Qが酷すぎたので旧作でハッピーエンドを目指してみた   作:納豆御飯

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はい。第四話です。

実はと言うと、リツコさん、結構好きなキャラなんですよね。





第4話

 

「これより零号機の起動実験を開始する」

 

 制御室でゲンドウが厳かに宣言すると、リツコを筆頭としたスタッフたちがコンソールを操作し始めた。

 

 本来の歴史では、ここでレイとの間に絆を結ばせるための仕掛けを施していたのだが、最早その必要が無くなり、起動実験は通常のまま行われている。

 

「レイ。落ち着いてやれば大丈夫だよ」

 

 零号機に搭乗しているレイにシンジが穏やかな声で話しかけた。

 

『うん。大丈夫だから、見てて。シンジ君』

 

 レイもそう言って微笑みを返す。

 

「レイちゃん、落ち着いてますね。シンジ君が来てから変わったみたいですし」

 

 そんなレイの様子を見て、リツコの助手を務める伊吹マヤがリツコに話しかけた。

 

「そうね……やっぱり子供は子供同士ということでしょうね」

 

 事の真相を知らないマヤに教える訳にもいかないリツコとしては、そういう一般論で返すしかないのだが。

 

「それだけじゃないですよ。今、スタッフの間ではレイちゃんの人気がうなぎ上りですし」

 

 実際、元が超が付くほどの美少女であるレイには幾人かのファンが居たのだが、シンジに見せるあの微笑みに多くのスタッフが虜になってしまっているのだ。

 

「マヤ? どうもスタッフの間でレイの映像が出回ってるみたいだけど……貴女まさか?」

 

「え!? あ、いや、あの……せ、先輩。今はそれどころじゃないと思います!」

 

(逃げたわね……)

 

 このネルフの心臓部とも言えるスーパーコンピュータ、通称MAGIにアクセスできる権限があるスタッフなど限られるのだ。

 

 どうせマヤが監視カメラの映像を拡散しているだろうと、追及を免れるためにコンソールに集中している彼女をリツコはジト目で見ながら後で追及してやろうと心に決める。

 

 そんな彼女に隣に立って見ていたシンジが声をかけた。

 

「まぁいいじゃないですか、リツコさん。マヤさんも悪気があった訳じゃないでしょうし。それよりも、成功したら何かお祝いでもしましょう」

 

「……貴方は成功すると信じているのね?」

 

「勿論です……アダムさんも居ますしね」

 

 シンジは言葉の後半を小声でそう言うと、正面の窓ガラスに視線を戻す。

 

「貴方ね、そういうことは滅多に言っちゃダメでしょ」

 

 リツコも小声で返すが、その眼は本気で咎めているようには見えない。

 

 小声でそんなやり取りをしているマヤは不思議そうに二人を見る。

 

(何を言ってるか分かんないけど……先輩、シンジ君が来てから変わったなぁ。すっごく落ち着いた感じになってるし)

 

 正直、彼女としては先輩として尊敬してはいるものの、以前はどこか近寄りがたいところがあったリツコに親近感を覚えていたのだ。

 

 そして、変わったと言えば……

 

「父さんは何が良いです? 僕が作りますよ?」

 

「……そうだな。レイは肉が苦手だし、魚料理がいいだろう」

 

「分かった。煮魚にしてみるね。冬月先生は?」

 

「シンジ君、今は実験中だぞ? ……まぁ、君に任せるよ」

 

 と、ゲンドウはメガネをクイッと片手で上げながら穏やかな声でそう返事をしていたし、冬月など苦笑しながら注意はしたものの、それだけなのだ。

 

 以前では考えられない事である。

 

(司令はサングラスを止めてからすごく穏やかになってるし、副司令も笑顔を見せるようになったし……やっぱりシンジ君のお陰なのかな?)

 

 マヤはコンソールを操作しつつモニターの変化にも注意を払っているものの、司令部の三人の変化に驚きを隠せないでいる。

 

 彼女のその思いは彼女だけではなく、ネルフのスタッフ全員が感じていることであった。

 

 しかし、マヤも含めて全員がその変化を好意的に捉えている。

 

 お陰でこの起動実験も過度な緊張などは無く、ほどよい緊張感のまま行うことが出来た。

 

「主電源接続」

 

「動力伝達」

 

「第二次接続に入ります、A10神経接続異常なし」

 

「思考原則を日本語でフィックス、初期コンタクトすべて問題なし」

 

「これより、双方向回路開きます」

 

