大東亜連合奮闘記   作:名無之助

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間話 CE07 映画阿賀野川防衛線を観た拿捕されたアークエンジェル乗員 

 阿賀野川防衛線…それは、再構築戦争における大東亜連合…いや日本国の運命を決定付けた戦いである。

 

 そんなナレーションから始まった映画を、大東亜連合に拿捕されたアークエンジェル乗員は、ある者は真剣に、ある者はめんどくさそうに、ある者は眠たげに、大東亜連合兵士の監視の元、観させられていた。

 

 なぜか、大東亜連合では兵士の教育課程で必修の映画であり、民間人拉致をしようとしたアークエンジェル乗員にもこれを見せたいと、一部の兵が話したのが上の耳に届き、今に至る。

 

 「なんで、捕まってる俺たちが映画なんて見せられるんだ?」

 

とは、とある鷹の言である。

 

 映画が始まると、その空気は一変した。

 

 映画の中で、主人公となる将校が叫ぶ。

 

 《ここから先へ敵を通すな!市民の避難完了まで、死守せよ!》

 

《少しでも多くの市民を、民間人を守れ!職務を果たせ!》

 

この様なセリフが流れるたびに、艦長マリュー・ラミアスやムウ・ラ・フラガ、ナタル・パジルールなどは気まずげに視線を下げたりしていた。

 

 やがて映画が終わると、やっと終わったと思った面々に、とどめとなるテロップが流れる。

 

 

 •CE7年夏 中国・北朝鮮連合軍、新潟県に上陸、市民の避難の遅れから陸自は時間稼ぎのため水際防衛を試みるも失敗、甚大な被害を出し退却

 

・戦闘前日、午後17時、後方にて避難誘導中の第30普通科連隊に水際防衛の失敗と部隊壊滅、撤退の連絡と、残存市民の避難路確保の命令が東部方面隊司令部より下る。

 

• 05:30頃:中国・北朝鮮連合軍の先鋒が阿賀野川流域に到達しつつあるのを航空偵察により確認

同時刻、新田紘一二等陸佐が全連隊員に対して訓示、市民の避難完了までの阿賀野川死守の命令を下す。

 

• 06:00:第30普通科連隊が防衛線を完全構築し、戦闘準備完了。

 

• 06:15:敵主力(3個師団規模)による本格攻撃開始。

 

• 06:30~12:00:阿賀野川の地形を利用した防御戦闘。軽装甲機動車と小火器による応戦。新田連隊長が前線で直接指揮。

 

・敵航空部隊が進出も友軍航空部隊の奮戦により撃退、一時的に制空権を奪取

 

• 12:00~17:00:敵の物量攻撃が激化するも、味方航空部隊による支援もあり防衛線を維持。

 

• 夜間(20:00~翌04:00):夜間戦闘に移行。連隊は損害を出しながらも防衛線を保持。


戦闘2日目

 

• 04:30:2日目の戦闘開始。敵が再び大規模攻撃。敵大規模航空部隊により友軍航空部隊は損害を出し、制空権を奪取される。

 

• 05:00~09:00:敵が迫撃砲・重火器、航空支援を集中投入。連隊の損害が急増。ドローンなどを使った攻撃により通信線が破損、後方への通信が不可能となる。

東部方面隊は連隊が壊滅したと判断して救援の為前進していた主力部隊(東北方面隊からの増援、第6師団第22即応機動連隊を基幹とした1個師団相当の部隊)に第二次防衛線の構築を指示

 

• 09:00~13:00:敵部隊、戦車含む装甲車両を前面に出し侵攻、連隊第2中隊が対戦車火器を用いて応戦、甚大な被害を受け防衛線を突破されかけるも撃退

新田連隊長が残存部隊を率いて複数回の反撃を実施。

この時点で連隊の弾薬は残り2割に満たない状態だったとされる。

 

