愛され転生エルフの救済日記   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第33話『風紀の乱れ』

レナちゃんが孤児院に入ってから二年の月日が流れた。

 

そう。レナちゃんのお母さんが病気で亡くなってしまったからだ。

 

だから、あの子は生まれ育った村を離れて、ムイゼンに来る事となった。

 

レナちゃんのお母さんがゲームの通り、病気で亡くなってしまった事で、私は世界の運命という奴を呪った。

 

どれだけ手を尽くしても、駄目な時は駄目なのだ。

 

毎日毎日魔法で調べていたのに、全然病気は見つからなくて、ようやく見つけたと思ったら手遅れだった。

 

レナちゃんもずっと悲しんでいて。少し元気になった時に、将来の事を聞いたが、やっぱり選んだのは学園に行く道だった。

 

これも運命という奴なのかもしれない。

 

まぁ、本来の歴史では、お母さんが亡くなった事で一人になったレナちゃんにお母さんの親戚だという人が現れて、その人が実は貴族の家で働いている人で。

 

そこから貴族の人に聖女である事が知られ、偶然、この貴族は良い人だったから学園に通う事が出来た。という様な流れなのだけれど。

 

途中の道は違っても、最後にゲームの舞台へたどり着くというのは同じな様だ。

 

つまり、これから色々な問題にぶつかる事にもなるのだろう。

 

例えば、元平民で親が居ないという事でいじめられる様になったり。

 

王子様と近づいてしまって、嫉妬されたり。

 

学園に魔物が現れて、襲われそうになったり。

 

まぁ、全ては恋愛のイベントでしかないのだけれど。それでも怖い思いも痛い思いもする事になるのだ。

 

何とか守りたいけれど、私の力がどこまで通用するか……。

 

いや、諦めちゃだめだ! 気合を入れないと!

 

「……シーラちゃん」

 

「ん? どうかしましたか? レナちゃん」

 

「あのね、ちょっと寂しくなっちゃって。一緒の布団で寝ても良いかなぁ」

 

「はい。良いですよ」

 

今日も今日とて、寂しそうな顔をしたレナちゃんを部屋に迎え入れながら、私は微笑んだ。

 

本当はもう少し、仕事が残っていたんだけど、子供が優先である。

 

という訳で、布団の中に入ったのだが、レナちゃんはジッと私を見つめていて、眠る気配がない。

 

「えと、レナちゃん?」

 

「シーラちゃん。愛し合う家族はおやすみの時、キスをして眠るんだって」

 

「え? そうなのですか?」

 

「うん。色々な本にも書いてあったし。みんな言ってたよ」

 

「そ、そうだったんですね。知らなかったです」

 

「……だから、お願い」

 

「いや、でも」

 

「そっか。そうだよね。シーラちゃん、はもう私と家族じゃない……よね」

 

「します! しましょう! さ。レナちゃん!」

 

「うん」

 

私は昔、映画で見た、子供が寝る時に親がやっていたアレをレナちゃんにする。

 

そう。額にキスしておやすみ。っていう奴だ。

 

しかし、レナちゃんは大層不満そうであった。

 

そして、即座に私の唇を奪うと、そのまま長時間続ける。

 

いよいよ息が出来なくなって苦しいとレナちゃんにアピールすると、ようやく解放して貰えるのだった。

 

「……はぁ……はぁ」

 

「ふふ。甘いね」

 

レナちゃんはペロッと舌で唇を舐めて笑う。

 

その姿はまだ子供とは思えないほどに妖艶で、私は思わずビクッと震えてしまうのであった。

 

「ねぇ、シーラちゃん」

 

「な、なんでしょうか」

 

「シーラちゃんはこういう事、はじめて?」

 

「っ!」

 

耳元で囁かれた言葉は、何だかむずがゆくて、目を閉じながら震えてしまう。

 

逃げようとしたが、両手を押さえつけられてしまえば、動くことも出来なかった。

 

「シーラちゃん」

 

そして、レナちゃんは私の服のボタンを外そうとする。

 

「だ、駄目ですよ。こんなの」

 

「でも、シーラちゃんは私が男の子と恋愛する事を望んでるんでしょ?」

 

「そ、それはそうですけど。そうなれば幸せになれますし」

 

「じゃあ練習しないと、駄目じゃない?」

 

「れ、練習ですか?」

 

「そう。練習。だって、私がいくら好きになっても、向こうが好きになってくれなかったら、意味ないじゃない」

 

「それは、そうかもしれないですけど。でも、大丈夫ですよ! レナちゃんなら、みんな好きになって……ひゃん!」

 

「そんないい加減な事ばっかり言って……。シーラちゃんは私の事好きになってくれないじゃない」

 

「す、好きですよ? 私は、レナちゃんの事」

 

「そう? じゃあ良いよね?」

 

「え?」

 

