子供というのは大変可愛らしいものだ。
というのは孤児院を経営していればどんなに鈍くても分かる事だし、子供の成長を間近で見る事が出来るというのは、これ以上ない喜びだろうと思う。
だが、しかし。
世の中には、子供を愛せない人というのも確かに存在するのだ。
愛する人との間に出来た子供ではないから、とか。
子供が生理的に無理だ、とか。
まぁ、色々に理由はあるのだろうが、私は子供が好きだ。
だからこそ、この世界で苦しむ子供を助けて、将来には悲しむ人が誰も居ない世界を作りたいとも考えている。
それで、学校を作った訳なのだけれど……。
「学校に二人を入学させたい。ですか?」
「えぇ」
「いや、お二人はまだまだ幼い子供ですよね? それに将来はキッフレイ聖国の王様になる訳ですし。学園に入れると色々と問題がありませんか?」
「いえ。問題は無いかと思います」
「そんな事、無いと思いますけど。まだ小さい子が親から離れて生活するだなんて、可哀想です」
私の言葉に、キッフレイ聖国の王様オーブリーさんとその奥さんのアガタさんは互いに顔を見合わせながら困った様な顔をしていた。
いや、困ってるのはこっちだよ!
確かに今までも、子供を育てられないっていう親御さんが私の所に子供を預けに来た事はあったけど、それはどうしようもない理由があったからだし。
子供が望めば親と話をしたりする時間だって作った。
でもさ。王様は違うじゃん!
育てる時間も余裕も作れるでしょ? 少なくともそれが出来る人間を雇う事は出来るわけじゃん。
なら、私に預けるのがそもそもおかしいんだよ!
「一応どういう理由があるかお聞きしますが、基本的には無理だと思ってください」
「……はい。実はですね」
「……むむ」
「この子たちには最高の教育を与えたいのです」
「最高の教育?」
「そうです。シーラ様が国を超えた、どのような国、種族、年齢、身分であろうと受け入れる学園を作られたという事で、我が子もその学園に通わせたいと考えておりました」
「王族の方にまで興味を持っていただけるというのは大変ありがたい事です」
「まぁ、教師の中にシーラ様が居るという事であれば当然でしょう」
「……」
ノーコメント!!
「しかし、私も妻も、正直魔法の才能はありません。このまま育っても息子たちは私たちと同じ様に平凡な才能しか持たず、シーラ様の教えを授かる事が出来ずに終わるでしょう。それが親として悔しい」
「だから早いうちから入学させて、鍛えようという話ですか?」
「はい」
あー。はい。
これ、あれだ。
前世でも居たけど、教育パパ、教育ママ的な感じだ。
それで、子供には最高の教育をって事で、シーラ学園(仮)に早いうちから入学させようと考えたって訳かぁ。
なるほどね。
うーん。うーん。しかしそれはどうなんだろう?
正直私自身が私の魔法が別に凄いとか思ってないからな。
こちとら五十年くらい呼吸をするくらい当たり前に魔法を使ってたから、便利に色々使えるだけで。
特別な才能とか、技術とか無いただの叩き上げなんだけど。
「……私がこの子たちに教えられる事なんて、それほどないと思いますけど」
「そんな……!」
「あぁ、アガタ。すまない私のせいで」
「その様な事は……! 全ては私の才が」
ちょいちょいちょいちょい。
待って待って。
なんか突然お涙劇場が始まったんだけど!?
「お二方。私の言葉からどの様な意味を受け取ったのでしょうか?」
「……私どもの子供には、何の才能もない。という事では?」
「私はそのような事を言っていません!」
「では、どの様な……?」
「私は皆さんが考えている様な特別な才能もありませんし、そういう才能を目覚めさせる力も無いという事です!」
「しかし、シーラ様が預かっている子供は、どんな子も皆素晴らしい才能に溢れていると。あのアイヴィも今では立派な魔法使いですし」
「それは子供たちが皆、ちゃんと努力をしたからです。私が特別な何かをしたという事はありません」
「……」
「……」
なんだ。その顔は。
キッフレイ聖国からのお客二人は、顔を見合わせながら何やら頷いている。
が、その顔が、何言ってんだ? こいつみたいな顔で腹立たしい。
バカにするなよ! 私は確かに幼女エルフだけどな! 色々考えて生きているんだからな!
例えば、そう……まぁ色々だ!
「では、シーラ様。一年。一年だけこの子たちを預けても良いですか? それで何も変わりがなければ私どもも納得しますから」
「まぁ、一年なら」
「ありがとうございます!! シーラ様!」
「ただし! 一年間、完全に放置は駄目ですよ! 二人はこの子たちの親なんですからね! 定期的に私が転移でキッフレイ聖国まで運びますから、そこでちゃんと話をする事! 良いですね!?」
「はい。ありがとうございます!!」
お礼言ってばっかりだけど、分かってるのかなぁ。
なんか不安になるな。
ちゃんと駄目押ししておくか。
「定期的に会うだけじゃなくて、この子たちが何か病気になった時には、お医者さんに診せますが、料金はお二人に請求しますからね!」
「ありがとうございます!」
「いや、お金を請求するんですよ? 分かってますか?」
「はい。問題ありません!」
「何か二人が困ってたらちゃんと話を聞いてあげるんですよ? 突然そちらの国に転移するかもしれないですけど、ちゃんとその日の内に会ってくださいね? 出来ますか?」
「勿論です! そこまで考えてくださっているとは……! 流石はシーラ様」
「何が流石ですか。このくらいは当然です」
「その通りでございますね」
ペコペコと頭を下げる二人に、何だかこれ以上下げさせるのも嫌なので、とりあえず話を終わらせる。
とにかくだ。
双子ちゃんを預かって、他の子と同じ様に簡単な魔法を教えたりすれば良いんでしょ?
それで何もなければそれでおしまい、と。
まぁ、大した仕事じゃないし。やるかぁ。
そして、双子を預かってから一年。
色々な事があったが、双子は実に真面目に魔法を学び、一年が経つ頃にはまだ幼い子供にしては、十分に素晴らしい魔法使いの卵となった。
うんうん。親の心配なんてなんのその。
子供とは親の想像を超えて、成長してゆくものなんだなぁ。
と、私は二人の成長に関心していた……のだが!
事態は私の想像とはまるで違う方向へと全力で転がり始めた。
なんと。私が育てたから、この二人が魔法の才能に目覚めた。なんて噂が世界中に流れ始めたのだ。
「ど、どうしてこんな事に」
「シーラ様。大変残念ですが、これは当然の流れかと思います」
「えぇ!? そうなのですか!? お、オリヴァー君もそう思いますか?」
「そうですね。俺はてっきりシーラ様は最初からこういう事になると、想定されて動いていると思っていましたが」
「ふん。まだまだ甘いですね。シーラ様はご自分への評価が低い。その様な想定などしませんよ。ま! 私は気づいてましたけどね!」
「いちいち絡んでくるな。というかどういう自慢だそれは。シーラ様を困らせてどうする」
「困った時に手助けした方が褒められるじゃないですか!」
「不忠者め」
イチャイチャとしている二人をそのままに、私は窓から幼女エルフの像を撃ち抜きながら叫ぶのだった。
どぼぢで、こーなるの!!