新たな異能   作:perusonazuki

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2 保護

「まったく、恐ろしいよ」

 

 白髪の髪を持った紅い瞳を持ち、ブレザーを着てひざ下までのスカートをはいた少女をみて僕はつぶやいた。

 少女はどうやら『浸透する呪力性質』を持っているみたいで、建物全体に少女の呪力が馴染んでいるためビルにたたきつけるのも立派な攻撃になる。だから呪霊をビルに叩き続けるのは良い。問題は次だ。それだけで十分なのにわざわざ爪をはがし続けたり呪力を浸透させた砂利やコンクリートにぐしゃぐしゃにした足をすり潰すなどの拷問を続けること。それが一番の狂気であり、恐ろしいと思った点であった。

 

 そんな異常性を持つ少女の術式を確認するため、包帯の目隠しを外し六眼を(あらわ)にして少女を()る。

 

術式が刻まれる前(わかるまえ)にしかあったことなかったけど、『刻延呪術(こくえんじゅじゅつ)』か。五条家(ウチ)の相伝だからもしかしたらって思ったけど持ってるみたいだね。しかも準一級相当の二級呪霊を一方的になぶってる」

 

 思考をめぐらしながら少女を観察する。どうやら呪霊の呪力がもう底についたようで、再生しなくなったようだ。

 

「ナンで?」

 

 呪霊の帰り血で汚れた少女は無邪気な子供のように問いかけた。

 しかし、呪霊はもう答えることすらできない。なぜなら舌が引き抜かれ、鼻は折られており、足がちぎられて翼は一枚すらなく、触手も引き抜かれ胴体に無数の穴が開いているのだ。

 

「じゃア、モウイラナイ

 

 少女はそう告げるとともに、足で呪霊の頭をつぶしたのだった。それと同時に辺り一帯を覆っていた夜の空間を生み出す帳は砕け散り、辺りは夕暮れ時になった。

 引き裂けそうな笑顔と歪んだ眼であたりを確認し、悪魔のような笑い声をあげた。

 

「帳は僕の姪がやったやつじゃないか」

 

 そう呟き、少女の真横に瞬間移動する。

 

「やっ」

ダレ?

「あ~、やっぱりね」

 

 そう呟くと同時に少女の振りかぶった拳が、僕の無下限によって止まる。

 

「正気じゃなくなってる。発狂状態だ」

「アタラナイ」

 

 少女は距離を取り、僕を歪んだ瞳でにらみつける。

 

「仕方ないか。

 僕の術式、『無下限呪術』は無限を現実に持ってくるんだ。その 結果空間を掌握し、支配することができる。

 基礎的(ニュートラル)な無下限術式。これは僕に近づけば近づくほどその物体の速度が遅くなっていって、結果的に僕に到達することは無くなる。

 そして『術式順転・蒼』。これはニュートラルな無下限術式に強く呪力を流し込んで強化したものでマイナスの空間を作ることにより、収束する反応を生み出す。

 続いて『術式反転・赫』。これは術式に反転術式によって生み出された正の呪力を術式に流し込んだ結果収束の逆。発散の効果が生まれる。

 最後は『虚式・紫』これは『蒼』と『赫』を混ぜた結果生まれる仮想の質量に、指向性を持たせて放つ技」

 

 少女は本能で危機を察したのか、歪んだ瞳を淡く光らせ術式を発動させた。

 少女と僕の間に黒い壁を作り出し、後方に大きく飛びはねビルの壁を豆腐のように破壊し、ビルの中に隠れる。

 その様子を確認した僕は人差し指を掲げ、僕の指先に赫い光を集約させる。

 

「で、僕が今から繰り出すのは、『術式反転・赫』

 

 僕の指から放たれた赫き閃光は、そのまま壁に激突した。しかし、『赫』が炸裂することは無い。

 

「『刻延呪術』。この呪術は僕の『無下限呪術』と同様、無限を現実に持ってくる呪術。だけど、無限を現実に持ってくることによって掌握、支配するのは空間ではなく時間。

 基礎的(ニュートラル)な運用だと局所的に時間を遅くする。だけど、順転になると話は変わる。

 局所的な時間停止。出力によって停止する範囲は変わるけど高い出力の順転は僕の無下限すら突破して止める。視た感じ暴走状態とはいえ七海以上の出力はありそうだから縛りで対策できないかなって思ったけどやっぱり術式効果の対象は変わらないか」

