春。それは始まりの季節。私、
一歩一歩、ゆっくりと踏みしめながら進む。目の前に広がる校舎、その前に置かれたクラスの書かれた掲示板。私と同じ新入生達が、自分の名前を探している。私の名前は、1年2組にあった。
話したことも、会ったこともない人が殆どの中、私の数少ない友人の名前を探す。生まれ育った街を、私と一緒に飛び出して来た2人の親友。元気な赤髪の少女と、冷静な青髪の少女。2人の名前を見つけて、私は思わず「よしっ」て声を出す。2人共、私と同じ2組だった。
意気揚々と昇降口に入り、鞄から上履きを取り出す。履いていた靴を下駄箱に入れて、上履きに履き替える。正面に張られている地図を見て、教室の場所を確認。
今いるのがロの字の校舎の南側。教室は南棟2階なので、すぐ上ですね。昇降口横の階段を駆け足で登って2階に登ると、ワイワイとした楽しそうな話し声が。もう皆、仲良くなってるんですかね? 凄いなぁ。私も沢山、友達できると良いな。
1年2組の教室に入る。少しクラスを見回したけど、2人はまだ来てないみたい。黒板に座席表が張られていたから、それを見て席に座る。廊下から2列目の1番後ろの席が私の席。そこから左、窓際の席と、その前の席が2人の席。近くて良かった。
私には知らない人に話しかける勇気なんてないので、席に座ってぼーっとしてます。本は持ってきてないですし、プリントも配られてないのですることないです。それになんだか視線を感じて… なので、何も考えずにぽけーっとしてます。
そうだ、地図を確認しにいきましょう。教室の前にもあったはすなので、見に行きます。
うん、ありました。私は寮に入るので、場所を確認しておきたかったんですよね。荷物は、例の友人の家に置かせてもらっています。学校近くの安い家を借りたらしくて、この間も引っ越しが忙しいって嘆いてました。
私も一緒に暮らさないかって誘われたんですけど、既に寮の申請を出した後だったので、断ったんです。知らない人と暮らすのは怖いですし、寮生活は不安ですけど、頑張らないとですね。それに今まで親や友人に助けられてばかりでしたから、少しでも自立しないと。
寮は裏門から出た先にある建物なんですね。教室から反対側なので見えないですけど、ホームページにのってた写真だと大きな白い建物でしたし、わかりやすそうですね。迷子にならなさそうで安心です。
「ふぅ、疲れた。こっちだよ、お姉ちゃん」
「おぅ、ありがとうな。迷うところやったわ」
この声は、もしかしなくともあの2人です! 後ろから聞こえたので、階段を上がってきたところかな? まだ気付かれてなさそうですし、私の方から話しかけにいきましょう。
「茜、葵。久し振り、ってわけじゃないけど、よろしくね」
「もう来てたんか。よろしゅうな、あかり」
「私からも、よろしく。これからまた、長い付き合いになるね」
「そうですね。高校の3年間、頑張ろう」
「…そうだね、ずっと、一緒に頑張ろう」
「…せやね、頑張ろうや」
いやぁ、会えて良かったです。この2人が、私と同じ街で育った友人。長い桃色の髪に、赤の組紐に青色と黄色の
2人で居るとただでさえ赤と青で対になっていて
着方を間違えてたら2人が教えてくれると思いますし、大丈夫だとは思います。2人はよく私のことを見てくれてますから、何か間違えてたらすぐ教えてくれるので。頼ってばかりじゃだめなんですけど、少しくらいなら、ね?