• 13:00~15:00:激しい白兵戦が展開。通信線が一時的に復旧、『防衛線未ダ健在ナルモ我損害甚ダシク、白兵戦ニ移行ス』最後の公式な通信記録である。

部隊が未だ戦闘継続中であることを司令部が把握、即座に第二次防衛線構築にかかっていた主力部隊に出動を命令

 

• 15:40頃:新田連隊長が白兵戦の中で負傷した部下を救出中に敵迫撃砲の至近弾を受け消息不明になり、副長が指揮を引き継ぐ。

 

• 15:50~16:20頃:防衛線が各所で寸断され、突破されつつあるも第30普通科連隊残余は未だ戦線を維持

 

• 16:40頃:連隊は戦闘能力を喪失し戦線が崩壊するのとほぼ同時刻、救援部隊到着。直ちに反撃を開始し、敵を撃退。

 

損害

第30普通科連隊 人員700名

戦死、行方不明 498名 

負傷(戦闘不能な重症者のみ) 156名

軽症含む残存兵力 46名

 

配備された装甲車両は全滅

 

中国・北朝鮮連合軍

3個師団規模29000名中

2300名戦死.行方不明

520名負傷

装甲車両42両喪失

 

救援到着後

上記にプラスしてさらに中国・北朝鮮連合軍は1300名が戦死、または捕虜として拘束され、撤退

 

「私は諸君らに死ねと命じなくてはいけない。周辺地域からの住民の避難が難航しているためだ。避難には1日から2日はかかるだろう。その間、この防衛線は突破されるわけにはいかない。すでに占領された町では北朝鮮軍による虐殺が起きている。ゆえに、この地点、この防衛線に唯一残存する我が連隊は、侵攻してくる敵連合軍3個師団をここで2日間止める。逃げたいものは逃げてよし、自衛官としての覚悟がないもの、国を守る意思がないもの、そして恐怖で動けなくなってしまったもの、私は君たちを許す。責任は私がとる。逃げてよし!ただ思い出してほしい、その結果はすでにあの町で示されている。私は国と家族を守る。君たちはどうする?私は自衛官である君たちに命じる、国のために、君たちの家族のために【死んでくれ】そして死んでも【生き残れ】これが命令だ」

 

 C.E7年 夏 新潟県 第30普通科連隊連隊長 新田紘一 二等陸佐 享年40 阿賀野川防衛線

 

 

 拿捕され、連行された大東亜連合軍の宇宙要塞金平糖、特設上映室のスクリーンの光が消え、室内に明るい照明が戻った。

 

 テロップの最後の文字「享年40 阿賀野川防衛線」が消え去っても、アークエンジェル乗員たちの間に広がる重苦しい静寂は晴れなかった。

 

 上映前、退屈そうに肘をついていたムウ・ラ・フラガは、いつの間にか身体を起こし、前傾姿勢のままモニターのあった黒い画面を凝視していた。

 

 映画の最中、《少しでも多くの市民を、民間人を守れ!》というセリフが響くたび、彼らの胸には鋭い痛みが走っていた。自分たちはヘリオポリスで軍の機密を守ることを優先し、結果として民間人の子どもたちを戦火に巻き込み、乗艦させて逃走しようとしたことは大東亜連合から見れば、それは「民間人の不法連れ去り・拉致」に他ならない。

 

 「……なるほどねぇ」

 

 真っ先に口を開いたのはムウだった。いつもの軽薄な笑みは微塵もない。

 

 「教育課程で必修か。軍隊ってのは『何のために戦うか』の教育が一番厄介なもんだが……奴らはハナからこの狂気じみた泥臭い覚悟を叩き込まれてるわけだ」

 

「……」

 

 マリュー・ラミアスは膝の上で両手を強く握りしめ、俯いていた。

 

 その目元には隠しきれない動揺と痛恨の色が浮かんでいる。

 

 「たった700人で……2万9千を相手に、2日間……。498名の戦死……生存者、わずか46名……」

 