 オペレータースタッフたちが次々とモニターの情報を読み上げていく。

 

「パルス及びハーモニクス正常」

 

「シンクロ問題なし」

 

「オールナーブリンク終了。中枢神経素子に異状なし」

 

「1から2590までのリストクリア」

 

「絶対境界線まで、あと2.5……1.7……1.2……1.0」

 

 そして、起動までのカウントが進み……

 

「0.3……0.2……0.1突破っ!ボーダーラインクリア、零号機起動しました!!」

 

 その報告と同時に、零号機の単眼が光を放った。

 

「シンクロ率53.72%! 成功です!!」

 

「おおおおおおおおおお!!!」

 

 最後にマヤが実験の成功を告げると、スタッフ全員が立ち上がり、歓声を上げる。

 

 そしてパチパチパチと歓声が拍手へと変わり、隣のスタッフ同士で握手をしたり、ハイタッチをしたりする姿があちこちで見られるのだった。

 

 そこに最前列で零号機を見ていたゲンドウが振り返ると、しだいにスタッフたちの歓喜の声が収まっていく。

 

 なんだかんだ言ってもやはりゲンドウはこのネルフのトップなのだ。

 

 その威厳とカリスマ性は誰しもが無視しえない存在感を放っている。

 

「……諸君、よくやってくれた。この成功はココに居る全員の努力のたまものだ。本日の食堂のメニューは全て私からの奢りだ。飲酒も許可する。大いに騒ぎたまえ」

 

「うおおおおおおおおおお!!?!?!」

 

 ぶっちゃけ、さっきよりも大きな歓声である。

 

 そして、その歓声には驚きの成分が多分に含まれていた。

 

 それほどゲンドウが言ったことが意外だったのだろう。

 

 まぁそれも当然である。

 

 なにしろ、彼が今までそのようにスタッフの士気を鼓舞するようなことなどしてこなかったのだから。

 

 そこへ更に爆弾が投下される。

 

「あぁ、外から購入した酒類の領収書は全部私に回すように経理に言っておいてくれ。そっちは私からの奢りだ」

 

 と、副司令の冬月が経費にではなく、自分の懐からの奢りだと告げたのだ。

 

「ぅおっしゃああああああああああああ!!!!!!」

 

 これまでで最大の歓声が上がる。

 

 それも無理はないであろう。当たり前の話だが、基本的にネルフの食堂は飲酒禁止だ。

 

 ネルフ本部の食堂は街の飲食店に比べても非常にレベルが高く、メニューも豊富ときている。

 

 そこで飲めや歌えの大騒ぎが出来るなど、今まで一度として無かったことなのだから。

 

「冬月……ズルいぞ」

 

「なぁに。お前にだけ良い恰好はさせられんからな」

 

 トップの二人がそんなやり取りをしていると、リツコがパンパンと手を叩き、場を静める。

 

「はいはい。騒ぐのは後でいくらでも出来るわ。まずは後片付けでしょ? それに成功した事を労う相手はレイよ? 少しはシンジ君を見習いなさい」

 

「赤木君。シンジは?」

 

 そのシンジがいつの間にか居なくなっていることに気付いたゲンドウがリツコに尋ねる。

 

「あそこですよ」

 

 と、リツコが指さしたのは窓の外。零号機の搭乗口となるタラップであった。

 

 それを見たスタッフたちは慌ててコンソールに飛び付く。

 

 いくら暴走しなかったとはいえ、エヴァの大きさは40mに達するのだ。

 

 そんな動く巨人の側に貴重なチルドレンを置いておくのは危険すぎた。

 

「ちょっとシンジ君!? 危ないわよ!」

 

 マヤがそう注意するものの、シンジはどこ吹く風と言わんばかりに返事をする。

 

『大丈夫ですよ。なにしろレイが操縦しているんですから』

 

 と、とても根拠とは言えない根拠を口にするのだ。

 

 これにはマヤも開いた口が塞がらなくなってしまった。

 

『だから大丈夫ですって。ホラ、レイ!』

 

 そう言って零号機に向かって手を振ると、なんと零号機も彼を見て手を振り返したのである。

 

「おおおお~~」

 

 これにはスタッフたちも感嘆の声を上げた。

 

 なにせ、エヴァが動いたところを見るのはこれが初めてなのだ。

 

 更に、モニターに映し出されているレイも同じように手を振っている。

 

「シンクロの方も問題なさそうね」

 

