オリヴァー君とエミリーちゃんが回復したのを確認してから、私は二人とパーティーを組み、冒険者として活動を始めた。
以前にも冒険者はやっていたが、ろくな依頼を貰えず、子供たちと植物を採取するくらいしか出来なかった。
しかーし。オリヴァー君、エミリーちゃんとパーティーを組んでからは、何も問題なく討伐の任務が出来るのだった。
という訳で、今日も今日とて討伐任務。
それも、ムイゼン近くの街道に現れるという凶暴な魔狼の討伐である。
狼のお肉は焼くと美味しいし、適度に持ち運びやすい。
しかも討伐すれば依頼の達成料が貰えるのだ。
一石二鳥どころか一石三鳥である。
という訳で、私は拾った木の枝を持ち、左右に振りながら街道を歩いていた。
私は先頭で、後ろにはエミリーちゃんとオリヴァー君が並んで歩いている。
そう。並んで歩いているのだ。
……やはり、既にそういう関係だったのか。
私が気づいていなかっただけで!!
そう。前世で友達が言っていたが、男女で横に並んで歩くときというのは、恋人同士だけなのだという。
恋人同士で無い場合は並んで歩いてはいけないのだ。
つまり、二人はもう恋人同士という訳だ。
ただ、私には言ってないだけで……って、ちょっと思ったけど、別に私に言う必要ないよね。
私はエミリーちゃんの住んでいる孤児院の管理者ってだけだ。
だから、別に二人がそういう関係になったと言っても、いちいち言う必要はない。
まぁ、ちょっと寂しいけど。
「……はぁ」
何か気分が落ちてため息が出てしまった。
良くない。良くないなぁ。
こういう時は明るい事を考えよう。
そう! これから、パーティーを組み、三人で活動をしていくのだ。
それなら二人に接点がもっと増える事に……!
って、冷静に考えたら私邪魔じゃない? 本当は二人きりの方が良いんじゃないかな?
いや、当たり前だよね。だって愛し合う二人と、変な幼女エルフ一人って、変な幼女エルフ要らないじゃんね。
「パーティーを組んだのは失敗だったかもしれないですねぇ」
「し、シーラ様!」
「はい? 何でしょうか」
何だかアンニュイな気持ちで歩いていた私は、後ろからエミリーちゃんに呼びかけられて、振り向いた。
「その、シーラ様は、もしかして、私とオリヴァー……さんの関係を気にしてらっしゃいますか?」
「……分かりますか」
「えぇ、何となくですが」
「申し訳ございません。気にしないようにはしようと思っていたのですが、気づいてしまい」
「いえいえ! シーラ様は何も悪くありませんよ! ただ、私とオリヴァー……さんとの問題ですから」
「それはそうかもしれませんが、でも……」
「あ、そ、そう! 実はですね! シーラ様! 私とオリヴァー……さんは、とっても仲良しなんですよ! ね!? オリヴァー……さん!」
「……まぁ、そうですね」
「ちょっと! もっとハキハキ答えなさいよ! シーラ様が気にしちゃうでしょ!」
「分かってる! そう耳元で騒ぐな!」
コソコソと内緒話をしているつもりなんだろなぁ。
しかし、エルフ耳は非常に優秀なので、全て聞こえているのです。
そう、イチャイチャしている二人の会話が。
いや、しかし。どういう事だろう。
二人が仲良しだとアピールしてくる意味は。
もしかして、私がおこちゃまだと思われている?
「あの、エミリーちゃん。オリヴァー君」
「「はい! 何でしょうか!? シーラ様!」」
息ぴったり。
まぁ、愛し合う二人なら当然か。
「えと、私は子供ではないので、ちゃんと二人が仲良しなのは知っています」
「え?」
「え?」
「あ、いや! 分かってますよ! 流石はシーラ様。お気づきでしたか! それはとても良かったです」
「ですから、二人がもっと仲良しになれば良いと思いまして……」
「思いまして?」
「私がパーティーから抜けようかと……」
「!!?!?」
「し、シーラ様! どうかお考えを改めていただけますと!」
「え?」
「俺とエミリー……さんが二人きりでは色々と問題があるでしょう!? 色々と」
「色々と……?」
私はエミリーちゃんとオリヴァー君が二人きりになって、何が問題なのだろうと考え、ハッとなった。
そう。そうだ! 昔ちょっと調べようとしてお母さんに止められた奴!
