ー*ー
闇スシ4板前5体を倒したぬしシャリタツは、仲間のシャリタツとヘイラッシャを助けるために、闇スシの統領、「サラダ寿司の白たれ」がアジトにする廃船着き場に向かった。
「オヌシ、ナカマとヘイラッシャ、カエセ!」
ズラッ…ぬしシャリタツと対峙するように、シャリタツが並ぶ。
「ヌシ、オヌシとヘイラッシャの時代、オワリ!」
対峙し並ぶ闇スシのシャリタツの後ろに、漁網に閉じ込められたシャリタツとヘイラッシャが数十体、怯えている。
「オヌシがシヌか、シャリジチとラッシャジチがシヌか、エラベ!」
その声とともに、並んだシャリタツたちが、一斉に吠えた。
降り注ぐ、りゅうせいぐん。
数十のシャリタツがなすドラゴン最強ワザはまさに、天蓋が落ちてくるかのような迫力を以て、ぬしシャリタツへと迫った。
「いや、それは邪道じゃなくて」「単なる外道やろ」
ーブロスターの りゅうのはどう!
ーオリセクトの いわなだれ!
ークリムガンの りゅうのはどう!
ディアンシーの ムーンフォース!
りゅうせいぐんを、撃ち上げられた対空砲火が迎え撃ち、空中で大爆発が起きる。
「マハリちゃん、蹂躙してください!」
クールでお淑やかなら蹂躙とか言わないよなぁ…とみな思ったが、誰も声には出さない。
ーグレイシアの つららばり!
ーマハリハグルマの かげうち!
ービビヨンの しびれごな!
氷の巨針と空間の亀裂が、漁網を引き裂く。その手前に並ぶ闇スシのシャリタツは、しびれごなの霧に呑まれる。
しょせんは我流で鍛えただけの野生ポケモン、ユキコシ地方でも上澄みに入るフロックス姉妹のポケモンに叶うはずなどなかった。
「ナント!?神聖なシャリタツブレードに、乱入だと!?」
ゴロンダよろしく幾枚かの葉っぱをくわえるシャリタツが、抗議の声を上げる。どうやら彼が闇スシ統領「サラダ寿司の白たれ」らしい。
「神聖もなにも、人質とって脅迫してるだけだよね?」
「コレは、きちんとしたスシなのだ!」
「スシ…?脅迫が…?」
シャリタツでないポケモンみなが、頭上をハテナで埋め尽くした。
「コレこそ、弱みの握りだ!」
「…はぁ…?」
「オヌシ、オレと、サシで勝負スル!」
「ハ...?正々堂々実力勝負?オヌシ、正気...?
アタマ使えよ…」
サラダ寿司の白たれは、まるでそれが論外であるかのような反応をしたため、イーブイとグレイシアが睨みつける...闇スシ統領はビクッと身体を震わせた。
「アノナ...
...回転スシはな、遊びじゃあ無えスシ。
ラッシャ!」
漁網から脱出した中でもっとも大きなヘイラッシャが、大口を開ける。
「チッ...
ナイト!」
サラダ寿司の白たれが、後ろに控えていたネギガナイトのネギの上に載る。
ぬしシャリタツが、ヘイラッシャの口の中に入る。
「「3,2,1...へいらっしゃ!」」
-ネギガナイトの スターアサルト!
-ヘイラッシャの いっちょうあがり!
-サラダ寿司の白たれの こうそくスピン!
-ぬしシャリタツの こうそくスピン!
ネギガナイトがネギを抱え突っ込む。
ヘイラッシャが大きく跳ね上がる。
サラダ寿司の白たれは、スターアサルトの突進力を回転力に変換し、一つの星かのように追突をかます。
ぬしシャリタツは、真上から落下しながら回転し、メンコを叩きつけるようにして衝突する。
「「グヌヌ...」」
一合、二合...
「ナイト!」「ラッシャ!」
-ネギガナイトの スターアサルト!
-サラダ寿司の白たれの こうそくスピン!
-ヘイラッシャの みがわり!
サラダ寿司の白たれの回転の側面をこするようなスターアサルトが、一直線に伸びてヘイラッシャへと突き刺さる。
摩擦で回転を加速するサラダ寿司の白たれと、向かってくるネギガナイト...果たしてヘイラッシャの「みがわり」は...
