植物採取の仕事は、非常に困難な仕事として知られている。
私は手掛かりの書かれた紙をジッと見ながら、下を向いて歩き、歩き……歩き、何も見つからず円形に回ってスタート地点に戻ってきた。
だぁー!
わかんない!
草なんて全部同じでしょー!?
どれがどう違うっていうんだ!!
くっ、この依頼! あまりにも難しすぎる。
これがゲームだったら、目当ての草が光ってるのに、そういうアシスト機能は無いんですかっ!?
私は周囲をきょろきょろと見渡すが、光っている草は無かった。
おのれ……草。
てか、冒険者組合の人もさ。なんでこんな難しい依頼をやれって言ってくるんだ。
人の心は無いんか……?
このままでは依頼が失敗してしまう。
「あー! 見つけたー!」
「へへっ、ぼくもぼくもー!」
「しーらさま! みつけた!」
「皆さん、凄いですね。私は全然です」
「そうなの?」
「じゃあ、ぼくらが代わりに見つけるから、シーラ様は休んでて!」
あぁ。
あぁ……子供たちが天使。
正直これだよと見せられた草も違いがよく分からないけど、全員同じ認識でこれだという物を持っている様だから、おそらくは正しいのだろう。
つまり、今日も今日とて子供たちに助けられながら私は生きています。
情けない大人ですまない。すまない。
しかし、このまま子供に甘えっぱなしという訳にもいかないし。私は私で依頼とは別に食料を確保しますか。
「申し訳ございません。エミリーちゃん。子供たちをお願いします」
「え? はい。シーラ様はどちらに」
「私はちょっとお肉を取りに行ってきます」
「承知いたしました。ではジュリアもお供としてお連れ下さい。ジュリア!」
「はいはぁーい。なぁに? エミリーちゃん」
「シーラ様がまた、いつものをやるみたいだから、お手伝いお願いね」
「分かったよぉー」
エミリーちゃんとジュリアちゃんのやり取りを聞きながら、いつもの。という隠語が、なんか悪い事をしているみたいだな。と何となく思った。
いや、まぁ、前世的な感覚で言うなら、冒険者組合の許可なく獲物を捕まえるわけだし。密猟だし。バリバリの違法行為なんだけど。
この世界に魔物を保護する団体とか居ないから大丈夫だと思う。
多分。
「じゃーあ。いきましょー。シーラ様」
「はい。って! ジュリアちゃん! 私、自分で歩けますから」
「まぁまぁ」
「まぁまぁではなく!」
「でも、転んだら、危ないしー」
「そのくらいは大丈夫です」
「でもー。ジュリアは不安なのでー。このまま行きましょーね?」
「ジュリアちゃーん!?」
私はジュリアちゃんに抱きかかえられたままのんびりと森の中を進み始めた。
ジュリアちゃんは、エミリーちゃんと同じくらいの年齢だが、身長が高く、おっとりとしていながらも力は強い。
故に。
私がどれだけ暴れようと、ジュリアちゃんの腕から脱出する事は不可能である。
という訳で、私は今日も抵抗する事をあきらめて、ジュリアちゃんに抱きかかえられたまま、森の中を警戒していた。
何がどこから飛び出してくるかも分からないし、魔力測定装置を付けて、左目は普通の景色を、右目は魔力測定装置の情報を拾いながら、魔物を探し、警戒するのだ。
「シーラ様。スカウターから何か見えますかぁー?」
「魔力測定装置ですよ。魔力測定装置。そっちの名前は怖いから言っては駄目です。名前を呼んではいけない装置という奴です」
「そうなんですかぁー? でもぉー。もうみんなスカウターって呼んでますよぉ?」
「なんて、ことだ! あぁ、神様。どうかお許しください。いざ名前が消せなかった時は先生が発案者である事を世界中に広めさせていただきます!」
「あはは~。シーラ様おもしろーい」
「笑っている場合じゃないですよ。ジュリアちゃん。これは世界が崩壊する可能性のある危機なんです!」
「そうなんですかぁ? じゃあ、ジュリアはこのままシーラ様と一緒に居ようかなぁ。それなら世界が無くなっても怖くないから」
「いや、守りましょう! 世界崩壊の危機をそのまま放置は良くないですよ!」
「そうですねぇ。ぎゅー」
私はジュリアさんにぬいぐるみの様に抱きしめられ、息が出来なくなり、このままでは殺されると、転移で腕の中から逃げるのだった。
危ない危ない。
こちとら見た目は幼女エルフなのだ。力加減には気を付けてもらいたい。
「あー。逃げたぁ」
「当然です。私だって生きていますからね。呼吸を塞がれては生きていけません」
「ぶー」
「そんな顔をしても駄目ですよ。さ。先を急ぎましょうか」
私はジュリアちゃんに目配せをしてから、森の中を進み、それほどしないで獲物を見つけるのだった。
中型の犬のような魔物だ。
いや、どちらかと言えば狼だろうか?
