うーんである。
もしかして、もしかするのだが……。
レナちゃんとナルシス君はあまり相性が良くないのだろうか。
以前も少しだけ、もしかしたらそうなのかなぁー。と思っていたが、最近はより顕著だ。
レナちゃんは寂しいのかスキンシップが多い子なのだけれど、最近はレナちゃんが私にくっついているだけで、破廉恥だ。子供が出来たらどうするのか。と大騒ぎ。
いや、女の子同士だし、エルフと人間だし。子供は出来ないんじゃないですかね……。
なんて言うと、なんか別の所から争いが起こりそうな気がしたので、私はとりあえずなるべくレナちゃんと離れる様にしていた。
するとどうだろう。
廊下とかで偶然二人を見つけると、大抵言い争いをしているか、決闘をしている。
流石に、恋愛感情を隠す為だけにここまでやらないだろう……と思う。
思うのだが、こういう感情の動きはあまり自信が無いので、私の最も信頼できる人に相談する事にした。
「なるほど。子供の恋愛相談ですか」
「そうなんです。何かご意見を頂けたらと」
「まぁ、俺自身もそんなに恋愛経験が豊富って訳でもないですから、お役に立てるかは分かりませんよ?」
「そんな事ありませんよ。オリヴァー君は今や世界が認める最強の剣士! 色々な人がオリヴァー君の噂をしていましたし。素敵な人だって言ってましたよ」
オリヴァー君は私の言葉を聞きながら真っすぐに私を見る。
若返りの魔法とかを使っていないオリヴァー君はとても格好いい老剣士になった。
いや、老剣士なんて年齢じゃないかもしれないけど。見た目はそんな感じだ。
だからか、若い姿を保っている人ばかりの世界で、オリヴァー君はとても珍しく、しかも渋くて格好いいからモテるのだろう。
まぁ、私の様にいつまで経っても幼女というのも、それはそれで一部界隈にモテる訳だが。
「俺はたった一つ、手に届かない星を追いかけ続けてますからね」
「あ、そうなんですか。そういう所もモテる秘訣なのかもしれませんねぇ。人は手が届かない物に憧れるといいますし」
「そうですね」
オリヴァー君は深い、感情の見えにくい笑みで頷くと、小さく息を吐いた。
なんだ。いや、今なんか呆れている様な空気を感じたぞ?
ビビビっとシーラセンサーに触れる物があった。
「オリヴァー君。オリヴァー君の好きな人を教えてください」
私は聞かなければいけないと、オリヴァー君に問うた。
多分聞かなければ後悔すると思ったからだ。
それはオリヴァー君の寿命か。もしくは別の理由か。
「残念ですが、もうそれは口にしない事に決めているんですよ」
「今日は?」
「一生です」
オリヴァー君の笑顔に私はそれ以上何も言えなくなってしまう。
「ジェイク団長が、遠征で死にかけた時、奥さんが酷く悲しんでいるのを見て、俺の想いは、きっとその方を傷つけると思ったんです。どうやっても俺の方が先に死にますからね。傷つけたくはない」
「……オリヴァー君」
「だから、誰にも知られず、その方を守りたい。そう思った。ただそれだけですよ」
「それは、寂しいですね」
「そうでも無いですよ。よく話はしますし。その方にとって、最も信頼されているという自負もありますしね」
「そうですか。オリヴァー君がそう言うのなら、私はもう何も言いません。まぁオリヴァー君にずっと想われてて、なーにも気づかない鈍感な人なんて私がていてい! って叩いてもいいくらいですけどね! まったく! 私の可愛いオリヴァー君に!」
「……あの方は愛の多い方ですからね。俺が独占は出来ませんよ」
オリヴァー君が何故か笑いながら言ったその言葉に私はオッと引っ掛かった。
待て待て。
何だその愛が多いっていうのは!
それは浮気とかする人の言葉じゃあなかろうか。
一人に決められないのよ。じゃないぞ!
くっ! オリヴァー君、騎士として頑張りすぎて、変な女に騙されてるんじゃないだろうな? いや、男かもしれないけど。
うー! オリヴァー君を騙すとは許せん奴!