「そうですね。レイちゃん、これが初めてのシンクロなのにすごいシンクロ率ですよ。初めてで53%ものシンクロ率って、ドイツのセカンドチルドレンを超えていませんか?」

 

「そうね。これでドイツの人たちから大きな顔をされることも無くなるわ」

 

 実際、セカンドチルドレンであるアスカのシンクロ率は現在60%前後である。

 

 ならば初めての頃はそれよりも低かったはずであった。

 

「レイ、お疲れ様。零号機を元の位置に戻したら上がっていいわよ」

 

『了解しました』

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「お疲れ様。レイ」

 

 そう言ってシンジは手にしたタオルをレイに渡す。

 

 レイも「あ、ありがとう」と言いながらタオルを受け取り、LCLで濡れた頭を拭き始めた。

 

 そんなレイを微笑まし気に見ていたシンジは小声で話しかける。

 

「……アダムさんからのアドバイス、参考になった?」

 

「……えぇ。あの中に居るのは最初の私だったわ」

 

 そう。零号機のコアに居るのは、ナオコに絞殺された最初の綾波レイだったのだ。

 

 そのことをアダムから告げられ、シンクロするときは語りかけてみるようにとアドバイスされていた。

 

 だからこそ、初回でこれほどのシンクロ率を叩き出したのである。

 

 あとはシンクロを重ねていけば、いずれはアスカのシンクロ率を超えるだろう。

 

 ちなみに、逆行の事は秘密にしておくようにとシンジに言われている。

 

 『僕とレイだけの秘密だよ?』と言われて、レイは頬を赤くしながら『秘密……友達との秘密……二人だけの……』と、なにやらトリップしたいたようではあるが。

 

 尚、その時は『私も居るのだがな……』と、アダムがシンジの中で突っ込みを入れたが、さすがに空気を読んだのか、表に出て言うことはなかった。

 

「いずれあの零号機や、地下のクローンたちに残ったわずかな魂たちも全てレイに戻すつもりだが、今はまだゼーレの目を誤魔化すためにもそのままにしておかねばならん……済まぬな」

 

 と、そこにそのアダムが表に出てきてレイに小声で詫びる。

 

 シンジはレイに向いているので背後の整備スタッフや制御室からは見えないため、シンジの紅い眼が見られる心配はなかった。

 

 施設内の監視カメラの位置もちゃんと把握しているので、表に出てきたのだろう。

 

「……いいえ、大丈夫です。アダムさんを信じてますから」

 

「……そうか」

 

 アダムはそう返事をすると、後は任せたとばかりにシンジと変わる。

 

「さ、シャワーを浴びて着替えて来てね。今夜はお祝いに父さんたちと一緒に食事をすることになってるから」

 

「司令たちと? ……うん、わかった」

 

 レイはそう返事をすると、何故かシンジの手をぎゅっと握る。

 

「……あの、レイさん? ひょっとして一緒にシャワー室に行こうってことかな?」

 

「……ダメ?」

 

 レイは逆の手で拳を作り、手首を顎の前にあて、更には上目遣いに小首を傾げるという、いわゆる“萌え”ポーズをシンジにして見せた。

 

(ぐはぁっ!? ちょ、レイってば何時の間にそんな高等技術を!?)

 

 唐突なレイの不意打ちに、シンジは内心で萌えに悶えまくる。

 

 それでいて、表情には一切出さないようにするなど、なんとも器用なことをするものだ。

 

「れ、レイ? それって誰に教わったの?」

 

 しかし、そう尋ねる声の方は少々上ずっていた。

 

 やはりレイに関しては冷静になり切れていないあたり、シンジがどれだけレイを気にかけているのかが窺える。

 

「? ……赤木博士。こうするとシンジ君が喜ぶからって」

 

(り、リツコさーーーーーーーん!?!?)

 

 シンジが思わず背後を振り返り、制御室に居るリツコを見ると、彼女はこちらにニッコリと微笑みながらレイに対して拳に親指を“グッ”と立てる、いわゆる”グッジョブ”のサインを送った。

 

 すると、レイもそれを見て同じく“グッ”とサインを返す。

 

 ……分からないふりをしていて、実は分かっているのではないだろうか?

