Qが酷すぎたので旧作でハッピーエンドを目指してみた   作:納豆御飯

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今回はいよいよ彼女の登場です。

尚、基本的に作者はLRS派です。LASも好きですが、LRSはもっと好きです。

御覧になられる方はその点にご留意ください。


第3話

 

「……ここも変わってないな。ま、当然だけど」

 

 ほぼ廃墟と言っていいほどの集合住宅を見上げながらシンジはそう呟く。

 

 あれから数日が経ち、司令部の三人はそれなりに忙しい日々を送っていた。

 

 特にゲンドウなど普段は執務を冬月に押し付けていたくせに、ユイの受け入れ態勢を整えるため、徹夜までしていたのである。

 

 冬月は通常の執務に加え、委員会……ゼーレに気付かれないように計画の修正を行っていたし、リツコもユイが初号機からサルベージされた後のエヴァのシンクロをどうするか、使徒との戦いをどのようにしていくのかと、アダムと連日話し合いをしていた。

 

 シンジもそれに付き合わされる形で今後どうするかの話し合いをしていたため、思ったよりも時間が掛かってしまったのだ。

 

 特に葛城ミサトのことや、惣流・アスカ・ラングレーのことについても話し合っていたのだが、やはりシンジの一番の関心事は綾波レイのことであった。

 

 それも無理もないであろう。

 

 あの未来では、ずっと海岸で海を眺めていたのだ。

 

 それはつまり、あの巨大化した綾波レイを眺めていたのと同義である。

 

 どんなに感情や記憶が摩耗していようと、忘れようにも忘れられるはずが無いのだ。

 

 故に、シンジはずっとレイの事を考えていたと言っていいであろう。

 

 シンジは本部の宿舎に寝泊まりしていたのだが、レイの居住環境のことを考えると一刻も早くこちらに住居を移したほうが良いと、ゲンドウたちとも意見が一致したのである。

 

 特にゲンドウにしてみれば、いくらユイに会うためとはいえ、彼女を操り人形にしようとしていた事実は、その後ろめたさがあまりにも大き過ぎた。

 

 その意味ではリツコも冬月も同罪であろう。

 

 そこでようやく時間が取れたシンジが、こうして迎えに来たのであった。

 

(……知識として知ってはいたが、やはりあの時もう少し弄ってやればよかったかな?)

 

 レイのあまりにも酷い居住環境にシンジの中のアダムが憤る。

 

 アダムは基本的に声に出す必要がない限り、こうしてシンジの中でしか話しかけてこないのだが、その憤りの感情はシンジにも伝わってしまうのだ。

 

(アダムさん。僕だって綾波のことは気にしていたんだからさ。まずはこうして迎えにこれたことを喜ぼうよ)

 

(……そうだな。リリス、いや綾波レイであったな。あの未来での彼女は補完されてしまい、そのせいで消滅してしまったのだから、今度こそそうならないようにしなくては)

 

 実はと言えば、アダムがシンジに憑依してゼーレの計画を阻もうとする最大の理由がそれであったのだ。

 

 しかし、同時にアダムは未だレイがリリスとは違うことを割り切れずにいた。

 

 リリスは肉体と魂を分割され、肉体の一部は初号機となり、その魂は綾波レイとして誕生してしまったがために、リリスと同一の存在とは言えなくなってしまっているのだ。

 

 なにより、リリスの記憶が継承されていないことが同一の存在ではないことを証明している。

 

 ちなみに、リリスが初号機の建造に使われ、その魂が分割されてしまったことに対して、アダムは意外なほど淡泊な反応を示している。

 

 アダム曰く『タブリスが言っていたであろう? 我らにとって生と死は同価値なのだよ』と。

 

 しかし、その後に続けて『だが、それは魂が融合・分離を果たすためのプロセスに過ぎないからであって、魂そのものが消滅してしまうなど看過できることではない』と語っていた。

 

 先ほども言ったが、それがアダムをしてシンジと融合し、逆行してまで計画の阻止に来た最大の理由なのである。

 

 一方のシンジも、最後の最後でゲンドウから離れ、シンジの所へと来てくれたレイには特別な感情を抱いていた。

 