 

 僕が考え事をしていると僕の力を見誤ったのか、少女は黒い壁を消し去り僕にとびかかった。

 

ア゛ッ゛

「だけど」

 

 勢いのままとびかかる少女に『蒼』を織り交ぜたパンチを腹部に叩き込む。その一撃で少女は胃の内容物を口から吐き出しながら気絶して重力に身を任せて地面に落下した。

 

「暴走してる、つまり自我がない状態ではそれを活かせない...ん?」

 

 僕が気づいたのはすぐ近くにあった首無しのぐちゃぐちゃ死体だった。

 見たところ、ただの一般人だ。そして、少女は誰なのかすらもわからなくなった頭だけは気絶してもなお絶対に放そうとせず左手で抱きかかえ続けている。

 

「友達か」

 

 友達を失う悲しさは、僕も経験している。しかし、これほどは錯乱しなかった。

 

「余程仲が良かったんだな」

 

 そう僕は呟き、高専に少女をつれて瞬間移動したのだった。

 


 

 いつの間にか失っていた意識が回復した。私の瞳に移る景色は見慣れない物だった。

 というか、見慣れている方がおかしいといっていい。なぜなら、半径5mほどの部屋の壁一面に札が張られており天井からも札がぶら下がっていてまるで創作物でなにかを封印するようなための部屋だった。

 そこで私は今、椅子に座らされている。端的に言えばエッチなやつの撮影現場みたいになっていた。

 

「どこだここ?」

 

 思考をめぐらし、ここを脱出しようと体を動かそうとした。

 しかし、体は動かなかった。要因は二つある。

 まず第一にお腹を襲う激痛、そして第二に私の両腕が椅子の後ろで拘束させられていたからだ。後方約2mに等間隔で杭が刺されており、そこから私の両腕を二本の縄が拘束している。もちろんお札もついてだ。

 

「あ、僕が来る前に起きてたか」

「え」

 

 目の前にいた白髪の男が呟いた。

 先ほどまではいなかったはずだ。今ここにやってきたのか、しかし入るところは目撃していない。

 

「あ、今考えてることわかるよ、どうやって入ったかでしょ?それはね~」

 

 白髪の男はもったいぶるように、語尾を伸ばした。その男に対する私の反応はどんな馬鹿でもわかるもので、不審者を見る目だった。この男はそれに気づいたようで、包帯越しでもわかるように顔をしかめる。

 

「...ごめん。まあ、知らなくてもいっか。

 僕は、東京都立呪術高等専門学校、いわやる呪術高専の教師をしてる五条悟。君の叔父さ。

 で、君...『死刑』ね」

 

「は?」

 

 私はたぶん、クソでかい声が出たと思う。でかすぎる情報に頭が追い付いていない。

 この五条とかいう白髪の男が私の叔父で、その叔父が私に直々に死刑宣言。だめだ、深く考えても思考がまとまらない。

 そもそも、この白い包帯で目を隠していてまるで自分が不審者ですよとアピールしているかのような服装をしているこの男が私の叔父であることがでかすぎる情報なのに、これに追加で私は死刑。脳がショートしそうだ。

 

「ま、僕が取り消したんだけどね」

 

「は?」

 

 この男は何なのだ?

 

「ごめんって」

 

 どうやら私の考えは顔に出ていたらしく、人を殺せそうなほどの形相をしていたみたいだ。その様子に白髪の男は平謝りし、軽薄に謝罪する。

 

(あれ?なんで目隠ししてんのに私の表情がわかるんだ?まあいいや)

 