多分、あれだ。なんかエッチな事するんだ!
詳しくは知らないけど、多分、なんか凄い奴だ。
「た、確かに問題ですね。それは」
「そうでしょう。そうでしょう。ですから、このままのパーティーとしましょう」
「……はい」
胸をなで下ろす二人を見ながら、何ともいえない気持ちになったが、まぁ良い。
多分選択は正しかったのだ。
という訳で、私は気を取り直して、気分を上げる為に鼻歌を歌いながら先へと進むのだった。
一応後ろで急に何かが始まっても気づかないフリをしようと心に誓いながら。
魔狼退治はそれほど時間を掛けずに終わった。
何故なら、街道を歩いていた所、旅の一団がその魔狼に襲われていたからだ。
私は地面に落ちている石を拾い、魔力を込めて魔狼を端から順に打ち抜いてゆく。
そうこうしている間にも、エミリーちゃんとオリヴァー君がそれぞれの武器を抜いて、狼狩りへと向かうのだった。
故に、掛かった時間は非常に短く。しかもムイゼンへ向かう途中だったという一団に狼のお肉を乗せてもらえる事になったので、私はほくほく顔でムイゼンへと帰る事が出来る様になった。
しかも! しかもだ!
なんとこの一団を率いていたのは、キッフレイ聖国の新しい王様オーブリーさんであった。
アイヴィちゃんのお兄さんだ。
「いや、またもやシーラ様にお助けいただけるとは」
「まぁ、偶然ですよ」
「偶然も重なれば運命だと思いませんか?」
「別に、思いませんが」
「……」
「……」
なんで無言になるの!?
いや、だって、偶然が何回かある事もあるじゃん!!
え? なんて言うのが正解だったの!?
そうですね。とか言えばよかったの!?
「……貴女は、変わりませんね」
「えぇ、まぁ。エルフなので」
「……」
「……」
だーかーらー! なんて言うのが正解なのさ!
「まぁ、でも……見た目は幼女ですが、中身は大人ですよ?」
「なるほど」
「えぇ」
「……」
「……」
もう無理!
誰か助けてください!
この人、苦手!!
なんか会話がやりづらいです!
「あぁ、そうそう。実はですね。シーラ様に紹介したい者がおりまして」
「はい」
「馬車の中でもよろしいですか?」
「私は構いませんが……オリヴァー君とエミリーちゃんは」
「いや、俺は護衛で馬車の横を歩きますから」
「私も大丈夫です」
「そうですか。では、はい。大丈夫です」
「ありがとうございます。では馬車の中へどうぞ」
そして案内されるまま乗った馬車の中ではとんでもない美人の女の人と、まだ小さい男の子が二人居た。
「紹介します。妻のアガタと、息子のマクシムとナルシスです」
「初めまして。お目にかかれて光栄です。シーラ様」
「あ、えと。シーラです。気軽にシーラと呼んでください」
「さ、二人とも、挨拶をしなさい」
「はじめ、まして……シーラ様」
「初めましてです! シーラ様!」
「はい。初めまして。二人とも挨拶が出来て凄いですねぇ」
「えへへ」
「とうぜんです! 私はじき国王ですから!」
「凄いですねぇ」
胸を張るちびっ子の頭をよしよしと無意識に撫でていた私はハッとなり、すぐ隣を見た。
よくよく考えたら親の前でやる行動じゃないわ。
「申し訳ございません。馴れ馴れしかったですね」
「いえ! その様な事は! どうぞ、お気になさらず!」
「えぇ、えぇ。もういくらでもどうぞ!」
夫婦揃って凄い押してくる。
なんか逆に怖くなった私は、控えめに接するのだった。