...ぬしシャリタツがために発動された。
ヘイラッシャが吹き飛ぶ。サラダ寿司の白たれがみがわりと衝突し大爆発する。そこへ、ぬしシャリタツが大きく弧を描き突入した。
水しぶきが大きく立ち上がる。その中から、ヒューン、サラダ寿司の白たれが弾き飛ばされていった。
「オレとラッシャの、カチー!」
ー*-
「グヌ...マケタ、ダト...」
意気消沈するサラダ寿司の白たれを、ネギガナイトがポンポンとネギで叩いた。
「オヌシ、まだヤルつもりか…?」
ネギガナイトはこくりと頷き...そして、ネギを大きく横に振って、サラダ寿司の白たれを張り飛ばした。
「ナヌッ...!?」
ずらり...デスバーンにサニゴーン、ニャイキングにバリコオル、それにタチフサグマが並ぶ。それも一体ずつではない、十数体がだ。
取り囲まれている。シャリタツたちも、ヘイラッシャたちも、フロックス姉妹のポケモン達も。いつの間にか。
「やいお前ら。
ここは今から、俺様達の縄張りだ。」
「ナンデ...オヌシら、従って...」
「何がドラゴン有数に賢いだ。お前らは、騙されてたんだよ。俺様達がここを乗っ取るためにな。」
「イワンコッチャナイ...」ぬしシャリタツはヤレヤレと両手を広げた。
ー*-
”「そして、シャリタツさんたちとチンピラポケモンたちの乱闘が始まったのです。」”
「やはり、闇スシがヘイラッシャの代わりに連れてきたブレーダーポケモンが下賤な心を持つことを、ヌシさんは見抜いてらっしゃったのですね?
/そう言えば、思い返せばぬしシャリタツ、闇スシのスシそのものは否定してないし、ハンバーグ寿司からすら学んでたな...」
”「はい。後から聞いたのですが、ヘイラッシャを捨てることへの義憤だけではなく、サラダ寿司の白たれさんが連れてきたポケモン達を最初から怪しいと思っていたからこそ、揉めたみたいです。」!
ー*-
多勢に無勢...バリコオルの「さいみんじゅつ」を中心にした陰険戦術を取られたこともあり、追い詰められるシャリタツたち...
「オヌシ、ナゼ、オレをカバウ...?」
スターアサルトにあやうく撃ち抜かれるところだったサラダ寿司の白たれは、おそるおそる、自らを突き飛ばしたぬしシャリタツに問うた。
「イタい目を見なければオヌシは学べぬ。新しい力を身に着ける前に、それにフサワシイ心を鍛えなければナラヌ。
オヌシら闇スシの邪道も悪くないが、正道を知らずして邪道に足を踏み入れても、弱いオレたちは踏み台にされるだけ...」
「邪のミチは、邪...?」
「ダカラ、オレたちは正しきスシの路を極めた...
見せてヤレ、正道を極めたモノの、正道を感じしモノの、邪道を。」
それまで防戦に努めていたフロックス姉妹のポケモン達は、こくりと頷いた。
「そうですよね、私たちも、いろいろ見せていただきましたからね。」「やるよみんな。準備はいい?」
グレイシアとイーブイが号令をかけ、仲間たちと突撃していく。
そしてディアンシーはと言えば、肩に力を込め、左手を横に右手を前にして両手で空気を挟む、その構えはまるで...
「ソノ、カマエ、モシヤ...」
「私もまた、スシとは何か、スシを回すとはどういうことかを、肌で感じました。
いざ...
...3,2,1...!」
そしてポケモン達は、叫んだ。
「「「「「「「「「「「「へいらっしゃ!」」」」」」」」」」」」
ー*-
闇スシファイルNo.719「ダイヤの握り」
概論
ダイヤモンドは自然鉱石の中でモース硬度上もっとも硬い石の一つであり、その特殊な光学特性のため、カットにより美しい輝きを見せ珍重される宝石である。
ダイヤモンドの生成過程は3つ知られており、「1:マグマ中で炭素が数百万年以上かけて結晶する」「2:人口環境下で数百トンの加温加圧または気相蒸着により炭素原子を数日以上かけて結晶させる」「3:まぼろしのポケモンであるディアンシーがその権能によって両の手で空気中の二酸化炭素を圧縮し結晶させる」である。このうち、3の生成法ではダイヤモンドは空気中のCO2を「握る」ことで生成され、また専用ワザダイヤストームで「回る」。握られ、回る、つまりディアンシーのダイヤモンドはスシである。
シャリタツブレード運用
ダイヤの握りの最大の弱点は、ディアンシーがブレーダーとなってダイヤそのものかダイヤをまとったシャリタツを回す以外に現状で方法がないことである。また前者の手段ではシャリタツブレードのルール上ダイヤの回転が止まると同時に負けてしまうもののダイヤはポケモンではないためワザが使えず回転を維持できないため、速攻戦が求められる。
しかしダイヤモンドは強靭、かつダイヤモンドやすりに使われることからわかるように切削力があるため、相手のシャリタツの攻撃や防御を削ることができる。「ダイヤストーム」ならばワザの効果上、相手と衝突するたびにこちらのシャリタツの防御力アップが期待できる。また眩く輝くゴージャスなダイヤをまぼろしのポケモンが回していれば、戦う前からどんなどんかんなヘイラッシャも気後れしてしまう事だろう。
ぬしシャリタツによる声明
人間はダイヤモンドに目がないため、「ダイヤの握り」とその痕跡の披露はフロックス家の縄張りの外では禁止する。
オレヌシー
ー*-
ダイヤの渦をまとったシャリタツたちが、自身もクルクルと回転しながら次々と突撃していく。
邪気を祓うダイヤモンドは、攻撃を寄せ付けず、変化ワザも弾いていた。
「ぐわーっ!」「お、おのれーっ!」「そんなーっ!」
チンピラポケモンたちは、怒涛の反撃になすすべなく這う這うの体で逃げ出していく。
「カッタ!」
「オヌシ、調子にノルナ!
