明する。

 

「後半からは攻撃の人数を増やす。國神、お前は攻撃的なポジションを取ってくれ。前半の一点でお前に注意が向いている、他が空きやすくなるはずだ。勿論、隙があればどんどん撃っていけ」

「分かった」

「雷市、お前は馬狼にマンマーク。攻撃よりも奴のスタミナを削ることを意識してくれ」

「はぁ!? ざけんな! んな死に役俺はごめんだぞ!」

「死に役なんかじゃない。前半を二点に抑えられたのはお前の粘り強いディフェンスがあったからだ」

 

 俺の言葉に雷市が黙りこくる。あれだけ馬狼とやり合っているにも関わらずまだ息の上がった様子を見せていない。恐らくスタミナで言えばこのチームの中ではトップクラスだろう。

 

「初戦を落としたくない。頼む、力を貸してくれ」

 

 頭を下げながら雷市に頼み込む。

 

「チッ……わーったよ」

「ありがとう。ボールを運ぶのは蜂楽、お前の仕事だ。攻撃の起点になってくれ。だが」

「狙える時は狙っていい、でしょ?」

「あぁそうだ。臥牙丸、潔、俺達で押し込むぞ」

「任せろ」

「おう!」

 

 方針が固まり、選手達は後半戦に臨む。

 ホイッスルが鳴り響き、チームXの攻撃が始まる。すぐさま馬狼にボールが渡り、その巨躯で前線へ疾走する。

 

「俺につくのは勝手だが、結果は変わらねぇぞ」

「ハッ、その余裕がいつまで続くか見物だなぁ!」

 

 馬狼対雷市。抜きにかかる馬狼に対し執念深く追いかけて何度も立ち塞がる。この粘着的なディフェンスに、馬狼の苛立ちは募っていった。

 雷市のチャージにボールを後ろに引いた瞬間、

 

(ここだっ!)

 

 下がってきた潔がボールを掻っ攫う。彼は虎視眈々と馬狼の隙を伺っていたのだ。

 

「蜂楽!」

「あいあいっと」

 

 潔からボールを受け、蜂楽のドリブルショーが始まる。超速シザース、ルーレット、エラシコ、ヒールリフトと多彩な足技で敵陣を切り裂く。

 右サイドを駆け上がる俺は後ろから来る千切豹馬に気付き、ゴール前へダイアゴナルラン。蜂楽から千切に渡りセンタリングが来る前に中にいた國神にマークを引き渡す。

 

(来いっ!)

 

 フリーの俺に気付いた千切からのクロスが上がる。左サイドペナルティエリア内四十五度。その位置に走り込んでいた俺はDFよりも更に高く飛び上がる。

 空中で身を翻しながら、飛んできたボールを左足で捉える。何度も練習してきたシュートだ、外さない。

 

 空中回転直蹴撃(ファイアトルネード)

 

 放たれたシュートはゴール右上に突き刺さる。チームZ、反撃の狼煙を上げた。

 

「よしっ!」

「うおお! なんだ今のすっげぇ!」

「空中で回るとかお前曲芸師かよ!」

 

 駆け寄るチームメイトに肩を叩かれながら、俺は小さくガッツポーズをする。

 

「まだ同点だ、気を引き締めていくぞ!」

 

 再びチームXから試合再開。追い縋るチームZを完全に引き剥がすため、馬狼のドリブルは更に激しさを増していた。

 鬼気迫る馬狼のプレッシャーに押されながらも、雷市は懸命に食らいつく。

 仲間からのパス要求も無視して、馬狼は一人でシュートまで持ち込もうとしていた。

 

「おいおい、味方が呼んでるぜ? 出した方が良いんじゃねぇのかぁ?」

「キングは俺だ……! てめぇ如き俺一人で充分なんだよ!」

「けっ! ワガママキングが!」

 

 無理矢理コースを開き、シュートを叩き込む。しかし、ミドルサードから放たれたそれはゴールポストに弾かれ成早に拾われる。

 降りてきた潔がボールを受け、素早く蜂楽へ繋いだ。

 先程のドリブルが尾を引き、ドリブルコースを潰すために敵が殺到すると、

 

「あらら。そんじゃ、大砲オナシャス!」

「発射準備はとっくに出来てらぁ!」

 

 國神のスペースが空く。射程距離二十八メートル、左足が振り抜かれる。

 

「ッラァ!」

「なっ、こいつどっから!?」

 

 馬狼渾身のスライディングによって弾かれボールはタッチラインを割った。

 千切のスローインを受けた俺は縦に行くフェイクを入れてからサイドチェンジ。

 臥牙丸が受け、潔がフォローに向かう。

 

 蜂楽、國神へのマークが厚く、ボールホルダーである潔に対してのプレスは弱い。ならばと自分で切り込む選択肢を取った。

 ドリブルで中央突破を狙う潔に、 馬狼が距離を詰める。

 

「撃たせねぇよヘタクソ」

 

 ディフェンスに付いてきた馬狼に気圧され、潔は慌てて左の臥牙丸にパスをだそうとする。しかし、そのボールは意図した方向ではなくディフェンスの裏のペナルティエリアに空いたスペースに転がっていく。

 

「届い……た!」

 

 そのボールに超反応を見せた臥牙丸のスライディングシュート。辛うじて撃ったそのシュートはキーパーに弾かれてしまう。

 

「俺のゴールゥゥゥ!」

 

 後半初めて攻撃に参加していた雷市がこぼれ球に向けて突進する。球際を制し、無理矢理シュートを撃ちに行く。しかし、そのシュートはDFの顔面に直撃。

 そして次のこぼれ球は潔のもとに舞い降りた。後ろからは馬狼が迫って来ている。トラップをする時間は無い。

 

「勝負しろ! ダイレクトだ!」

 

 思わず潔にそう叫ぶ。潔は一瞬驚いたような表情を浮かべた後、浮き玉に右足を合わせる。馬狼の足がボールに届く直前、そのボレーシュートはゴールネットを揺らした。

 

 ホイッスルが鳴る。呆然としている潔に蜂楽が駆け寄り飛びついた。

 

「ナイッシュー潔! 今のダイレクトシュートすっげー!」

「けっ、俺のおこぼれゴールだっての」

「お前もおこぼれ外した」

「だあってろ臥牙丸!」

 

 和気あいあいと話している彼等を他所に、俺は馬狼に視線を向ける。

 彼一人だけでここまでの脅威になるとは、全く末恐ろしい。恐らくこの先も彼は勝ち上がってくるだろう。

 

 第一試合、チームX対チームZ。

 3対2でチームZの勝利だ。




雷市ってすげー奴だと思うんですよ
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