 マリューの声は震えていた。

 

 指揮官として「部下に死を命じる苦痛」を誰よりも恐れる彼女にとって、新田二佐の「死んでくれ、そして生き残れ」という矛盾した命令、そしてそれをやり遂げた兵士たちの記録は、胸を削られるような衝撃だった。

 

「私たちは……軍の機密を守るため、必死だった……。でも、あの子たちをあんな危険な戦闘に巻き込んで……大東亜連合から見れば、私たちは市民を盾にした誘拐犯に見えても仕方がないのね……」

 

「艦長、弱気な発言はお控えください」

 

 毅然とした声で遮ったのは、ナタル・バジルールだった。

 

 しかし、その声にも普段の鋭い冷徹さはなく、どこか張り詰めた硬さが混ざっている。

 

「……ですが、軍事的に見れば、この阿賀野川防衛線の戦闘は極めて異例です。後方通信の途絶、通信途絶時の早期見切り、支援なしの白兵戦……軍のドクトリンとしては失策の連続。にもかかわらず、彼らは一歩も引かず防衛線を維持し切った」

 

 ナタルは直立不動のまま、壁際に立つ大東亜連合兵士たちの背筋の伸びた立ち姿を一瞥した。

 

「兵士の規律、そして市民防衛に対する狂信的なまでの執着……。大東亜連合軍がヘリオポリスでザフトを退け、我々を押さえて真っ先に民間人を保護した理由が、すべてこの戦史に詰まっています。彼らのドクトリンの根本には、この阿賀野川防衛線を初め、70年前の戦争の記憶が未だに存在する」

 

 監視についていた大東亜連合の若手将校が、ゆっくりと歩み寄ってきた。彼はマリューたちを見下ろし、静かに、だが重みのある声で言った。

 

「地球連合軍の士官諸君。我が国の歴史は、市民を捨てて撤退した不名誉と、市民を救うために骨を埋めた数多の英霊の血で塗られている。我が軍において民間人を盾にし、戦わせるなどの軍が意図して危険に身を置かせる行為は、いかなる軍事上の理由があろうとも断じて許されないことと教えられる」

 

 将校の言葉は、アークエンジェル幹部全員の胸に突き刺さった。

 

 「あなた方がヘリオポリスで機密兵器を守ろうとした事情は理解しよう。だが、そこに民間人の子どもを乗せ、戦闘に巻き込もうとした事実は動かない。我が大東亜連合は、二度とあの戦争中の阿賀野川や他の多数の戦いような悲劇を、どこの市民にも味わわせないために存在する」

 

 将校はそれだけ告げると、踵を返して上映室の扉を開けた。

 

「移動だ。これより、あなた方の正式な事情聴取を行う」

 

 重い扉が開く音とともに、マリューはゆっくりと立ち上がった。その表情には、捕虜としての不安ではなく、自らの指揮官としての姿勢を問い直された者の、深く重い覚悟が宿っていた。

 

「……行きましょう。私たちが『何のために』あの子たちを乗せたのか、逃げずに、すべて話します」

 

 ムウは小さく息を吐き、頭の後ろで手を組みながら歩き出した。

 

「ハッ、まいったね。地球連合の狸ども相手ならハッタリも効くんだが……」

 

ちなみに、この声を掛けてきた将校の名は…新田新一 映画の主人公である新田紘一二等陸佐の子孫である。




本編はまだ少々お待ちください。 

ガンダムSEEDのアラスカ戦を舞台にした短編を構想中です。内容を3パターン考えてるのですが、皆さんどれが読みたいですか?

  • 無名の中佐が部下を率いアラスカ脱出を試る
  • アラスカ守備軍の艦隊の艦長が頑張る話し
  • 守備隊兵士が基地で少女誘拐犯を追跡する話
  • どれも要らないor他の作品はよ続きかけ
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