オレタチのシャリタツブレードは、ココカラ!」
バシっと、ぬしシャリタツがサラダ寿司の白たれをはたく。
「あのふたり...
...いろいろあったけど、なんだかいい感じにおさまりそうじゃない?
ね、オリセクト、ブロスター?」
「せやなぁ」「そうかもしれねえなあ...」
ー*-
”「というような、ちょっとした勧善懲悪があったのです。」”
「…勧善懲悪というか、スシ回してるおかしな連中の話にしか...」
ディアンシ―は目を横に逸らしたーダイヤは回転寿司ではないしましてやシャリタツではないからだ。どうかしていた。
「とはいえ、なるほど愉快そうな冒険譚でしたわね。
気は休まってなさそうですけれど…」
”「いえ、あくまで野生のポケモンの縄張り争いへの助太刀でしたし、こういった…悪く言えば他人事のトラブル、よく言えば『
「『そうそう、こういうのでいいんだよこういうので』というやつか。」
「日常って、寂しくない程度に騒がしくて…で、でも日常をはみ出しすぎないくらいでいんだよね。
ね、お姉ちゃん?」
「…ですわね。とはいえ、そうはなりそうもないような予感がうすうすわたくしにはいたしますが。
/予感?
/蒼玻くんも感じませんこと?
わたくしたちの旅って…」
蒼玻/アオバは、そこでふっと、お互いの心が一致し、花がつぼむような見事な苦笑いをしてみせた。
「「波乱続き」だもんな/ですわよね」
「いやはや、ちょっとした冒険譚くらいでちょうどいいって思っちゃう時もあるよね…
だけど…」
そこから先を、わざわざ口にするのは無粋というものだろう。
ー「当機はまもなく、ユキコシ地方、サンゴジュ空港に着陸いたします。」
ただ、機内放送と同じで、世の中には、わかっていても口頭で伝えておくべきことというものが存在する。
ー「お2人におかれましては、ポケモンを収容の上、シートベルトをお締めください。」
例えば、ふだん言葉にして聞くことのできない、ポケモンたちの本音なども…
”「イーブイさんもグレイシアさんも…みなさん、言ってましたよ。
『大変だけれど、やっぱりあれくらいが私達には似合ってるし、それでいい。それでいいから、これまでも、これからも、いっしょに、そういう旅に着いていきたい』と。」”
いろんな想いがあるのだろう…けれど、決してそれが後ろ向きなものではなく、それどころかディアンシーの声は、「敬意」「いたわり」に満ちて、それは蒼玻/アオバとカグヤにも向けられていた。
「それは…こちらこそ、いつもありがとうと、伝え…いえ、伝えるのは無粋かしら?」
”「伝えなくても、伝わっていますよ。」”
「そうか…
…ポケモンたち、そろそろボールに入ってもらえるか?」
ボールに次々とポケモンたちを戻し、慌ただしくそれでいて優雅に、姉妹はシートベルトを締める。
”「ボールを出たら」”
「ええ、波乱に満ちたユキコシの大地で/旅の再開といこうか、みんな。」
本作はこれにて完結となります。本編となります転生ポケモン令嬢に話は戻りますので、そちらを宜しくお願い致します。なお更新は諸処の事情(大学院生活、昆虫採集旅行、重たい外伝書きすぎて本編の調子思い出せない)により遅れます。