こうなったら!
「オリヴァー君」
「はい。なんでしょうか。シーラ様」
「一つ保険をかけておきましょうか」
「保険、ですか?」
「そう。保険です」
私はオリヴァー君の隣に座って、オリヴァー君と話をしていたのだが、一人立ち上がり、オリヴァー君の頬にそっと口づけをした。
そして、笑う。
「もし、これから先、何があっても。私は最後の瞬間までオリヴァー君と一緒にいますからね」
だから変な女だったらすぐに逃げ出すんだよ? という事は言わない。
言っちゃうと、そんな訳無いだろ! と反発しちゃうかもしれないし。
なので、私は何かあった時の逃げ先としているだけだ。
「まったく……貴女という方は。これでは諦めるのも大変ですよ」
「良いんじゃないですか? 最後まで足掻いて挑戦して、それでもダメだった時は私が居ますよ。いつまでも、ここにね」
「それは心強い」
「へへ」
私はオリヴァー君と拳をぶつけ合って、思わず楽しくなって声を出しながら笑ってしまった。
そんな私にオリヴァー君も笑ってくれる。
「あ、そうだ! なんか気分が乗ってきましたし。久しぶりに最強の二人! やりませんか?」
「それは構いませんが、良いのですか? 冒険者の依頼を奪うのは良くないと止めたでしょう?」
「大丈夫です! ちょーっと面倒な依頼がありまして、とある山の上にいるドラゴンが、度々近くの町や村に降りてきては迷惑をかけているので、こら! と怒りに行く仕事です」
「なるほど、それは面倒だ。ドラゴンを殺してはいけないのですね」
「はい。ドラゴンがいるお陰でその付近は中型以下の魔物に襲われないという利点がありますからね。あくまで怒るだけです」
「分かりました。いつ行きますか?」
「今からはどうでしょうか?」
「えぇ。俺は構いませんよ」
「では、転移!」
私はオリヴァー君の手を取って、二人でその山の頂上付近に転移した。
突然私たちが目の前に現れたドラゴンは驚いていたが、それでもドラゴンらしく威厳たっぷりに言葉を発する。
『いきなり何用だ。小さき者たちよ』
「貴方が最近、近くに住む人たちを虐めていると聞いて、懲らしめに来ました! 仲良くして下さい!」
『フハハハハ! 我が何故小さき者と交流せねばならん!』
「仲良くしてくれたら、美味しいお酒くらいは提供しますよ。実際そうやって仲良くしてくれているドラゴンさんもいますし!」
『フン。軟弱な同胞め。我らはこの世界で最も強き者! かの魔王すら我らには勝てぬ!!』
「まぁ、それはそうなんですが……駄目ですか?」
『くどい!』
「そこを何とか」
『どうしてもと言うのなら、貴様が我が宝物の一つとなれ。小さき者の中ではかなり美しい。宝の一つとして小さき者を加えるのも一興だろう』
「いや、私にはやる事があるので『では力尽くでも我の物にしてやろう!』あ、これ、戦闘の流れなんですね。しょうがない。オリヴァー君」
「えぇ!」
ドラゴンが大きく息を吸い込んで、私に向かって大量の炎を吹き出してきたが、それをオリヴァー君が一回剣を振るっただけで消し飛ばす。
相変わらず人間業じゃない。
そして私はドラゴンのすぐ近くに転移して、魔力砲の要領で手に魔力を集めてドラゴンの頬と思われる場所を思いっきり引っぱたいた。
『ぬあああああ!!!』
「もう! 話を聞いてください!」
『わ、分かった!』
「じゃあ、約束の話をしましょうね」
私はそれから大人しくなったドラゴンとよく話をして、仲良くする様に言ってオリヴァー君と帰るのだった。
ただ、この時の話が噂になり、二人きりで冒険をした事がエミリーちゃんにバレて、ズルいズルいと大騒ぎになってしまう。
仕方なく、私はエミリーちゃんと二人で別の依頼にも行くのだった。