まぁ、どっちでもいいか。結局は食べるだけだし。
「ジュリアちゃん。見つけました」
「……うん。でも魔物しか居ないよぉ?」
「ん?」
私はジュリアちゃんの言い方に引っ掛かるものを感じて索敵範囲をちょいと広げた。
「……見つけました」
「どこですかぁ?」
「狼の目の前ですね。襲われていて、逃げるのは難しいようです」
私は状況を言葉にしながら、今にも誰かに襲い掛かろうとしている狼に攻撃を放つ。
早打ちガンマンの様な速さで放たれた私の攻撃は、正確に狼たちの頭を打ち抜き、全ての魔物を倒すことに成功するのだった。
ちなみに、技術の進歩というのは凄いもので、かつて魔法を互いに打ち合う様な戦いから、ゴーグルを使ったぷよ〇よ魔法バトルになっていたのだが、現代は魔法を使わず、魔力を収束して対象に打ち出すのがトレンドだ。
妨害のしにくさと、とにかく早く攻撃できるというのがこれの良いところである。
ただ、強固な防御魔法とかで防がれると貫けないから、結局魔法を使う必要があって、魔法を使うのなら、ぷ〇ぷよして、ぷよぷ〇するなら魔力砲を撃つ。みたいな感じになりそうな気もしている。
魔法とはじゃんけんであったか。
でも、魔物を倒すなら断然魔力砲だ。早いし確実だし。魔法を構築している間に襲われる心配も無いしね。
という訳で、私はジュリアちゃんにフードを被ってもらい、倒した狼の所へと向かって貰った。
何故顔を隠すのかって?
密猟なんだから、当然でしょ。
犯罪じゃなくても、勝手に魔物を倒してるって知られたら怒られそうだし。
秘密にするのがベストってことだ。
「はぁーい。失礼しますねぇ~」
「き、君たちは」
「あーえっとぉ。通りすがりですぅ~。この狼、一匹貰っていっても良いですかぁ?」
「あ、あぁ。構わないが、持てるか?」
「だいじょーぶですよぉ。ジュリアは力持ちですからぁ」
「そうか。すまない。助かった」
「いえいえ」
「シーラ様……じゃなかった。秘密の使者にも礼を伝えておいてくれ」
「はぁーい。分かってます~」
「この礼は改めて」
「はい~」
ジュリアちゃんはおそらく冒険者と思われる人たちと適度に話をしてから、狼を背負って帰ってきた。
ニコニコと機嫌良さそうに笑っているのは、やはりお肉が食べられるからだろう。
ジュリアちゃんも随分と大きいけど、まだ成長途中の子供だしね。
その辺りは当然って感じかな。
「じゃあ、ジュリアちゃん。みんなの所へ帰りましょうか」
「はぁ~い」
それから私とジュリアちゃんはのんびりと植物を採取している子供たちの所へ戻り、依頼を終わらせて報告に行くのだった。