「私もシーラちゃんの事が、好き。シーラちゃんも私の事が好き。なら問題ないよね?」

 

「え? え?」

 

「ふふ。両想いだね?」

 

「ひゃ、ひゃう」

 

「もうあんまり騒いじゃ駄目だよ。みんなが起きちゃうから」

 

私はレナちゃんの言葉に思わず両手で、口を塞いで、目を閉じた。

 

そして……。

 

まぁ、色々あって朝になった。

 

 

 

朝目覚めた私は、普通にパジャマを着ていて、昨日の事が夢だったのかと思うほどであった。

 

しかし、廊下でレナちゃんと出会った時、そっと誰にも聞こえない声で、「昨日は可愛かったよ」なんて囁かれて、私は思わず振り返ってしまった。

 

そして、視線の先では振り向いて笑うレナちゃんが……。

 

い、いかん!

 

これは非常に良くない!

 

不健全だ!

 

乙女ゲームの主人公は! もっと、こう、なんか清楚で、綺麗で可愛くて、みんなの憧れじゃないと駄目だ!

 

そんなエッチな感じなのは良くないと思う!

 

うん!

 

だって、実は見えてない所でヒーローたちとそんな事をやってたかと思うと、無理、無理だよ。

 

もうゲームできなくなっちゃう。

 

いや、もう出来ないんだけど。

 

とにかく! 学園の風紀は守らないといけないと思うのです!!

 

という訳で、レナちゃんへの注意をしつつ、学園の現在についても調べる事にした。

 

すると、出るわ出るわ。風紀の乱れが。

 

人気のない場所で、キスしてたとか。誰も居ない教室で、その、エッチな事してたとか。

 

もう! もう!! って感じである。

 

私は窓から見える噴水前の小さなエルフ像を魔力弾で破壊しながら、苛立ちを発散しつつ、学園の先生方を呼んで緊急会議を開くのだった。

 

 

 

会議室でテーブルを叩き、開幕一声大きな声で議題を叫ぶ。

 

「風紀が乱れています!」

 

「……? えー。シーラ様、それはいったい?」

 

「私が調べた所によりますと、その、人気のない場所で、その……その、口と口を合わせるような行為をしていたという話や」

 

「はぁ、キスしてた者が居たと」

 

やる気の無さそうな。真実どうでも良さそうな先生の反応に、このまま流されそうだと感じた私はさらなる追撃を放つ。

 

「それだけじゃありません!! そ、その空き教室で、その、えっ」

 

「え?」

 

「エッチ、な事を……その、していた人たちだって居ると聞きました!」

 

「はぁ、なるほど」

 

心底興味が無さそうな反応に私は、子供がそれを見ちゃったらどうするんですか! と叫んだ。

 

すると、今までどうでも良さそうな顔をしていた先生方はみんな姿勢を正して、私の配った資料を見てくれる。

 

「まさか、シーラ様も目撃されたのですか?」

 

「あ、いえ。私は、その、手を繋いでる人が居るな。くらいで」

 

「なるほど。承知いたしました。では今後、その様な行為を行っている者は学園より永久追放でよろしいでしょうか? 他者との意味のない接触をした者は全て排除と」

 

「意味のない、接触ですか?」

 

「はい。授業に関係なく、触れた場合は永久追放です」

 

「いやいやいや! そこまでは必要ないかと思いますが!?」

 

「しかし、シーラ様の視界に入る可能性がある以上、危険な芽は取り除くべきかと」

 

「極端すぎです! とにかく、その、極端に風紀が乱れるような行為は気にしてください! それだけです!」

 

「シーラ様。具体的にどの程度までは良いのでしょうか?」

 

「ぐ、具体的に?」

 

「はい。具体的に」

 

「え、いや、それは、その、その……」

 

「その?」

 

「なんか、その、え、エッチなのは……良くないと思います」

 

「ふむ。なるほど。分かりました。では判断はこちらで行いますが、よろしいですか?」

 

「それは、はい。お願いしたいですが……でも、でも! 手を繋いだりとかは良いと思います。それに、その、き、キスとかも、その、気持ちが伝わった時は、あると思いますし、その、あんまり規制するのは良くないかなって」

 

「はい。承知いたしました。では後はこちらで」

 

「あ、はい。後はお願いします。あ、でも、どういう風に決まったかは教えてもらえると」

 

「では、後はこちらで」

 

「あの!?」

 

「後はこちらで。ではシーラ様。お帰りはあちらです」

 

それから何度か同じことを繰り返したが、結局会議室から追い出されてしまい、それからどうなったのか分からなかった。

 

でも、まぁ、キスまでは大丈夫にしてってお願いしたし。

 

これで乙女ゲームの世界は守られたと思う。

 

……あれ? でもなんかピンチの時とか、抱き着いてたような気もする。

 

その辺りも、禁止しちゃ駄目かもしれないです!!

 

私はそれから急いで会議室へ戻るのだった。

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