 

 どうやらシンジに関しては、レイが弱点だとリツコには見抜かれているようだ。

 

 更に、背後に居た整備班のスタッフたちが「ヒュ―! ヒュー!」とまくし立てている。

 

 まぁ彼らは単に冷やかしているだけであろうが。

 

「あー、もう! ……レイ、行くよ!」

 

「うん!」

 

 と、シンジがレイの手を取ったままタラップを走り抜けていく。

 

 その背中に整備班から「うまくやれよー!」だの「がんばれ青少年!」だのといった声援(?)を受けながら。

 

『ほら! 貴方たちも、早く零号機のチェックを済ませるわよ! 終わらないと打ち上げできないんですからね!』

 

 そこにリツコの叱責が飛ぶ。

 

「ウィっス!!」

 

 整備班もそれに応えて慌ただしく動き出す。

 

 彼らの顔にはやり遂げたという満足感が溢れていた。

 

「まったく……浮かれ過ぎね。来週には初号機の起動実験の予定が組まれているっていうのに」

 

 レイにいらぬことを吹き込んでおきながらこの言い草はどうかと思うのだが、それを気にする者は誰も居なかったりする。

 

 むしろ、『いいぞもっとやれ』と思ってすらいる節があるくらいであった。

 

「いいじゃないですか、先輩。レイちゃんも嬉しそうだったし。それに、シンジ君が来てからネルフの雰囲気が明るくなりましたから、きっと初号機も成功すると思いますよ?」

 

「マヤまで……まぁいいわ。士気が高いに越したことはないし。でも、油断は禁物よ?」

 

「はい、先輩!」

 

 マヤの元気な返事を聞きながら、リツコはシンジがレイを伴ってネルフに連れ帰ってきた日を思い返していた。

 

 その日のことは決して忘れられないであろう。

 

 それこそ、シンジがアダムに憑依して現れた日と同じくらいに。

 

 その時も、シンジがさっきと同じようにレイと手を繋いで指令室へと来ていたのだが……

 

 なんと、そのレイに向かってゲンドウや冬月と三人で並び、頭を下げて謝罪したのだ。

 

 ゲンドウも『済まなかった』と心の底から絞り出すような声でレイに謝っていた。

 

 それも、体を斜め45度に曲げる、いわゆる“最敬礼”の形で。

 

 ゲンドウとしては土下座するつもりであったくらいなのだが、冬月から『それはさすがに引かれるだけだぞ』と窘められ、この形にしたのだった。

 

 尚、その時のゲンドウの左頬は何故か赤く腫れていたりする。

 

 シンジがレイの所に行っている間に、何やらリツコと二人だけで話し合っていたらしいのだが、何があったのかは……それは二人だけの秘密であろう。

 

 それからは、レイはシンジの隣の部屋に住むようになった。

 

 尤も、プライベートの時以外はほとんどの時間、シンジにべったり引っ付いているのだが。

 

 それはそれで、別の問題が発生しそうではあるが……

 

 そこはアダムが『私が一緒に居るのだぞ? 問題など起きんし起こさせなどせんよ』とゲンドウたちに太鼓判を押しているため、安心してレイの好きにさせていたりする。

 

 ゲンドウなど、冬月に『……孫の名前を考えるべきか?』と言い放ち、彼を呆れさせていた。

 

 まぁその冬月にいしても、『孫、か……』と口元を綻ばせていたりするのだが。

 

 そして、レイに対してあまり良いとは言えない感情を抱いていたリツコ自身、自分の心境の変化に自分で呆れてさえいた。

 

 あれほどレイに固執する態度を見せていたゲンドウに、面白くないという負の感情を抱いていたクセに、である。

 

(……ホント、ロジックじゃないわね)

 

 と、既にレイに対して妹を見るような眼になってしまっている自身を皮肉る。

 

「さっ! 急いで済ませましょう。でないと食堂の食材を食べ尽くされるかもしれないわよ!」

 

「イエッサー!」

 

 スタッフ一同の気合の入った返事に、リツコは苦笑を浮かべながら指揮を執るのであった。

 

 ちなみに、ゲンドウと冬月はいつの間にか揃って姿を消していたりする。

 

 おそらく、レイを労うための食事会の準備をしに行ったのであろう。

 

 そういうことには抜け目のない二人であった。

 

 

 尚、シャワー室にレイと向かったシンジの身に何があったかは……

 

 

 彼自身の名誉のためにも、そこは部外秘とさせていただく。

 

 




はい。今回はここまでです。

いやぁ、やっぱ好きだわ、リツコさん。



……書き易いし(ボソ)



そろと、申し訳ありませんが、少々リアルで多忙が続くため、次回の投稿は未定になりそうです。

何卒ご了承ください。




追記:こちらも『赤城』になってましたので『赤木』に修正しました。

好きと言っておきながらコレとは……セプク案件かな?
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