「謝るなら態度変えたほうがいいですよ。あ、そういえばですが...なんで私はこんなA〇みたいな状況になってるんですか?」

「女子中学生なのになんでそんな言い方なのかはおいておくとして...君、暴れてた時の記憶ある?」

「暴れてた?」

「やっぱりないか。まあ、僕が見つけなかったら勢いのまま街を更地にしそうな勢いで暴れてたからね、上層部(うえ)は君を恐れて死刑にし、僕に処刑を任せたってわけ」

「でも、さっき取り消したって言いましたよね?」

「上層部に取引したんだ」

「取引?」

「ああ、君才能あるから、次目を覚ました時に自我を取り戻してなかった場合は僕がその場で処刑。取り戻していた場合は次暴走した時に僕が殺すってね」

「それって結局死ぬんじゃないですかね?」

「暴れなければいいんだよ。暴れなきゃ」

「そもそも、なんで暴れたんですか?それに私に町を更地にするような力なんてないと思いますけど」

「え、暴れた理由がわからないって質問は来ると思ってたけど...自分に力はない?」

 

 五条とかいう白髪の男は困ったように問いかけてきた。その問いに対して、私は身をよじらせ、縄をほどこうとしながら答える。

 

「そもそも、私はアルビノに生まれて小学一年生にすら負ける糞雑魚な体なので暴れてたといっても子供にボコされて終わると思うんですど」

 

「...呪力って知ってる?」

「なんですかその厨二病が考えそうなのは?」

「...」

 

 五条は私の言葉を聞くとともに、とても面倒くさそうだとでも言いたそうな表情を浮かべ、天を仰いだ。

 

「はあ、どれから話すべきか...あ、そっか。だから肉体の呪力強化が下手くそだったのか」

 

 五条はそう呟くと、まあいいやとつぶやき宣言した。

 

「君、確か今中二だよね?」

「なんかさっきの話の後だと私が中二病みたいですが、今中学二年生です」

「なら、君はこれから1年ぐらい、僕と一緒に住むことになるから」

 

「え、やだ」

 

 わたしは即答した。その即答に五条は笑いながら話した。

 

「ふふ、ごめんごめん。けど、これはもうどうしもうないんだ。僕が務めてる高専に君が入るまで、どこでいつ暴走しても大丈夫なように僕が四六時中見張っている必要がある。ごめんね、ただ君が学校に行く時間・友達と遊ぶ時間は絶対に確保できる」

 

 その五条の言葉にため息を吐きながら、私は答えた。

 

「わかりました。で、それでなんですけど私の友人である天崎を知りませんか?」

 

 その問いかけに、五条は何も返さなかった。

 

「え?」

 

 何も返さない。その意味が、理解できてしまった。

 

「うそ」

 

 私の心に、喪失感とも、悲しみとも、何とも言えない感情が沸き上がる。しかし、私が抱いたこの感情には既視感があった。

 

 その様子を確認した五条がポッケから何かを取り出した。

 その何かは、赤く血濡れたパンダのキーホルダー。これは私が天崎と一緒に旅行した時に買ってやったものと血濡れていること以外同じだった。

 


 

(縛りで見せないといけないとはいえ、これで暴走したら処刑(ころ)さないといけなくなる...どうだ?)

 

 僕はそう思考し、わざと遺品を取り出した。その遺品を見た瞬間、僕の姪は目を歪ませて淡く光らせた。

 

(起こりを視るまでもない、術式発動の合図...というか、呪力を認識してないのに無意識に術式を発動してるのか。悪癖だな。ここは直す必要がある。

 で、どうなる?)

 

 僕の姪は、時空の流れを観測する機能がある刻眼(赤い瞳)を見開き、その遺品が本物であるかを確認した。

 

「ちょっと、まだ実感がないですね...けど、感覚と記憶でこれが天崎のものだというのはわかりました」

 

 その言葉を確認した僕は、暴走していないという事実に笑みがこぼれそうになるがそれを我慢し告げる。

 

「じゃあ、君は今から僕が預かることになるよ。

 これからよろしくね」

 

 僕はそう言って手を差し伸べた。

 

「あの~、握手するなら縄ほどいてくれません?ずっとA〇みたいな姿勢でいるの疲れたんですが...」

「あ、ごめんごめん。縛られてるの忘れてた。で、女子中学生でその言葉使いはやめなさい」




 さーて、なんで中学二年生にしたんだ?中三か高一でよかったくね?
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