 ……まぁあの巨大綾波レイのあまりの異様さに思わず拒絶してしまっていたが。

 

 そのことは、彼にとって大きな心の傷となっている。

 

 そんなシンジの心境を察したアダムは、彼に優しく語りかけた。

 

(シンジ。もうあの時のことは気にするなと言ったであろう? それに、それでも尚彼女のことを想い続けていてくれたことは私にとっても嬉しいことだと)

 

(うん……ありがとう、アダムさん)

 

(なに、礼になど不要だ。それにお前たちが結ばれてくれれば、それはすなわち、私とリリスが結ばれることと同義となるのだからな)

 

(気が早いですよ? アダムさん。まだそうと決まったわけではないですし、なにより、綾波の気持ちも考えてあげないと)

 

 内心でそんな会話を続けながら、建物の階段を登っていく。

 

 やがてたどり着いたのは『402号室』の番号が掲示されている一室。

 

 経年劣化のためか、その名札は少し傾いていた。

 

 シンジはそのドアの前で大きく深呼吸をする。どうやら思っていた以上に緊張している様だ。

 

(シンジ。言っておくが、たとえ綾波レイが裸で出てきてもいきなり襲うのは推奨できんぞ?)

 

(なっ!? 何を言うんですか! いきなり!)

 

 唐突な発言にシンジは面白いほどドアの前でうろたえる。

 

 達観したように見える彼も、どうやらレイに対してはそうでもなかったようだ。

 

(なぁに。以前のように押し倒してしまわないようにと、な?)

 

(う……ど、努力します)

 

 融合してしまったがために、シンジの記憶を読んだアダムには誤魔化しようが無いのである。

 

――コンコンコン

 

 しかし、そのお陰かシンジは落ち着いてドアのノックすることができた。

 

 どうやらアダムなりの気遣いだったようだ。

 

「ネルフから来ました。綾波レイさん? いらっしゃいますか?」

 

 いかにかつて知った相手ではあっても、この世界ではこれが初対面なのだ。

 

 まずは丁寧に挨拶する必要があるだろう。

 

 ……まぁレイにはあまり意味があるとは思えないことではあるが。

 

「……誰?」

 

 ガチャッとドアを開けたレイ。その紅い瞳には初めて見る相手への戸惑いが見て取れた。

 

 彼女のその様子に、シンジはにっこりと微笑みながら挨拶をする。

 

 ちなみに彼女はちゃんと制服を着ていた。まぁ学校帰りの時間なのだから当然なのかもしれないが、それは彼女が他に私服を持っていないからである。

 

「綾波さんですね? 僕は碇シンジ。先日サードチルドレンとして登録されました。よろしくお願いします」

 

「……サード……碇?」

 

「そう。ネルフ司令、碇ゲンドウの息子だよ。今日は君に報せることがあるから来たんだ……上がっていいかな?」

 

「……いいわ」

 

 そう言いながら奥へと誘う彼女の後姿に、シンジは『ようやく会えたね』と心で言葉を零した。

 

(……やっぱり変わってないな。なんだか懐かしいや)

 

(……そのようだな。だが……)

 

(どうしました?)

 

(いや、なんでもない。それよりも、済まぬがお前の要件より先に少しだけ私と話させてはくれまいか?)

 

(……分かりました)

 

 室内を見回しながらそう会話をすると、シンジは簡素なベッドに腰かけた。

 

 レイの部屋は打ちっぱなしのコンクリートの壁に、生活に必要最低限の家具しかなく、椅子すらないために他に腰かける場所が無かったからである。

 

「報せることって、何?」

 

 立ったままそう問いかけるレイであったが、その顔には未だ戸惑いがあることが見て取れる。

 

 どうやら彼女はシンジに何かを感じている様だ。

 

(たぶん、私が居るからだろうな)

 

(そうですね……)

 

 そんな話をしながらも、シンジはポンポンと座っているベッドの隣を叩いた。

 

「まぁ立ち話もなんだし、君も座りなよ。あぁ、ゴメンね? 許可も無く先に座ちゃって」

 

「別に構わないわ」

 

 そう言ってレイもシンジの隣に座る。

 

「えぇとね? 話の前にちょっと先に会わせたい人が居るんだ」

 

「会わせたい人?」

 