「あかり、席ってどこなん?」
「茜の席は3列目の1番後ろです。その前が葵ですよ」
「ありがとう、あかりちゃんは?」
「2列目の1番後ろですね。茜の隣です」
「…そっか」
「うし、ラッキーやな」
席に座って少し話そうと思ったら、チャイムが鳴った。もうそんな時間だったのか。担任が教室に入ってきて、話し始める。決まりごとの話とか、時間割の話。学校行事のこととか、校舎の設備の話も。きちっとした話でしたので、面白いことはなかったです。
強いて気になったことがあるとすれば、部活動の参加が任意で、最低2人居れば新しい部活を作れることですかね。東棟に部室が集まっているんですが、部屋が余っているらしく、好きに作って良いらしいです。校庭や体育館を使う部活は多少決まりがあるらしいですが、そういった部活に入る予定はないので大丈夫ですね。
特に入りたい部活はないので、参加せずに帰宅することになりそうです。でも、茜と葵を誘って3人で作っても面白そうですよね。まぁ、それなら家に帰ってから2人の家に遊びに行けば良いだけな気もしますけどね。
担任が話した内容を
説明も終わり、今日はもう帰宅時間。私も琴葉姉妹のお家によって、荷物を回収したら寮に向かわないとですね。寮生活する他の人は、荷物を寮に置いてから学校に来たんですかね? わかりませんが、別に私のやり方でも問題ないと思います。帰ろうと席を立った時、担任に話しかけられました。
「紲星さん、少しよろしいでしょうか?」
「はい、大丈夫です」
「今朝、紲星さんのお母さんから高校に電話がありました。内容は御存知ですか?」
「いえ… 聞いていないです」
お母さんから、高校に電話? 何かあったのかな…
「知らない人の多い高校の寮ではなく、信頼できる友人の家で生活させたい、という内容でした。そのため、入寮申請を取り消したいとのことなのですが… 紲星さんは、それでもよろしいのですか?」
心配、かけちゃったのか。『高校生活はあかりの好きなように、自由に楽しみなさい。お母さんは、貴方が悪いことをしなければ、兎や角言うつもりは全く無いから』って言ってくれてたのに、急にどうしたんだろう。
それに、家から高校までは遠いから通えないし、寮以外に高校の近くで生活できる場所もないし… 一応、琴葉姉妹の家に泊めてもらう事もできるけど、急に泊まるってなったら迷惑だろうから、やっぱり寮しかないよね。
「親を心配させたくはないですが、学校の近くで生活できる場所もないので、寮に入るしかな「うち来る? あかりなら大歓迎やで?」
「…いいの?」
「もちろん、前から誘ってたんだから」
「…先生、わかりました。入寮申請を取り消します。親の言う通り、友人の家で暮らします」
「わかりました。紲星さん、琴葉さん、入学初日から呼び止めてすみません。皆さんの高校生活が、幸せなものでありますように。それでは、さようなら」
「さようなら〜」
担任がどこかに去っていく。その後ろ姿を眺めながら、私は悔やむ。また、だめだったよ。結局、周りの人に助けられて、頼ってばかりじゃないか。高校生になったら頑張って自立していくって覚悟を決めたはずだったのに。
でも、隣でわかりやすくニコッと嬉しそうに笑っている茜を、静かに微笑んでいる葵を見ると、そんな気持ちも失せていく。2人が嬉しそうなら、それでいいか。
校舎を出て、3人で家に向かう。ここから始まる、高校生活。静かに、幸せを噛み締めていたいな。
ーーー
うち、
小学生の頃から読んどる、うちの大好きな本を手に取る。『
綺麗な白い髪の女性のことを、情熱的な赤髪の女性と、理性的な青髪の女性が奪い合う女性同士の三角関係の恋愛をモチーフにしとる、ところどころにユーモアがあって面白い小説や。
夢中になって読んどったら、もうそろそろ準備しないといけん時間に。急いで髪を
道に花びらが落ちている桜並木を抜けて門をくぐると、新入生向けに掲示されとるクラス表を見てすぐに名前を見つける。葵とも、親友の
地図を見る間もなく葵に連れられて階段を登り、そこにぽけーっと立っとったあかりと話して教室に入る。席に座ったところでチャイムが鳴って、担任の先生がクラスに入ってきた。
眠くなりそうな話をされた後、プリントを受け取ったらもう下校。あかりが先生に話しかけられたから横で聞いとったけど、寮はだめになったん? よーし、うちが助けたろ。
あかりを我が家に誘ったら、すぐに喜んでくれた。嬉しいなぁ、あかりの笑顔を見ると気分がええわ。心が洗われると言うか、なんというか。言い表せないような嬉しさがこみ上げてくる。
それからうちらは3人で家に向かう。ここから始まる高校生活。いつまでもずっと、幸せを謳歌しよう。
ーーー
「…はい、よろしくお願いします」
私、
尊敬する姉、
部屋に向かうと姉はもう起きていて、髪を整えていた。2人で部屋を出て階段を下り、1階のリビングで朝食を食べる。食べ終わったらお皿を洗って、すぐに着替える。そして、少し急ぎながら高校に向かった。
前日の雨で少し乱れてしまった桜並木を通り、門をくぐる。校舎前に掲示されたクラス表をチラッと見て、すぐに校舎に入る。靴を脱いで上履きを履き、2階に登る。地図は頭に叩き込んであるし、クラスも把握している。
階段の上で、
教室に入ると、すぐにチャイムが鳴り響き、教師が語り始める。学校のホームページに乗ってるわかりきった内容や、知ったところで意味のない無駄な話。正直に言って、興味がない。早く終われとしか思わなかった。
話が終わり、下校時間。教師が、あかりのもとにやってきて話しかける。私もすぐそばで話を聞く。
…この教師、朝の電話のことをあかりに確認しに来たのか。教師だけあって、しっかりしてるんだね。ま、事務的に確認しているだけかもしれないけど。あかりは親から連絡なんてされてないし、驚くだろうね。でも、私の家で暮らしてもらうにはこうするしかなかったんだ、ごめんよ?
教師は確認を済ませるとどこかに去っていった。少しドキッとしたよ。私の演技がバレたのかと思った。完全な
私達は家に向かう。ここから始まる高校生活。誰にも邪魔されない、幸せを掴みにいこう。