 シンジの言葉にレイはまだ誰か居るのかとドアの方を見るが、誰かが入ってくる気配はない。

 

「うん。この人だよ……」

 

 すると、シンジの眼が紅く染まる。その色はレイの眼と同じせあった。

 

「!?」

 

 彼のその眼を見た瞬間、レイは息を呑み、自らの紅い眼を丸くしてしまう。

 

 シンジの記憶においても、彼女がこれほどまでに驚くのはほとんど無かったことだ。

 

 そして、シンジの口から紡ぎ出されるのは相変わらず年齢不詳な男性の声……

 

「……初めましてだな。私の名はアダム。リリス、いや綾波レイよ」

 

「あ、アダム? ……使徒?」

 

「そうだ。……一つだけ聞かせて欲しい。お前にリリスとしての記憶があるのか?」

 

「リリス? ……いえ、分からないわ」

 

 彼女の返答にアダムはため息を吐く。やはりリリスとは違うのだと。

 

(アダムさん……)

 

(いや、これでいい。……スマンな。これでようやく吹っ切れそうだ)

 

(そうですか……では、この後の説明は僕がしましょうか?)

 

(いや、それには及ばん。私から話そう)

 

(分かりました)

 

 未だに驚き、狼狽する様子を見せるレイを余所に、シンジとアダムは内心で話を進める。

 

「済まぬな。お前がリリスと同一の存在ではないと頭では分かっていたのだが……」

 

「サードチルドレンがアダム……? でも、どうして使徒が……」

 

「ウム。それについて説明するから黙って聞いてはもらえぬか? 少し長い話になるのでね」

 

「……分かったわ」

 

 レイは戸惑いながらもシンジの紅い瞳から目を逸らせないのか、言われるがままに頷いた。

 

 そこからアダムが語ったのはゲンドウたちとほぼ同じ内容なのだが……

 

「――という訳でな。私はシンジと融合し、未来から魂だけを逆行させたのだよ」

 

 と、未来から来たことまで告げたのだ。

 

(よかったんですか? そこまで教えて)

 

(構わん。どの道、いずれかのタイミングで彼らにも教えるつもりだったのだ。それに……)

 

(それに?)

 

(私は彼女にだけは嘘をつきたくはないのでな)

 

(……分かります。僕も同意見ですから)

 

(ならば最初から聞くでないわ)

 

(ハハ、すみません)

 

(まぁよい。後は任せたぞ)

 

 二人はそう言葉を交わした後、アダムが引っ込みシンジが表に出てきた。

 

 そもそも、アダムが憑依したことすらゲンドウたちにとっては驚天動地のことなのだ。内密にしようとしたのは、余計な混乱を避けるためのものだけでしかない。

 

 時期が来ればいずれネタバレするつもりでいたのである。

 

「……大丈夫? 疲れてない?」

 

 シンジがそう優しく語りかける。実際、結構長い話だったのだ。彼女の中で消化しきれるまでしばらくはかかるはずであろう。

 

「え、えぇ……貴方、碇君なの?」

 

「そうだよ。アダムさんとは魂が融合してるけど、同化した訳じゃないからね。だからアダムさんが出てきたときは眼が紅くなるんだ」

 

 そう言いながらも、レイから久しぶりに『碇君』と呼んでもらえたことにシンジは喜びを覚えていた。

 

 だが……

 

「できればシンジって呼んで欲しいな。僕もレイって呼ぶからさ」

 

「わかったわ。シンジ君」

 

 いくら逆行前と同一の存在であるとはいえ、今の彼女と同じではないのだ。

 

 だから、お互いを名前で呼び合おうと提案したのは、彼女と新たな関係を築こうとするシンジなりの決意表明であったのである。

 

「それじゃレイ。僕と友達になろう。よろしくね」

 

 そう言って右手を差し出すシンジ。

 

「友達……? 同じチルドレンだから?」

 

「違うよ。それとは関係なくレイと友達になりたいんだ」

 

「友達……他人同士が結ぶ絆……」

 

 今はまだあの零号機の起動実験は行われていなかったため、ゲンドウとの間に絆が結ばれているとは言えなかった。

 

 それでもゲンドウの言いなりであったことに違いは無いのだが……

 

 シンジもアダムも、あの実験の暴走事故は故意に行われたのではないかと睨んでいる。

 

 そもそも、救助班が助けに来る前に、制御室に居たゲンドウが先に来れる訳が無ないのだ。

 

 まず間違いなく、レイを思うようにコントロールするための布石であったのだろう。

 

 だからこそ、シンジとアダムは逆行する時期をこの時点にしたのである。

 

 尚、やろうと思えばシンジが生まれた時点にまで逆行することもできた。

 

 まぁ過去のシンジを逆行の基点としている以上、更に過去までは遡れないのだが。

 

 しかし、それだと過去の自分を完全に塗り潰してしまうし、それはユイがエヴァに取り込まれてしまった、まだ物心もつかない時点でも同じであろう。

 

 シンジの自我が確立し、レイがまだゲンドウに完全に取り込まれていない時期であり、尚且つ逆行したことをネルフに怪しまれないようにするためにはこの時点が最適だったのである。

 

 何故そうしたのかといえば、シンジは逆行憑依を過去の自分を塗り変えてしまう、一種の殺人ではないかと思っている。

 

 しかし、逆行しなければ、またあの紅い海になってしまう。

 

 だからこそ、未来のシンジとしてはお互いが納得した上で魂の融合を果たしたかったのだ。

 

 これは、彼自身の我儘でもあった。

 

 アダムとシンジに、最初から逆行しないという選択肢がない以上、せめて過去の自分が納得する形にしたかったのだ。

 

 そして、過去の自分はそのことも(・・・・・)含め、全て納得してくれたのである。

 

 その証拠に、今のシンジはどちらが未来でどちらが過去の自分なのか、最早アダムでも判別がつかなくなるほど融合してしまっている。

 

 シンジとしては、その過去の自分の期待に応えるためにも、絶対に誰しもが幸せになれる結末を目指すことを新たに誓っていた。

 

 ま、その“誰しも”にゼーレや、自分の家族や仲間を襲う敵対者は含まれてはいないのだが。

 

 ちなみに、ゲンドウたちがレイに行おうとした所業の罪を問うつもりは無かった。

 

 過去のことについてはこれから償わせれば良いし、なにより、自分たちが逆行する時期をこの時点にした以上、まだしてもいない罪を問うのはお門違いであろうというのがその根拠である。

 

 そのことは、アダムも同意していた。

 

「……よ、よろしく」

 

 と、レイはシンジの差し出された手を握り返す。

 

「うん。こちらこそよろしく」

 

 これにシンジは最上級の微笑みで返す。

 

(……あたたかい。それに、彼に笑顔を見ると胸がポカポカしてくる)

 

 元々、シンジは母親似の中性的な顔立ちである。

 

 以前は内向的な性格からその容姿をほとんど活かせないでいたが、未来を知り、ある意味色々と吹っ切れた彼の笑顔は破壊力抜群であった。

 

(……これが……友達、絆……)

 

 一方のシンジは、手を握りながらわずかに笑みを浮かべるレイに萌えていた。

 

(あー、可愛いなぁ。第五使徒を倒した後のあの笑顔も良かったけど、こっちも良いねぇ)

 

 と、そんなシンジにレイが問い掛けてくる。

 

「シンジ君。どうしたの? 私の顔をジッと見て」

 

「ん? いや、レイってかわいいなぁっと思ってね」

 

「な、何を言うのよ……」

 

(ぐっは!? か、かわいすぎる!!)

 

 照れくさそうに俯きながら頬を赤らめるレイにシンジが悶えていると、それまで静観していたアダムが話しかけてきた。

 

(シンジ……襲うなよ?)

 

(だ、だからしませんって!!)

 

 そう言い返しながらも、今後もこのネタでからかわれるんだろうなぁと、シンジは確信めいたものを感じるのであった。

 

 

 尚、そのことで引っ越しの件を伝え忘れてそのまま帰ろうとしてしまい、更にアダムから突っ込まれたのは完全に余談である。

 

 




はい。今回はここまでです。

レイを可愛く書きたかったんですが……

文才の無さが悔やまれます。




マナとマユミはどうするかはまだ決めてません。
特にマユミはほとんど印象に残ってませんので(汗)
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